噺の話

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カテゴリ:寄席・落語会( 453 )

 落語禁断症状(?)から、なんとか都合がつきそうな5日の夜の三三か、6日の夜のこの会、どちらかの横浜にぎわい座と思い、5日の午前中にぎわい座に電話した。
 前売り完売の三三の会は当日券も含めすでに売り切れ。

 6日は、かろうじて二階席は空いているということで、高座に近い席を予約。

 にぎわい座の二階席は、2011年に三三の『嶋鵆沖白浪』通しの八月の会以来だ。
2011年8月5日のブログ
 にぎわい座の二階席、それほど悪い印象がない。
 高座近くの席なら、表情もよく分かるし、珍しい鳥瞰のアングルで楽しめる。

 百九十三回目になるという「名作落語の夕べ」だが、初めて。

 会場は、実際に一階はほぼ満席で、二階席も半分位は埋まっていたなぁ。

 この日の会は、同じネタでの上方版の会を11月に開催するようで、その江戸版。

 出演順に感想など。

布目さんの前口上(9分 *18:00~)
 にぎわい座のチーフ・プロデューサーである布目英一さんが、いつものように携帯などの注意に続き、この会に関する説明をした。
 東西の同じネタの違い、ということで『愛宕山』や『時そば』『時うどん』などを素材に丁寧な説明。
 また、同じネタでも噺家によって違いが出るし、同じ噺家でも、ネタは生きているので日によって変わることもある、と前夜の三三の『柳田格之進』について、三三が興味深い改作をしたことを付け加えてくれた。へぇー、そんな格之進は、聴いたことがないなぁ。 布目さん、いつもの開演前の注意と同じ、舞台上座隅に立ったままの口上だったが、ぜひ今後は中央に立ってお願いしたい^^

春風亭昇りん『たらちね』 (10分)
 開口一番は、初めての昇太の弟子。いい雰囲気は持っているが、どうも言葉遣いが気になる。八五郎が隣りの婆さんに「てめい」と言ったり、初対面の嫁に「おめぇの名前は」というのは、いただけない。おめぇさん、だろう。

立川志の八『だくだく』 (25分)
 ここからはネタ出しされている。
 志の輔の二番弟子、名前は知っていたが、初めて聴く。
 結論から書くと、良い発見だった。
 スマホに関わるマクラも、結構楽しく聴けた。
 絵の先生が床の間と掛け軸を描く様子はリアルな所作で見せていたが、雑にならず、このスピード感は若々しくて好感が持てた。ラジオは「マホガニー」という科白も、なかなか効いていた。なかなか最近は聞かないね、マホガニー製なんて言葉。
 眼の悪い泥棒が明かすことになるが、壁に描かれた中に「よそう、夢になるといけねぇ」や「半鐘はおよしよ、オジャンになるから」なんて科白が描かれているというのも、可笑しい。
 男が起きてから泥棒との「つもり」の戦いも楽しく演じていた。
 この人、地元横浜出身で、にぎわい座での独演会もあるようだ。
 今後、もっと聴きたくさせる高座だった。

三笑亭夢太朗『時そば』 (32分)
 寄席ではよく聴くが、長講は初めて。
 寄席のある浅草や新宿のことに関するマクラで10分ほどで本編へ。
 最初の男が蕎麦を食べる場面が長々と続き、(そんなに蕎麦が入っているのか?)と疑問を感じたところで、蕎麦屋に「お客様、そんなに蕎麦入っていましたか?」と聞かせると、「今日は30分やんなきゃならねぇんだ」の答えで、満席の会場は爆笑。
 蕎麦屋の屋号が、以前は「築地」で今は「豊洲」、というのは、ニュース性があって良かったと思う。
 二人目の男、あちこち欠けたどんぶりを回しているのを見て、蕎麦屋が「お客様、お茶の心得がおありで」なんて科白も、可笑しい。
 寄席の短いネタでは分からなかった、この人の持ち味を感じることのできた好高座。

 ここで仲入り。

三遊亭兼好『巌流島』 (29分)
 マクラがネタとの関連性もあり、かつ楽しかった。
 いろんな乗り物があるが、海外なら飛行機でしょう、仕事で関西などへ行くなどは新幹線となるでしょう・・・警察に追われたら、自転車ですね、で爆笑。時事性のあるネタは、やはり日頃からネタになりそうな事件などに注意しているのだろうなぁ。
 花見の屋形船での営業や日本丸など遠洋航路での仕事の話から江戸の渡しのことにつなげ、「さあ事だ、馬の小便渡し舟」と、10分余りのマクラで会場を温めてから本編へ。
 船上で職人風の客が、島に取り残された若侍をからかう様子などは、この人の持ち味が生きる。また、殺されそうになった屑屋が何を聞かれても「くず~ぃ」と答えるのが、可笑しい。
 この人ならではのメリハリの利いた語り口や所作が、力量の高さを物語る。
 加えて、若侍の「黒木綿の五つ所紋、段袋の袴ぁはいて、長い朱鞘の大小をさして」いる姿や、「麻の上下に黒縮緬の羽織、供に槍を持たせた」高齢の侍の形容、当り前のようでいて、さらっと語るのは結構難しいのだ。そういう科白がサマになってきたなぁ、と思いながら聴いていた。
 得意なブラックな味わいを抑えてはいたが、関連性のあるマクラと本編を含め、この人ならではの高座には、一種の貫禄まで出ていたような気がした。今年のマイベスト十席候補としたい。

桃月庵白酒『宿屋の富』 (28分 *~20:26)
 短いマクラだったが、にぎわい座のある野毛の街の変貌を語る中で、「昔は、人生を捨てる場所」などの表現が、この人らしく笑った。桜木町の駅を右に行くか左に行くかで大きな違いがあり、以前はにぎわい座に来る時は、電車で関内まで行ってから歩いて戻った、というのはネタだろうが、可笑しかった。
 たしかに白酒が言うように、最近は、野毛近辺もずいぶん洒落たお店が増えたなぁ。
 それぞれの街には、それぞれの役割があって、と馬喰町につなぐ。実にマクラから本編へ自然な流れ。
 この噺の聞かせどころは、冒頭の宿に泊まりに来た男の作り話とそれを真に受ける宿の主人との会話。そして、二番富の五百両が当たるはずの若い男の、妄想ばなしだろう。
 もう少しこの人ならではの脚色をするかと思ったが、ほぼ古今亭の型と言えるだろう。
 一文なしの男の作り話は、使用人は八百人、身の回りの世話だけでも五十人。泥棒が入ったが十五、六人でも持っていった千両箱は八十ぐらい、というのは志ん生版と同じ。
 二番富の男の妄想も、ほぼ古今亭の内容。膳に、刺身、天ぷら、鰻というのは、人によって違うが、基本の展開は踏襲している。
 一番富も子の千三百六十五番。
 この人らしさが発揮されたのは、一文なしも、宿屋の主人も、一番富と分かって宿に帰った時の、言葉にならないあの科白。『つる』や『短命』のご隠居でも発揮される例の、アレだだから、笑わずにはいられない。
 あえていじらなくても、これだけ楽しい噺なんです、とでも主張するような高座。
 「名作落語の夕べ」となると、あまり改作はできないのかもしれないが、十分にご通家が多いと思しき会場を沸かせた。こちらも、今年のマイベスト十席候補としたい。


 久しぶりの生の落語は、実に楽しかった。

 志の八は初めてだったが、今後もぜひ聴きたくなった。
 寄席では分からない夢太朗の持ち味も発見できた。

 そして、兼好、白酒の堂々とした「名作」の高座に堪能した。

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by kogotokoubei | 2018-10-08 18:21 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 同期会の旅行の記事は一休みして、一昨日の落語会のことを書きたい。

 結構何かとスケジュールが立て込んでいる時期ではあるのだが、“幻の噺家”小のぶの名に魅かれ、初めて行く赤坂会館へ。50席限定、といううたい文句にも惹かれたかな。

 柳家小のぶのことは、“幻の噺家”という形容をしている堀井憲一郎さんの本、そして江國滋さんの『落語美学』を元に、以前書いたことがある。
2013年7月11日のブログ

 とはいえ、小のぶ、最近は寄席への出演も増えてきて、幻とは言えなくなってきたかもしれない。
 私にとっても、昨年8月に浅草見番で、マイベスト十席に選んだ『へっつい幽霊』を聴いているので決して幻ではないが、独演会には行ったことがない。
 お江戸日本橋亭では恒例の独演会を開催しているようだが、これまで縁がなかった。

 久しぶりに行く、オフィス・エムズさん主催の落語会でもあった。
 この会場での独演会は、赤坂倶楽部、と名づけているようだ。

 会場の赤坂會館のホームページには、「日本伝統芸能のためのお稽古場」と形容されている。少し、引用する。
赤坂會館のHP

赤坂會館は赤坂界隈の花柳界・芸者衆のお稽古場の名残で、都内有数の広さ(50畳)・松の一枚板を使用した贅沢な床・どのような演目にも最適な音響設備を持つ、計算され尽くした空間設計のお稽古場をはじめ、各種ご用途に応じた和の空間を提供しております。
 日本伝統芸能の継承と益々の洗練のために、芸術空間として、又、和の心に触れる催しなどに、広く皆様にご活用いただければと存じます。

 そういう場所。

 オフィス・エムズさん(加藤さん)の会では浅草見番の会も多いが、場所を赤坂に替え、少し狭くなったバージョン、と思えば良さそうだ。


 都内で野暮用を済ませで開演の二十分前ほどに会場へ。

 会館の六階に、その“都内有数の広さ”と“松の一枚板を使用した床”の空間があった。

 靴を脱いで廊下を進むと、いつものように加藤さんがモギリをしていた。

 会場に入ると、前の方には床に座布団が三列に間をたっぷり空けて各列十ほど並ぶ。
 その後ろにパイプ椅子が二列。

 すでに三分の二位はお客さんがいらっしゃっている。

 やや同期会の旅行での疲れもあり、パイプ椅子を選んだ。

 三十数名のお客さんだけの、なんとも不思議な空間だった。


 本音のところ、この会の小のぶの高座について、どこまで書こうか迷っていた。
 決して、褒められないのである。
 終演後に小のぶは一人一人のお客さんに「申し訳ございません」「次は、しっかりやります」などと頭を下げていたのである。

 迷った挙句、小言を含め書くことにする。
 このブログが落語会や寄席の備忘録として始まったのであり、管理人の私の名が、小言幸兵衛なのだから。

 では、出演順に感想や、小言を。

柳亭市坊『たらちね』 (13分 *18:59~)
 主催者が師匠柳亭市馬のマネジメントをしているので、この日は市馬の弟子が二人登場。
 この人は、昨年7月、柳家小満んの会の開口一番の途中からを、関内ホール・小ホールのロビーでおにぎりを食べながら、モニターで見て以来。
 だから、初と言ってよいだろう。
 やや強面でもあるせいか、家主が少し怖い。
 そして、この日のハプニングの伏線ともいえるのだが、八五郎の家に嫁入りした清の例の口上で、「わが母三十三歳の折、丹頂の夢をみてはらめるが~」を飛ばした。
 八五郎が清が書いた紙を読む場面で復活(?)させたが、どうにも落ち着かない高座。
 これは、次の市童にいじられるネタとなる。
 
柳亭市童『幇間腹』 (16分)
 久しぶりだ。
 昨年6月、久しぶりに行くことができた「ざま昼席落語会」の今松との二人会以来。
2017年6月11日のブログ
 ざまで、二ツ目が真打と二人会をするのは異例のことだった。
 冒頭、「小のぶ師匠の会にお越しになるお客さんは、もちろんご通家で、市坊が台詞を飛ばしたのはお気づきでしょう」で客席から笑い。
 とはいえ、ご本人も途中で、一ハが若旦那に向かって「おまえさん」と言い掛けて「若旦那」と言い直し、少しリズムが悪くなったなぁ。
 幇間一八の飄々とした軽さは良かった。
 この噺、私が聴いた中では菊之丞が秀逸だと思うが、もしかすると市童の十八番になるかもしれない。
 市馬一門では、もっとも将来を期待している人。
 
