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噺の話

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昨年は都合がつかず、一昨年二月以来のこの会。扇辰の貫録と、白酒の茶目っ気のバランスが絶妙で、二人会としては相当高いレベルの好企画。チケットがすぐに売り切れるのもムベなるかな。会場はほぼ満席だった。

次のような構成だった。
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入船亭小辰 『手紙無筆』
入船亭扇辰 『匙かげん』
桃月庵白酒 『天災』
(仲入り)
桃月庵白酒 『犬の災難』
入船亭扇辰 『百川』
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入船亭小辰『手紙無筆』 (19:01-19:19)
 入場の際に渡されたプログラムと順番が変ったことを案内。楽屋で二人がジャンケンで決めたらしい。マクラでは師匠と二人で行った学校寄席のこと。小学生を相手に1時間半の持ち時間をどうするか、ということで最初の1時間は、落語教室的な内容で進めたが45分で終わりそうになり、扇辰に言われて小辰が高座で、納豆やら蟹などを食べる仕草を演じてつないだらしい。なるほど、そういう“無茶ぶり”が、若手を鍛えるのだなぁ^^
 二ツ目になって順調に成長しているとは思うが、前座の頃に感心した“切れ味”の良さのようなものが、少し不足していたような印象。これは、ネタにもよるので一概には言えない。今年は、ぜひこの人の長講を聴く機会をつくろうと思っている。

入船亭扇辰『匙かげん』 (19:20-19:53)
 マクラでは、まず弟子のネタについて。弟子の後はやりにくい。袖で「なんだあれは、誰に稽古してもらった」「師匠です」。次がお約束の白酒イジリ。高座の前に唐揚げ弁当と、差し入れのカレーパンを食べていたらしい。「兄さんも」と勧められたが扇辰は出番前で遠慮したようだ。
 4分ほどのマクラの後の本編は、初めて聴く噺。終演後に掲示されたネタ表でようやく演題が分かったが、講釈から落語になったネタらしい。後で調べてみたら、円窓があの「五百噺」の中で演じていたようで、サイトにダイジェストが掲載されていた。「円窓五百噺ダイジェスト」の該当ページ
 円窓が小金井芦州から教わったことが、書かれているので引用。

(圓窓のひとこと備考)
 あたしが若い頃、上野に本牧亭という釈場があった。釈場とは、常設で講釈をやっている寄席のこと。あたしが鈴本に出番のあるときには、しょっちゅう、その釈場の客席に回って講釈を聞かせてもらった。
 その折、故小金井芦州師のこの講釈を聞いたのだ。翌日、一升瓶をぶら下げて楽屋へ顔を出して「教えてください」と頼み込んだ。
 登場人物も刈り込み、落ちも付けて、落語の寄席や地域の落語会で演り始めた。
 そのうちに何人かの後輩の噺家が「教えてください」と来た。
 今度は、あたしが教える立場になってしまった。
 いずれ、彼らもその立場になってくれるであろう。嬉しいことである。


 扇辰も円窓に稽古してもらったのだろうか。しかし、内容は円窓と扇辰では少し違うので、円窓のダイジェスト版を参考にしながら、扇辰版に置き換えて筋書を紹介したい。サゲまで書くことにしよう。

