噺の話

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カテゴリ:寄席・落語会( 462 )

 11日の祝日、野暮用が早く片付きそうなので、何か良い落語会はないかと、落語協会、芸術協会のホームページを探してみた。

 目に入ったのが「立川左談次を偲ぶ会」の文字。

 立川流で左談次の弟弟子(談生)だった、鈴々亭馬桜が発起人の会のようだ。
 その日の日本橋亭を借り切って、三つ開催する馬桜主催の会の夜の部で、六時開演。
 これなら間に合う。
 馬桜のホームページも確認。

 左談次は、残念ながら聴くことができなかった。
 その生の高座を体験しようと思っていた矢先に訃報に接し、その無念さを昨年書いたことがある。
2018年3月22日のブログ

 客演は、落語協会で左談次と同時代に前座、二ツ目時代を過ごした雲助、一朝。

 これは行かねばなるまい。
 メールで依頼すると、ほどなく馬桜ご本人から了解の返信。

 せっかくなので(?)、居残り会メンバーにもメールでご案内。
 すぐに、複数の方から、電話で予約したとのご返事があり、ご紹介した私も嬉しい限り。

 なお、馬桜は、昭和44(1969)年3月に談志に入門。
 そのほぼ一年前、昭和43(1968)年4月に入門した兄弟子が、左談次。
 そして、ほぼ一年後、昭和45(1970)年3月入門の弟弟子が、談四楼だ。

 談四楼の『シャレのち曇り』から、立川流設立直後、馬桜(談生)が師匠が協会に戻ると固く信じていた様子を、先日紹介した。
2019年2月6日のブログ
 寄席が好きだったのだろう、やはり、この人は協会に戻ったのだった。

 野暮用を午後四時に済ませ、東急線で三越前で下車。
 A10の出口を出て、久しぶりに日本橋亭へ着くと、長蛇の列にびっくり。
 前方に佐平次さんを発見。
 しばらくすると後方でI女史が手を振っている姿があった。

 開演後、冒頭の馬桜の挨拶で判明したのだが、90人で打ち切る予定が、手違いで120名を超えるお客さんを受け入れてしまったらしい。
 受付では、メールと電話予約別にチケットの入った封筒に名前が書かれているものと照合するなどを含めて時間を要しており、そのための行列であった。

 受付で、馬桜さんにメールで予約した幸兵衛と伝え、私の名前の書かれた封筒をいただき、入場する際にプログラムとCDを頂戴することができた。
 
 そのプログラムには、この会開催のいきさつや、この日の演題についての解説が載っていた。
 小さくて読めないでしょうが、これがその内容。

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 「噺のはなし」とあるのが、なにやら、嬉しい^^

 さて、馬桜のご挨拶やお詫びの後、開口一番以降について、感想などを記す。

鈴々舎美馬『あなごでからぬけ』 (3分 18:09~)
 馬桜の口上で、「前座はいらなかったかな」の一言があったが、「短く!」という指示もあったであろう、この長さ。
 初めて聴く女流。見た目は女子大生のようで、可愛いいこともあり後味は悪くないが、プログラムによると、馬るこの弟子、らしい。
 えっ、馬るこが弟子をとった・・・十年早い。

鈴々舎八ゑ馬『つる』 (11分)
 昨年12月24日の末広亭以来だが、マクラはほぼ同じ。
 ネタは、あの時のよく分からない新作よりは、こっちの方がずいぶんと良かった。関西出身の馬風門下、という変わり種。
 
鼎談 雲助・一朝・馬桜 (27分)

 鼎談の内容の前に、この三人と左談次について、入門、二ツ目昇進、真打昇進時期を、整理しておく。

 昭和43年 2月 雲助が馬生に入門
       3月 一朝が柳朝に入門
       4月 左談次が談志に入門
 昭和44年 3月 馬桜が談志に入門
 昭和47年 11月 雲助が二ツ目に昇進
 昭和48年 9月 一朝、左談次が二ツ目に昇進
 昭和50年 5月 馬桜が二ツ目に昇進
 昭和56年 3月 雲助が真打に昇進(第一回真打昇進試験合格)
  *この「第一回真打昇進試験」については、雲助の本から記事を書いたことがある。2014年7月21日のブログ
 昭和57年 12月 一朝、左談次、馬桜が真打に昇進(真打昇進試験に十人受験し全員合格)

 ということで、左談次との関係では、雲助は一年兄弟子、一朝は、ほぼ同期、馬桜が真打昇進では追いついたが、一年弟弟子。
 
 では、鼎談。馬桜が聞き役。
 雲助、一朝からも上述の左談次との関係について、説明があった。
 このご両人が、左談次のことを「さだやん」と呼ぶことから、左談次という人の人柄が偲ばれる。
 馬桜(談生)からは、左談次と弟弟子の現在の龍志との三人会を開いていたが、それが、後に左談次&談生と、雲助、そして、一朝との三人会につながったと説明。
 雲助と「さだやん」との最初の出会いは、今はなき人形町末広だったとのこと。
 二人とも「さだやん」の思い出で共通するのは、酒の上での大立ち回りによる、トラ箱入り。
 西浅草警察署、荒川警察署、という名が登場する。
 そんな話の中、一朝が、「雲助兄いは、(警察の聴取中に)落語会のチケットを売っていた」と話す。テレビドラマと同じで、年配と若手の二人の警官が事情聴取する中、「おまえ、落語家か」となって、つい、持っていたチケットを押し付けたというから、さすが、雲助^^
 これ以上は詳しく書けないが、左談次の志ん朝宅でのマージャンでの逸話なども披露された。
 そして、馬桜が二人に「左談次の一席となると何ですか」とふる。
 雲助「大安売り」、一朝「真田小僧」。
 雲助は、「さだやんの、あの軽さ、今の落語家にはない。協会に戻って来て欲しかった」は、本音だろう。
 一朝は、「楽屋で他人の噺で笑うことは、ほとんどないけど、さだやんのあの『真田小僧』には、腹を抱えた」と振り返る。
 ますます、生で聴けなかったことを悔やむ鼎談だった。

 ここで仲入り。
 通路にまでパイプ椅子が置かれた中、少し長めのトイレタイムだったが、席でプログラムを眺めながら再開を待っていた。
 
 後半の三席。

鈴々舎馬桜『大安売り』 (19分)
 プログラムにも載っていたが、この噺は、左談次が上方の橘ノ円都に稽古をつけてもらい、東京で最初に演じたと説明。知らなかった。
 橘ノ円都については、ほぼ一年前、桂小南(先代)の本を記事にした中で、ご紹介したので、ご興味のある方はご覧のほどを。
2018年2月4日のブログ

 マクラで知ったが、馬桜は、千賀の浦部屋の贔屓だったらしい。それも、前の親方である舛田山時代とのことで、あら、それでは居残り会仲間のYさんと共通しているではないか。
 そんな短めのマクラから左談次由来のネタへ。
 江戸っ子が、知り合いの関取に出会い、一杯飲ませながら、地方場所での相撲の結果を聞く噺だが、左談次の高座をなぞっていたのだろう、軽妙な語り口は、聴いていて飽きない。
 上方での十日間の後、京都に行って「土つかず」は当然で、風疹で休んでいた。その後、浜松で八、九歳の子供にまで負けたという関取に対し、「それじゃ、シコ名を変えたらどうだい。丸焼けってのはどうだ。きっと、全勝(全焼)でしょう」というサゲは、馬桜の工夫とのこと。

春風亭一朝『宿屋の富』 (26分)
 楽屋で、「さだやん」の逸話を思い出したとのことで、前座時代の海水浴での思い出や鹿芝居の女形のことなどをマクラで語ってくれた。
 六段目の勘平が雲助、お軽が左談次なんてぇ芝居、見たかったなぁ。
 本編は、見事な志ん朝型。
 前半は、一文なし男と宿屋の主人の会話がとにかく楽しい。
 この男が「身の回りの世話だけで、五、六十人」とか、「番頭が百五十人で勘定しても、一年経っても終わらない」とか、「泥棒が、十五、六人もいて、千両箱、たった八十箱しか減ってない」なんて話を真に受ける宿屋の主人、私も会ってみたい^^
 その主からなけなしの一分で富籤を買わされた後の「これで、本当に一文なしになっちゃった」が、なぜか哀れさを伴いながらも可笑しくて笑った。
 その後、富興行が行われている湯島天神の場。
 夢に神様が現われて、二番富が当たるはず、という男が楽しい。もし五百両当ったら吉原の女を身請けして所帯を持つという妄想ばなし。
 銀の簪をまげてまで飲ませてくれる女の優しさで泣く男の姿が楽しい。
 一反のさらしで作った大財布の中から、細かくした五百両を取り出す場面の「ズンズンズン」「ドカーン」といった擬音でも、爆笑。
 「お膳にお銚子が一本のっていて、刺身があって鰻があって天麩羅があってお椀がある。“どうだお前も一杯”“いや~ん、酔っちゃうから”“いいじゃないか、酔ったって”“そう・・・あぁ酔っちゃった、寝ましょう”・・・起きて湯に行って帰ってくると、お膳にお銚子が一本のっていて~」の繰り返しも、小気味の良い語り口で、江戸落語の一つの醍醐味を味わわせてくれる。
 一文なしの男が一番富に当たっているのを確認する過程も、くどくなり過ぎずに楽しませてくれる。「あっちが、子の千、三百、六十五、こっちが、子の、千、三百、六十、五・・・・・・近いだけに悔しい」という間も結構だし、目の仕草や声の調子で微妙な心理の変化を表現するあたりも、流石である。
 宿屋の主人が、すぐに一番富と分かるテンポの良さが対照的で結構。
 飛んで帰ってから、宿屋の主人が、「あわあわ・・・」と言葉にならない驚きを見せているのを訝しがる女房、半分の五百両を貰えると分かった途端、女房も「あわあわ・・・五、五、五・・・」には、『火焔太鼓』のサゲ前の夫婦の姿を見るような可笑しさがあった。
 左談次のCDの内容は別途書くとして、その「さだやん」への思いも込めていただろう好高座、今年のマイベスト十席候補としたい。

五街道雲助『付き馬』 (35分 ~20:38)
 左談次の『権兵衛狸』の思い出から、本編へ。
 丁寧に「馬」とは何かを解説。
 聴いていて、「まるで、小満んだ!」と思うくらい、川柳や気の利いた科白が程よく挟まる。
 吉原をひやかす客の様子を「見ぬようで見るようで 客は扇の垣根より」や、つい遊びに行く様子を「田楽の串で小判の封を切り」なんて科白は、なかなか若手では似合わないが、ピタっとはまる。
 「提灯を持つ」なんてぇ科白も二度ほどあったが、若い人に、その意味が分かっただろうか。こういう言葉、大好きだ。落語に登場する、死語になりつつある言葉、ぜひ、小満んや雲助のように使い続けて欲しい。「分からないから、変える」というのは簡単だが、変えない魅力が、落語にはあるのだよ。
 さて、この男、若い衆、妓夫太郎をまんまと騙したあくる朝も、浅草田町のオバさんが貸した金を集金に行く予定の仲通りの店を見て、「ちょっと早すぎたねぇ」の後、「居続けの ばかばかしさに 上天気」なんてことを言って、若い衆を大門から外に連れ出そうとする。
 「なに、土手を上がるだけ」の後、「私の目を見ろ、目を」と指で目を指してみせる姿が、この後にも出てくるが、可笑しくてならない。
 それからの道中については、見事な言い立て、と評することができる。
 湯屋->豆腐屋->花屋敷->銅像->観音様->ハトに豆をやるおばさん->仁王像->仲見世の人形焼->オモチャ屋->豆屋->紅梅焼き->雷門->神谷バー->築地行きのボギー車、と辿って、「ボギー車、乗る?」なんて聞かれたら、もう若い衆も黙っちゃいない。
 しかし、若い衆の剣幕に、この男が動じるはずもない。筋書きがすでに出来ているわけで、「田原町のオジさんの所で、勘定をこしらえてもらう」と答える。周到な詐欺の仕上げが近づく。
 勘定は二十三円六十五銭だが、「十円札を三枚上げよう」に加え、「帯源の帯を付けよう。一度しか使っていない。五十の着物に百の帯、なんて言うじゃないか」と、騙しの微細な演出の見事なこと。
 最後の、“オジさん”の早桶屋での主人と若い衆の頓珍漢な会話は、お手の物。
 「長かったんですか」->「たった一晩でして」
 「だいぶ、はれたようで」->「ほれたかはれたかわかんないんですが」
 「仏様はお喜びでしょう」->「ばかな喜びようで、しまいには裸でカッポレ」
 このあたりの会話の妙は、この噺がよく出来ているなぁ、と再認識させる。
 もちろん、演じ手が悪けりゃ、噺本来の持ち味を引き出すことはできない。
 久しぶりの雲助だったが、さすがだ。

 この噺では、2013年、県民ホール寄席の300回記念における小三治の名高座を思い出す。
2013年9月26日のブログ
 居残り会では、最近では、漫談か短い噺しか聴くことのできないらしい小三治だが、あの日のこの噺は、凄かったなぁ。

 雲助も、この噺の持つ魅力を出し尽くすかのような高座。今年のマイベスト十席候補とする。

 最後は、馬桜、寄席文字の右橘さん、そして、左談次のお内儀も出てきて、雲助による三本締めにてお開き。


 終演後は、佐平次さん、Kさん、I女史、M女史の五人で、佐平次さんがよくご存知の東京駅のビル内のお店で、楽しみだった居残り会。

 ステーキ屋さんだが、他の料理もワインに合い、話も弾む。
 I女史の直近の海外旅行でのちょっとした騒動のことや、Kさんが十歳で一人で寄席に出かけて行った時の、甘く淡い思い出なども飛び出し、あっという間に閉店時間。
 十一時の閉店まで粘っていては、帰宅は日付変更線を超えるのだよね。

 皆さんをお誘いした甲斐のある、結構な追善落語会、そして、居残り会だった。

 M女史からは、居残りメンバーがほぼ全員揃う予定の落語会のチケットを受領した。
 その会も、そして、居残りも、楽しみだ。
by kogotokoubei | 2019-02-13 12:47 | 寄席・落語会 | Comments(8)
 本年の落語初めは、この会になった。

 久しぶりに、改装された関内ホールでの小満んの会。

 以前はなかったホール入口の飾りつけの前に、看板が出ていた。

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 これが、看板のアップ。

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 この会、次の三月の会で、終了してしまうのだ・・・・・・。