柳家小のぶ『金明竹』 (39分)
 なぜ、この噺でこんな時間なのか・・・・・・。
 小のぶは、この噺の背景を丁寧にマクラで説明した。
 その試みは、悪くない。
 前半は、中橋に住んでいた「医者で噺家で幇間」だった石井宗淑が創作した内容、などとこの噺のマクラで語る人は、そう多くはいない。
 噺に登場する道具や人物のことも詳しく紹介。
 しかし、途中で内容を忘れがちで、言いよどみが多く、客を心配させる。
 また、台詞があちこちで抜けた。
 後半の聴かせどころは、もちろんあの不思議な関西弁を話す男の言い立てだが、二回目に「たがやさんやなくて埋もれ木」の部分がとんだ。
 女将さんが出てきて三回目には、なんとか全部入ったが、四回目に「沢庵木庵隠元禅師~」が、とんだ。
 なんとかサゲまではたどり着いたが、小のぶの下げた頭は、お詫びの姿であった。
 せっかく道具七品などの説明をしていたものの、この高座は、いただけない。
 
 ちなみに、私がずいぶん前にテニス仲間の前でこの噺を披露した際、後で道具のことなどの説明を書いた紙を仲間に渡した。

 せっかくなので(?)、ご紹介。
 いろんな本やらサイトから拾った内容だが、ネタ元は忘れてしまった。

 中橋の加賀屋佐吉から使いのものが来て、早口の関西弁で、それに符丁を混えてまくし立てるので、与太郎さんも奥さんもさっぱりわからない。その口上にでてくる、道具についての「うんちく」です。
 
■祐乗(ゆうじょう):後藤祐乗(1440~1512)。室町中期の金工。奥様が言っていた「遊女」でない事がこれで分かります。

■光乗(こうじょう):後藤光乗。名は小一郎、諱(いみな)光家、祐伯。京都の後藤家四代目の金工家として名高い。

■宗乗(そうじょう):後藤宗乗。名は二郎、諱(いみな)を祐宗、光武。通称は四郎兵衛。初代祐乗の子で後藤家二代目を継ぎ、晩年は法眼に叙せられ京都より近江国坂本に閑居した。

■三所物(みところもの):刀剣の付属品である目貫(めぬき)・笄(こうがい)・小柄(こづか)の3種をいう。江戸時代、刀装中の主要な金具として、後藤祐乗らのものが名高い。

■備前長船(びぜんおさふね):岡山県(備前国)邑久(おく)郡にある町名。

■則光(のりみつ):備前長船派の刀工の一人(元享の頃活躍。1321年ごろ)。

■四分一(しぶいち)ごしらえ:元来は銅3に銀1を混ぜた日本特有の合金。

■横谷宗#(王へん+民)(よこやそうみん):(1670~1733)江戸中期の彫金師。その家は代々彫金を業とし、小柄などの三所物を作り、写実的意匠に長じ、江戸町彫(まちぼり)の宗となる。
 
■小柄付きの脇差:脇差しに小柄が納められたもの。

■柄前(つかまえ):刀の柄。また、その体裁。柄頭から鍔(つば)までの持つところ。

■古たがやと埋れ木(うもれぎ)
・鉄刀木(たがやさん)=マメ科の高木。マレー・インド東部などに自生。高さ10~15m。葉は白色を帯び、やや革質。心材は黒と赤の紋様があり、堅牢美麗で風雨に強く、銘木として建築・器具に利用。
・埋れ木(うもれぎ);久しく埋もれていて半ば炭化した木。亜炭の一種で、宮城県広瀬川沿岸のものが著名。また、埋れ木で細工した器具や装飾品。仙台の名産。噺の柄前に使われている材質の木は古くなって風合いの出た”たがやさん”ではなく、”埋れ木”だという。決して、仲買の弥一さんが、気が違ったわけではありません。

■のんこの茶碗:のんこう=京都の楽焼本家の三代、道入(どうにゅう)の俗称。陶工。京都楽(らく)家の三代目。常慶の長男。通称吉兵衛(1599~1656)、のち吉左衛門と改め、剃髪して道入といい、俗に「のんこう」と称した。

■黄檗山金明竹(おうばくさん・きんめいちく)
・黄檗山=中国福建省福清県南西の山。789年正幹の開いた禅の道場(建福寺、のち万福寺)があり、宋代に最も栄えた。その万福寺の山号。
・金明竹;マダケの変種。マダケ属に入り、竹稈は黄色で芽溝部は規則正しく緑色になり、葉には多少白条があります。昔から珍重され、主に庭園竹として鑑賞された。もとは中国の竹で、宇治の黄檗山万福寺の庭園の金明竹が名高い。

■ずんど(寸胴)の花活(はないけ):上から下まで同じように太くて、くびれがない花活け。

■古池や蛙とびこむ水の音と申します・・・ありゃ、風羅坊正筆(ふうらぼうしょうひつ)の掛け物;風羅坊=松尾芭蕉の別名。正筆=その人が本当に書いた筆跡。・・・で、芭蕉肉筆の掛軸。

■沢庵・木庵・隠元禅師(たくあん・もくあん・いんげんぜんじ)
・沢庵(たくあん):(1573~1645)江戸初期の臨済宗の僧。但馬の人。諸大名の招請を断り、大徳寺や堺の南宗寺等に歴住。寛永6年(1629)紫衣事件で幕府と抗争して出羽に配流され、32年赦されてのち帰洛。徳川家光の帰依を受けて品川に東海寺を開く。書画・俳諧・茶に通じ、その書は茶道で珍重。沢庵漬は漬物の一種。干した大根を糠と食塩とで漬けて重石でおしたもの。沢庵和尚が初めて作ったとも。
・木庵(もくあん): (1611~1684)中国(明)泉州晋江の人で、隠元禅師に従って来日し帰化。
・隠元(いんげん):(1592~1673)日本黄檗(おおばく)宗の開祖。明の福建省福清の人。名は隆(りゅうき)。承応3年(1654)日本に渡来。山城国宇治に黄檗山万福寺を創建。語録・詩偈集など開版されたもの多く、その書は茶席の掛軸として珍重される。隠元豆は隠元が明(中国)からもたらしたものという。

■張りまぜの小屏風(こびょうぶ):小屏風に上記の禅師達の書き物を混ぜて張り込んだもの。茶席では珍重された。

どの品物も、超一級品で今に残っていたら、文化財ものばかりです。

 こんなものまで作っていたのだなぁ、と懐かしさがこみあがる^^

 仲入りをはさんで、二席目。

柳家小のぶ『青菜』 (38分 *~20:59)
 登場するなり、一席目の詫びがあった。
 「会場が暑いせいか、眠くて眠くて」で客席は爆笑。
 マクラで隠語のことをふって本編に入ったが、まだ眠気はとれていないようだった^^
 一席目は抜けが多かったが、この噺では同じ台詞の繰り返しが目立った。
 また、言い間違えも少ないとは言えなかった。
 八五郎が長屋に帰ってから、半公にオウム返しで語る内容も順番が逆になったり、とにかく、客を心配させる高座。
 八五郎が長屋へ帰る道すがらで女房との動物園での見合いを振り返る件などはなかなか楽しい内容なので、実にもったいない。
 
 終演後のこと。
 「申し訳ございません」「次は、しっかりやります」「次は、まじめにやります」
 と独演会の主がお客さんを見送る会も、そうは経験できないだろう。

 これまで経験した落語会で、もっともハラハラした会であった。

 小のぶは昭和12(1937)年10月3日生まれ。
 来月、満81歳になるなぁ。
 志ん朝とは一つ上。

 高座でその姿を見ることができたことだけでも、良かったと思うべきなのかもしれない。
 しかし、小三治とは二歳しか違わない。

 昨年、浅草見番の『へっつい幽霊』は、素晴らしかったじゃないか。
2017年8月5日のブログ


 まだまだ、頑張ってもらいたい。

p.s.
 私が以前作った『金明竹』の道具の説明書の内容、調べてみると、よくお世話になる「落語の舞台を歩く」から引用したようです。
「落語の舞台を歩く」の該当ページ
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by kogotokoubei | 2018-09-15 10:56 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 久しぶりに、八月中席の、鈴本の特別興行へ。
 居残り会のお仲間I女史からのお誘いで、五人が揃った。
 いただいたプログラムでは第29回とのこと。来年30回になるんだねぇ。

 四年前に楽日に来て以来。
2014年8月21日のブログ
 
 あの日は、さん喬『水屋の富』、権ちゃんがトリで『唐茄子屋政談』、三本締めを含め50分だった。
 居残り会を気にしながら九時半近くでお開きだった。

 さて、今年はどうなるものやら。

 特別興行なので、前座の開口一番は、ない。
 出演順に感想など。


柳家甚語楼『浮世根問』 (14分 *17:20~)
 トップバッターは、十日間日替わりで、この日は甚語楼。
 休養万全なのだろう、実に元気いっぱいの楽しい高座。
 八五郎がご隠居に「極楽はどこにある」としつこく聞くのに対し、「いいだろ、どこでも、どうせお前は行かないんだから」でご通家が多いと察する客席も爆笑。
 二人の会話のリズム、間、実に小気味良い。
 寄席の逸品賞候補として、をつけておく。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (9分)
 三人で登場。傘->五階茶碗->土瓶->花笠とバチを、この時間内でしっかり。
 とにかく、元気な寄席の吉右衛門を見ることができれば、それで嬉しい。

五街道雲助『強情灸』 (15分)
 マクラの湯屋で熱い湯を我慢する場面が、秀逸。
 後から入った男が、「こうやって股ぐらに湯をかけて洗ってから入るもんだ」と桶で湯をかけた後の苦悶の表情の後、「ゆで卵が二個できるとこだった」は、なんとも可笑しい。その男が湯船に入った後にもう一人に話しかけると、なんとも苦しそうな表情で、「湯が、ぬるい時には、しゃばるな!」でも笑い。
「夜中の小便のような、目のさめるようないい女」、であるとか、「ただモグサを乗っけておくだけか。石燈籠の頭じゃねぇやい」なんて科白も、この人にかかると実に味がある。

春風亭一之輔『新聞記事』 (15分)
 やはり、一之輔は凄い、と居残り会でも一致した高座。
 このネタで、あれほど笑ったのは初めてだ。
 導入部は、八五郎とご隠居の根問いモノに近く、甚語楼とツクなぁ、なんて思っていたが、そんなことを度外視させる大爆笑高座。
 鸚鵡返しによる言い間違えが、この噺の魅力だが、この人にかかると現代らしい味付けで、それがまた可笑しい。
 「天麩羅屋だけに、あげられた」の洒落がなかなかわからない男に、「天麩羅を揚げる、犯人を挙げる・・・ダブル・ミーニング」などの英語まで交えるのも、この人らしさ。
 ビルマの竪琴の水島は出るわ、佐野元春も出演(?)するわの高座。
 実は、八五郎が話していた相手が、当の天麩羅屋の竹さんだった、というサゲも洒落ている。
 この高座も、寄席の逸品賞候補だなぁ。

柳亭市馬『山号寺号』 (14分)
 後半は出演者を織り込んだ噺に仕立てた。無難な一席。

ホンキートンク 漫才 (13分)
 楽しい掛け合いの途中で爆笑となり、後半の科白が聞こえにくいほど。
 若手では、もっともノッてる二人かもしれない。

柳家喬太郎『宮戸川』 (14分)
 途中で咳き込むのは、やや六日目で疲れが出たか。
 あえて現代風のクスグリなどを排した内容は、好感が持てた。
 こういう興行でのネタ選びの難しさも感じさせた高座。
 あまり受けても、師匠には申し訳ない、という心理も働くだろうしね。

露の新治『鹿政談』 (19分)
 仲入りは、ここ数年恒例のこの人。
 マクラで奈良名物に「奈良判定」を加えるあたりは、この人ならでは。
 豆腐屋六兵衛は、六十三歳。あら、私と同じではないか^^
 上方で名奉行の名が高かった「松野河内守」の逸話を基にした噺とされるが、奉行の名は根岸備前守で演じる人が多い。しかし、新治はその松野河内守としていた。
 途中で若干の言い直しなどがあったのは残念。
 やはり六日目ということと、暑さによってお疲れだったからだろうか。
 全体的には悪くないが、この人への期待感が高いので、これまで聴いた中では、上出来とは言いにくい。