(1)三田に阿部玄渓という名医がいて、息子の玄益も腕はいいが、若気の至りで遊び過ぎて
  勘当となった。
(2)玄益はその後、心を入れ替え、八丁堀で医道に精進して評判の医者となった。
(3)玄益、放蕩していた時分に通った品川宿の叶屋という茶屋へ二年ぶりにやってきた。
  当時馴染みだった芸者のなみの消息を聞くと、叶屋曰く、玄益が二年前、なみと夫婦の
  約束をしたのに、その後玄益がすっかり来なくなったのを気に病み、なみは気が狂って
   しまった。置屋の松本屋から叶屋があずかり、奥の座敷牢に入れている、とのこと。
(4)玄益は「それは私の責任だ。なみを引き取る」と申し出た。悪賢い叶屋は、玄益から
  身請け費用として三両、松本屋からも仲介料として三両、計六両を自分の懐に入れ、
  玄益になみを預けた。
(5)玄益はなみを引き取って、八丁堀に連れてきて、必死の治療の甲斐あって、なみは
  半年あまりで全快をした。
(6)なみ全快の噂を知った品川宿の叶屋は、すぐに松本屋と相談。また悪知恵を働かせて、
  「年季証文がこっちにある限り、身請けをしたことにゃならねぇ。あたしが間に入って
  巧くまとめる」と言って、八丁堀の玄益の元へ。
(7)叶屋は玄益に「年季証文がない以上、なみを引き取らせてもらいます。お上に出せば、
  証文が口を利くんでぇ」と捻じ込んだ。この騒動を耳にした大家八兵衛が間に入って、
  「明日、あたしの家に来てくださいな。話をまとめておきますから」と、ひとまず
  叶屋を帰した。
(8)翌朝、大家は一計を案じ、猫の餌用の瀬戸物の欠けたお椀に熱い湯を入れて、叶屋が
  来るのを待つ。やって来た叶屋に大家が、「派手にお仕事をされている品川の叶屋さん
  まさか、手ぶらで来ることはなかろう」と聞えよがしに婆さんに言い、叶屋はしぶしぶ
  八兵衛、女房、そして猫の分まで小遣いをひねり出す。挙句に、「なみは玄益先生が
  身請けしたはず」と言うのを聞いて怒った叶屋が体を前に迫り出して膳を倒して熱い湯
  を被って、お椀を投げつけて割ってしまう。
(9)話合いは決裂し、叶屋と松本屋がついに、南町奉行所の大岡越前守へ、お恐れながら
  と訴え出た。いよいよ、裁きの日。奉行は玄益に「年季証文が松本屋にあるからは、
  なみを身請けしたことにはならん。身柄は松本屋へ引き渡すのじゃ」と申し渡した後、
  松本屋にも「なみを治療してもらったのであるから、玄益には薬代、治療代を支払う
  ように」と申し付け、松本屋も越前の計略に気がつかず、支うと請け負う。
(10)さて大岡越前、玄益に「なみの薬代、手当て代はいくらじゃ?」と訊く。玄益は
  「金のために治療したわけじゃない」と断とうろするが、越前の真意を察した大家
  の八兵衛が言うがままの金額を越前に告げる。
(11)治療代が一日に一両、薬代は二両を日に三度で六両、半年で締めて千二百六十両
  を即金で支払うことを越前は松本屋に命じる。もし嫌なら示談にせよとのこと。
(12)翌日、叶屋が大家の所へやってきて、また小遣いをせびられた挙句、示談を申し
  入れた。勝ち誇ったように大家は「あなたは双方から三両ずつ、計六両を懐に入れまし
  たね。それはあなたの働きだからいいでしょう。しかし、猫の大事な瀬戸茶碗を壊した
  のはあなたですから、千二百六十両いただきましょう」と脅かした。叶屋が「ご勘弁
  ねがいます」というので、百両で示談になった。
(13)そこで、サゲ。
  八兵衛「叶屋さん。書いた証文が口を利きましたか?」
  叶屋 「いいえ。欠いた瀬戸物が口を利きました」

 長くなったが、これも扇辰の「芝居」を見ているような“劇的”な高座の感動が、今も残っているからである。 まず、叶屋がいい。こういう悪役を演じさせたら、雲助と双璧ではないか、と思う。その他の、人のいい坊ちゃんの玄益、叶屋に言われるまま悪事に加担させられる松本屋、叶屋よりも上を行く策略家の大家、『大工調べ』を髣髴とさせる裁きを見せる大岡越前など、全ての人物の個性が際立っていて、上質な舞台を見ている思いで聴いていた。文句なく、今年のマイベスト十席候補である。

桃月庵白酒『天災』 (19:53-20:24)
 扇辰にいじられた弁当について、言い訳がましいマクラから。大食いなのではなく、食べた後でまた腹がすくまでの間合いが短いだけ、とのこと。しかし、出番前にしては食べ過ぎだったことは本人も反省気味で、いつもより汗を拭う回数が多かったような気がしたなぁ。腹の中で唐揚げとカレーパンが燃焼していたのだろう^^
 マクラの続きでは、「PM2.5って名じゃ、怖くない。おやつの時間みたいでしょ」、「ZZ94(ダブルゼット94)とかなら、苦労して死ぬぜぇ、で迫力がある」、というのが可笑しかった。
 本編は、この人ならではのクスグリで抱腹絶倒の内容。岩田の隠居が紅羅坊名丸の所へ行けというと「ブラボーのムニエル」とまぜっかえす八五郎。実際に紅羅坊の家に着くと、「いたな、マニエル!」と言い、名丸が「私は、そんな助っ人外人のような名ではありません」と返す。若干古いネタだが、会場の客層の年齢には合っていた^^
 八が長屋に買って熊にオウム返しで「天災」を教える件では、今まで聴いたことのないクスグリ。
「広い原っパに出たら居酒屋があって、そこに馬はいない。二階から額に瓦の刺さった小僧が降ってくる。その小僧がお前をどこまでも追っかけてくる」というのは、オリジナリティはあるが、ちょっと作り過ぎでもある。全般的に会場は大爆笑の高座だったが、やはり直前に食べ過ぎだったのだろう、少しスピード感には欠けた印象。