 ホールに入ると、ロビーのモニターで金原亭駒六の開口一番が映っていた。
 ネタは、『無精床』。
 コンビニで買ったおにぎりを食べ終えて、駒六の高座の終盤に会場へ。

 綺麗になった264席の客席に、四割ほどのお客さんか。
 なんとも寂しい。

 小満んの三席の感想などを記す。

柳家小満ん『天狗裁き』 (22分、18:45~)
 「初夢や 顔を洗って 忘れけり」「初夢や 文楽志ん生 ほか五人」などの楽しい川柳から、正月二日に見る夢が初夢と説明する短いマクラから本編へ。
 熊さんの女房が、足袋屋の六さんは、初夢で百足(ムカデ)を見て、表通りに「百足屋」という看板を上げてから運が向いたんだから、早く初夢を見なさいとと催促する。縁起ものの宝船の絵も敷いてある、という設定が、サゲにつながるとは思わなかったなぁ。
 この噺は、同じようなセリフ「女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、大家が・・・・・・」が繰り返されるので、下手な演者の場合にやや冗長になり聴いていて辛くなることがあるが、小満んは、そのリフレインを一切割愛した。これは、実に良かった。
 また、熊が大家に向かって「見てないものは、大家さんどころか、お奉行様にも話せない」と言うのを大家が引きとって、申し立ててすぐにお白洲の場となり、その奉行に向かって「見てないものは、天狗様にも話せない」と答えたのを奉行が引き取って、すぐ天狗の森に連れて行く、というスピーディな場面展開は、一般的なこの噺の持つ弱点を補っていた。
 熊さん、天狗の羽団扇をだまし取って、扇いで天空に上り、眺めに見とれて羽団扇を扇ぐのを止め、落ちたところが宝船。
 弁天様が「大丈夫ですか?」と聞く声は、実は女房で、「どんな夢、見たんだい?」でサゲ。

 この筋書きは、初めて聴いた。
 とはいえ、宝船に落ちるという設定は、どこかで読んだなぁ、と思ったら、自分のブログだった。
 2012年3月13日の記事で、馬生の音源を聴いた後に、三種類の『天狗裁き』を並べていたが、その中の『羽団扇』が、そういうサゲだった。
 2012年3月13日のブログ
 あの記事では、志ん生・馬生の型、そして上方に米朝が移し、それがまた東京に逆輸入(?)され、現在主流になっている型、そして、『羽団扇』と言う型の三つを紹介した。
 どうも小満んは、『羽団扇』に近い。
 実は、終演後、居残り会の店へ向かう道すがら、Kさんが、『羽団扇』では、とおっしゃったのを否定してしまっていた。大変、失礼しました。『羽団扇』のサゲが、馬生が演じるような、商家の大店に空から落ちて、羽団扇でその娘の病気を治し結婚することになる、という筋と勘違いしていたのだ。

 とはいえ、『羽団扇』とも、この高座は少し違うのである。
 以前の記事で確認する。
 たびたびお世話になる「落語の舞台を歩く」からの引用を含んでいる。
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『羽団扇』 
 二代目の三遊亭円歌や立川談志が演じていたようだが、この噺は、天狗からだまし取った羽団扇を仰いで空に舞い上がった主人公が落ちた場所は、下記のように七福神の宝船。引用は、いつもお世話になっている河合昌次さんの「落語の舞台を歩く」から。
落ちたところが、七福神の宝船の中。「今日は正月だから七福神が集まって吉例の宴会をしている」と大黒。それでは仲間に入れてと頼んだが、「何か、芸が出来れば」と許され、仲間の中に。
 そこには綺麗な弁天が居て、お酌をしてもらいご機嫌で、恵比寿にも勧めたがお酒は駄目でビールだけという(エビスビールのシャレですよ)。肴は恵比寿様が釣った鯛のお刺身、またこれが美味いこと。飲んで食べて、芸をする間もなく寝入ってしまった。弁天様に起こされると・・・

 これ以上の解説は、ぜひ「落語の舞台を歩く」でご確認のほどを。なお、ネタ元は談志の高座。
「落語の舞台を歩く」の『羽団扇』のページ
 ちなみに、この噺は、正月二日の“初夢”という設定で、“旬”の明確な落語となっている。
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 引用した、宝船での宴会を、小満んは割愛している。
 宴会を含むパターンも演じるのかどうかは、調査不足。
 ともかく、くどい部分を省いた、この人ならではの“軽妙洒脱”な高座。今年のマイベスト十席候補とする。

柳家小満ん『ふぐ鍋』 (17分)
 いったん下がってすぐ高座へ。
 九州大分では、毒のある肝も勧めるということや、サバフグのこと、「ふぐ鍋を 食わぬ愚かと 食う愚か」などから本編へ。
 幇間の一八は、お手の物。『つるつる』のような猫にまでヨイショする様子が、実に可笑しい。
 旦那と一八が、ふぐに箸を出しかねていると、そこへ物もらいがやって来る。
 そうだ、乞食に食べさせて、様子を見よう。大丈夫なら、自分たちも食べよう、という作戦。
 一八が見に行くと、乞食が何ごともなく寝ているので、これなら大丈夫と、旦那と一八は箸をつけ、美味い美味いと舌鼓。そこへ、乞食がやって来て、二人の様子を確認し「それじゃあこっちも食べよう」というサゲ。
 終演後の居残り会で、佐平次さんは、この旦那と一八の悪だくみを、現在の政治にたとえていたような気がするが、記憶が定かではない^^
 こちらも、旦那と一八が、最初にこわごわと箸をつける際に、白菜やネギを食べる様子が、絶妙だった。好高座。
 

柳家小満ん『紺屋高尾』 (34分 ~20:16)
 仲入り後、この長講。
 「紺屋のあさって」というのは、初めて聴いた。
 頼んだ染物ができないので、いつできるか、と聞くと「明後日には」と答えるのが、紺屋とのこと。蕎麦屋の出前と似たような、業界の決まりか^^
 この噺では、お玉が池の先生、らんせつ(蘭雪?)が活躍する。
 久蔵が恋煩いと分かり、大名道具と言っても売り物買い物、三年頑張って働き十両できたら、連れて行こう、と言うのも、この先生。主人の吉兵衛ではない。
 久蔵が、花魁道中で三浦屋の高尾を見て一目ぼれ、帰ってから何を見ても高尾に見える。
 染物の刷毛が高尾、甕の中にも高尾、めしを食べてもご飯が高尾、先生の顔も高尾・・・というのは、『崇徳院』を彷彿とさせる。
 三年一所懸命に働いた、久蔵。主人の吉兵衛が一両上乗せしてくれて十両。
 買い物があると久蔵が言うと、吉兵衛が、何を買いたいと聞く。
 「たかおかいたい」と言うと「鷹を、よしなよ鶯にでもしな」は可笑しかった。
 小満んの噺は、このネタでは定番となっているような科白も、くどいと思われるものは、あっさりと割愛する。たとえば、高尾を待つ間の「来年三月」などの科白の繰り返しは、ない。
 また、床入りの場面なども、実にあっさり。上品、なのだ。
 とはいえ、笑わせどころも、しっかりあって、例えば、久蔵の下帯は「おととしの十二月からはきっぱなし」と聞いた吉兵衛、小僧に「地面を三尺掘って埋めろ」なんてところは、なんとも笑える。
 高尾が「次はいつ来てくんなます」と聞かれた久蔵、つい、自分は野田のお大尽などではなく、紺屋の職人で、三年経たなきゃ来れないと答えると、高尾が、「横領罪でゴーンさんみたいに」と時事的なギャグを挟む遊び心もある。
 しかし、真相を知った高尾、「金で源平藤橘四姓の人と枕を交わす卑しい身を、三年も思い詰めてくれるとは、なんと情けのある人か」という科白などは、当代の噺家さんでは、なかなか聞けないね。
 終盤も、甕のぞき、という言葉は出てくるものの、下品な内容にはならない。藍のあっさり染めで、紺屋高尾は、大繁盛。
 たまに見受けられる言いよどみなどはほとんどない、実に楽しい高座だった。


 終演後は、楽しみだった居残り会。
 佐平次さん、Kさん、I女史、N女史と五人で、会場から徒歩五分ほどのDへ。
 さて、何を食べ、何を話したのか、少し記憶が怪しくなるくらい北海道の男山の燗の徳利が何本空いたものやら。
 しかし、小満んの会は終演が早いので、帰宅は日付変更線を超えることは、なかったのだ。
by kogotokoubei | 2019-01-22 21:54 | 寄席・落語会 | Comments(4)

今年のマイベスト十席

 さて、今年のマイベスト十席の発表。

 前回の記事で、複数の高座が候補となった人について、一席に絞るルールを今年も適用することにして、小満ん、白酒、兼好の各二席から一席に絞った。
 
 その結果、候補は次の十七席。

(1)柳家一琴『小言幸兵衛』
>池袋演芸場 1月下席 昼の部 1月25日
(2)桂かい枝『子は鎹』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
(3)三遊亭兼好『品川心中』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
(4)入船亭扇遊『明烏』
>第54回 三田落語会・昼席 仏教伝道センター 2月24日
(5)瀧川鯉昇『味噌蔵』
>二人三客の会 横浜にぎわい座 4月11日
(6)立川談幸『宗珉の滝』
>池袋演芸場 4月中席・夜の部 4月13日
(7)古今亭菊丸『片棒』
>横浜にぎわい寄席 5月2日
(8)柳家小満ん『花色木綿』
>柳家小満んの会 吉野町市民プラザ 5月17日
(9)柳家権太楼『猫の災難』
>池袋演芸場 六月上席 昼の部 6月8日
(10)桃月庵白酒『お見立て』
>池袋演芸場 上席 夜の部 6月8日
(11)春雨や雷蔵『子別れー通しー』
>国立演芸場 中席 6月19日
(12)三遊亭歌奴『御神酒徳利』
>新宿末広亭 下席 昼の部 6月29日
(13)立川龍志『片棒』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日
(14)古今亭志ん輔『船徳』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日
(15)柳家さん喬『五人廻し』
>鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集 8月16日
(16)柳家小ゑん『長い夜』
>新宿末広亭 12月下席 昼の部 12月24日
(17)むかし家今松『火事息子』
>新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月24日


 候補が少ないから楽かというと、そんなことはなく、並べてみると、やはり悩む。
 七席を除外するのが、つらい・・・・・・。

 それぞれの高座のブログの内容を読めば読むほど、悩む。

 しかし、ここは心を鬼にして(少し大袈裟^^)選ぶことにしよう。

 では、今年のマイベスト十席は、こちら。
 ちなみに数字はあくまで聴いた時期が早い順であって、ランキングではない。


(1)桂かい枝『子は鎹』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
創作能力の高さを発揮した上方版『子別れ』を堪能!
 ブログではあらすじの紹介の後、こんな感想を書いていた。
2018年2月14日のブログ
この噺を上方に伝えたのは、円朝門下の二代目三遊亭円馬と言われており、その内容は柳派の『子別れ』と違って、子供が父親の元に残る、円朝作の『女の子別れ』だったようだ。
 しかし、噺家さんにもよるが、上方でも母親と子供が一緒に出て行く型も多いらしいし、実際、かい枝もそうだった。
 かい枝の高座は、泣きの場面にも程よく笑いどころを挟みながら、上方の噺家さんとしては(?)、落ち着きのある、人情噺に仕立てていた。
 中でも、熊と寅との再会、そして、サゲ前の復縁の場面が秀逸。
 わざとらしくなく、くどすぎず、親子、そして、男女の情愛のふれあう姿が描かれていたように思う。
 こういうネタも、しっかりこなすのが分かると、なおさら、文枝の名はこの人が継ぐべきだったなぁ、と思わずにはいられない。
 芸の幅広さを示した高座、今年のマイベスト十席候補とする。

(2)三遊亭兼好『品川心中』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
兼好流“通し”の高座で、「幕末太陽傳」の小沢昭一さんが目に浮かんだ!
 兼好の工夫について、ブログから引用。
2018年2月14日のブログ
 金蔵が、自分で用意した、頭には三角、下はツンツルテンの死装束を着たままお染に背中を押されて品川の海にドボン。
 この衣装の仕込みがあったので、改作の「下」にすんなりとつながった。
 そう、通しだったのだ。その遠浅の海から抜け出し、親分の家にやって来た場面あたりで約30分だったろうか。だから、例のドタバタでさげるかなぁ、と思っていたので、驚きながら、嬉しい誤算。
 親分はじめご一行が協力して、早桶に金蔵を入れて白木屋に連れて行き、「金蔵が幽霊で現れた、線香の一本も上げて供養しないと浮かばれない」、とお染に迫る、という展開になった。
 こういう下の描写、いったい誰の型なのか・・・オリジナルかな。
 私は聴いていて、『幕末太陽傳』の小沢昭一さんの金蔵役の姿を思い起こしていた。

(3)入船亭扇遊『明烏』
>第54回 三田落語会・昼席 仏教伝道センター 2月24日
三田落語会を締めくくる高座に、落語の王道を見た!
 王道という形容については、ブログの記事が裏付ける。
2018年2月25日のブログ
 こういう高座を、どう言えばいいのだろう。大いに、「変えないことの大事さ」を感じた。
 本来の筋、くすぐりを、一切いじっていない。
 時次郎が吉原でぐずる際は、「女郎を買うと、かさをかきます」もそのままだし、二宮金次郎も登場する。翌朝、ふられた男の小道具は、お決まり、甘納豆。
 噺本来の持ち味を、存分に引き出し、笑わせどころは、しっかり。
 この人ならではと思ったのは、時次郎の泣きじゃくる場面などに感じたが、それはそれで、大いに結構なのだ。
 数年前は、独演会はほとんど開かなかったこの人や一朝、今では独演会の数がなんと多くなったことか。
 六十歳半ば、本格派で艶もあり、今もっとも乗っている人かもしれない。
 すでに出来上がった噺は、そのままでも楽しいです、そのまま演ればいいんです、という確固たる哲学があるようにさえ思えた高座
 なお、三田落語会は、文化放送の支援で再開されるらしい。良かったね。