柳家小菊 粋曲 (9分)
 食いつきがこの人、というのも特別興行ならでは。
 「金来節」から朝顔の都々逸、なすかぼで締めた。

柳家さん喬『五人廻し』 (33分)
 アメリカ人が前座の研究論文を書くためにやって来たため、楽屋に背の高い男がいる、とのこと。かつて松葉屋で開かれていた落語会の顔付けが、文楽、志ん生、圓生、そして志ん朝、前座でさん喬とは、なんとも豪華だったなぁ。
 マクラ約10分で本編へ。
 一人目は「とにかく、よしゃーよかった」と後悔し続ける男。
 二人目が『酢豆腐』の若旦那のような、キザ男。「でげしょ!」連発^^
 お次は、「おらぁ、イドっ子だ」の田舎者。
 四人目は、病気の妻が給料袋の封を切らず「私の代わりに」と吉原へ送り出してくれた、という涙、涙(?)の役人風。
 喜瀬川が付いていたのはお大尽。
 それぞれ、しっかりと演じ分けていたし、楽しかった。
 なかでも、二人目の「でげしょ!」が秀逸。
 後からメモを見て、少し驚いた。
 本編時間は二十分余りだったことを考えると、急ぐこともなく、五人をしっかり廻した高座は、やはり凄い。今年のマイベスト十席候補とする。
 権ちゃんの高座が、意外な展開でやや楽しめなかったこともあり、この日はさん喬の日だったか。

林家正楽 紙切り (11分)
 ご挨拶代りの①線香花火、②お座敷遊び、③露の新治、④盆踊り、とこの時間で、それも見事に切ってくれた。流石だ。

柳家権太楼『子別れ』 (51分 *~21:21)
 これまでの出演者が、時計のように正確な進行で、予定通り八時半から。
 マクラ、この日の浅草のお客さんのことで、笑った。
 また、正楽の紙切りの途中で、下座さんの三味線の糸が切れて若干パニックだったらしい。う~ん、そういう不吉なことがあったのか・・・・・・。
 爆笑のマクラの後の本編は「えっ、通し!?何時に終わるの?」と時計を見てしまった。
 とはいえ、「上(強飯の女郎買い)」の吉原の店に上る場面から「中(浮名のお勝)」は、ほぼ地でつないで「子は鎹」へ。この時点で八時五十二分。
 この後半が、とにかく饒舌で、泣きがたっぷりなのであった。
 亀と出会った熊も泣く。もちろん、亀も泣く。女房も番頭までも泣く。
 亀のと再会の場面で、「額の傷の件は割愛したか、それもいいだろう」、と思っていたら、順番を入れ替えて加えた。
 最後の鰻屋の場面の主役はお店の番頭。
 「熊のことなんかどうでもいい。亀ちゃんのために、よりを戻してくれ」と別れた女房に番頭が頼み込む。
 居残り会でも、全員が首をひねった泣きの多さと、筋書きの改訂。
 浅草で語り足らなかった分を、こっちで語ったのか^^
 あるいは、権太楼の新たな解釈なのかもしれないが、この噺で登場人物がこれだけ泣くと、聴いている方は、泣けない。
 この噺は、うっすらと涙が浮かんでくる程度で、演じてもらいたかった。

 
 さて、終演後は楽しみだった五人での居残り会。
 私が予約していた店に電話して、少し遅れたことを告げる。
 快く答えてくれたお店の方の声を聞き、初めて行く店に期待したが、まあまあのお店で、皆さんも喜んでもらえたようだ。
 九時半近くからの居残り会は、とにかく話題が満載。この日の高座のことから、奈良判定や日大アメフト部、78歳のボランティア爺さんは偉い、ということやそれに比べて今の政治は、などなど。
 なかでも興味深かったのは、ある事故(事件?)の謎に関し、佐平次さんとM女史から、それぞれ別の本の興味深い内容を紹介していただいたこと。この二冊、読まなきゃなぁ。I女史から志ん五がトリの時の国立のポスターというお土産に、Yさんは大喜び。I女史からは佐平次さんと私にもプレゼントがあり、嬉しい限り。M女史はまた佐平次さんに自分が読んだお奨めの本をお貸ししていたなぁ。二人とも読書量は、半端ない^^
 あっと言う間に十一時の閉店時間となり、もちろん、帰宅は日付変更線を越えたのであった。やはり、この五人の居残り会は楽しいね。

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by kogotokoubei | 2018-08-17 20:47 | 寄席・落語会 | Comments(9)
 昨日は、日曜恒例のテニスが都合により休み。

 ということで、池袋か、こっちの会か迷っていたが、落語協会のサイトで、池袋はお目当ての主任菊志んがお休み。
 ネットで国立の二人会の空席がありそうなのを確認し、電話で予約。
 それにしても、「志ん輔の会」が、ネットでも予約できるようになったとは驚きだ。

 そうそう、昨年も、同じ時期の日曜に雨でテニスが休みになり、行っている会。2015年4月にあった会にも行った。
 この二人会とは縁がありそうだ。
2017年7月31日のブログ
2015年4月30日のブログ

 昨年の会では、志ん輔の『三枚起請』と龍志の『酢豆腐』が良かった。

 この会は、二席ともネタ出しされている。
 龍志が『片棒』『らくだ』、志ん輔は『船徳』『厩火事』。
 
 一時開演だが、少し早めに出かけ半蔵門駅と永田町駅の間にある中華料理店で昼食をとって、十二時少し過ぎに会場へ。一階受付でチケットを入手。
 ネットで九割位が埋まっていたので、席はお任せしていたが、十列目の中央ほどの良い席だった。
 
 いったん出てコンビニでアイスコーヒーを買ってから、演芸場に戻った。

 一階喫煙室に入ると中に主催者の方もお一人いらっしゃって、結構会話が弾んだ。
 詳しい内容は、内緒^^
 
 階段を上がって会場へ。結果として実来場は八割位だったろうか。

 出演順に感想など。

桃月庵ひしもち『転失気』 (14分 *13:00~)
 昨年六月末広亭の『平林』以来。
 あの高座でも感じたが、見た目のひ弱さとは違って語り口はしっかりしている。芸人らしい雰囲気も醸し出しており、なかなか楽しみな人だ。

立川龍志『片棒』 (27分)
 ケチは地獄に落ちて、それも暗闇地獄。しかし、真っ暗なのに平気で歩けるのは、爪に灯をともしているから、なんていう洒落た小咄などのマクラから本編へ。
 三人の息子の誰に家督を譲るか悩む赤螺屋ケチ兵衛、自分が死んだらどんな弔いをするかで決めようとする。
 長男の金は、「世間に笑われないような弔いを」、と大豪華版。通夜は二晩、本葬は本願寺か増上寺、お土産は一流料理屋の料理を本漆の三段の重箱に詰め丹後縮緬の風呂敷で包む。足代として一人に二万ほど包む、合計一人十万ほどかけて五、六千人呼ぼうというバブルな案。ケチ兵衛が胸をおさえ、「出てけ!」と怒鳴るのも頷ける。
 この噺の聞かせどころに次男、銀の場面。江戸っ子龍志の持ち味が生きる。「あっしは、誰もが驚く、色っぽい弔いを出します」と、まずは紅白の幕を家の周囲に張るところから始まる。
 その色っぽい弔い行列の先頭は、頭(かしら)ご一行の木遣り。新橋、葭町、柳橋の芸者連の手古舞が続く。
 山車には算盤を持ったケチ兵衛人形。
 神輿がやって来て、♪テンテンテレツク、♪ワッセワッセ、♪チャンチャカチャンとなんとも賑やか。
 木遣りから神輿までの擬音の聞かせどころは、さすがに客を飽きさせない。
 花火が上がり、銅鑼の音で周囲が静まって弔辞。最後は万歳という弔いだと聞いてケチ兵衛、またも「出てけー!」
 「あいつは私の血じゃない」「婆ぁの血だ」というケチ兵衛の科白がなんとも可笑しい。
 さて最後は、三男の鉄。「仕方がありませんから、弔いは、出します」で、ケチ兵衛は最初がっかりするが、次第に鉄のケチぶりに頷く。「出棺を十時と決めさせていただきます」という鉄の言葉に、「今から時間まで決められると、なんか淋しくなるねぇ」の一言が、客席から静かな笑いをとる。結構、ご高齢のお客さんが多い会場だった。十時と言っておいて都合で変わったと八時に出棺してしまえば、酒も肴も出さなくていい、という鉄のアイデアにケチ兵衛の「えらい!」で、客席から大きな笑い。棺桶は菜漬けの樽、という鉄に、ケチ兵衛が「おまえ、親こうこ、なんて洒落かい」と言うのに対し、鉄が「いえ、臭いものには蓋」で、またまた会場爆笑。
 鉄が「菜漬けの樽を荒縄で巻いて」の言葉に「まるで罪人だね」と言うケチ兵衛だが、鉄のケチぶりに次第に感心していく。そして、サゲ。
 見事に三人の個性を描き分け、なかでも次男の銀が秀逸。
 五月に聴いた横浜にぎわい座での古今亭菊丸のこの噺も見事だったが、龍志も負けてはいない。
2018年5月2日のブログ
 菊丸は実に丁寧に三人の息子を描き、なかでも次男の唄が秀逸だった。その菊丸よりは龍志が描く銀のぞろっぺいな姿も、まさに江戸っ子で悪くない。江戸の風と粋、そんなものを感じさせてくれた高座、今年のマイベスト十席候補とする。

古今亭志ん輔『船徳』 (40分)
 隅田川の花火がこの日に延期になったことから、浅草の行きつけの喫茶店で聞いた花火に関する地元の人たちの会話などのマクラから本編へ。
 最初に書くが、この噺も二席目も、志ん輔の工夫が明確に表われた高座だった。
 冒頭は、船頭になりたいと言う徳と親方の会話から、船頭たちが集まっての勘違い懺悔の場へ。このあたりは、本来の筋書きと大きく変えていないが、なよなよした徳の姿が、とにかく可笑しい。
 さて、四万六千日。客二人を乗せた徳。
 船宿の女将が「なにかあっても、若旦那だけは無事に帰ってきてくださいよ」で、蝙蝠傘の客が「おいおい、何か言ってるよ!?」とおびえる。
 もやいを解いて、なんとか出発したものの竿を流してしまい櫓へ。同じところを三度回って、ようやく少し落ち着く。土手を歩いている紗の羽織のい~い女に見とれていたが、連れの男がいてがっかりする場面などは、好きだ。そのすぐ後に竹屋のおじさんを見かけて声をかける。おじさんが心配そうに「大丈夫か~い」と言われ、傘の男が、またまた不安になる。
 船と土手の高低さが伝わり、高座に奥行が出る。
 煙草の場面がないままに石垣へ。蝙蝠傘を犠牲にして難を逃れたが、傘の客の怒りはおさまらない。この時の徳の“切れ方”は、師匠志ん朝よりは、兄の馬生のそれに近いように感じた。
 そして、煙草の場面が登場。これは、師匠とは順が逆。しかし、違和感はない。「汗が目に入ってしまって」、という場面は割愛。
 しばらく静かになって客が徳を見ると、もう駄目。
 「もう、やだ~」「やだ~」「やだ~、おりて!」
 前半に造形していた、なんとも、ナヨナヨした徳の姿とつながる徳の姿。駄々っ子の徳、なのである。
 サゲは替えていなかった。
 通常の筋書きを入れ替え、また、徳の人物造形にも工夫があった高座。私は、志ん輔落語が出来上がりつつあるような高揚を感じながら聴いていた。今年のマイベスト十席候補としたい。