桃月庵白酒『犬の災難』 (20:36-21:01)
 商売柄、終演後に宴会が多い、というマクラ。主催者や宴会の幹事役から、打ち上げ会場がそれなりの店と察すれば、出演仲間と「今日は早く切り上げよう!」となり、安い居酒屋になりそうだと「今日はしっかり長めにやるか」となるのが酒飲みの人情、と短めのマクラで本編へ。
 『猫の災難』を志ん生が犬に替えたと言われる古今亭のお家芸。それほど大きなネタとはいえないが、猫に慣れたお客さんには、新鮮だったのではなかろうか。噺自体の可笑しみでは、私は猫に軍配を上げる。白酒は、ようやく腹ごなしもできて、だらしない酔っぱらいを、楽しそうに演じた。全体的に押していたこともあったのだろう、後半は少し急ぎ足気味ではあったが、一門伝統の滑稽噺をしっかり。しかし、白酒なら、これ位は当然とも言える。一席目と趣向を変えて人情噺にしなかったのは、この日の主役は扇辰、という思いからの遠慮だったか、と思わないでもない。

入船亭扇辰『百川』 (21:02-21:39)
 「ああいう、意地汚い噺は、本当に上手いですねぇ」と白酒をいじって、「地元のお噺をしましょう」と本編へ。
 お約束で、江戸の三大祭、四神旗と四神剣のことを解説。そして、百川にあの百兵衛さん登場だ。この人の演じる百兵衛だから、その声、顔の演出を駆使した楽しい主人公である。もちろん悪かろうはずはない。しかし、一席目の上質の「芝居」を見た後では、その比較として登場人物が少ないため噺の奥行を狭く感じるから、困ったものだ。もちろんネタのせいであって、このネタとしては、十分に楽しいのだが、結果として『さじ加減』の引き立て役になった。このへんは、ネタ選びの「さじ加減」が難しい^^
 このネタについては「四神旗」や「四神剣」のことを含め以前に書いたことがある。ご興味のある方はご覧のほどを。2009年5月13日のブログ

 さぁ、終演後はSさんYさんとレギュラー三名でお約束の「居残り会」。ハツにガツにカシラ、ビールに酒に、ホッピーと思い思いの酒とつまみ、もちろん落語の話が最良の肴。会話の流れの中で、「あのネタの題は何だったっけ」と誰かが言うと、筋書を全員分かっているのに、なかなか演題の名が出てこない。そろそろ皆、脳細胞の数があやしい^^
 ようやく題名を思い出して、「あぁ、これで今夜も眠れる」などと言いながら、落語の話題は尽きない。あっと言う間に時間は過ぎた。帰宅は最終電車となり、日付変更線は電車で寝ている間に超えていた。
by kogotokoubei | 2013-03-06 07:06 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 先週金曜の三遊亭萬窓の独演会に続き、池袋演芸場の上席、寿輔の主任の二日目に参上。寿輔がトリの池袋に、なぜか心が動いた。それにしても、会場はさびしかった。開演時は、ようやく“ツ離れ”ぎりぎり。閉演時でも五十人ほどだったように思う。

 しかし、結論から言うと、あの寿輔の名演を聴いた私を含む客は幸せだった。

 演者とネタと持ち時間、そして感想を記す。

開口一番 古今亭今いち『旅行日記』 (16分)*12:16~
 もちろん、初。当代今輔の弟子らしい。これで、芸術協会で「古今亭」を名乗る噺家が(今のところ)三人になったということだ。初代林家正楽が五代目古今亭今輔のために作った作品で、落語協会では喜多八が演じるのでご存知の方もいらっしゃるだろう。旅人二人が鄙びた旅館に泊まっての逸話。ネタ選びだけは褒めてもいいだろうが、あれだけ噛みまくっては眠りも妨げる。名前の通り“今いち”である。精進してもらおう。