(4)瀧川鯉昇『味噌蔵』
>二人三客の会 横浜にぎわい座 4月11日
十八番の“食べる噺”で、睦会の後継落語会が沸いた!
2018年4月12日のブログ
 女房の実家に泊まるはずの旦那が帰った後のドタバタで、蛸の酢の物の大皿を股の下に隠す甚助さんの何とも言えない表情が、秀逸。
 その酔った甚助さんの、解読不能の言葉にも会場大爆笑。
 食べる場面は、お手のもの。
 たっぷりの山葵で刺身を挟んで食べた時の驚愕の表情や、芋の煮っころがしをフウフウしながら頬張る場面などは、面目躍如。
 三人とも十八番ネタの競演の中で、芸協を代表して(?)の好高座

(5)古今亭菊丸『片棒』
>横浜にぎわい寄席 5月2日
声よし芸よし、あらためてこの人の凄さを認識!
 次男鉄次郎の弔い計画について、こう書いていた。
2018年5月2日のブログ
 その色っぽい弔い行列の先頭は、頭(かしら)ご一行の木遣りだが、菊丸の声の良さに、いささか驚いた。
 よく通る高い声で、♪よ~~お~ん~やりよ~ぉ~、の一節。
 会場から自然と拍手が起こった。
 次に手古舞が、♪しゃらん、からん、とリズム良く続く。
 山車のケチ兵衛人形には、団子鼻の脇にホクロがあって、毛が二本出ているというリアルさ^^
 神輿がやって来て、♪テンテンテレツク、♪ワッセワッセ、♪チャンチャカチャン、という擬音で、なんとも賑やかな行列の光景が目に浮かぶ。
 花火が上がり、位牌のついたパラシュートが落ちてくるのを地上で待ち構えるのが、海老一染之助・染太郎。「いつもより多く廻ってます」で会場が大爆笑。

(6)柳家小満ん『花色木綿』
>柳家小満んの会 吉野町市民プラザ 5月17日
「軽妙洒脱」とは、まさにこの高座のこと!
 ブログの記事は結構長いのだが、後半のみご紹介。
2018年5月18日のブログ
 大家「布団の表は」「表は、にぎやか」などのトンチンカンな会話が、笑える。八五郎が、大家さんの家の布団と同じと言うと、「表が唐草、裏は花色木綿」ということになり、それからは、黒羽二重も帯も箪笥までも「裏は、花色木綿」と八五郎が馬鹿の一つ覚えで繰り返すのだが、分かっていても、実に笑える。
 そんな会話の中にも、大家は「蚊帳は一張り」「刀は、一振り」などと数えるんだと教える場面があり、落語はいろいろタメになるのだ。
 縁の下で聞いていた泥棒が、たまらず出て来て、八五郎に向かって「嘘つきは泥棒のはじまりだ」にも笑った。泥棒が八の嘘をバラしていると今度は八が縁の下へ。その八がまた出て来て、泥棒の科白を真似て、「ほんの、出来心でございます」でサゲ。この展開も、ありだろう。
 まさに、軽妙洒脱という形容が相応しい好高座

(7)柳家権太楼『猫の災難』
>池袋演芸場 六月上席 昼の部 6月8日
代々小さんの十八番をしっかり継承する名演!
 “小さんの噺”という理由は、ブログの記事でご確認のほどを。
2018年6月10日のブログ
途中の科白も楽しい。
 「あいつは、なんかアテがなきゃ飲まない・・・意地汚ねえんだよ」
 「どこまで行ってんだ・・・待つ身のつらさが分かんねぇのか」
 という熊の科白に、つい、熊に同情しそうになるのが、人間の性か^^
 この噺は、元々上方で三代目小さんが東京に移したもの。
 今では、柳家の十八番になっている。
 相棒が酒を買いに行く際に「三丁ばかり行くと、酢屋満てえ酒屋があるから」と熊は教えるが、これは五代目が家の近所にある酒屋の名を使った内容を踏襲している。
 二人目の師匠から継いだネタを、大事にしているなぁ、と思いながら聴いていた。

(8)桃月庵白酒『お見立て』
>池袋演芸場 上席 夜の部 6月8日
真骨頂のデフォルメの芸が生きた爆笑高座!
 昼の権太楼のみならず、居続けの夜も実に楽しいトリの高座だった。
2018年6月10日のブログ
 杢兵衛が、とにかく可笑しい。この人の持ち味は、いわばデフォルメの芸だが、田舎者の杢兵衛大尽の言葉や仕草の、まぁ凄いこと。
 また、この人ならではのクスグリのセンスの良さは、喜助の喜瀬川への言葉などで発揮される。喜瀬川が杢兵衛に会いたくないあまりに病気だとか死んだという嘘を平気でこしらえるのに対し、「また、腹にないことをいけしゃあしゃあと言えますね」という言葉も、実にタイミングよく挟まれるので、可笑しいのだ。
 喜助がお茶を目に塗って泣いた真似をしていると杢兵衛が、「喜助、茶殻が目についとるぞ」、喜助が「悲しいとこうなるんです」に「体質改善しろ」にも笑った。
 笑わないようにと喜助が自分の体をつねったりする仕草も、なんとも言えず楽しい。
 それでいて、噺本来の味は、決して壊していないのだ。

(9)立川龍志『片棒』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日
三人の息子と親との会話で、江戸の風が高座に吹いた!
 こんなことを書いていた。
2018年7月30日のブログ
 鉄が「菜漬けの樽を荒縄で巻いて」の言葉に「まるで罪人だね」と言うケチ兵衛だが、鉄のケチぶりに次第に感心していく。そして、サゲ。
 見事に三人の個性を描き分け、なかでも次男の銀が秀逸。
 五月に聴いた横浜にぎわい座での古今亭菊丸のこの噺も見事だったが、龍志も負けてはいない。
 菊丸は実に丁寧に三人の息子を描き、なかでも次男の唄が秀逸だった。その菊丸よりは龍志が描く銀のぞろっぺいな姿も、まさに江戸っ子で悪くない。江戸の風と粋、そんなものを感じさせてくれた高座

(10)むかし家今松『火事息子』
>新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月24日
父と母の愛情表現の違いを描き、うつむく籐三郎の姿も浮かんだ名演!
 つい先日の記事だが、こう書いていた。
2018年12月26日のブログ
 母親は籐三郎に、「お父さんだって、お前のことをどれだけ気にかけていたか」と言うと、父親が「なにを言っている」というようなやり取りが二度、いや三度くらいあっただろうか。これで、そうか、父親だって、そうだろうとも、と聴く者も心が和むのだ。
 そして、母親が着物を持たせて、と言うと、父親が、「捨てなさい、捨てりゃ、拾うものもいるだろうから」の謎かけを母親が合点し、「そうですね、箪笥ごと捨てましょ、千両箱も捨てましょ」で聴く者が救われる。
 籐三郎の科白はないが、その表情が察せられる。きっと、涙ぐんで下を向いているのだろう。そんな姿も見えてきた今松の高座だった。


 なんとか、十席選ぶことができた。

 回数的にたくさん寄席や落語会に行けた前半の高座が多いのは当然のこと。

 さて、来年はどんな高座に出会えることやら。

 回数はともかく、まだ出会っていない噺家さんや、若手の高座、そして、コツコツ地道に続けている地域寄席などにも行ってみたいとは思っている。

 大晦日は目の前。

 今年は私の両親は九十を超えてまだ元気でいるが、連れ合いのほうはお父さんが二月に亡くなった。お母さんが今、入院中。お二人とも、昭和七年生まれ。

 自分が還暦をすでに過ぎている。

 健康が第一だなぁ、と思う日々。

 拙ブログをお読みいただいた皆さん、良いお年をお迎えください。

by kogotokoubei | 2018-12-28 21:27 | 寄席・落語会 | Comments(8)

寄席の逸品賞と特別賞

 先日の末広亭昼夜居続けをもって、今年の寄席・落語会はお開き。

 さて、今年もマイベスト十席を選ぶ時期となった。

 今年は、月に二回は行きたいものと思っていたが、日数的には、寄席・落語会に行ったのが十九日だった。

 そのうち、寄席で昼夜居続けをしたのが、四月中席の池袋、六月上席の池袋、六月下席の末広亭、十一月下席の末広亭、そして先日の師走下席末広亭と五回あるので、昼席と夜席をそれぞれ一席と計算するなら、計二十四席ということにならないでもない。

 数遊びにしか過ぎないけどね。

 来年は、なんとか月二回は行きたいなぁ。

 さて、それでは、数少ない回数ではあったが、今年のマイベスト十席候補、および寄席の逸品賞候補や特別賞候補に選んだ高座を、まず並べてみる。

(1)柳亭こみち『虱茶屋』
>池袋演芸場 1月下席 昼の部 1月25日
*寄席の逸品賞候補

(2)柳家一琴『小言幸兵衛』
>池袋演芸場 1月下席 昼の部 1月25日

(3)桂かい枝『子は鎹』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日

(4)三遊亭兼好『品川心中』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日

(5)三遊亭歌太郎『電報違い』
>八起寄席 焼肉八起 2月19日
*新人賞候補

(6)入船亭扇遊『明烏』
>第54回 三田落語会・昼席 仏教伝道センター 2月24日

(7)瀧川鯉昇『味噌蔵』
>二人三客の会 横浜にぎわい座 4月11日

(8)古今亭寿輔『堀の内』
>池袋演芸場 4月中席・夜の部 4月13日
*寄席の逸品賞候補

(9)立川談幸『宗珉の滝』
>池袋演芸場 4月中席・夜の部 4月13日

(10)古今亭菊丸『片棒』
>横浜にぎわい寄席 5月2日

(11)柳家小満ん『花色木綿』
(12)柳家小満ん『茶の湯』
>柳家小満んの会 吉野町市民プラザ 5月17日

(13)柳家甚語楼『お菊の皿』
>池袋演芸場 六月上席 昼の部 6月8日
*寄席の逸品賞候補

(14)柳家権太楼『猫の災難』
>池袋演芸場 六月上席 昼の部 6月8日

(15)蜃気楼龍玉『夏泥』
>池袋演芸場 六月上席 夜の部 6月8日
*寄席の逸品賞候補

(16)桂南喬『千早ふる』
>池袋演芸場 六月上席 夜の部 6月8日
*寄席の逸品賞候補

(17)桃月庵白酒『お見立て』
>池袋演芸場 上席 夜の部 6月8日

(18)春雨や雷蔵『子別れー通しー』
>国立演芸場 中席 6月19日

(19)三遊亭歌奴『御神酒徳利』
>新宿末広亭 下席 昼の部 6月29日

(20)桂南喬『出来心』途中まで&師匠小南の思い出
>新宿末広亭 下席 夜の部 6月29日
*寄席の逸品(ハプニング)賞候補

(21)立川龍志『片棒』
(22)古今亭志ん輔『船徳』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日

(23)春風亭一之輔『新聞記事』
>鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集 8月16日
*寄席の逸品賞候補

(24)柳家甚語楼『浮世根問』
>鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集 8月16日
*寄席の逸品賞候補

(25)柳家さん喬『五人廻し』
>鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集 8月16日

(26)三遊亭兼好『巌流島』
>名作落語の夕べ 横浜にぎわい座 10月6日

(27)桃月庵白酒『宿屋の富』
>名作落語の夕べ 横浜にぎわい座 10月6日

(28)三遊亭萬橘『紀州』
>新宿末広亭 11月下席 昼の部 11月25日
*寄席の逸品賞候補

(29)三遊亭金遊『開帳の雪隠』
>新宿末広亭 11月下席 昼の部 11月25日
*寄席の逸品賞候補

(30)柳家小満ん『悋気の火の玉』
>新宿末広亭 12月下席 昼の部 12月24日
*寄席の逸品賞候補

(31)柳家小ゑん『長い夜』
>新宿末広亭 12月下席 昼の部 12月24日

(32)桂南喬『金明竹』
>新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月24日
*寄席の逸品賞候補

(33)むかし家今松『火事息子』
>新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月24日

 赤いのが、マイベスト十席候補で、二十席。
 ピンクが、寄席の逸品賞などの特別賞候補。

 ここで悩むのが、これまでマイベスト十席では、同じ噺家さんからの複数選択を禁じてきたことだ。

 今年は、小満んが『花色木綿』『茶の湯』、白酒が『お見立て』『宿屋の富』、兼好が『品川心中』『巌流島』と重複している。

 ということは、それぞれ一席に絞ると、十七席から十席の選択、ということになるなぁ・・・・・・。

 まぁ、それでもいいか。

 一人一席ルール、継続しよう。

 ということで、小満んは、『花色木綿』、白酒は『お見立て』、兼好は『品川心中』を候補としたい。

 マイベスト十席で悩むのは後にして、まず、寄席の逸品賞と特別賞から。

 先に上期と下期に分けて、寄席の逸品賞を選ぶ。

<上期の寄席の逸品賞>
古今亭寿輔『堀の内』
>池袋演芸場 4月中席・夜の部 4月13日
 この人にしては、実に珍しい噺で、大笑いさせてもらった高座。
 自分の記事から引用する。
2018年4月15日のブログ
 最前列のお客さんが前日も来ていたことを思い出し、「ネタ、替えなきゃいけないじゃないの」と笑う。実際にネタを考えていたようで、「三年で四回位しか演らないネタ」と本編へ。
 家を出て間違えて着いた場所が浦安。途中で道を尋ねた人が走り出し「こら、逃げるなぁ」と言うと、「ジョギングしているんです」は可笑しかった。本来の内容に、独特のクスグリを挟むが、これが大爆笑。女房が金坊に「お父っつんに湯屋に連れてってもらいなさい」と言うと、「いやだ。それくらいならイスラム国に行く」は、少し旬を過ぎたネタとはいえ可笑しかった。
 三年で四回の信憑性はともかく、今年もっとも笑ったのが、この高座だったかもしれない。

<下期の寄席の逸品賞>
三遊亭萬橘『紀州』
>新宿末広亭 11月下席 昼の部 11月25日
 芸協の芝居に円楽一門からの交替出演での高座。全体に冷えた客席を一気に沸騰させた。
 こんなことを書いていた。
2018年11月26日のブログ
 地噺でいろいろクスグリを入れることができるネタである、豊川の実家へ帰る際、母親が新幹線の豊橋駅に迎えに来る時の様子などで、客席を爆笑させる。なるほど、その母にして、この子か^^
 クスグリ七割の噺だが、ネタの骨格として支える残り三割のうちで重要なのが、小田原城主大久保加賀守が尾州公と紀州公の前に進み出ての、「この度、七代将軍ご他界し、お跡目これなく、しも万民撫育(ぶいく)の為、任官あってしかるべし」の科白。これを聞いて思い出した。数年前、私がテニス仲間との旅行の宴会で披露した時には、この科白を言わなかった。そうか、この科白入れて、また、やってみようか^^
 きつつき時代から、非凡なものを感じていたが、ますますパワーアップしていると認識させた高座だった。
 来年、この高座を参考にして、仲間内の宴会の余興で披露しようかと、今は思っている。
 