 ここで、仲入り。

 さて、一服して後半戦へ。開演前に喫煙室で楽しくお話ができた方は、仲入りの営業でお忙しいだろう、さすがにいらっしゃらなかった^^

 さて、後半戦。

古今亭志ん輔『厩火事』 (22分)
 一席目に続き、浅草の喫茶店における出来事のマクラ。ネタと関連性のある笑えるものだったが、その内容は、秘密。
 この噺でも志ん輔の工夫が見受けられた。
 お崎夫婦の喧嘩は、お崎さんが休みで大好きな芋(やつがしら)を茹でていたら、「また、芋か」と旦那が言うことから始まったという設定。夫は刺身好き。
 他にも工夫があって、お崎さんの夫について仲人の旦那が、「あれは、うちの二階に居候していたのを、女房の髪を結いに来たお崎さんが一目惚れして、あんな遊び人はやめなと何度も言ったのを聞かずに一緒になったんだ」と二人の馴れ初めを明らかにした。加えて、「元々、腕のいいやつなんだ、一人でも食っていける、いいよ、別れな別れな」という旦那の科白がある。しかし、何の腕がいいのか、説明がない。大工、左官・・・・・・。聞き逃したのかなぁ。いや、言わなかったはずだなぁ。
 私は、こういうことに「?」が付くと、なかなかその後の噺に集中できなくなるのだ。どうも居心地が悪いまま聴き続けていた。また、麹町のさる殿様が、大事な皿を抱えたまま階段から落ちた女房に向かって「皿は大丈夫か、皿は皿は~」と○○回も皿ばかり心配した、という回数を言う場面で噛んでしまったのも、残念。
 お崎さんの夫が一人で刺身を肴に酒を呑んでいた、という話は割愛。冒頭に、素性を明らかにしているから、不必要とも言えるが、この改作は評価が分かれるところだろう。
 一席目の工夫は、噺の骨格を壊すことなく楽しめた。しかし、こちらの工夫は、まだ改良が必要と感じた。

立川龍志『らくだ』 (44分 *~15:47)
 マクラでは、子供の頃、近所には怖い、おかしなおじさんがいた、と振り返る。
 ベーゴマの台のことを「床」と言うのを初めて知った。実は、北海道で過ごした少年時代、私の近所ではベーゴマは流行っていなかったのだ。もっぱら、ビー玉やパッチ(メンコ)だったなぁ。
 さて、本編は、通し。
 龍志のこの高座でも、気になる言葉不足があったなぁ。
 らくだの兄貴分、丁(の)目の半次が屑屋の久さんに月番のところに行かせた後、「もう一軒行ってこい」と言うのだが、「大家のところへ行って来い」とは言わずに次の科白につなげた。その途中で大家の名は出たのだが、ちょっとリズムが悪くなったのは否めない。
 大家のところでのカンカンノウも、少し短縮バージョンだったかな。もう少し見たかった^^
 八百屋で棺桶代りの名漬けの樽を借りて来るのだが、これは一席目とツク、と私は思う。ツクことを徹底して嫌う志ん輔は、龍志の二席のネタを聞いて、指摘しなかったのだろうか。
 もちろん、良い場面もたくさんあった。久さんが半次に清めの酒を注いでもらい、三杯目から主客逆転する当たりは見事だった。らくだの髪を剃る場面や、落合の火屋に向かう場面なども楽しく、私の席近くの女性陣などは大笑いしていた。
 全体としては、もちろん悪くない高座ではあったが、さて、この人にとってこの噺がニンなのかどうか。
 一席目の、大いに江戸の風と粋を感じた高座の余韻の方が、強く残っていた。


 はねて残暑きびしい中を帰宅。

 台風がそれて、なんとか今月も落語会に来ることができた。

 それにしても今回の台風12号の進路は不思議だ。

 なにも、急カーブしてまでこの前豪雨被害のあった西日本を襲わなくてもいいだろうにねぇ。
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by kogotokoubei | 2018-07-30 12:27 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 仲入りでコンビニで仕入れた助六(風)を食べ さて、夜の部。

 開口一番から、感想など。

柳家寿伴『真田小僧』 (10分 *16:45~)
 昨年一月、まだ関内ホール(小ホール)で開催されていた柳家小満んの会で、ロビーのモニターで『饅頭怖い』の後半を観ていたが、実質的には、初と言って良いだろう。
 なかなか個性的と言えるだろう。金坊が按摩さんの口真似を何度かして、父親は「真似はいいから」なんてやりとりは、少し笑えた。

柳家小はぜ『道灌』 (9分)
 まだ二十代なのだが、顔かたちも口調も、年齢不相応だなぁ^^
 とはいえ、可愛いい小僧さん、という印象もあるし、高座を含め、とにかく味のある噺家さんだ。
 
ダーク広和 奇術 (12分)
 十八番のヒモの芸。いい味だなぁ、いつものことだけど。
 この人の話芸、聴く度に磨かれている印象。

柳家一琴『目薬』 (14分)
 この人のこの噺も、十八番と言えるだろう。
 マクラ、小児科の先生のノリで産婦人科で産婦を診たら、というのは実演(?)を控えたが、演って欲しかった^^
 
柳家禽大夫『風呂敷』 (15分)
 意外にも、初。なんとも評しにくい。個性があるような、ないような・・・・・・。
 小三治門下、いろんな人がいるなぁ。

ホームラン 漫才 (15分)
 アドリブのようで、実に練り上げられた漫才、だと思う。たにしの芸の幅の広さを、相方の勘太郎が、巧妙に引き出す。
 昼の部のロケット団は、若さ、スピードが売り。ホームランのようなベテランは、間の可笑しさが絶妙。どちらも、好きだなぁ。

 ここで、二階席が開いた。

林家鉄平 漫談(「披露宴の司会?」) (13分)
 修業時代、とはいえ、落語の稽古はあまり行わず、結婚披露宴の司会をやっていた、ということでいくつか逸話を披露。あまり面白いとは、言えない。ネタやりましょうよ。

柳家さん八『長短』 (15分)
 寄席でのこの人の十八番の一つ、と言えるだろう。マクラの女房が外してあったさし歯を箸置きにしていた、というのはネタではなく、実話か^^

ペペ桜井 ギター漫談 (10分)
 あえて書くが、声も聴きづらくなってきたし、ギターの音も歯切れが悪くなってきた。しかし、昭和10年生まれ、十月で83歳になる芸人さんが復帰した姿を見ることができるだけで、私は嬉しい。

吉原朝馬『源平盛衰記』 (14分)
 昨年6月の居続けでも聴いているネタだが、あの時と感想は大きく変わらない。
 遊びの出来るネタにしては、それほど笑えない。そうそう、元素記号の覚え方、私のとは、違うなぁ^^

柳家小里ん『二階ぞめき』 (14分)
 この人が、仲入り。それでも、この短時間での高座。とはいえ、蛙の女郎買いのマクラもしっかり入れてこの噺。仕懸けが八橋だから懐かしい、なんてぇ科白、なかなか聴けない。
 毎夜吉原に行く若旦那、番頭が意見をすると、冷やかすのが好きなんだから、家に吉原があるなら出かけない、と言うので、腕のいい大工に二階に吉原らしきものを作らせる、という落語ならではの内容。見せ場、聴かせどころは、この若旦那の一人芝居。
 志ん生や演じながら、全部一人で演んなきゃならないから大変、などの一言でも笑わせる。小里ん、短いながら、好高座。こういう噺、大好きだ。

柳亭こみち『浪曲社長』 (13分)
 夜の部のクイツキはこの人。
 円歌による、なんとも古~いネタを演じてくれた。
 音源では聴いているが、生の高座でこの噺は、作者も含めてこれまで、機会がなかった。
 さすがに、クスグリのいくつかで「若いお客さんには、分からないぞ」なんて自虐的に言いながらも、なかなか楽しい高座。
 今年一月の池袋で『虱茶屋』を聴いているが、この人、いろんな噺に挑戦しているね。

柳家小菊 粋曲 (12分)
 「両国風景」ではなく「上げ潮」で締めたが、珍しいのではなかろうか。
 こみちの後に登場しても、やはり、寄席の彩りだ^^

五街道雲助『粗忽の釘』 (13分)
 上席の池袋と同じネタに遭遇。もちろん、楽しい高座なのだが、出来るものなら別のネタに出会いたかった^^

桂南喬『出来心』途中まで&師匠小南の思い出 (12分)
 膝前は、大好きなこの人。ネタを三分の一位進めたとことで、前座がネタ帳を持って出て来た。ネタがツイたようだ。ということは、私が入場する前になるなぁ。
 開口一番ではないだろうし、二ツ目でもなかろう。きく麿か文蔵の代演の燕路だろうか。
 南喬も、他のネタを急いで考えていたようだが、持ち時間を考え、前座時代の師匠先代桂小南の思い出を語ってくれた。
 真夏の地域落語会がハネたあとに喉が渇いたので、師匠に言われて自動販売機で飲物を買ったのだが・・・という二つの逸話の内容は、秘密。
 こういうハプニングも、寄席の楽しみだねぇ^^
 今年の特別賞候補として、朱色を付けておく。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (12分)
 三人で登場。いつものように、膝代りの役割をしっかり果たす。
 居続けの身としては、流派は違うとはいえ、昼と夜、どちらにも太神楽があるのは、ちょっと残念^^

柳家小三治 マクラ&『小言念仏』 (28分 *~21:00)
 あまり体調が良くない、サッカーのせいで、と切り出す。
 なるほど、観てるんだね。
 ポーランド戦について、「最後は蹴鞠みたいになって」というのは、流石の形容だ^^
 楽屋でもサッカーの話題になっているようだ。いろいろサッカーの話題が続いたが、
 「やめましょう、この話」、というのが二度あっての約20分のマクラの後、約10分の本編へ。
 泥鰌が煮えたぎる鍋の中で腹を出して死んでいると聞いてからの、なんとも言えない微笑が、この噺の要諦かな。
 元気で何より、という高座。


 ほぼ八時間の、居続け。

 初めて聴く噺もあったし、小三治ほか、元気な姿を見るだけでも嬉しかった人も何人かいたなぁ。
 寄席に欠かせない中堅どころも充実し、歌奴や一之輔、こみちなどの元気な高座にも出会えた。

 尻は痛かったが、それだけのことは、あったかな^^

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by kogotokoubei | 2018-07-01 20:15 | 寄席・落語会 | Comments(2)
 W杯ポーランド戦には、いろんな意見があるだろうが、私は素直に喜んでいる。
 西野はコロンビアのリードを知り、向こうの試合が、そのままコロンビアの勝利になることに、賭けた。
 そして、その賭けに勝った。
 もちろん、セネガルが同点に追いつけば、賭けは負け。

 しかし、初戦のコロンビア戦から、サッカーの女神は日本に微笑んでいた。
 女神は裏切らなかった、ということだろう。
 アジア、アフリカから日本のみベスト16という結果は、誇っていい。
 そして、ベルギー戦は、蘇った川島に、まだ女神が微笑むことを祈り、2対2でPK戦の勝利を期待する。

 さて、昨日は一日時間ができたので、西野ジャパン一次リーグ突破の余韻を感じながら、久し振りに末広亭での居続けだった。
 もちろん、夜の部の主任小三治がお目当てだったが、昨年九月下席三代目桂小南襲名披露興行以来の末広亭、時間と空間を、たっぷり楽しみたかった。

 さすがにサッカーのせいで少し遅く起き、連れ合いとわが家のシーズー達を風呂でシャンプー洗いして、朝の陽ざしの中を散歩してから新宿へ向かった。

 熊本の震災からの復興を祈念し(?)桂花のラーメンセットの昼食、コンビニでいろいろ仕入れて入場したのが、一時少し前。
 ストレート松浦の代演丸山おさむの途中。

 好きな下手桟敷に空間を発見し、確保。
 椅子席はすでに九割ほど埋まっており、桟敷も七割がたは入っていた。まだ、二階席は、この時は開いていなかった。
 
 初めから聴けた高座の内容や感想を備忘録代りに記す。

金原亭世之介『辰巳の辻占』 (15分 *13:04~)
 昨年十月、浅草演芸ホールでの二代目古今亭志ん五襲名披露興行以来。その前は、四年前九月の末広亭、師匠十代目馬生三十三回忌興行で、どちらも持ち時間が短かったせいもあろう、漫談だった。
 そのうちネタを聴きたいと思っていてので、師匠十八番のこの噺を聴けて、良かった。いつも思うが、器用な人だ。マクラも結構楽しい。年齢を重ねるとともに、寄席で大事な噺家さんになるような気がする。

柳家さん福『おつとめ(尼寺の怪)』 (15分)
 初めて聴いた噺。
 仲間が蕎麦屋の二階で、怖い話を順に披露して、もし怖くなかったら蕎麦代を全部持つ、ということになり、そんな怖い話を知らない寅さんが、和尚にネタを仕入れに行って・・・という噺。
 この人はこれまで何度か聴いているが、あまり良い印象がなかった。しかし、この珍しい噺は楽しく聴かせた。ネタとの相性もあるかな。
 話を教わる場面での鸚鵡返しでの間違い(「托鉢」→「爆発!」など)と、それを仲間に披露する場面での可笑しさは、『道灌』や『牛ほめ』『新聞記事』などと相通じる。しばらくは、この噺、さん福の顔と一緒に覚えておこう。