笑福亭和光『見世物小屋』 (22分)
 初である。本来は小痴楽だが、昼と夜で出番が替わった。鶴光の弟子。東京落語では『蝦蟇の油』のマクラで語られるような“見世物小屋”(上方では“もぎどり”)のネタ。う~ん、どう言えばいいのだろうか、着物のセンスや着こなしを含め、私には合わない。ゴメンナサイ。数年後に見直させてもらいましょう。

北見翼 奇術 (14分)
 いつものように「般若」の面で登場。いわゆる昔ながらの「手妻」の伝統を継承する若手。今日は、少し細かなミスが目立ったなぁ。

古今亭今輔『札-1グランプリ』 (14分)
 寿輔の弟子が、寿輔の大師匠の名を継いだ。この人の新作は好きだ。一時、百栄、兼好との三人で「百兼今」という会があったのだが、その時からこの人の高座は光っていた。
2009年7月3日のブログ

 財務省が、次の紙幣(お札)に印刷する有名人を決めるためにオーディションをする、という内容。いわゆる“歴女”に任せたら一万円は直江兼続、五千円は真田幸村、千円は伊達政宗になり、ドラマで演じたイケメン俳優を起用しろ、ということになるから、オーディションを行おうということになる。さて一人目が太宰治、二人目は坂本龍馬、そして三番は織田信長。ということで、どうなるかという結果は伏せるが、ところどころにこの人ならではのウィットが効いて楽しい高座だった。

桂小文治『手紙無筆』 (13分)
 十一代目文治の兄弟子。地味だが、私はこの人の端正な高座が好きだ。寄席にはこういう人が大事。

桧山うめ吉 俗曲 (13分)
 端唄「芝で生まれて」の後「品川甚句」「雪のだるま」そして小唄「頻く会うのは」を披露して、踊りは「京の四季」から「春」と「夏」。しっかり、高座に艶を加えてくれた。

三遊亭円遊『?』 (コメントをいただき『にせ金』と判明)(20分)
 生の高座は初だが、丸い目がねこの人の姿は「底抜け脱線ゲーム」で馴染み深い。(古い^^)兄弟子の小円遊の逸話から、本編へ。帰宅してから調べても、ネタが分からない・・・・・・。
 隠居の旦那が、旦那衆との一興で「珍品」を持って集まろうとなり、旦那は出入りの骨董品屋のだるま屋の金兵衛に「お前の金の玉袋が大きいと聞いた。どうだ、十両で譲れ」という、言わば下ネタ。

三遊亭遊三『時そば』 (20分)
仲入り前は、橘ノ円に替わって遊三。マクラで何を話すか探っていたような気がしたが、このネタ。真似をして失敗する男が、麺を見て「太いねぇ、マカロニじゃねぇのか」という、新しいようで古いクスグリが、妙に可笑しかった。

新山真理 漫談 (15分)
 仲入り後、東京丸・京平の代演は、この人。以前は絵理・真理で漫才をやっていたのをテレビで観たなぁ。座布団に座っての漫談。三味線を持たせれば、芸協の小円歌、という感じの高齢者の集う楽屋のネタ中心。

三笑亭夢花『長屋の花見』 (19分)
 三遊亭右左喜の代演は、結果として師匠夢丸の前座役となった総領弟子のこの人。時節柄、そろそろというネタを楽しく聴かせてくれた。

三笑亭夢丸『短命』 (24分)
 テレビで馴染みのある人だが、久し振りだ。生の高座は初である。マクラで本人が語るように、団十郎より本人の方が年上でガンの手術をして、僥倖で高座に出ることができる、とのこと。しかし、手術の影響もあり、声が十分に出ない。少し空気が漏れる、そんな感じなのだが、高座にかける意気込みは十分に伝わった。
 弟子の夢花が主任を務める寄席でスケに出たい、という言葉、楽屋で夢花はどんな思いで聴いていただろうか。

鏡味健二郎 大神楽 (8分)
 最初から、何とも危ない感じがあったが、やはり、傘の芸で落した・・・・・・。昭和10年生まれの78歳。この人が五代目古今亭今輔の次男である、ということを知っている人は少なかろう。

古今亭寿輔『ラーメン屋』 (33分)*~16:18
 この日は、開口一番から膝代わりまで含めて五代目古今亭今輔に因んだ日だったように思うが、そのトリで、このネタだった。

 寿輔の大師匠が五代目今輔である。系図風に描くと、こうなる

 五代目古今亭今輔<-柳家金語楼(筆名有崎勉。今輔に多くの新作を提供)
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 三代目三遊亭円右 *あの「エメロンシャンプー」のCMのおじさんですよ!
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 四代目古今亭寿輔
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 六代目古今亭今輔