 さて、次に特別賞。

 まずは、新人賞は、候補とした高座が一つだったので、迷うことなく決定。

<新人賞>
三遊亭歌太郎『電報違い』
>八起寄席 焼肉八起 2月19日
 結果として、今年一度だけ行けた八起寄席の歌太郎。
 この珍しいネタの一部あらすじを含め、当時の記事から引用。
2018年2月20日のブログ
 初代三遊亭円歌の作品で、大師匠の三代目円歌も持ちネタにしていた作品。
 石町の生薬屋の旦那と出入りの植木屋の信太(しんた)が旅に出て、名古屋で心中しようとする若い男女に遭遇して、その二人を助けたことから、帰宅する予定が遅れることになった。旦那が信太に「明日帰れんから、そう電報を打ってくれ」と頼む。
 信太が郵便局に行き『アスアサケエレン』の電報を頼むのだが、担当の職員に、旅の途中の横浜、静岡の遊郭で女にもてすぎて弱った、などと長々話し続ける場面が、聴かせどころだ。
 この場面、『粗忽の釘』で、八五郎がお隣に行って女房との馴れ初めをくどくど聞かせたり、『小言幸兵衛』で、仕立屋を前に、幸兵衛が妄想話を聞かせるのに、似た要素を持った話ともいえる。『うどん屋』の酔っ払いと、うどん屋の会話にも似てなくはない。
 さんざん、どうでもいい話を聞かされた郵便局の職員。
 「分かりました。では電文は『アスアサケエレン』ですね。で、誰のお名前で」
 「ダンナだよ」
 「そのダンナお名前は?」
 「昔から旦那で通っているので、名前は知らねぇ。そうだ、その下に
  俺の名前のシンタと入れておいてくれ」
 ということで、どういう電文になるかは、お察しの通り。
 生では初めて聴くことができた。こういう噺を継承してくれるのは、私は実に嬉しい。
 この日の一席目のマクラでは、昨年のNHK新人演芸大賞での裏話を話してくれたことを思い出す。
 若手が、こういうネタを演ってくれるのは、嬉しい。かつての名作で埃をかぶっている噺がどれだけあるだろうか。
 この人の高座、客席を明るくさせる力を持っている。今後も期待したい。


 次に、他の高座を寄席の逸品賞候補の複数の高座も良かったのだが、こちらの賞で選んだあの人のあの高座。

<寄席のハプニング大賞>
桂南喬『出来心』途中まで&師匠小南の思い出
>新宿末広亭 下席 夜の部 6月29日
2018年7月1日のブログ
 膝前は、大好きなこの人。ネタを三分の一位進めたとことで、前座がネタ帳を持って出て来た。ネタがツイたようだ。ということは、私が入場する前になるなぁ。
 開口一番ではないだろうし、二ツ目でもなかろう。きく麿か文蔵の代演の燕路だろうか。
 南喬も、他のネタを急いで考えていたようだが、持ち時間を考え、前座時代の師匠先代桂小南の思い出を語ってくれた。
 真夏の地域落語会がハネたあとに喉が渇いたので、師匠に言われて自動販売機で飲物を買ったのだが・・・という二つの逸話の内容は、秘密。
 こういうハプニングも、寄席の楽しみだねぇ^^
 ネタがツクというハプニングでは、2010年10月に、末広亭での三遊亭鬼丸の真打昇進披露興行での正蔵を思い出す。
 披露目の口上の司会で馬風を飛ばして小三治を紹介して馬風に睨まれやり直した。
 後半、クイツキが正蔵で、彼が高座に上がると馬風が袖に顔を出し、睨みつけた。まぁ、お遊びなのだが、やや動揺した正蔵が、十八番の『味噌豆』を始めると、楽屋から前座が飛び出して耳打ち。噺がツイたのだ。司会のことを考えていて、ネタ帳をしっかり見なかったようだ。結局『ハンカチ』に替えたが、なんとも情けない高座だった。
 
 それと比較すると南喬は堂々としたもので、残り時間を考え、得がたい師匠小南との旅の逸話を聞かせてくれた。なかなか、あんな高座には出会えないなぁ。

 さて、ということで、寄席の逸品賞と特別賞は以上。

 次回は、マイベスト十席の選択になる。


by kogotokoubei | 2018-12-27 08:56 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 さて、末広亭の夜の部。

 客席は、椅子席は七割ほどで始まり、入れ替わりはあったが、ほぼ終演まで変わらなかったように思う。
 桟敷は、三割位で始まり、その後五割位になって、仲入りで再び三割程度に減ったように思う。今松のトリがあるのに、仲入りで帰ったアベックを数組見かけたが、クリスマス・イブのディナータイムだったのだろうか・・・・・・。
 また、仲入りから入場した方は、真の今松ファン(?)かと察する。

 出演順に、感想などを記す。

三遊亭ぐんま『二人旅』 (9分、16:49~)
 今年一月池袋の下席で『芋俵』を聴いており、二度目。白鳥の二番弟子。
 茶屋の婆さんが、なかなか可笑しい。
 選んだ師匠から察するに新作をやりたいのかと思うが、こういう古典をしっかり稽古することで、基礎ができていくと思うし、潜在能力はあるように思う。
 それにしても、少し髪の毛が伸びてきたなぁ。
 もう少し見た目がすっきりしていれば、高座全体の印象も良くなるのだが。

初音家左吉『たらちね』 (12分)
 今年は六月の池袋で『代書屋』を聴いている。
 来年九月に真打昇進が決まっているが、精進する必要があるだろう。
 前回も書いているように、見た目は林家しん平に似た派手さがあるのだが、高座が地味すぎる。メリハリというか、何と言うか、表現が難しいのだが、華が欲しい。

丸山おさむ 声帯模写 (9分)
 昭和天皇、そして、秀樹、ひろみ、五郎の御三家(新御三家?)のマネ。
 似ているかどうかはともかく、昭和天皇のマネ、まったく笑えない。

古今亭志ん丸『あくび指南』 (14分)
 この人、結構好きだ。
 個性的な見た目と声、実に落語家らしい(?)人。
 短縮版ではあったが、稽古ごとで入門時に師匠に渡す「膝付き」なんて言葉も登場させるところが、なかなか結構。
 実は、今年、大学の同期会での旅行とテニス仲間との合宿の宴会で披露した『真田小僧』は、この人の音源(かつてニフティが主催していた「ぽっどきゃしゅてぃんぐ落語」)を元にしていた。「薩摩へ落ちたか」のフルバージョンで、実に良いのだ。

古今亭菊之丞『長短』 (13分)
 長さんが上方出身という型は、初めてのはず。
 芸達者は、どんな噺もしっかりこなすなぁ、と感心しながら聴いていた。
 短七の気短さが、実にスピーディかつリズミカルで楽しい。
 その短七が煙草を「三十数服」吸った、という設定だけ、ちょっと違和感があったが、短いながらも久しぶりにこの人の高座を堪能。

ストレート松浦 ジャグリング (12分)
 いつもながらの卓越した芸。特に、デビルスティック(両手の棒で傘などを空中に引き上げる芸)は見事。しかし、ボール(お手玉)で、珍しい落球。勝丸と同様、この日、ピン芸の色物さんには、厄日だったかも^^

橘家半蔵『桃太郎』 (14分)
 ずいぶん久しぶりだと思って調べたら、六年前、2012年の同じ師走下席で、『祇園会』を聴いていた。ほとんど忘れているが、その時のトリの今松の『品川心中ー通しー』は、結構覚えているのだ。
 円蔵の弟子らしい明るさは結構なのだが、今一つ笑えなかった。

桂文雀『風の神送り』 (13分)
 この人は、他の噺家さんではあまり聴かない『木火土金水(もっかどこんすい)』や『虎の子』などを演ってくれるので、楽しみだったが、この日はこのネタ。
 ということは、今松は、この噺ではない、ということ^^
 今松以外では、東京の噺家さんで初めてだが、なかなか楽しい高座。
 もう少しだけ体格が増えると、良い味が出るとは思うが、それはなかなか難しいかもしれない。今のままで、珍しいネタを取り上げ、歌丸さんのような芸風を目指すのも悪くないかもしれない。

ぺぺ桜井 ギター漫談 (13分)
 ギターは、聴く者を少しハラハラさせるが、出演していただけるだけで、嬉しい。

三遊亭歌之介『母ちゃんのアンカ』 (16分)
 客席は昼の部ほどはノリが良くないせいもあって、この人にしては、マクラで笑いが起こらない。そんな空気からのネタ選びかと察する。
 いわば、この人の作品の中では、人情ものだが、この日はノリが今一つだったかな。
 来年の円歌襲名披露興行には、なんとか駆けつけたいものだ。

桂南喬『金明竹』 (16分)
 仲入りは、大好きな、この人。
 高座に登場する姿から、なんとも言えず、良いのだよ。
 短縮版で、「骨皮」の前半は割愛し、いきなり謎の上方者が登場。
 例の口上は、三回だったが、与太郎もお内儀さんも実に結構。
 噺家によって口上の内容は違うが、私も覚えている三代目金馬の型だった。
 
 ここで道具七品について、薀蓄を。
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佐藤光房著『合本 東京落語地図』(朝日文庫)
 佐藤光房著『合本 東京落語地図』からは、何度か記事で引用しているが、この本に道具七品の説明があるので、少し長くなるが、せっかくなので(?)ご紹介。

 「祐乗、光乗、宗乗」は室町から江戸時代まで続いた金工の後藤家の初代、四代、二代。金馬はなぜか光乗と宗乗の順序を入れ違えていた。「三所物」は刀剣の付属品で目ぬき、小づか、こうがい。
 「備前長船則光」は備前物の代表的な名刀だ。「横谷宗珉」は後藤家と張り合った江戸時代の金工。「四分一こしらえ」は銅三に銀一の合金。「柄前」は刀の柄、またはその体裁。
 「古たがや」は「古鉄刀木」。鉄刀木(たがやさん)はマレーなどに自生するマメ科の高木で、堅牢美麗な建築器具材料。
 「埋もれ木」は地層に久しく埋もれて堅く炭化した木。
 「黄檗山」は京都宇治にある万福寺の山号。ここに「金明竹」という中国伝来の竹が産したらしい。
 (中 略)
 「のんこう」は京都の楽焼本家の三代、道入の俗称。
 「風羅坊」は芭蕉の俳号の一つ。「正筆」は「真筆」。
 「沢庵」は、たくあん漬を発明した徳川初期の禅僧。「木庵」は、承応三年(1654)に中国からインゲン豆を持って来て黄檗山万福寺を開いた「隠元」の弟子で、万福寺の二世。この三人の書画を交ぜて張ったのが「張り交ぜの小びょうぶ」。
 最初にテニス仲間との旅行の宴会でこの噺を披露した時は、上記のような内容を箇条書きにしたメモを用意して配布したことを思い出す。

 あらためて南喬の高座。こういう前座噺でも、芸達者が演るとこれだけ味が出る、という見本のような高座、寄席の逸品賞候補として、をつけておこう。

 仲入りで一服しながら、居残り仲間に途中報告のメール^^
 
 さて、後半だ。

柳家さん助『十徳』 (12分)
 二ツ目さん弥時代にはよく聴いたが、さん助では初だ。
 この出番がクイツキと言って、「席亭から、寝ているお客さんの肩に食いつけ」と言われている、と笑わせる。
 この噺、二年前に「柳家喬太郎プロデュース」と題した“とみん特選寄席”で、辰のこで聴いて以来。
2016年8月23日のブログ
 ちなみにこの会は、居残り仲間のお一人M女史が運営に関わっていらっしゃって、来年二月にも、喬太郎プロデュースの会が開催されるのだ。末広亭にもチラシがあった。
 ご興味のある方は、ぜひこちらの都民劇場のサイトでご確認のほどを。
都民劇場のサイトの「とみん特選小劇場」のページ
 さて、この噺。「十徳(じっとく)」が分からないと、噺を聴いていてもイメージが湧きにくい。以前にも紹介したことがあるが、落語を調べる際、度々お世話になる「落語の舞台を歩く」のサイトから図を含めて、ご紹介。
落語の舞台を歩く「十徳」
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(僧服の「直綴(じきとつ)」の転という) 衣服の名。素襖(すおう)に似て脇を縫いつけたもの。武士は葛布(くずふ)で白または黒、胸紐あり、中間(ちゅうげん)・小者・輿舁(こしかき)などは布を用い胸紐がなく、四幅袴(よのばかま)を用いる。鎌倉末期に始まり、室町時代には旅行服とした。江戸時代には儒者・医師・絵師などの外出に用い、絽・紗などで作り、黒色無文、共切れ平絎(ひらぐけ)の短い紐をつけ、腰から下に襞(ひだ)をつけて袴を略した。
 「じきとつ」--->「じっとく」なんだねぇ。
 「十徳」もそうだし、上記の説明文にも「葛布(くずふ)」や「中間(ちゅうげん)」など、ルビをふらなくては分からない言葉が、時代とともに増えていく。
 だからこそ、落語の存在価値もあると、思うのだ。
 さて、さん助の高座だが、得意がって両国橋や一石橋の名の由来を語る隠居の表情が生き生きしており、しっかりクイツキの役割を果たした。二ツ目の頃に聴いた『かぼちゃ屋』や『もぐら泥』『熊の皮』などを思い出すが、この人の真打としての高座、もっと聴きたくなった。

ホームラン 漫才 (11分)
 正月の某局のテレビに出演するかもしれないが、もしかすると出ないことになるかもしれないから、詳しいことはネットで書かないで、とのこと。
 だから、秘密^^
 もし出演する場合のネタを披露してくれた。ぜひ、テレビで確認したいものだ。