ひびきわたる 漫談 (9分)
 この日は、小道具なし。妹親娘の参観日のネタ、山形の食堂のネタ、など。
 
柳亭市馬『雑排』 (15分)
 最近、この人の高座を、以前のような新鮮な気持ちで聴けるようになってきた。
 協会の副会長の時、そして会長になった当初は、その政治的な立場への複雑な思いがあって、高座を楽しむことができず、あえて言えば、敬遠していた。池袋でトリの時は、その前に席を立ったこともある。
 しかし、一人の噺家さんとしては、やはり上手いし、味がある。
 歌いさえしなければ、達者な噺家だ。

 ここで二階席が開いた。

柳家小ゑん『レプリカント』 (15分)
 これまた初めて聴く噺。
 この日は、初めて生で聴いた噺が、昼夜で四席あったなぁ。
 理系の学生八木君が主人公で、西村先輩が助演(?)。
 酒癖の悪い八木君は、酔ってどうやって家に帰ったか分からない。気が付くと部屋には、あのカーネル・サンダースの人形。前夜一緒に三軒はしごで飲んでいた西村先輩が心配してやって来た。八木君の部屋には、他にも川柳川柳の末広亭の看板やら、星占い付きの喫茶店の灰皿など、酔って持ち帰った戦利品(?)がたくさんある。
 さて、カーネル・サンダースを店に戻そう、ということになるのだが。
 題は後で調べて知ったのだが、そうなら、「ブレードランナー」にちなむギャグがもう少し欲しかった。
 しかし、この人の新作は、なかなか楽しくて、好きだ。

柳貴家小雪 太神楽 (10分)
 久しぶりに、この人の女性一人で演じる太神楽に出会った。
 調べたら、2011年、当初3月12日の開催が予定されていた「ちがさき寄席」が延期になった11月の会以来だ。
2011年11月23日のブログ
 五階茶碗をしながら横笛を吹くのは、この人だけだろう。
 夜の部に出演した仙三郎の社中や、翁家社中との芸の違いを感じていたので調べたら、この人は水戸流太神楽、ということらしい。
 師匠、正楽の太神楽、というサイトに、プロフィールがあった。
「柳貴家正楽の太神楽」サイト
伝統芸能である大神楽の中でも3大流派のひとつ・水戸大神楽の宗家に生まれ、幼少より芸事に親しむ。5歳の時、実父である18世家元・柳貴家正楽に師事。8歳で初舞台。平成11年1月1日より1人高座を務める。特に清麗な古典曲芸「籠鞠(かごまり)」を得意とする。
 あら、こういう方だったのか。道理で、達者なはず。

鈴々舎馬風『親子酒』 (13分)
 仲入りは、この人。
 志ん生の酒、というマクラを聴いていて、漫談で終わるかな、と思っていたら、なんとネタへ。
 この人も、小三治と同じ昭和14年生まれで傘寿。
 高座で元気な姿と、あの声を聴くことができれば、それで良し、と思う。


 仲入りで、一服。
 本数は減ったのだが、やはり止められない。
 前夜も、日本とポーランド戦のハーフタイムで、ため息と一緒に外で一服していたなぁ。


春風亭一之輔『代脈』 (13分)
 予定では文雀がクイツキだったが、順番が入れ替わった。
 仲入り後は、この人を含め、トリの歌奴の時間を作るためだろう、皆短く切り上げた。
 しかし、このテッパンネタだ。二階は半分位だと思うが、椅子席も桟敷もほぼ満員の客席を、ドッカンドッカンと沸かした。
 尾台良玄が銀南に「お嬢さんが、放屁をなさった」と言うと、銀南が「現実から逃げたんですか」に、一瞬の間で良玄が「逃避、ではない。そんな難しい言葉を知っていて、なぜ放屁を分からん」などのクスグリは、何度聴いても笑える。
 羊羹茶漬け、コロンボ様なども、この人ならでは。
 寄席の大好きな人のネタ、寄席の客も大好きなのだ。

ロケット団 漫才 (10分)
 東京の若手(中堅?)しゃべくり漫才では、この人たち一番かもしれないなぁ。
 定番のネタでも、何度聴いても笑える。とはいえ、その内容はしっかり変化もしている。四字熟語シリーズでは、一つを疑うとすべてが怪しくなるのは、「疑心暗鬼」ではなく、今回は「日本大学」^^
 セキュリティなんて言葉、山形では何十年も前から使っていたんだね^^

桂文雀『木火土金水』 (10分)
 これまた、初めて聴く噺。
 この人は、昨年6月上席で居続けした時の昼の部でもクイツキで、『虎の子』という珍しい噺を聴かせてくれた。
2017年6月8日のブログ
 とにかく珍しいネタが好きなんだなぁ。
 ご隠居と八五郎の問答ネタなのだが、ご隠居は、「すべてのものは、五行、木(もく)火(か)土(ど)金(ごん)水(すい)で出来ている」と八に偉そうに話す。
 たとえば、八が「じゃあ、家はどうです」と聞くと、「一軒の家でも、木をもって作り、金で出来た釘を討ち、土をこねて壁を塗り、火を焚いて水を使う。木火土金水になっているだろう」という具合。
 ずいぶん前に『八問答』なんてネタも聴いた。
 そういった珍しいネタも結構だが、たまには、よく知られた古典も聴きたいものだ。

林家種平『忘れ物承り所』 (13分)
 十八番ネタ。まさか、次の正楽が、このネタを切ることになるとは、思わなかったろう。

林家正楽 紙切り (5分)
 挨拶代りの「相合傘」と「忘れ物承り所」の頭の上の眼鏡もしっかり切って、下がった。

三遊亭歌奴『御神酒徳利』 (36分 *~16:28)
 さあ、他の演者が時間をつくってくれての長講は何かと期待していたら、この噺。
 もちろん、柳家の『占い八百屋』ではなく、二番番頭善六が主役。
 この人の高座は、その清潔感溢れる、とでもいう清々しさが特徴。もちろん、それは実に結構なのだが、反面、人物描写がやや軽くなるような、きらいがある。
 しかし、この高座では、数多い登場人物を見事に演じ分け、リズム、メリハリも良く、まったくダレることがなかった。
 なかでも、善六の女房の描写が良くて、たとえば、鴻池のお嬢さんのブラブラ病を治しに大阪へ行くことになって弱っている亭主に、「病の占いが、一番やさしい、危なそうなら、祟りでございます、とか、寿命でございます、無常の風は時を選ばず、と言えばいいから」と、父親譲りの策を授ける場面など、たくましい^^
 神奈川宿の新羽屋で、紛失した薩摩人の紙入れの有り場所を占うことになった善六。はなれの部屋に入って、「あぁ~!」と大声で歎く場面なども、さもあの場面なら、あんな声も出るだろう、と納得。母親の薬代欲しさに善六の部屋を訪れて罪を告白した女中のおきんには、善六が新羽屋からの当座の礼金二十両の半分十両を渡すのだが、これなども、ほっとさせてくれる。
 新羽屋稲荷のおかげで鴻池のお嬢さんの病も治り、目出度く善六は江戸で宿屋の主人になることができた。歌奴の目出度い高座、今年のマイベスト十席候補としたい。


 さて、昼の部がお開き。

 夜の部は、次の記事にて。

 
 
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by kogotokoubei | 2018-06-30 12:37 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 W杯、コロンビア戦の勝利を、今は喜んでいいのだろう。
 セネガル戦が、勝負になるなぁ。

 さて、昨日は昼の時間が空いたので、隼町へ。

 関西の地震被害に遭われた方のことを考えると、出かけるのを躊躇する気持ちもあったが、逆に、いつ何が起こるかわからない、落語を聴けるうちに行った方が良いか、と思い出かけた。

 池袋の昼の主任寿輔と夜の真打昇進披露興行も気になっていたが、日本対コロンビア戦までには帰りたいので、昼興行のみの国立を選択。

 主任が春雨や雷蔵。
 この人は、寄席でしか聴いたことがないが、マクラなども含め、なかなか味のある高座を楽しんでいたので、そのうち長講を聴いてみたいと思っていた。

 お客さんの入りは、前の方の三分の一ほどは七割位の席が埋まっていたが、後ろは空席が目立つ。全体で、三割ほどの入りか。それでも300席あるから、池袋なら満席に近い。

 開口一番から、感想などを記す。

立川幸吾『牛ほめ』 (12分 *12:46~)
 四月に師匠談幸が主任だった池袋の開口一番で聴いて以来。あの時の『子ほめ』は、棒読みに近く閉口したが、この高座は悪くなかった。丁寧さが、身上かと思う。
「売る人も まだ味知らぬ 初なすび」を其角の発句としていたが、人によっては去来の発句とする場合がある。これ、どっちが正しいのかな。
 ともかく、初見からたった二ヶ月足らずの間なのだが、ずいぶん印象が変わった。今後が楽しみだ。

春雨や風子『浦島太郎』 (15分)
 久しぶりだ。2013年のさがみはらの予選で『反対俥』を聴いたのが最初で、2016年には、鼻の手術の後、退院したその足で行った連雀亭でも聴いている。連雀亭の『強情灸』は、悪くなかった。
 マクラで、近くのジムに行ったら、「昼間のジムは、ジジ、ババ、オカマ、落語家ばかり」とのこと。行ったことがないが、当たらずと言えないか^^
 自作らしい。乙姫が浦島太郎に玉手箱を渡すのを忘れて、地上に(?)太郎を探しに来て、探偵の浦鳥太郎に探してくれと頼む・・・という筋書き。
 乙姫と浦鳥太郎の会話で、片方がクスグリを挟んだ後に、相手が「そんなことはどうでもいいから」などと言うのだが、テレもあるのか言葉の語尾を呑みこんでしまう。
 ああいう科白は、しっかり言わなければならないと思う。談志家元なら「言葉尻を呑むな!」と一喝するだろうなぁ、などと思いながら聴いていた。
 芸協の若手の新作への挑戦は悪くないと思うが、自虐的な科白は、あまり感心しない。

春風亭笑好『権助魚』 (21分)
 五年前の末広亭での真打昇進披露で縁があったので、応援したい気持ちがあるのでが、今回も小言を書かないわけにはいかない。
 何度か書いているが、舌足らずなのはしょうがないとして、もう少し落ち着いてはどうだろうか。また、マクラでは別に独身だの妻帯しているだのは、言う必要がないと思う。自虐的な内容が続き、やや残念な前半だ。

松乃家扇鶴 音曲 (12分)
 初めてのこの人は、お目当ての一人だった。
 芸術協会のサイトから、プロフィールを引用。
落語芸術協会サイトの該当ページ

芸名 松乃家 扇鶴
芸名ふりがな まつのや せんつる
本名 平野 英治
本名ふりがな ひらの えいじ
生年月日 昭和18年2月22日
出身地 東京都
芸種 音曲
階級 色物..
出囃子 佃
芸歴 長唄、端唄(名取 師範)経て
   昭和45年 千家松人形師に師事
   平成3年 落語芸術協会の高座に上る
   平成7年 落語芸術協会準会員
備考 ちょい粋で艶ぽいおもしろさ
趣味 囲碁三段、カラオケ

 Wikipediaによると、千家松(ちかまつ)人形は、人形・お鯉という女道楽コンビの一人だったようだ。
 扇鶴、最初は、講談の世界にもいたらしい。
Wikipedia「松乃家扇鶴」

 なんだろう、このなんとも言えない、ゆるさは。 
 高座に、ちょこんと座って、ゆるゆると始まる。
 まずは ♪ストトン節、から。
 高音は、お年のせいもあろう、少し苦しいが、それもひとつの味わいになっている。
 男は、女性の「捨てちゃ、イヤーン」というその声に弱い。「それでは、皆さんも」で、客席が靜かな笑いに包まれる。
 「三下がりで」と言って「びんのほつれ」の一節。
 ♪猫になりたや あの家の猫に 好いたお方の 膝まくら
  たもとちょいとくわえ じゃれて 口舌がしてみたい