 開口一番の今いちから、五代目今輔の『旅行日記』であった。

 そして、いつものテトロン100%の黄色い高座着で登場した寿輔が、一列目の常連さん(女性二人)と掛け合いながら、「今日は、笑いの少ないネタでいきます」とふって、大師匠から伝わる十八番へ。

 柳家金語楼が書きおろし、古今亭今輔によって演じられた戦後の新作落語である。結論から言うと、寿輔のこの高座に出会えた私を含む五十人ほどの池袋の客は、幸せだった。

 (1)老夫婦のラーメン屋台に、深夜一時頃、一人の若者がやって来た。
 (2)昼メシを食べそびれたらしく、勧められるままに三杯のラーメンをたいらげる。
 (3)食べ終わった若者(後で“のぼる”と名が判明)が老夫婦に、「実は一文なしです。
    交番に突き出してください。そうすれば、明日のメシにありつけます。」と告白。
 (4)ラーメン屋の主人、「分かった。その前に屋台を家に引き上げる。」
   ということで、女房も主人が引く屋台を押しながら「重い、重い」と言う
   姿に、「私が引きましょう」と手を貸す、のぼる。結果として、若者に
   屋台を家まで引いてもらった。
 (5)「せっかくだから、お茶でも」と誘われた、のぼる。「私は交番に」と
   言うのを、「交番とコンビニは一晩中開いている」は、少し今風のクスグリ
   で結構。女房が「どんなこともタダではお願いできませんね。屋台を引いて
   いただいた代金でラーメン代は差し引きなし、でしょう」と言う。
 (6)主人は若者と酒を飲み始める。少しづつお互いの身の上話が進む。
   小さい時に孤児になり、なかなか真っ当な仕事につけなかった、のぼる。
   子宝に恵まれない老夫婦。少しづつ、老夫婦にとって、のぼるが自分の
   子供だったら、という思いが募る。
 (7)主人が「今日は遅いから、泊まっていきなさい」と言うが、「見ず知らず
   のこんな私を泊めたら、強盗するかもしれませんよ」と答える。しかし、
   「おい、今日の売上げを箪笥の上に置いておきなさい」と返すラーメン屋の
   主人。
 (8)酒のせいもあり、主人が「子供に恵まれず、一度も『お父っあん』と
   言われたことが ない。どうか、『お父っあん』と言ってもらえないか」と
   言うと、女房が、「それだって、タダではダメですよ」と言い、千円、
   二千円と老夫婦が順に、のぼるとの“親子ごっこ”の掛け合いが続く。
 (9)のぼる、「お金なんかいりません」と目の前の金を返す。
   “親子ごっこ”が、本物の親子の情愛の通う会話となっての、サゲ。

 とにかく、寿輔の演じるラーメン屋の老夫婦、そしてのぼるとの会話が秀逸。最初の“親子ごっこ”“家族ごっこ”の会話が、子供のいない老夫婦と孤児だったのぼるとの間に、次第に「こんな子供がいたら」「こんな両親がいたなら」と思いが深まっていき、新たな親子の誕生場面を描く、素晴らしい高座だった。定席では珍しいが、今年のマイベスト十席の候補としたい。


 開口一番の今いちは、寿輔の孫弟子にあたる。噛みまくっていたが、それはしょうがないだろう。、ネタが五代目今輔の十八番の一つ『旅行日記』だったから、途中の当代今輔の新作を経て、トリの『ラーメン屋』まで芸協らしい新作でつながった席だった。

 客は少なかったが、新作の芸協の力を感じた。実力者である寿輔が主任の席、もっと人が入っていいように思うが、人は見た目で判断するのかなぁ。

 さて、実は昨日のうちに書くつもりだったのだが、WBCの日本対ブラジルを観ていて、つい翌日に延びてしまい、今は日本と中国の対戦中。

 もし、落語協会と芸術協会で「WRC」(ワールド・ラクゴ・クラシック)で戦ったら、果たしてどんな展開になるだろうか。私は、昨日の池袋を聴いて、結構いい勝負になるように思った。寿輔と戦える噺家が落語協会(新山真理に言わせると“ラッキョウ”)にいるように思えない。十番勝負とするなら、寿輔が不戦勝で一つは白星を稼げるだろう^^
by kogotokoubei | 2013-03-03 17:56 | 寄席・落語会 | Comments(14)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