桂ひな太郎 漫談 (14分)
 六十五歳以上の四人に一人が認知症になり、四人に二人は癌になる、などの話は、そのまま暗いムードのまま転換せず、笑いに結びつかないまま、なんとも盛り上がりのない漫談になった。
 この人は、成年後見制度普及のための成年後見落語を自治体の要請を受けて行っているらしいが、そういった会でのマクラと寄席とは違う。
 かつての志ん朝門下の志ん上ではないか。漫談でもいいから、笑いになる一席を願いたい。さん助やホームランが温めた客席が冷え切った。

桂才賀『カラオケ刑務所』 (14分)
 新作落語台本募集企画の二年前の準優勝作品という説明、実は二年前にも聴いている^^
 客席の笑いはとつことができたが、私としては、漫談でもいいので、そろそろこの噺以外の高座に出会いたい。とはいえ、数年前は合びき(小さい座椅子)が必要だったことを思うと、元気な高座を聴くことができたことを喜ぶべきか。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (7分)
 たった七分で、主要演目を披露し、失敗なし。流石である。

むかし家今松『火事息子』 (35分、~21:05)
 さて、トリの今松。
 どんな噺を聴かせてくれるかと思いきや、「江戸では火事が~」と、この噺。
 嬉しいじゃないの。
 今松は、そのイメージに反して(?)、表情豊かに登場人物を演じ分けることを、この高座でも再認識した。まず、籐三郎を育てた婆や(乳母?)の表情が、なんとも良い。
 また、番頭の人の良さが、その造形からしっかり伝わる。
 この番頭は、この噺の重要な鍵を握っており、江戸でも大店の質屋である伊勢屋を勘当になった息子の籐三郎が、家々の屋根を伝って伊勢屋の蔵の上で、番頭が目塗りをするのに四苦八苦している場面で登場するわけだし、その籐三郎と会うのを拒む父親に、「(今は)他人だからこそ、会ってお礼をすべきではないですか」と諭すのも、彼だ。
 その番頭が、実によく描けている。
 また、この噺の勘所は、もちろん、後半の親子の対面。
 父親は、最初よそよそしい態度。
 火事見舞いに籐三郎と同じ年齢の若旦那が立派な姿を見せたことを思い出してもいたのだろう。その彫り物を見て、「大層立派な絵が描けましたねぇ・・・孝経の一つくらい読みなすったろう、敢えて毀傷せざるを孝の始めとす、身体に傷をつけないのが孝行の始めだというじゃないか」と皮肉たっぷりな言葉を発してしまう。
 これ、籐三郎には、キツイ。しかし、この緊張感が、息子が来たと聞いて、膝の猫を放り出して(猫好きは嫌な場面か^^)会いに出てくる母親の姿、言葉で緩和される。
 母親は籐三郎に、「お父さんだって、お前のことをどれだけ気にかけていたか」と言うと、父親が「なにを言っている」というようなやり取りが二度、いや三度くらいあっただろうか。これで、そうか、父親だって、そうだろうとも、と聴く者も心が和むのだ。
 そして、母親が着物を持たせて、と言うと、父親が、「捨てなさい、捨てりゃ、拾うものもいるだろうから」の謎かけを母親が合点し、「そうですね、箪笥ごと捨てましょ、千両箱も捨てましょ」で聴く者が救われる。
 籐三郎の科白はないが、その表情が察せられる。きっと、涙ぐんで下を向いているのだろう。そんな姿も見えてきた今松の高座だった。
 師走、私の落語納めを見事に締めくくってくれた高座、今年のマイベスト十席候補とする。

 まったくの蛇足ながら、この後、あの親子はどうなるのか、ということについて。
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江國滋著『落語手帖』
 江國滋さんの、処女作であり最高傑作と私が思う『落語手帖』で、桂三木助のこの噺を元に巻頭の章を綴っているが、三木助に、生前、このあとどうなるんだろう、と尋ねたことがあるらしい。
 その際の三木助の返事から、引用。
「そうですなァ。兄なり弟があれば別ですが、一人っ子ですし、まあ親も折れ、子も折れして、近いうちに家へ帰ってくるでしょうね。父親も公けに許すというのではなくて一応“黙許”という形でね。そいで昼間は老舗の若旦那として店に出て、火事だけは、ま、こりゃ趣味としてね・・・・・・。ええ、ガエンの足を洗うことも、親方に手土産でも持っていって、みんなを集めて、今度堅気になりますっていえば、それで大丈夫でしょう」
 という。これまた滋味掬すべき名解釈をあたえてくれたのである。

 なるほど、さすが三木助。

 野暮を承知ながら、こんな『火事息子』後日談を想像することも、悪くない。


 昼の開口一番から、九時間余りの、本年の落語納めだった。

 昼は主任の小ゑんをはじめとして新作を楽しみ、夜は、古典本寸法を堪能した、そんな一日。
 思った以上に、足腰に痛みなどはなく、まだまだ若い、などと思いながら、帰路についた。


 さぁ、後は今年のマイベスト十席を選ばなきゃ。

 少ない選択肢とはいえ、なかなかに難しいのである、これが。

 一人一席の縛り、どうしたものか、そんなことに悩んでいる師走である。


by kogotokoubei | 2018-12-26 12:47 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 昨日は、なんとか一日時間ができたので、今年の落語聴き納めとして、末広亭の昼夜居続けを決行(?)することにした。

 昼の部の主任は、小ゑん。
 夜の部の主任は、今年で最後となる今松。
 他の顔付けも悪くないこともあるが、やはり、師走を締める今松の最後の高座は、聴きたかった。

 11時40分頃に入場。
 椅子席はほぼ満席だったが、桟敷には余裕があって、好きな下手に場所を確保。

 まずは昼席から、出演順に感想などを記す。

春風亭与いち『道灌』 (8分、11:55~)
 開口一番は、初めて聴く一之輔の弟子。
 見た目は、ほぼサラリーマン(死語か?)風。
 妙な癖はなさそうだ。しばらくしてまた聴いてみたい。

鈴々舎八ゑ馬『?』 (9分)
 大阪出身の馬風門下の人だが、初めて。
 新作で、噺家に弟子入りするのを代行業者が行う、という内容なのだが、つまらない。柔らかな良い雰囲気を醸し出しているので、そのうち他のネタを聴きたいものだ。

林家楽一 紙切り (9分)
 ご挨拶代わりの「横綱の土俵入り」からリクエストで「駅伝」「藤娘」。
 体を揺らさないのは師匠とは逆の芸風を狙ってのことだろうが、なんとも言えない不思議な味を出してきたなぁ。

柳亭左龍『英会話』 (10分)
 この人で新作を聴くのは初めてだと思う。
 柳家金語楼作で、当代では古今亭寿輔が十八番としている。
 子供が英語を習いたいということで、家族の会話をすべて英語でしよう、ということからのお笑い。お母さんが「ママ」なら、お父さんは「マスター」なんてぇギャグは、今でも笑える。子供から「犬は?」と聞かれ父親が「ドッグ」、「猫は?」で「キャット」・・・「河童は?」で答えられないので子供が「レインコート」なんてぇやりとりには、『真田小僧』的な味もある。
 持ち味の目の表情が、父親の演技で光る。
 兄弟子の影響もあるのだろうが、たまには新作も悪くないし、この噺はニンだと思う。

古今亭志ん好『うなぎや』 (12分)
 ずいぶん久しぶりだなぁと思い、過去の記事を探ってみたら、白酒が横浜にぎわい座の地下秘密倶楽部(?)のげシャーレで「白酒ばなし」をしていた時の2009年10月、二ツ目志ん公で『厩火事』を聴いて以来。
2009年10月30日のブログ
 元は志ん五の弟子だった人でその後、志ん橋門下。
 古典的な容貌(?)で、明るき芸風というイメージはあるのだが、どうもリズムが今一つ良くない。
 途中の客と鰻屋の主とのやりとりではなかなか良い味を出していたので、残念。
 化ける要素は持っていると思う。
 三年後輩の弟弟子志ん八が二代目志ん五を継いだ。ぜひ、彼と一緒に、初代志ん五の芸を継承するため精進して欲しい。

林家ペー 漫談 (14分)
 いつものように根岸ネタから。
 ちなみに、途中で、二階席が開いた。
 赤羽のネタで、エレファントカシマシの歌(「♪今宵の月のように」)を一節披露したのに加え、八王子のネタからユーミンの「♪ルージュの伝言」をフルコーラス。
 ギターを抱えて歌えば、もっと良かったのにとは思うが、昭和16年生まれの喜寿とは思えない、若々しい歌を聴けて良かった。

春風亭勢朝 漫談 (15分)
 この人の漫談は、ほぼ一席のネタと言えるかもしれない。
 とにかく、引き出しが多い人だ。
 新しいところでは、文覚上人のことに少し触れて、「講釈師は客を見下しているところがある、特に最近人気の○○○」などと、刺激的な発言^^
 
林家正蔵 漫談&『味噌豆』 (13分)
 ペーが自分をいじった話を忘れてくれと言って客席は沸いたが、私は笑えなかったなぁ。いつものようなとりとめのないネタから、毎度のこのネタ。
 協会副会長としては、なんともむなしい高座と言わざるを得ない。

東京ガールズ 邦楽バラエティ (14分)
 「品川甚句」から「お伊勢参り」「勧進帳」へ。
 この人たちの芸は、聴けば聴くほど好きになってきた。
 三味線の基礎がしっかりしているなぁ、と思う。
 柳家紫文の弟子で、師匠の小料理屋の客だったことから入門とされているが、相当稽古に励んだのだろう。

鈴々舎馬桜『歯ンデレラ』 (15分)
 正雀の代演。
 前座が高座に、合びき(小さな座椅子)を用意した。
 後で馬桜のホームページを見て、高座に復帰したばかりであることを知った。
鈴々舎馬桜のHP
 このように書かれている。
昨年12月16日に「右足下肢性筋膜炎」で115日間の入院生活を送りました。
お陰様で四月に一度退院しましたが、9月に原因不明で再入院した時はさすがに能天気な私も緊張しましたが、こちらも先生の診察通りに二週間で退院出来ました。
 この後、今月同じ末広亭の上席、林家きく麿主任の席から復帰したことや、きく麿がこの噺の作者であることも書かれていた。
 シンデレラは残した靴が彼女を見つけるための重要な鍵となったが、その靴に代わるのが、入れ歯、という設定の新作。
 可笑しくはあるが、このネタを聴きながら弁当は食べにくいかな^^

柳家小団治『子ほめ』 (13分)
 昨年四月の末広亭で『ぜんざい公社』を聴いて以来。マクラは、オリンピックの金、銀、銅についての、前回と同じ内容。
 今回も、マクラの方が笑いを取っていたように思う。
 なんとも言いにくいのだが、昭和19年生まれという年齢相応の味わいを感じられないのが残念。

アサダ二世 奇術 (10分)
 師匠アダチ龍光が、昭和天皇に披露したという伝説(?)のネタ「パン時計」を披露。調べてみると、昭和46(1971)年の五月に開催された天皇の古希を祝う会での出し物だったようだ。何度もこの人の奇術は見ているのだが、初めてかと思う。
 なかなか見事。「今日は、ちゃんとやります」は嘘じゃなかった^^

柳家小満ん『悋気の火の玉』 (16分)
 仲入りは、大好きなこの人。
 最初の師匠文楽譲りのネタ、実は初めて・・・だと思う。
 花川戸の実家の本妻と、元花魁を囲った根岸の妾が、お互い藁人形で相手を呪い殺そうとして、五寸釘から始まってだんだん釘が長くなる。ついに、妾、そして本妻が相次いで亡くなるが、没後も火の玉となって花川戸と根岸から飛んできて、大音寺門前あたりで死闘を演じる。なんとも怖ろしい女の執念。
 本妻が生前よく言っていた「どうせ私のお給仕じゃ、おいしくありませんでしょ、フン」という科白がサゲで活きる。
 小品と言えるかもしれないが、二人の女性の造形、その二人に挟まれてなんとも情けない旦那の姿が生き生きとしてて、小満んならではの好高座。

 なぜ、火の玉が衝突するのが大音寺門前なのか。

 以前、池内紀さんの本『はなしの名人-東京落語地誌-』から紹介したことがある。
2016年6月24日のブログ
 池内さん、落語の舞台を散策し、このように書かれていた。
 本堂にすすんでいく途中、左手にニューと立っている、大きなまっ黒の石に気がついた。角の一方が削(そ)いだように欠け、基底に近いところも欠け落ちていて、奇妙なバランスで立っている。となりあった二面に文字が刻まれており、正面はおそろしく太い字体で「南無阿弥陀仏」、左面の細字は闇に沈んで読みとれない。ライターをつけて、おもうさま上にかざした。小さな炎のなかに、端麗な細字がクッキリと浮き出した。「為安政横死墓」。右肩に安政二年十月二日の日付。
 西暦でいうと1855年である。秋十月のこの日、江戸は大地震にみまわれた。世に安政大地震といわれるもので、倒壊、焼失家屋一万四千戸。死者四千余。いたるところで火事がおこり、浅草から千足にかけてもまた壊滅。吉原田んぼは死者で埋まった。
 落語は意味深い地誌をきっちりおさえている。ここは死者たちのつねに立ちもどるところなのだ。悋気のあげくの人魂もまた、落ち合うところは大音寺でなくてはならない。「悋気の火の玉」の舞台は慎重に選ばれ、意味深く語りつがれてきた。ここにはいまもなお、夜ごとにものさびしげな人魂があらわれ、人知れず消えていく。
 なるほど、大音寺が選ばれた理由は、十分にあるねぇ。