 口舌(くぜつ)なんて、死語だなぁ^^
 代々の大相撲の横綱の名を並べたところは、まだ、頭はしっかりしている^^
 ふいっ、と下手(楽屋方向)をみて、「終わっていいそうです」と言って下がった。
 いいなぁ、この人。
 俗曲では、小菊、橘之助、うめ吉と女性が目立つが、どっこい、こういう人もいたのだ、と発見(?)に喜んだ高座だった。来て良かった。

春風亭柳太郎『鞄の中』 (19分)
 初。マクラで地口のネタをいくつか披露していたが、その途中で急激に眠気が襲ってきた。前夜は、W杯の韓国対スウェーデン戦の後、ベルギー対パナマ戦も途中まで観ていたので、やや寝不足。加えて、半蔵門駅近くの中華料理屋で昼食を食べた後の、ほぼ午後二時。ネタの名は、終演後の張り紙で知ったが、ほとんど覚えていない。柳太郎さん、申し訳ない。

神田松鯉 講談『扇の的』 (26分)
 仲入りはこの方。張り扇の音の効果もあって、眠気はいっぺんにふっ飛んだ^^
 いまや、弟子が人気者になっていて親子会などのチケットも即売り切れのようだが、やはり、この師匠あってあの弟子なのだろう。
 玉虫御前の美しさを形容する「沈魚落雁閉月羞花」の意味も説明してくれる気配り。
 そんな女性に、ぜひ、お会いしたいものだ。

ぴろき ウクレレ漫談 (14分)
 クイツキは、強力な色物^^
 最初、客席があったまっていないのを見て、♪明るく陽気にいきましょう、で手拍子を要請。手拍子の音が次第に大きくなるにつれ「ワールドカップ会場より、盛り上がってます」と言うあたり、流石。
 「玄関で卓球ができるんです・・・ピンポーン」なんて、書けばおかしくもなんともないのだが、この人の芸で客席がひっくり返る。やはり、この人、凄い。

桂右団治『ちりとてちん』 (19分)
 久し振りだ。この人もお目当ての一人だった。
 最初に聴いたのが、このブログを始める前だから、十年以上経っている。
 申し訳ないが、十年の年月を感じたなぁ。あるいは、少しお疲れ気味か。
 残念ながら、高座にも、かつての切れ味を感じなかった。
 女流落語家が古典で勝負する難しさのようなものを感じた高座。とはいえ、実力のある人なので、後日また聴いてみたい。

江戸家まねき猫 ものまね『音入り枕草子』 (15分)
 膝がわりはこの人。
 「枕草子」を暗誦しながら、関連する動物のものまねを披露した。
 「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。」では、オンドリの鬨の声。
 「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし。」で、ホタルは鳴かないからと清流の音。その後、雨音を披露し、「皆さんもどうぞ。その音をバックにしますから」と客席の音を背景に、蛙が登場。
 「秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。」では、もちろん、烏。雁が続いて、烏に戻り、鈴虫の鳴き声が心地よく響く。
 「冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。 」で、炬燵にあたっている犬と猫の会話。
 猫八を継いだ兄は二年前に亡くなり、甥がその名を継承するだけの力を発揮しているが、この人の芸も、実に結構だった。作品としての完成度は高い。

春雨や雷蔵『子別れー通しー』 (43分 *~16:26)
 マクラでは132年前、1886年にドイツの船ポーラ号から流された手紙の入った瓶が、今年オーストラリアで発見されたニュースを語る。それは、化粧品の瓶で、と地口ネタにつながったが、この話、知らなかったなぁ。
 残骨灰のことから、葬儀の話となり、この噺へ。
 熊五郎が、寺を出て吉原へ向かう場面からなので、「上」の後半から。
 紙屑屋の長さんとの楽しい会話が、聴かせる。弔いのご隠居のことを「九十三まで、休むことなく人間やってたんだ、凄いじゃねえか」などという科白も味がある。
 「ポックリ寺の坊主が、三年寝たきり」という科白も、可笑しい。
 背中に七つ、両そでに五つ、腹掛けに三つの弁松の特別あしらえというのは、小三治と同じ設定だ。
 吉原の店に上がった後のことは、「中」の内容を含めて地で語った。
 だから、厳密には「子別れー上の後半&下」と言えるだろう。
 「下」の出だしでは、お店の番頭を出かける際、お隣に「留守に無尽が来たら、帳面に挟んだ銭を渡してください」という設定は、初めて聴いた。
 ばったり亀に会った時の会話、熊が「お父っあんは、先代のお父っあん。二代目にがいるだろう」に亀が「はなし家じゃあるまいし」は笑える。
 亀が寄っていってくれと言うのに対し、「そのうち間に人をたてて迎えに行くから」と熊が言う。すでに、熊はその気でいた、という設定だ。
 だから、鰻屋での夫婦再会の場面では、熊から亀を育ててくれた礼を言い、復縁を願い出る設定。自然な流れだと思う。
 残念なのは、母親は亀をカナヅチでぶとうとしたのだが、サゲでは玄能と言ったこと。
 初めから玄能で良かった。
 とはいえ、そういう言い間違えも帳消しにできる高座。寄席でも、その実力の片りんを感じていたが、この噺の「上」と「下」の勘所ををしっかり押さえた高座、今年のマイベスト十席候補としたい。


 ちなみに、雷蔵は八代目雷門助六門下。
 お江戸日本橋亭では「雷蔵八百夜」と題した独演会を続けていて、ご本人のブログによると、今月六日の会で387回目だったようだ。そのうちぜひ行きたいものだ。
春雨や雷蔵のブログ

 NHKの新人落語大賞が新人落語コンクールと題していた時期の昭和55(1980)年、雷門助三の名で『権助魚』を演じ最優秀賞を取っている。ちなみに、その時の優秀賞は、立川談四楼の『大工調べ』。
 小朝が『稽古屋』で最優秀賞、権太楼(さん光)が『反対俥』で優秀賞を取った二年後のこと。

 その実力を十分に確認できた高座だった。


 月に二度ほどの落語会・寄席だが、地味ながら、寄席でキラリと光る噺家さんの主任での高座や独演会などにも、ぜひ行きたいと思っている。

 この日は、主任の雷蔵と、音曲、ものまね、講談などの色物が光ったなぁ。
 さて、W杯でも、もっと日本代表に光ってもらわなきゃね。


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by kogotokoubei | 2018-06-20 12:27 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 席でおにぎりを食べて、腹ごしらえ。

 短い休憩時間で、夜の部始まり。
 少し減ったとはいえ、客席の八割は埋まっていたように思う。白酒の人気かな。
 では、開口一番から順に感想など。

林家きよひこ『狸の賽』 (12分) *16:48~)
 初の女流噺家。彦いちの弟子のようだ。
 昼の部では、小せんの弟子を聴いた。結構、若手も弟子をとっているんだなぁ。
 後で歌之介が、本名が尾崎、だから、きよひこなんでしょう、と謎(?)の答えを明かしてくれた。
 見た目は、立川こはるに、少し似ているかな。元気な高座は好感が持てる。それにしても、女流の噺家、増えたねぇ。

初音家左吉『代書屋』 (15分)
 初、かと思ったら、五年前の九月、同じ池袋で『家見舞』を聴いていた。
 その時の印象として、しん平に見た目が似ている、と書いているが、変わらない。
 客席は結構笑ってくれたが、今一つリズムが悪い。
 入門、二ツ目昇進が、昼の部に出ていた柳家ほたると同じ。
 来年には真打昇進があるだろう。もう少し、精進してもらいましょう。

金原亭馬治『牛ほめ』 (13分)
 ずいぶん久しぶり。調べてみると、2011年、まったく同じ6月8日の人形町らくだ亭以来。あの会では、小満んとさん喬のリレーで『おせつ徳三郎』が聴けた。その会の記事では、宮治の『元犬』の方を褒めていた。
 さすがに七年前の高座はよく覚えていないが、間違いなく成長していると思う。二ツ目の左吉の後だから、ということもあろうが、なかなか楽しい高座だった。

すず風にゃん子・金魚 漫才 (13分) 
 金魚さんの頭の上は、ジューンブライド、ということで百均で仕入れたストロー製のウェディングドレス。
 「ウェディングベルメゾン 嫁っ子」というネーミング、何度聴いても秀逸。
 この人たちの漫才は、いつも元気をもらえる。

蜃気楼龍玉『夏泥』 (14分)
 あの漫才の後は、やりにくいだろうなぁ、と思っていたが、すぐに龍玉ワールド(?)へ誘い込む。二ツ目弥助の頃からの十八番と言えるだろう。
 泥棒から質草を出す金をめぐんでやろうと言われる度に、一文無しの男が、「すまねぇなぁ、ありがとよ、その親切は、涙が出るほどうれしいが」という科白が繰り返されることで客席から笑いが起こる。
 質屋に預けた道具箱、着物のみならず、ためた家賃の二か月分までをむしり取られる泥棒が、なんと可愛そうなことか。
 この人の名は三代目だが、真打に昇進しこの名を襲名してからは、実に存在感のある噺家さんになった。人情噺も怪談噺も手掛けているが、私はこの人のこういう軽い滑稽噺、好きだ。寄席の逸品賞候補として朱色をつけておこう。

橘家円十郎『猫と金魚』 (18分)
 座る際の「ヨイショ」は、定番。
 今年の初落語の同じ池袋で『宮戸川』を聴いている。
 明るく楽しい高座ではあったが、白酒と同じ2005年9月の真打昇進を考えると、もう少し落ち着きも欲しいかな。

林家正楽 紙切り (11分)
 ご挨拶代りの「相合傘」から「小鹿のバンビ」「オナガドリ」「雲助と白酒」と見事に切り分けて、さっと下がる。名人芸だ。

三遊亭歌之介 漫談 (19分)
 マクラでは、すでに書いたように、女性の前座さんの出身(長野)や本名のことにふれた。
 漫談、とは書いたが、十八番ネタの部分的なクスグリが満載なので、客席が湧かないはずがない。フランス語を学んでいて「ジュとジュでニジュウ、あとジュでサンジュウ」なんてネタでも、大爆笑。
 来年は円歌襲名で忙しくなるだろう。去年の師匠が亡くなった後の末広亭の高座での涙を、思い出した。

五街道雲助『粗忽の釘』 (15分)
 仲入りは、この人。弟子にとっては嬉しい、師匠の援護。
 ほぼ一年前、末広亭で居続けをしたが、その時と同じネタ。
 とはいえ、やはり、楽しいのだ。なかでも、熊が女房との馴れ初めを、聞いてもいない隣りの住人に披露する時、最初に家に女房を連れてきた夜、台所の汚れ物を洗う彼女の後ろから近づき、八ツ口から手を入れてくすぐっているうちに、「そこは脇の下じゃないわよ・・・てな具合で一緒になりました」が、なんともいえない大人の落語で、いいのだ。

春風亭三朝『そば清』 (16分)
 夜のクイツキは、この人。
 清兵衛さんと蕎麦がいくら食べられるか賭けよう、と若い衆が相談する中で、六ちゃんだけが、何か気が乗らない様子。「六ちゃん、どうしたい」「いやね、てぇっことは、もり蕎麦をかけ蕎麦にすんの」が、可笑しかった。
 五十枚の掛けの日、最前列で見学する席が「つゆっかぶり」というのも、笑える。
 ウワバミが飲んだ不思議な薬草のことを説明するのに、アルマイトの弁当箱と梅干が登場するが、若いのに、よく知っているねぇ。
 昼の部と夜の部のクイツキが一朝門下、というのは、あの一門の層の厚さを物語っている。

桂南喬『千早ふる』 (17分)
 夜の部の膝前は、大好きなこの人。肩を少し丸めて高座に登場する姿も、なんとも言えない。
 昼の部の一之輔の『加賀の千代』とツクといえないこともないが、それはよしとしよう。
 噺本来の可笑しさで、客席をわかせる。この高座も寄席の逸品賞候補だなぁ。