 この高座、寄席の逸品賞候補として、色をつけておく。

 仲入りで一服。
 落語愛好家のお仲間にメールで途中報告^^

 さぁ、後半。

林家彦いち『長島の満月』 (12分)
 マクラでは、大学時代の空手部の先輩が自分が主任の寄席に来て声をかけてくれたのはいいが・・・というネタでクイツキとしての役割を十分に果たし客席を温めた。
 本編は初めて聴いたが、後で調べると、CDにもなっているし、この噺を元にした絵本もある、知る人ぞ知るネタのようだ。
 ちなみに、彦いちは自分の体験を元にしたこの噺のような新作を、自分落語と称している。
 まず、この長島とは、彦いちが小学生時代を過ごした鹿児島と熊本の中間あたりにある島のこと。 高座でもそう説明していたが、まったくイメージが湧かなかった。
 そこで、鹿児島県長島町のサイトから、地図を拝借。
鹿児島県長島町のHP
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 なるほど、鹿児島と熊本との間の海に、浮んだ島だ。
 海流が強く、かつては船もこの島を遠回りして運航したと言われる、近くて遠い島。
 ネタはほんのサワリだけだったが、こんな内容。
 小学生時代を長島で過ごした男、安田(もちろん、モデルは彦いち)が、大学で合コンに参加。いわゆる「あるある」ネタでの会話になり、小学校の給食の思い出を順に話していくのだが、安田はじっくり思い出して「たまに、漁師さんが連った魚の刺身が出た」と言うと、「そんなわけねぇだろう」と反論される。
 長島では、小学生時代に、どういうものか知るために、役場の前に信号機ができた、そういう場所なのである。
 だから、都会で育った同級生の「あるある」ネタとは、大いなるギャップが、あるある、なのだ。
 北海道の田舎で育った私は、この感覚、少し分かる。テレビだって小学生時代には、民放が二局しかなかったから、学生時代、テレビの話題なので同級生と話が噛み合わないことがあったものだ。
 同じ国に住んでいたって、地域差によるカルチャー・ショックは存在する。
 だから、彦いちの高座、合コンの会話を聞いていて、「あるある」と私は頷いていた。
 この噺、全編を聴いてみたくなった。

ロケット団 漫才 (15分)
 十八番の四字熟語ネタなどで客席を沸かせた。
 大谷翔平と大仁田厚のネタ、萩本欽一の「欽ちゃん」と北朝鮮の「金」ちゃんのネタ、何度聞いても可笑しい。

林家しん平 漫談 (11分)
 黒紋付で登場したので、「さて、何をやる!?」と思ったが、漫談。
 浮気がばれないためには、家で携帯をいじらない、などの実体験に基づいた(?)話など。
 この人、古典ネタだったいろいろ持っているんだけどなぁ。
 昼は主任を含め新作派が多かっただけに、短くても古典ネタが聴きたかった。

夢月亭清麿『東急駅長会議』 (18分)
 権太楼と同じ、柳家つばめの弟子だった人として名前は知っていたが、生で聴くのは初。
 東急の駅長の集まる会議というネタで、駅そのものが擬人化されている。
 渋谷が議長役。それぞれの駅に不満がある。
 たとえば、目黒区の中心地にあるのに急行が止まらないことに不満を述べる祐天寺、など。
 議論の結果、各駅停車駅が多いので多数決の結果、10月9日「東急の日」1日だけ、急行停車駅と各駅停車駅とを入れ替えることとなった。
 その記念の日、妙蓮寺から老夫婦が、墓参のため祐天寺まで急行に乗る。
 たまたま新幹線に近いというだけで急行停車駅になった菊名を通過して喜ぶ夫婦が可笑しかった。また、昔は駅が汚かったくせに、南武線を不当に差別していた武蔵小杉を通過することにも喜ぶ夫婦は、「多摩川」「田園調布」「自由が丘」の3駅をも通過して快感を覚えていた。
 結構知っている路線なので、私も客席のお客さんと一緒に笑えたなぁ。
 古今亭駒治は、この噺に刺激を受けて創作したのか、などと思っていた。

翁家勝丸 太神楽 (14分)
 膝代わりは、この人。
 珍しく花籠鞠で、鞠を二個同時に移動させる夫婦鞠を三度失敗。一回目はネタか、と思ったが、二度目、三度目はネタではなかったと思う。
 結構、冷や汗をかいたのではなかろうか。
 なんとか締めくくったが、夜のストレート松浦にも、この失敗が伝染したような気がする。

柳家小ゑん『長い夜』 (33分、~16:39)
 ICレコーダーで高座を録音しようと思っても私は分かる、目黒の電気屋の倅だから、その手つきでメーカーだって分かる、というマクラは、定番ながら笑える。
 あの有名人が結婚式をあげた教会の幼稚園を卒業、というネタも可笑しかった。
 牧師に「今日は結婚式が多いですねぇ」と聞くと「大安だから」というのは、事実ではなかろうか^^
 この日、新作が多かったことにふれ、新作を創るのに擬人化をすることは安易だと、自嘲気味の批判。「たとえば、おでんが喋るとか」など自作を俎上にあげてから本編へ。
 初めて聴いた。
 「私は、空である」という男性のような「空」さんと、「私は大地です」という女性のような「大地」さんが登場。何ともスケールの大きな擬人化^^
 果たしてこれは天地創造のネタか、などと思っていたら、「空」が、「どれほど人間が進化したか見てみよう」ということで、天空から地球、それも日本を眺める、という設定。
 順番にこんな光景が登場する。
 ①高田馬場のスタバでお茶しようとしている女子大生
 ②新橋の居酒屋(チェーンの名は割愛^^)で飲んでいるサラリーマンの上司と部下
 ③北千住のデニーズで子供の誕生祝いをしている昭和の家族
 ④新宿ゴールデン街で飲んでいる二人の役者
 ⑤青山のバーで一人カクテルを飲む気取り屋の男
 ⑥渋谷センター街で騒いでいるラッパー
 
 それぞれの光景を空と大地の会話がつなぐ。
 いわゆる、オムニバス。
 ①では、彦いちのネタに登場する安田(モデルは彦いち)のような、田舎出身の女の子が、スタバで「レスカ」を注文しようとする、という話が、身につまされる^^
 同じ国に住んでいても、地域差によるカルチャー・ショックは確実にあるのだ。
 そのスタバでもっとも長い名の注文を知っているという女の子が、その名を言う場面は、ほとんど「寿限無」か「金明竹」で可笑しかった。
 ②では、課長が部下が係長に昇進するからお祝いでご馳走するというネタなのだが、喬太郎の『夜の慣用句』にも似た味がある。それにしても、あのチェーン店は行ったことがないけど、揚げシュウマイ、は食べたくなった。
 ③では、「なんでも食え」と言う元気なお父さんと、カレーライスと答える子供のいじらしさ、そして、三人の子が残したものでいいからと注文しない母親の姿に、ついウルウルしたぞ^^
 ④の役者二人の会話は、横文字をつないだ、ほとんど意味のないもので、なかなか風刺の効いた場面となっている。
 ⑤では、勘違い男がゴルゴ13のような、またはフィリップ・マーロウのような人物になりきろうとしてなりきれない滑稽さを描く。
 ⑥のラッパーたちの場面では、小ゑんのラップそのものに笑ってしまった。
 サゲは、この噺の題がヒントになる。
 
 それぞれのエピソードの内容も楽しかったし、話の区切りに「空」さんが両手を大きく広げてから場面転換を示す仕草にも工夫があった。
 この人、ただ者ではないなぁ、とあらためて感じた高座、今年のマイベスト十席候補としたい。
 今年は、六月の池袋上席で『フィッ』、同じ六月下席末広亭で『レプリカント』を聴いていて、私としては、ご縁を感じた年。
 今後は、独演会などにも行きたいと思う。
 今年六十五歳。
 昭和六十年九月の真打昇進は、志ん輔、扇遊、時蔵、正朝、そして才賀などと同期。
 これまであまり意識していなかった人だが、今年縁があって聴けた高座で、その実力を知ることができた。
 私にとって、今後の落語協会を背負って立って欲しい人の名前として、小ゑんの名も加わった。


 さて、これにて昼の部はお開き。

 おにぎりを食べ、一服して、夜の部に備えたのであった。
 お客さんはほとんど入れ替えになったように思う。
 クリスマス・イブか・・・・・・。
 あっしには、関係のないことでござんす、と青山のバーでドライマティーニでも飲みたい心境だった。
 
by kogotokoubei | 2018-12-25 20:53 | 寄席・落語会 | Comments(6)

 コンビニで買ったおにぎりを食べ、さあ、夜の部の始まりだ。

 開口一番から、聴いた高座の感想を記す。

春風亭かけ橋『狸の札』 (10分 *16:45~)
 初。柳橋の弟子らしい。狸を助けたのは、父の命日だったから、というのは初めて聴いたかもしれない。妙な癖はないように思うので、今後の精進に期待しましょう。

柳亭小痴楽『一目上がり』 (14分)
 この日のお目当ての一人。
 賛、詩、悟と進んで、六を飛ばして七福神、そして、最後は句。
 この人の持ち味であるスピードとリズム感が生きる好高座。
 あるインタビューで、小痴楽は、三三にこの噺を教わったと答えていたっけ。
 本来の噺の面白さを土台に、七福神の布袋を見た八五郎に「男の妊産婦?」と言わせ、医者の先生から「ついに、人間の可能性を越えたね」で笑わせたが、このクスグリも三三譲りなのかな。
 そのインタビューでは、落語家になったきっかけは、八代目柳枝の『花色木綿』を聴いたから、とのことで、私は嬉しくなったものだ。
 そうそう、この噺の詩は、根岸の亀田鵬斎の作。
 「近江(きんこう)の鷺は見がたく、遠樹(えんじゅ)の烏見易し」。大家は、「近くの雪の中のサギは目立たないが、遠くのカラスは黒いから目立つ」と言い、良いことは目立たないが、悪いことは直ぐ露見する、と説明する。つい、ゴーンの逮捕のことを思い浮かべていた。しかし、彼は“詐欺”だったけどね^^
 再来年には真打昇進かと思う。終演後に佐平次さんとの話題にもなったが、この先、彼がどう成長するのか、実に楽しみである。少し位は生意気でも、私はいいと思うよ。

春本小助・鏡味小時 太神楽 (10分)
 二人とも、初、のはず。
 五階茶碗を中心に。
 協会のHPを確認すると、この二人は、丸一小助・小時、という名もあるようだ。
 ボンボンブラザースの弟子のようだが、将来、洋服を着て演技するようになるのか、どうか。
 
神田阿久鯉 講談『天明白浪伝-徳次郎の生い立ち-』 (13分)
 同じ講談の鯉栄の代演でこの人。
 聴いたことあるなぁ、この人・・・と思って後で自分のブログを検索すると、2010年の10月、国立の花形演芸会の記事に、名前がある。
2010年10月30日のブログ
 しかし、感想は残っていない・・・・・・。
 もしかすると、喫煙室に行っていた、のかもしれない。
 あるいは、落語だけを記録していたんだっけか・・・覚えていない。
 さて、このお話。主役は、後に泥棒たちの勧進元になる神藤徳次郎。
 その徳次郎が子供時分、易者の弟子だった頃のお話。金持ちだけに盗みに入り、貧乏人にその金を配っていた義賊泥棒の天狗小僧が、市中引き回しにされている行列に、多くの町人が手を合わせているのを見て、徳次郎は泥棒になることを決意する。
 易の師匠、悟道先生の家を後にして、さぁ、どうやって泥棒になろうか思案していると、「泥棒だぁ、捕まえてくれぇ」の声。追われた男が一目散に自分の方へ走って来る。止めようと一瞬思ったが、これから泥棒になるのだから、先輩ではないかと見過ごす。泥棒から三十両盗まれた百姓の男。それは、娘の結婚の資金として、方々から借金した金だった。徳次郎、俺がなんとかすると約束。ついつい、師匠だった悟道の家に忍び込んで・・・後略。
 よどみのない語り口。なかなか達者な人だ。
 調べてみると、真打になってすでに十年。なるほど、と納得。
 それにしても、なぜ、八年前の記事で、この人の講談の内容が欠落していたのか、謎だ。

春風亭笑好『ぜんざい公社』 (13分)
 この人の高座への小言は何度か書いてきたが、その繰り返しにならざるを得ない。
 テレもあるのだろうか、言葉尻がはっきりしない。言いよどみも少なくない。とにかく、リズムが悪い。
 佐平次さんとの居残りでも、話題の一つになったが、噺本来の面白さを、ほとんど引き出せていないのだ。せっかく阿久鯉が温めた客席が、冷え込んだ。

ぴろき ウクレレ漫談 (11分)
 二階席が開いた。
 冷え込んでいた客席が、この人で温まる。
 若い女性客が反対側の桟敷に数名いらっしゃったが、目を見張りながら、笑っていた^^
 演出かもしれないが、それぞれのネタ、出だしの声が小さかったように思う。お疲れでなければいいが。

立川談修『長短』 (14分)
 昼の部は円楽一門から交替で出演しているが、夜の部は立川一門からの交替出演で、この日はこの人だった。
 佐平次さんは、高座が暗すぎる、というご評価だったが、私は、そう思われなかった。この噺なら、ああなるかなぁ、という印象。
 短七が「実は、禁煙してたんだ!」とわめく場面は、結構可笑しかった。
 しかし、この噺で味が出るには、もう少し年季が必要かもしれない。

三笑亭可龍『初天神』 (16分)
 ようやく、芸協の若手真打の、まっとうな高座。
 やはり、この人は上手い。また、最前列の十三歳の男の子を見てのネタ選びだろう。旬とは言えないが、良い選択だと思う。
 拙ブログを始める直前、2008年「さがみはら若手落語家選手権」の七回目の予選に行った。一之輔が出場していたからだが、会場投票ではこの人の『宗論』が一位。一之輔の『鈴ケ森』に私は一票を投じたが、僅差の二位だったことを思い出す。ちなみに、本選では、今の歌奴が優勝だった。

宮田章司 江戸売り声 (15分)
 奇術の北見伸の代演。
 最前列の少年を見て、「お若く見える」には笑った。
 ♪ひいらぎ 豆がら 赤いわし、なんてのはそろそろ旬。
 リクエストが殺到して、ちょっと慌てていたが、〆は、十八番のアメ売り。
 なんと、85歳。昭和8年生まれだ。
 芸協HPのプロフィールには生年月日は載っていないが、経歴が詳しく紹介されている。
 落語芸術協会HPの該当ページ
 せっかくなので(?)、引用。
昭和29年漫才師宮田洋容(故人)の門下生に なる。
昭和30年同門の宮田陽司とコンビを組み『陽司・章司』のコンビ名で漫才界にデビューする。その後文化放送のレギュラー番組を持つ傍らフジテレビ、テレビ朝日、日本テレビ等の、演芸番組に数多く出演し、昭和39年三沢あけみの専属司会者になる。そして昭和44年には日本テレビ「11PM」のレギュラーに抜擢される。昭和51年コンビ解消後、漫談家と司会者の2足の草鞋を履き、マヒナスターズの専属司会者になる。
 その後芸術祭賞を受賞した大道芸の『坂野比呂志(故人)』と出会い江戸売り声の魅力に取り憑かれる。坂野比呂志亡き後、現在日本で唯一人本格的な「江戸売り声百景」和風漫談家としてテレビ、各カーニバル、寄席等で引っ張りだこ、大忙しの毎日を送っている。
 こういうキャリアのある方なのである。
 ちなみに、漫才の宮田陽・昇の師匠でもある。
 お元気な姿を拝見でき、嬉しかった。