伊藤夢葉 奇術 (13分)
 いつものネタなのだが、その話術に笑ってしまう。
 少し顔色が黒いが、ゴルフか^^

桃月庵白酒『お見立て』 (27分 *~20:31)
 昼の部で、満席で立ち見が出たのに、いつものようにパイプ椅子を置かなかったのが不思議だったのだが、マクラでその疑問を解いてくれた。消防署の立ち入りがあったらしい。そうだったのか。また、いつ来るか分からないから、椅子を出せないようだ。
 その後、昔の池袋演芸場の「お茶セット」のことや、とても明かせない政治ネタを少しふって本編へ。
 杢兵衛が、とにかく可笑しい。この人の持ち味は、いわばデフォルメの芸だが、田舎者の杢兵衛大尽の言葉や仕草の、まぁ凄いこと。
 また、この人ならではのクスグリのセンスの良さは、喜助の喜瀬川への言葉などで発揮される。喜瀬川が杢兵衛に会いたくないあまりに病気だとか死んだという嘘を平気でこしらえるのに対し、「また、腹にないことをいけしゃあしゃあと言えますね」という言葉も、実にタイミングよく挟まれるので、可笑しいのだ。
 喜助がお茶を目に塗って泣いた真似をしていると杢兵衛が、「喜助、茶殻が目についとるぞ」、喜助が「悲しいとこうなるんです」に「体質改善しろ」にも笑った。
 笑わないようにと喜助が自分の体をつねったりする仕草も、なんとも言えず楽しい。
 それでいて、噺本来の味は、決して壊していないのだ。
 久しぶりの白酒の高座、今年のマイベスト十席候補にしない理由はない。


 終演後は、外は白酒がマクラで嬉しそうに言っていたように、小雨。
 
 居残りもなく、家路を急ぎ、帰宅して飲みながら、じっくり居続けの落語の余韻に浸っていた。

 実は、今日6月10日で、拙ブログを始めて、満十年となった。
 
 早いものだ。

 ある落語会への小言から始まったのだが、その後は、いろんなことを書いている。

 3.11以降は、やや時事的な内容が増えて、それらの記事は、兄弟ブログに引っ越した。

 引っ越しと言えば、FC2からExciteへの引っ越しもしたなぁ。

 そんな記念の日に、居続けの寄席の記事を昼夜とも記事にできたことは、雨のおかげもあるが、喜んでいいのだろう。

 昔なら、時の記念日か。

 結果として、いい日に始めたと言えるのかもしれない。

 自分の備忘録のみならず、コメントを通じて、落語愛好家のお仲間もたくさんできた。


 あらためて、これまでご覧いただいてきた方や、コメントまでちょうだいした方、すべての皆さんにお礼を申し上げます。

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by kogotokoubei | 2018-06-10 17:07 | 寄席・落語会 | Comments(12)
 中途半端な雨予想だったが、テニスは休み。

 一昨日は、久し振りの寄席。
 池袋の昼の主任が権太楼、夜の主任は白酒。他の顔づけも悪くない。
 なんとか都合がついたので、久しぶりの、昼夜居続け。

 コンビニで煎餅やお茶を仕入れてから演芸場に正午少し前に着くと、三十人ばかり並んでいる。
 テケツから地下へ。
 なんとか、前から四列目に席を確保。
 その後もどんどんお客さんが来場され、途中満席となり立ち見となるとは思わなかった。

 間もなく開口一番が始まった。

 出演順に感想など。

柳家あお馬『道灌』 (17分 *12:16~)
 初。落語協会ホームページによると、こうなっている。
  2014(平成26)年6月 柳家小せんに入門
  2015(平成27)年5月21日 前座となる 前座名「あお馬」
 以前、白酒がマクラで、入門者が多く、前座になるまでの待機児童が多い、と言っていたが、彼も一年近く待機した、ということか。
 若さに似合わず渋い印象は、最初に小はぜを聴いた時の印象に近いかな。そうか、選んだ師匠が小せんか。今後の成長を期待したい。

柳家ほたる『動物園』 (13分)
 ほたるの時点で、見た目は満席。よく探すと七席から八席の空席か、という状態。週末とはいえ、さすがに主任権太楼の動員力、ということか。
 師匠の前座名をもらったこの人も、来年の秋あたりに真打昇進か。
 ホワイトライオンとブラックタイガーの戦い、という演出は悪くない。
 珍獣動物園のスター達の中に、瘤のないラクダ、が入っていて、ほたるが「歌の題みたいだ」なんて言っていたが、ほたるがあの歌を知っているの?
 楽しい高座ではあったが、真打になるには、まだ何かが足らないかな。頑張れ。

柳家燕弥『桃太郎』 (12分)
 なぜか、この人は初。前名は右太楼。もちろん、権太楼の弟子。
 ちなみに、権太楼の弟子は、次の五人。
 三代目柳家甚語楼、柳家我太楼、三代目柳家東三楼、柳家燕弥、柳家ほたる、柳家さん光
 この噺そのものの楽しさで会場から結構笑いをとっていた。
 そうか、こういう噺家さんだったか。悪い印象ではない。また聴きたいものだ。

ニックス 漫才 (16分)
 最近、この姉妹漫才を見直している。
 なかでも、妹の話芸は、なかなかのもの。
 
柳家甚語楼『お菊の皿』 (15分)
 権太楼の総領弟子が、その貫録を示した高座。
 江戸っ子の若い衆の科白の心地良いこと。
 お菊さんが、青山鉄山になぶり殺しにされたとご隠居から聞いた若い衆、
 「なんだって、ご隠居はだまって見てたんですか」の言葉なども、可笑しい。
 この人、居残り会仲間のIさんのご贔屓だが、私も、その実力は高く評価している。
 この高座、寄席の逸品賞候補として朱色をつけておく。

三遊亭窓輝『庭蟹』 (16分)
 珍しい噺を披露。私はこういう噺を聴けるのは、嬉しい。
 こういう古典的な小咄、この人は好きなのだろうか。
 寄席で時間調整の“逃げ噺”とも言えるが、この時間なら他のネタもできよう。円窓のご子息ならでは、ということかな。
 志ん生の音源を持っている。『志ん生、語る。』(アスペクト)という本の付録のCDに、『お直し』『疝気の虫』と一緒に『小咄二題』が収録されていて、その中に含まれている。このCD、結構貴重だと思う。

江戸家小猫 ものまね (13分)
 犬、にわとり、羊、アルパカ、鴨、ゴリラ、と多彩な芸と話術でわかせた。
 猫八襲名も、近いのではなかろうか。それにしても、髭が濃い^^

柳家小ゑん『フィッ』 (15分)
 後で調べたら、本人作ではなく、円丈の古い作品のようだ。
 なんとも、シュールなネタ。
 先輩と後輩が話していると、先輩の言葉の語尾に「フィッ」という一言が付く。
 不思議に思った後輩が、それは何かと問うと、「えっ、おまえフィッが言えないのか。病院へ行け」と言われる。その後、その男がフィッが言えるようになると、また、他の意味のない言葉が・・・という内容。
 『庭蟹』とは別な意味で、珍しいネタを聴くことができた。
 この高座の途中から、客席は満席になり、後からいらっしゃったお客さんは、立ち見状態に。

三遊亭歌武蔵『宗論』 (18分)
 満員の客席をドッカンドッカンと沸かせた。正朝のように白百合ではなく、川村女学園。わかる人には、これだけで、何の話かは、わかる^^
 相撲ネタの漫談も悪くはないのだが、やはり短くともネタを演ってくれる方が嬉しい。

松旭斎美智・美登 奇術 (14分)
 定番のネタだが、最初の南京玉すだれでミス。次のネタでもスカーフを落とした。
 ちょっと、感心しない出来。
 客席にプレゼントするキャンディー。池袋では、バドミントンのラケット、必要ないのでは^^

古今亭志ん輔『宮戸川』 (18分)
 仲入りは、この人。お目当ての一人。
 立ち見のお客さんを見て、かつて前座時代の浅草で、フランス座の後ろで立ち見をしていたことを思い出した、とのこと。ご馳走になったストリッパーの名が、エデン・ダイアナ・・・・・・。よく覚えているねぇ、そういうことは。
 手の内のネタ。安心して聴いていられる。
 一点だけ、気になった。半七がお花に向かって「あなたのようなきれいな人を、叔父さんのところへ連れて行ったら・・・・・」と言うが、“若い娘”ではなく、“きれいな人”は、以前からの科白だったかなぁ。
 ご本人の日記風ブログでは、二分も延ばした、と書いてあるが、仲入りである。これ位は尺はあって不思議はない。たしかに、プログラムでは仲入りが15:10までとあって、実際は15:12ではあったが、その原因はそれまでの演者のせいと言えるだろう。

 ロビーの楽屋前のソファーで、一服。
 結構、トイレに人が並んでいたが、十分余りで、再開。

春風亭一之輔『加賀の千代』 (11分)
 クイツキが、一之輔という贅沢さ。
 とはいえ、トリの権太楼の時間を作るためであろう、この時間でこのネタ。
 甚兵衛さんとご隠居との会話が、なかなか楽しい。
 持参した饅頭のことなど女房との内緒話をすべて暴露してしまうが、ご隠居は「たまらないなぁ、そういうとこが好きだよ」と鷹揚。
 こういう噺でも、しっかり客席を沸かすあたりが、並の噺家ではないところだ。

柳家小さん『二人旅』 (16分)
 久しぶりだ。上方落語の「東の旅」の中の『煮売屋』を、四代目小さんが東京に移したものだから、その大名跡を継いだ人にとっては、大事な噺ということになる。
 それだけに、謎かけや都々逸がなかったのは、少し残念。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (9分)
 仙三郎と仙志郎の二人で登場。五階茶碗~土瓶~花笠と撥、のいつも巧みな芸。
 仙三郎の元気な姿を見ることができるだけで、嬉しい。

柳家権太楼『猫の災難』 (37分 *~16:38)
 客席から「待ってました!」の声。
 たしかに、待ってたよ^^
 さん喬、白酒と鎌倉の落語会に出た時、この噺をネタ出しにしたのだが、プログラムにネタの説明を載せたいと依頼された時の逸話が、なかなか楽しくも味のある内容だった。
 この噺や『一人酒盛』などは、主人公が次第に酔っていくことが中心のネタで、相方が酒や肴を買いに出かけるという同じような場面が繰り返される。演者によっては、ダレやすいのだが、流石の権ちゃん。
 熊五郎が、「少しだけなら」「半分なら」と次第に酒を飲みつくすのだが、飲む前の熊五郎の顔の表情が、まさに満面の笑みで、見るこちらも、嬉しくなってくる。
 途中の科白も楽しい。
 「あいつは、なんかアテがなきゃ飲まない・・・意地汚ねえんだよ」
 「どこまで行ってんだ・・・待つ身のつらさが分かんねぇのか」
 という熊の科白に、つい、熊に同情しそうになるのが、人間の性か^^
 この噺は、元々上方で三代目小さんが東京に移したもの。
 今では、柳家の十八番になっている。
 相棒が酒を買いに行く際に「三丁ばかり行くと、酢屋満てえ酒屋があるから」と熊は教えるが、これは五代目が家の近所にある酒屋の名を使った内容を踏襲している。
 二人目の師匠から継いだネタを、大事にしているなぁ、と思いながら聴いていた。
 迷いなく、今年のマイベスト十席候補とする。


 権太楼、サゲとなり緞帳が下りる間も、客席のお知り合いの方と思しき方向に微笑んでいた。夜の部が始まる前にロビーで一服していると、権太楼が数名のお客さんとエレベータに乗った。なるほど、これから打ち上げ、ということかと納得。
 肴は、鯛の刺身かな^^


 夜の部は、次の記事にて。


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by kogotokoubei | 2018-06-10 11:46 | 寄席・落語会 | Comments(0)
 久しぶりに、この会へ。

 奇数月の開催だが、何かと野暮用と重なり、一月と三月は行けなかったので、今年初。
 会場に着いた時は、開口一番、林家彦星の『道具屋』のサゲ近く。
 なんとも、棒読みだなぁ。