桂富丸 漫談&『?(飛行少年?)』 (17分)
 2014年の7月、同じ末広亭夜席以来。あの時も、漫談と新作だったが、あまり良い印象はなかった。
 今回も、同じような感想。米丸の弟子だが、スチュワーデスという言葉自体、新作として成り立たない。
 富士山のご来光を拝めなかった人に、とテカテカ頭を突き出すのも、どうなのか。
 ネタは、飛行機で騒ぐ子供がCAからオモチャの飛行機をもらって落ち着いた。ああいう子供が非行少年になる、などのつまらない地口をつないだ噺。
 こういう深い席にそぐわない印象を持った。

三笑亭茶楽『厩火事』 (15分 *~19:21)
 ようやく、お目当ての仲入り、この人の出番。
 いつもながらの丁寧で、知的なセンスを感じる短いマクラから本編へ。
 お崎さんも旦那も、よく描かれている。髪結い亭主の江戸っ子ぶりも良かった。
 時間調整のためか、後半が急ぎ目で少し慌ただしかったが、こういう人が、芸協の古典落語を支えていることを、再認識させる高座。


 さて、仲入りで、ここで帰って佐平次さんと居残り、の予定だったが、クイツキが松之丞。
 せっかくなので、佐平次さんと椅子席の後ろで立って聴くことにした。

神田松之丞『鼓ヶ滝』 (15分 *~19:46)
 落語にもなっているこのネタは、神田愛山から稽古してもらったとのこと。
 西行が攝津の鼓ヶ滝で、「伝え聞く 鼓ヶ滝に来て見れば 沢辺に咲きし たんぽぽの花」と詠んだ。うたたねをしているうちに夜になり、あわてて民家を探した。なんとか民家にたどり着いた西行。歌人であることを伝えると、鼓ヶ滝で詠んだ歌を見せて欲しいと主が言う。結局、この老夫婦と娘の三人に、自作の歌を直され、「音に聞く 鼓ヶ滝をうち見れば 川辺に咲きし たんぽぽの花」となった、という内容で、落語と同じだが、ところどころに、この人らしい演出があった。
 メモっていないので、記憶のみで記す。
 愛山は実に上手い方だが、暗い。その愛山に稽古してもらってから感想をお願いすると、「お前の講談は・・・暗い」と言われた、で私の予想を超える爆笑が起こる。
 また、講談というものは、民家があって欲しいと思うと、最後には民家が出てくるもので、などと挟むだけでも、受けている。
 若い女の子のお客さんの反応もあれば、結構高齢の方も大笑い。
 悪くはないが、あんなに笑いが起こる高座とは言えなかろう。


 やはり、松之丞の人気がバブルになってきたなぁ、と思いながら、佐平次さんと外に出て、楽しみだった居残りへ。

 近くの居酒屋さん、満員だったが、すぐに二人分の席が空いた。

 この日の高座のことや、いろんな話題で、ビール、熱燗、ビールが美味しい、久しぶりの居残りだった。


 あらためて思うが、芸術協会は、このままでは問題ありだ。

 かつて、末広亭の席亭から苦言を呈されてから、歌丸会長をはじめ幹部も危機感を共有し、若手の台頭などもあって噺家さんたち全体の芸も良くなったから、お客さんも戻ってきたと思う。

 しかし、歌丸会長の重しがなくなった今、また元に戻る兆しがある。

 この日の高座のいくつかは、かつての芸協の悪い面が目立った。

 十分でも、ネタは出来る。
 
 漫談を禁じるくらいの小遊三会長代行副会長のお達しがあっても不思議はなかろう。

 帰宅の電車では、そんなこと思っていた。



by kogotokoubei | 2018-11-26 21:35 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 日曜恒例のテニスが休みとなり、久しぶりに新宿末広亭での居続け。

 芸術協会の席で、昼の主任は好みの寿輔。夜は松鯉だが、仲入りの茶楽で切り上げて、佐平次さんと飲みに行くつもりだった。
 佐平次さんも寿輔が好きだし、茶楽は未見でいつか聴きたいとのことだったのでお誘いしたら、ご都合が良く久しぶりのミニ居残り会を楽しみに新宿三丁目へ。
 
 少し早めに行き、末広亭近くで昼食。コンビニで夕食やお茶を士仕込んで、11時40分頃に入場。

 椅子席は六割ほどの入りで始まったが、最終的にほほぼ満席になっていた。
 空席の目立つ桟敷で、好きな下手の前方に場所を確保。

 お客様の来場を待っていたのだろう、開口一番はやや遅めのスタート。

 出演順に感想などを。

柳家ふくびき『やかん(のようなもの)』 (4分 *11:55~)
 初。蝠丸の弟子とのこと。まだ入門から間もないのだろうし、この短さでもあり、なんとも評すことができない。

古今亭今いち『動物園』 (12分)
 客席に「落語初めての方?」とか「末広亭初めての方?」と質問したところ、若い女性を含め結構な人数の手が上がった。そういう人たちが笑ってくれたようには思うが、地口のマクラ、私には笑えなかった。本編は、入門から六年、二ツ目になって三年目か・・・名前の通り、いまいちかな。

コントD51 コント (11分)
 この兄弟によるコンビが、椅子席が七割ほどになってきた客席を一気に温めた。
 お兄さん(けんじ)のハマリ役である、オレオレ詐欺に騙されそうになったお婆さんが、大衆演劇風の踊りで舞台を縦横に飛び回る姿で、落語初体験のお客様を含め、笑いが起こる。弟(まさし)が兄の杖(ステッキ?)を受ける間合いも慣れたもの。

三遊亭金の助『子ほめ』 (16分)
 初。金遊の弟子で、今席から、二ツ目とのこと。伊勢屋の番頭との会話、上下は番頭が上手、八五郎が下手のはずだが、逆だったなぁ。出来立ての二ツ目さんとはいえ、これはいけません。

三遊亭右左喜 漫談 (9分)
 初。寿輔と同じ三代目円右の弟子だったようだ。短くする必要があったのかもしれないが、この漫談、まったく笑えなかった。

山上兄弟 奇術 (11分)
 お兄さんだけの登場。大きくなったねぇ。トランプ、リングなどの定番ネタとはいえ、なかなか鮮やか。しかし、そろそろ「兄弟」という看板で許されていた客席の寛容度も、次第に消えていく時期になりかかっているように思う。そして、彼らもそれを分かっているようだ。途中で自分と弟のそれぞれのイベントの案内があったが、ピンで立つ準備をしっかり進めているに違いない。北見マキ亡き芸協のマジシャンの後継者として、期待している。

三遊亭萬橘『紀州』 (14分)
 昼の部は、トリの寿輔を別として、この高座が一番良かった。
 円楽一門から交替出演の枠がこの人だったことも、末広亭に来た理由の一つだった。
 本人も髪の毛の白さのことを言っていたが、きつつき以来久しぶりの私も、その白さには驚いたなぁ。
 地噺でいろいろクスグリを入れることができるネタである、豊川の実家へ帰る際、母親が新幹線の豊橋駅に迎えに来る時の様子などで、客席を爆笑させる。なるほど、その母にして、この子か^^
 クスグリ七割の噺だが、ネタの骨格として支える残り三割のうちで重要なのが、小田原城主大久保加賀守が尾州公と紀州公の前に進み出ての、「この度、七代将軍ご他界し、お跡目これなく、しも万民撫育(ぶいく)の為、任官あってしかるべし」の科白。これを聞いて思い出した。数年前、私がテニス仲間との旅行の宴会で披露した時には、この科白を言わなかった。そうか、この科白入れて、また、やってみようか^^
 昼の部全体を通じても、際立った高座に、寄席の逸品賞候補として、色をつけておく。

桂小文治『浮世床-本-』 (14分)
 久しぶりだが、少し痩せたかな。
 相変らず、品のある高座。
 芸協で、こういう品格を感じるのは、小柳枝とこの人かな。
 前半は、戦争ごっこで「へい力」を競う、などやや下がかった内容もあるのだが、この人では下品に感じない。
 姉川の決戦の部分は、少し急ぎ気味だったが、寄席らしい結構な高座。

新山真理 漫談 (13分)
 芸協が「公益社団法人」、落語協会は「一般社団法人」と強調する。私はその違いについて過去に記事を書いているが、漫談のネタとしては、あまり笑えない。
 そこまで敵対視するような内容には興醒めだし、いつもの楽屋の高齢者が薬を飲む時間、というのも飽きてきた。鉄板ネタとまでは言えないから、マンネリとしか言いようがない。

雷門助六『仕立おろし』 (14分)
 この高座で、二階席が開き、途中からお客さんが入って来た。やや、騒がしかったぞ。
 この人の笑いを誘うような“間”、相変らずだが、好きではないなぁ。
 師匠八代目なら味わいのあった本編も、どうもリズムが悪く、笑えない。


三遊亭円遊 『?』(漫談?) (15分)
 九月で七十五歳になったとのこと。昭和18年生まれの未なので、私の一回り上。
 女房と孫の機嫌を取り合う様子を、ギャグを挟みながら、という内容。ネタなのか漫談なのか、不明。
 受けが悪いと上手の楽屋を見て「今日の客はダメだ」とでも言いたい素振りをするのは、私にはまったく可笑しくなかった。あれだけくどいと「笑えないのは、演者のせい!」と反発したくなるじゃないか。
 かつて、「底抜け脱線ゲーム」に出演していた若円遊も、頑固な爺さんになってしまったなぁ、という印象。

新山ひでや・やすこ 漫才 (14分)
 十八番の「最高」で客席を沸かす。こういうベテランの色物は、安心して観ていることができる。

三遊亭遊三『ぱぴぷぺぽ』 (16分)
 仲入りは、この人。
 初めて聴いた新作。
 贔屓の旦那が宴席で無茶ぶりをするので、「あいうえお~」で指定された曲を歌ってみせる。「青い山脈」や「りんごの歌」を披露。次に「ぱぴぷぺぽで、歌え!」となって、これもなんとかこなしてしまう、という内容。
 実体験に基づいているようではあるが、さて、どうなのかな^^
 客席に合わせたのかもしれないが、なかなか珍しいネタを楽しむことができた。
 昭和13年生まれ。この歌、実際にボケ防止に効果ありそうだ。

古今亭今輔『札-1グランプリ』 (16分)
 クイツキは、寿輔の弟子のこの人。
 落語初体験のお客様が多かったからかもしれないが、いつもの「パネルクイズ アタック25」に出場した話から、本編へ。
 2013年の6月に池袋で聴いている。
 あらためて、こんなあらすじ。
 財務省が、次の紙幣(お札)に印刷する有名人を決めるためにオーディションをすることになった。いわゆる“歴女”に任せたら一万円は直江兼続、五千円は真田幸村、千円は伊達政宗になり、ドラマで演じたイケメン俳優を起用しろ、ということになるから、オーディションを行おうということになった次第。さて一人目が太宰治、二人目は坂本龍馬(というか、武田鉄也)、そして三番は織田信長。太宰の面接では、彼の作品が散りばめられて、最後は、グッバイ。龍馬は、中途半端に似た武田鉄也が笑える。信長は、やや狂気の姿。
 初落語のお客さんを含め、客席を十分に温めた。

松乃家扇鶴 俗曲 (15分)
 6月の国立演芸場で、初めて聴き、なんとも言えない芸に魅かれた。
 あの時と同様、 高座に、ちょこんと座って、ゆるゆると始まる。
 まずは ♪ストトン節、から。
 男は、女性の「捨てちゃ、イヤーン」というその声に弱い。「それでは、皆さんもご一緒に」で、客席から微妙な笑い。
 ♪猫になりたや、も十八番なのだろう。
 代々の大相撲の横綱の名を並べ始めたが、6月とは違って、途中でシコ名が出てこない。鶴竜は二階席のお客さんに助けてもらったのだが、稀勢の里は登場しないまま。休場ということか^^
 円遊と同じ、昭和18年生まれ。こんなこともあるさ。

三遊亭円丸『悋気の独楽』 (15分)
 談幸の代演。
 調べてみたら、2012年4月の国立で、初めて歌丸の円朝もの『双蝶々 雪の子別れ』を聴いて驚いた日に、文治の代演で『宮戸川』を聴いていた。
2012年4月14日のブログ
 定吉の可愛さ、お妾の色気、女房の怖さ、など短い高座でもしっかり描かれていて、好印象。

三遊亭金遊『開帳の雪隠』 (13分)
 未見で、楽しみにしていた人の一人。
 『心眼』は、当代一、と評する落語愛好家もいらっしゃるようだ。
 さすがに寄席での尺、そんな大ネタはかかるはずもないが、この珍しい噺を、小気味良く演じた。
 声が良い。アナウンサーにでもなれそうな声質。
 回向院の前にある駄菓子屋さんの老夫婦が主人公の、地味な噺だが、味わい深く聴かせてもらった。
 この噺は、四年前の鈴本夏祭りで、三三で聴いて以来。
2014年8月21日のブログ
 寄席ならではのネタ、とも言えるだろう。 
 寄席の逸品賞候補としたい。

江戸家まねき猫 動物ものまね (6分)
 膝代わりは、ボンボンブラザースの代演でこの人。
 馬と鹿の会話、好きだなぁ。短いながら、しっかりトリにバトンを渡した。

古今亭寿輔『しりとり都々逸』 (26分 *~16:33)
 最前列に昨日も来ていたお客さんがいらっしゃって、やりにくいと笑う。
 昨日は、二列目に座っていたお子さんが、ゲラゲラ大きな声で笑うので、予定していたネタを変更したと語る。
 この日も最前列には十三歳の少年。
 マクラで「うどんも、蕎麦も、ラーメンも好きで」と言ったので、「ラーメン屋か!」と喜んだが、こちらのネタ。
 超高速、都々逸や川柳の掛け合い、という感じ。
 登場したものを、少しご紹介。

 「恋に焦がれて 泣く蝉よりも 泣かぬ蛍が 身を焦がす」
 「イカとタコから 生まれた子供 これがほんとの イカレタコ」
 「オシリ九つ 持ってる動物 これがホントの 九尻鬼(吸血鬼)」
 「吸血鬼 アル中吸って 二日酔い」
 「惚れた数から 振られた数を 引いて残るは 女房だけ」