 できるだけ静かに、空いている席に座った。

 客の入りは、80人位だったろうか。200席の会場なので、それほど空虚感は、ない。
 小満んのネタ出しされている三席、順に感想などを記す。

柳家小満ん『花色木綿』 (30分 *18:45~)
 結論から。絶品だった。
 ネタ出しが『出来心』だったが、『花色木綿』としたほうがよいだろう。
 寄席でも、宵のうち泥棒ネタが多く、これは「お客さんの懐に飛び込もう、ということで」というマクラそのもので、しっかり、聴く者の懐に飛び込んできた。
 「(泥棒に入る時は)裸足で入っちゃいけねえ。足の油で、ぬちゃっと音が出る」というのは、初めて聞いた。
 軽い口調なのだが、そのリズムが、この日は実に良かった。たとえば、出来の悪い泥棒の新米が「やじり切りに入りました」と言うと、師匠(?)が「土蔵破りか」と即座に答えるあたりの呼吸が、なんとも心地よい。
 しかし、「親分、それが大笑い」と新米。間違って寺に入って、墓場に抜けたという大失敗。「星を見て気が付いた」「そら、見たことか」などのクスグリも、なんとも可笑しい。「せっかくだから、卒塔婆を持って来た」「そんなもん、何にする」「カンナで削って、冬にスキーでもできるかと」なんてぇ軽妙なやりとりが続く。
 こじんまりしていて綺麗に掃除がしてあって、電話のあるような家に入るんだ、と言われた新米「そういう家に入ったんですよ、親分。それが、大笑い」なんと、そこは交番。「つかまるのに、世話がない」と言う新米が、楽しい。
 空き巣狙いに出かけた新米泥棒の失敗が続く。最後の長屋、入るとケヤキの如鱗杢の長火鉢があり、南部の鉄瓶にお湯が沸いている。鍋の中には、出来立てのおじや。
 これ幸いとおじやを食べる場面が絶妙。「あわてちゃいけねぇぃ。あわてて出世したのは、ボラばかり」などと呟きながら、丁寧に椀のおじやを箸でぬぐって食べていると、外から人の声。そこの住人、八五郎が帰ってきたのだ。裏は崖で逃げられないので、縁の下へ。
 新米泥棒、一軒前の家で慌てて逃げたので、下駄を置いてきた。その汚い足で上がったから、足跡がついている。「泥棒か!?」と驚く八五郎だが、ちょうど家賃がたまっていたので、この泥棒が貯めていた家賃を盗んだことにしよう、という悪知恵が浮かんだ。
 大家を呼んでくると、警察に盗難届を出すから、盗まれたものを言え、と言う。
 実際に盗まれたものは、干してあった褌と、おじや(食い逃げ)だけなのだが、金の茶釜や布団などを挙げる八。大家「布団の表は」「表は、にぎやか」などのトンチンカンな会話が、笑える。八五郎が、大家さんの家の布団と同じと言うと、「表が唐草、裏は花色木綿」ということになり、それからは、黒羽二重も帯も箪笥までも「裏は、花色木綿」と八五郎が
馬鹿の一つ覚えで繰り返すのだが、分かっていても、実に笑える。
 そんな会話の中にも、大家は「蚊帳は一張り」「刀は、一振り」などと数えるんだと教える場面があり、落語はいろいろタメになるのだ。
 縁の下で聞いていた泥棒が、たまらず出て来て、八五郎に向かって「嘘つきは泥棒のはじまりだ」にも笑った。泥棒が八の嘘をバラしていると今度は八が縁の下へ。その八がまた出て来て、泥棒の科白を真似て、「ほんの、出来心でございます」でサゲ。この展開も、ありだろう。
 まさに、軽妙洒脱という形容が相応しい好高座、今年のマイベスト十席候補とするのに、迷わない。

柳家小満ん『鍬潟』 (28分)
 いったん下がって、すぐ再登場。
 マクラで、昔、釋迦ヶ嶽(しゃかがたけ)雲右エ門という大男の相撲取りがいて、ご贔屓と浅草にお詣りに行ったが、人混みがひどく、ご贔屓が賽銭を入れるのを釋迦ヶ嶽に頼んだところ、腕を伸ばしてその賽銭は、屋根の上に乗った、という逸話を紹介。
 逆に、小さな人もいて、と、背丈が二尺三寸の男のお話へ。
 その男が、大きくなりたいと甚兵衛さんに相談に行くと、昔、上方に鍬潟という三尺二寸(小満ん、三尺三寸、とい言い間違え)の相撲取りがいて、あの雷電に勝った、という話を聞かせる。雷電との一番の前、鍬潟は体に油を塗りたくって、八十六度マッタをして立ち、雷電の股をくぐって逃げ回った挙句、後ろから“折り屈み”になって、雷電の膝を叩き、四つん這いにさせた、とのこと。
 小さな男、相撲取りになって稽古し、たくさん食べて寝れば大きく成れるかと思い、甚兵衛さんに頼んで、朝日山部屋に入門。なんとか、稽古をつけてもらい、その日は帰って熟睡。起きると、布団から手足が出ている。「かかぁ、ほら、相撲のおかげで大きくなった」「なに言ってんだよ、それは座布団だよ」でサゲ。
 珍しい小品と思っていたが、この高座も約30分。さて、今回は、いつもよりお開きは遅く庵るかなぁ、なとと思いながら、外の空気を吸いに行った。

柳家小満ん『茶の湯』 (40分 *~20:40)
 仲入り後は、この噺。
 マクラの、カメラマン濱谷浩さんが、ネパール・カトマンズから来日したご友人を茶の湯でもてなした時の逸話が、可笑しかった。内容は、ヒミツ。
 濃茶は苦手で、と「青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか」の芥川龍之介の句が登場。このあたりが、小満ん落語の楽しさ。
 利休が茶の湯の作法を考えたのは、堺のキリスト教会でのミサがヒントになってのかもしれない、というのは新説かな。
 茶の湯で、老人たちが回し飲みする際、最初の方の人が、水っ洟を・・・というマクラでは、大笑い。

 あらすじは、随分前になるが、このネタについて書いているので、その内容を引用。
2009年11月5日のブログ
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(1)蔵前の大店の主人、家督を倅に譲り根岸の隠居所へ移る。
(2)供としてつれていった定吉と退屈な日々を過ごすご隠居だったが、
  せっかく茶室があるので「茶の湯」を始めることになった。
(3)しかし、ご隠居も定吉も茶の湯のことはまったく分からない。根が
  ケチな隠居、定吉が探してきた青黄粉で茶を点てようとする。しかし、
  泡が立たないので、またもや定吉が探してきた椋の皮で泡立てる始末。
  このとんでもない代物を茶だと信じて二人は毎日「風流だなぁ」と、
  必死に飲むのだった。
(4)二人はとうとうお腹をくだしてしまうが、今度は他人に飲ませよう
  と企てる。孫店(まごだな)に住む手習いの師匠、鳶頭、豆腐屋に
  茶会をするから来るように手紙を出した。店子の三人、茶の湯の流儀
  を知らないので恥をかくから引っ越そうと思ったが、手習いの師匠の
  真似をしてなんとかその場をしのごうということになり、隠居の家へ。
(5)師匠、豆腐屋、鳶頭の順でなんとかひどい茶(もどき)を飲んだもの
  の、まずくて口なおしに羊羹をほおばって退散。隠居は懲りずに近所の
  者を茶会に呼ぶのだが、噂が広まり、呼ばれた者は飲んだふりをして、
  羊羹をいくつも食べていく始末。羊羹代が馬鹿にならない勘定になって
  きた。ケチな隠居、何か安く菓子を作れないかと考え、薩摩芋を買って
  きて蒸かして皮をむき、すり鉢に入れて黒砂糖と蜜を加え、すり粉木で
  摺って椀型に詰め型から抜こうとするがべとついてうまく抜けない。
  そこで胡麻油がないので灯し油を綿にしめして塗るとうまく抜けた。
  この油まみれの物体に「利休饅頭」などと名付けて客に出すことにした。
(6)ある日、蔵前にいたころの知り合いの吉兵衛さんが訪ねてきたので、
  さっそくお茶(もどき)を点てる。吉兵衛さん、隠居がいつもより多く
  椋の皮を入れて泡だらけになった液体を目を白黒させて飲み込んで、
  今度は口直しにと「利休饅頭」をほおばったが、とても食べられる代物
  ではなく、あわてて便所へと逃げた。
(7)吉兵衛さん、饅頭を捨てようとするが掃除が行き届いた縁側には捨て
  られず、前を見ると垣根越しに向こう一面に菜畑が広がっている。あそ
  こなら捨ててもいいだろうと放った菓子が畑仕事をしている農夫の横っ
  つらに当たった。農夫の「ははは、また茶の湯か・・・・・・」でサゲ。
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 この噺は、まず、ご隠居と定吉との会話に魅力がある。
 冒頭の会話には、このご隠居と定吉が繰り広げる騒動を予感させる、二人の性格の一端がかいま見える。麻生芳伸さんの『落語百選』を元に再現。

定吉 少しはご近所の様子をとおもいまして、ひとまわりしてみましたが、
   蔵前とちがって、根岸てえところは寂しいとこですねえ
隠居 なぜ寂しいと言う。おなじ言うなら、閑静と言えば雅があっていい
定吉 ご近所に住んでる方、みんな上品な方ばっかりで・・・・・・
隠居 そりゃそうだ、なんといっても風流な土地だからなァ
定吉 お向こうの垣根のあるお庭の広い家があるでしょ?あそこでね、いい音が
   してンですよ、なんだろうって、そうっと行って覗いて見たら十七、八の
   娘さんが琴をひっかいていました
隠居 ひっかくてやつはないよ。猫じゃあるまいし・・・・・・琴は弾じる、
   あるいは調べるとでも言うもんだ

 小満んは、定吉が垣根をかぎ裂きにして覗いた、と言っていたような。
 「風流」が、この二人の会話のキーワード。
 知ったかぶりの隠居と、大胆不敵な定吉によって、何人もの犠牲者を出すことになる。
 小満んは、このご隠居、赤ん坊の頃に、母親の乳房にぶら下がりながら、片目で茶の湯を見ただけ、と言って笑わせた。
 小満んの高座、主役二人の会話の楽しさ、加えて、青黄粉と椋の皮とで茶もどきをたてる仕草などの可笑しさに加え、孫店の騒動、鳶頭の啖呵の切れの良さなども程よいアクセントとなって、まったく、飽きさせなかった。
 これまた、今年のマイベスト十席候補とすべき逸品。

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麻生芳伸編『落語百選-秋-』(ちくま文庫)

 参照した麻生芳伸さんの『落語百選』の麻生さんの解説が、なんとも楽しいので、紹介したい。
«解説»「落語」から見た<風流>の実態、<風流>に対する痛烈な反抗(レジスタンス)が込められた一篇。茶、生花(いけばな)などのとりすました、お体裁の、しかも高額な免許、伝授料をとるーいわゆる<流儀>に、日ごろ「なにをくだらねえことをやってやンでッ」と、一撃を加えたくなるのは、筆者ならずとも、庶民だれしもが心の底に抱いている感情・・・・・・衝動であろう。
 そもそも・・・・・・と、茶の湯の発祥に関して<解説>を記すほど、筆者は残念ながら知識も見聞も持ち合わせていないが、わずかな愚見を述べれば、・・・・・・豊臣秀吉が天下を取って、南蛮渡来の絢爛豪華、贅沢三昧の、いわゆる桃山文化の時代に、千利休が二畳の部屋を造り、野の木を切って、杉の皮や葉で天井を作り、そこへ秀吉を招き、朝鮮の庶民の井戸端にざらに転がっているような茶碗に、茶の湯をたてて、自然な、素朴なものに秘められた真実の<美>をたたきつけた、のだった。つまり、それは千利休が体を張った、命がけの、秀吉に対する挑戦であり、ルネッサンスだったのである。-それが<原点>であり、最初の意図だったのである。・・・・・・ところが、その<原点>が忘れられ、その後、千利休の帰依者や研究家によって理論家され、形式化され、<侘び>だの<寂び>だの、やれ<表>だの<裏>だのと、こじつけられ、体系づけられて、それぞれの<流儀>が派生し、その<流儀>を習得することが、茶道の心に通じると、いつのまにかすりかえられてしまったのではないか。

 なかなか、読んでいて、スッキリする内容。
 そうなのだ、落語は、権威的なるものに対して、笑いで反抗する芸能でもある。


 さて、お開きとなり、今回は佐平次さん欠席で、Iさんと二人のミニ居残り会。
 もつの塩煮込みが美味しいお店で、落語をはじめ、いろんなお話。

 なんとか、日付変更線を越えずに帰還。
 
 久しぶりに、小満ん落語を満喫した夜だった。

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by kogotokoubei | 2018-05-18 18:53 | 寄席・落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