 『雑俳』の川柳・都々逸版という感じ。
 一つづつのネタで笑っている間に次に進んでいる、という調子だった。
 このネタ、スピードとリズムが実に大事だと思うが、寿輔は、ほとんど言い間違えもせず、突っ走った。
 寿輔らしい高座で楽しめたのだが、私は『ラーメン屋』か古典を期待していたのだよ。


 さて、ここで昼の部がお開き。

 一階は桟敷を含めほぼ満席、二階も半分くらいはお客さんが入っていたのではなかろうか。

 一時、芸協の寄席の客の入りが悪く、ここ末広亭の席亭から苦情があったことを、遠い昔のように思い出す。
 しかし、日曜だからこその入りだろう。

 ベテランが漫談でお茶を濁す、かつての悪弊が見受けられた。
 また、笑いを催促するような間であるとか、笑いがないのは客のせい、とでも言うような洒落では済まない不遜な態度にも閉口した。
 亡き歌丸会長の存在が大きかったことを、感じないわけにはいかない。
 
 後半は、さあどうなるものか、と思いながら、少しだけ佐平次さんと立ち話。
 夜の仲入り、茶楽を聴いて出ましょうか、となった。

 夜の部は、次の記事で。

by kogotokoubei | 2018-11-26 15:03 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 一日時間ができた。

 寄席、落語会をネットで調べてみたら、落語芸術協会のサイトで、立川談吉と春風亭傳枝の二人会で、実に木戸銭が良心的な会があることを知り、昨日電話して予約した次第。
 談吉も傳枝も、過去に一度だけ聴いたことがある。

 家元最後の弟子である談吉は、今年三月「さがみはら若手落語家選手権・本戦」で『野ざらし』を聴いた。
2018年3月12日のブログ

 私の好きな八代目春風亭柳枝を彷彿とさせる部分もあり、好印象だった。

 傳枝は、古くなるが、2012年6月に池袋演芸場で『壷算』を聴いている。
2012年6月17日のブログ

 二人ともまた聴きたいと思っていた。

 
 場所を確認するために「池袋GEKIBA」のサイトを開く。
池袋GEKIBAのサイト

 これが、今回と次回の落語会のチラシ。
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 最近は高い木戸銭の落語会が増えている中、なんと千円。

 少し早めに池袋に着き、会場の場所を確認してから、昼食をとろうとしたら、すぐ近くに、500円ランチのメニューの看板のある、「135酒場」という店を発見。

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 メニューから中華屋さんのようだが、贅沢なランチなどとるつもりもなかったので、入った。
 玉葱と豚肉と玉子炒めの定食を選択。これが、ボリュームもそこそこあって旨かった。

 まだ時間が少しあるのでコーヒーを飲みたいと思っていると、すぐ近くに、「DREAM COFFEE」なるお店がある。

 豆も売っているお店のようで、ブレンドが220円とのこと。迷わず入った。

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 このコーヒーは、なかなかに美味い。

 落語会の木戸銭、昼食、そしてコーヒーまで良心的価格の池袋、いい町だなぁ、などと思いながら、持参した文庫を読みうちに、ちょうど開場の1:30となり、すぐ近くのビルへ。

 ここが、池袋GEKIBAが三階にある、ビル。私のガラケーと雨のせいで(?)ちょっとボケているがご容赦を。

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 こちらが、ビルの正面のテナントの案内板。

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 エレベーターで三階に上がると、広いとはいえない受付が目の前にあり、席亭さんがいらっしゃった。

 前日電話したので、前売り価格の木戸銭千円を払い、中へ。

 お一人お客さんがいらっしゃった。
 パイプ椅子が一列に八席で三列、二十四席。
 高座は、こんな感じ。

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 後で懇親会に参加させていただき分かったのだが、このステージは演劇が主体なのだそうだ。

 連雀亭に似ているが、もっと狭い。

 最終的に、お客さんは六名。

 これで、採算がとれるのか、などど内心思いながら、二時ちょうどに開演。
 二列目に座ったが、高座とは目と鼻の先。
 傳枝ー談吉-傳枝の三席、順番に感想などを記す。

春風亭傳枝『長短』 (23分 *14:00~)
 この会は十人の若手の噺家のうち二人づつで開催していると説明してくれた。談吉との会は、初めてらしい。立川流のことから、今年一月に若くして亡くなった柳家小蝠の話題に。内容は、秘密。
 鯉昇一門のことなども含む13分ほどのマクラからこの噺へ。
 NHK新人落語大賞で、笑福亭呂好が上方では珍しくこのネタで勝負していたことを思い出した。
  長さんが与太郎にならず、短七との掛け合いもリズムがあった聴いていて心地よい。
 呂好の高座で審査員の権太楼は饅頭の食べ方にダメ出ししていたが、栗饅頭の食べ方も、実に美味そう。
 長さんが、夜中にはばかりに行くところから語った雨、というのもこの日の空に相応しいと思っていたら、懇親会で、雨だからこのネタを選んだとのこと。なるほど。そういう感覚、私は大事だと思う。
 師匠のような独自のくすぐりなどは挟まず、噺本来の味で楽しませてくれた。
 この人、古典が好きなんだなぁ、と思わせる高座。
 
立川談吉『野ざらし』 (23分)
 秋の花粉症らしい。薬を飲んでいるが効き目がなくなってご隠居が鼻水をたらしてもご勘弁と、笑わせる。
 この会が月二回あるとはいえ、もう42回目なんですねぇ、と感慨深く語っていた。
 本編は、三月に「さがみはら若手落語家選手権」でも聴いたこの噺だった。
 家元版なのだろうが、三代目柳好と八代目柳枝の良い部分が程よく配合されている印象。柳好で有名な「サイサイ節」、♪鐘がボンとなァりゃさ 上げ潮ォ 南さ、もなかなか良かった。
 NHKで柳亭市弥の高座について、権太楼が「座布団の中を出なさい」と忠告しちたが、この人は、八五郎の動きが十分に座布団から飛び出す躍動感があった。
 時間の関係もあるのか八五郎の仕方噺でサゲ。
 懇親会で、つい「サゲまでやらないの?」と聞いてしまった。あの後つまらなくから、とのことだったが、確かにそういう面もある
 でも、私は、この噺、時間が許すなら、サゲまで聴きたいなぁ。
 そんなことを含め、このネタについてはずいぶん前に書いたことがある。
2014年3月25日のブログ
 初代円遊が今に伝わる賑やかな噺に改作し、三代目柳好、八代目柳枝を経て、家元から談吉に伝わっているネタなのだろう。家元も途中でサゲたのかもしれないが、この日とならサゲまで出来ると思う。
 当代でサゲまで聴いた人には花緑、扇辰、小文治などで聴いていて、どの高座も良い印象を持っている。花緑が稽古してもらった小三治は生では出会ったいないが、音源を楽しんでいる。
 ぜひ、後日、談吉が幇間も引っ張り出してくれることを期待している。

春風亭傳枝『鮑のし』 (22分 *~15:10)
 短いマクラから、この噺。
 とっかかりの甚兵衛さんが、少し与太郎になっていて心配したが、中盤以降は、人の良い、あの甚兵衛さんになってくれた。しっかり者の女房の造形も悪くない。
 鮑を持って行って大家が怒って追い返された後に甚兵衛さんに知恵をつけるのは、魚屋さん。人によって、長屋の吉兵衛さんだったり、頭(かしら)だったりするが、魚屋さんというのも、アリだな。説得力が増した。
 そして、サゲは、今ではあまり聴くことのない型で、大家が甚兵衛さんに問う「のし」の字、「たすきのし」のみならず、「乃」の「杖つきのし」まで登場。
 二人の問答は、こうなる。
 大家「のし」の字は->甚兵衛さん「鮑のむきかけ」、大家「たすきのし」は->甚兵衛さん「鮑のひも」、大家「杖つきのし」は->甚兵衛さん「・・・あれは、鮑のおじいさん」
 懇親会でお聞きしたら、師匠譲りとのこと。
 この人、やはり古典派だなぁ、とあらためて感じた好高座。

 
 懇親会にお誘いがあった。ブログを書いていることもあり、できるだけそういう会には出ず、噺家さんと距離を置いてきたが、この会の手作りの温かさが心地よく、参加することにした。

 客席にテーブルをこしらえての懇親会。
 なんと、常連のお客さんが料理を持ち寄ってくれている。
 傳枝さんはビールを飲むようなので、壜ビールをお願いする。結果として3本、出演のお二人と私で飲んでいた^^
 二人の入門のいきさつやら、鯉昇一門のこと、立川流のこと、他のレギュラーメンバーのことなどで盛り上がる。内容は・・・内緒^^
 池袋の近くに住む噺家さんと、池袋の近くに住む落語好きの方による会、とのこと。
 普段は小劇場の場で、空いた日に落語会とのことで、儲けは度外視なのだろうが、こういう会は若手の噺家には、大事な研鑽の場だ。


 機会があれば、また寄せてもらおうと思いながら、雨の中を駅に向かった。

 
by kogotokoubei | 2018-11-06 21:27 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 落語禁断症状(?)から、なんとか都合がつきそうな5日の夜の三三か、6日の夜のこの会、どちらかの横浜にぎわい座と思い、5日の午前中にぎわい座に電話した。
 前売り完売の三三の会は当日券も含めすでに売り切れ。

 6日は、かろうじて二階席は空いているということで、高座に近い席を予約。

 にぎわい座の二階席は、2011年に三三の『嶋鵆沖白浪』通しの八月の会以来だ。
2011年8月5日のブログ
 にぎわい座の二階席、それほど悪い印象がない。
 高座近くの席なら、表情もよく分かるし、珍しい鳥瞰のアングルで楽しめる。

 百九十三回目になるという「名作落語の夕べ」だが、初めて。

 会場は、実際に一階はほぼ満席で、二階席も半分位は埋まっていたなぁ。

 この日の会は、同じネタでの上方版の会を11月に開催するようで、その江戸版。

 出演順に感想など。

布目さんの前口上(9分 *18:00~)
 にぎわい座のチーフ・プロデューサーである布目英一さんが、いつものように携帯などの注意に続き、この会に関する説明をした。
 東西の同じネタの違い、ということで『愛宕山』や『時そば』『時うどん』などを素材に丁寧な説明。
 また、同じネタでも噺家によって違いが出るし、同じ噺家でも、ネタは生きているので日によって変わることもある、と前夜の三三の『柳田格之進』について、三三が興味深い改作をしたことを付け加えてくれた。へぇー、そんな格之進は、聴いたことがないなぁ。 布目さん、いつもの開演前の注意と同じ、舞台上座隅に立ったままの口上だったが、ぜひ今後は中央に立ってお願いしたい^^

春風亭昇りん『たらちね』 (10分)
 開口一番は、初めての昇太の弟子。いい雰囲気は持っているが、どうも言葉遣いが気になる。八五郎が隣りの婆さんに「てめい」と言ったり、初対面の嫁に「おめぇの名前は」というのは、いただけない。おめぇさん、だろう。

立川志の八『だくだく』 (25分)
 ここからはネタ出しされている。
 志の輔の二番弟子、名前は知っていたが、初めて聴く。
 結論から書くと、良い発見だった。
 スマホに関わるマクラも、結構楽しく聴けた。
 絵の先生が床の間と掛け軸を描く様子はリアルな所作で見せていたが、雑にならず、このスピード感は若々しくて好感が持てた。ラジオは「マホガニー」という科白も、なかなか効いていた。なかなか最近は聞かないね、マホガニー製なんて言葉。
 眼の悪い泥棒が明かすことになるが、壁に描かれた中に「よそう、夢になるといけねぇ」や「半鐘はおよしよ、オジャンになるから」なんて科白が描かれているというのも、可笑しい。
 男が起きてから泥棒との「つもり」の戦いも楽しく演じていた。
 この人、地元横浜出身で、にぎわい座での独演会もあるようだ。
 今後、もっと聴きたくさせる高座だった。

三笑亭夢太朗『時そば』 (32分)
 寄席ではよく聴くが、長講は初めて。
 寄席のある浅草や新宿のことに関するマクラで10分ほどで本編へ。
 最初の男が蕎麦を食べる場面が長々と続き、(そんなに蕎麦が入っているのか?)と疑問を感じたところで、蕎麦屋に「お客様、そんなに蕎麦入っていましたか?」と聞かせると、「今日は30分やんなきゃならねぇんだ」の答えで、満席の会場は爆笑。
 蕎麦屋の屋号が、以前は「築地」で今は「豊洲」、というのは、ニュース性があって良かったと思う。
 二人目の男、あちこち欠けたどんぶりを回しているのを見て、蕎麦屋が「お客様、お茶の心得がおありで」なんて科白も、可笑しい。
 寄席の短いネタでは分からなかった、この人の持ち味を感じることのできた好高座。

 ここで仲入り。

三遊亭兼好『巌流島』 (29分)
 マクラがネタとの関連性もあり、かつ楽しかった。
 いろんな乗り物があるが、海外なら飛行機でしょう、仕事で関西などへ行くなどは新幹線となるでしょう・・・警察に追われたら、自転車ですね、で爆笑。時事性のあるネタは、やはり日頃からネタになりそうな事件などに注意しているのだろうなぁ。
 花見の屋形船での営業や日本丸など遠洋航路での仕事の話から江戸の渡しのことにつなげ、「さあ事だ、馬の小便渡し舟」と、10分余りのマクラで会場を温めてから本編へ。
 船上で職人風の客が、島に取り残された若侍をからかう様子などは、この人の持ち味が生きる。また、殺されそうになった屑屋が何を聞かれても「くず~ぃ」と答えるのが、可笑しい。
 この人ならではのメリハリの利いた語り口や所作が、力量の高さを物語る。
 加えて、若侍の「黒木綿の五つ所紋、段袋の袴ぁはいて、長い朱鞘の大小をさして」いる姿や、「麻の上下に黒縮緬の羽織、供に槍を持たせた」高齢の侍の形容、当り前のようでいて、さらっと語るのは結構難しいのだ。そういう科白がサマになってきたなぁ、と思いながら聴いていた。
 得意なブラックな味わいを抑えてはいたが、関連性のあるマクラと本編を含め、この人ならではの高座には、一種の貫禄まで出ていたような気がした。今年のマイベスト十席候補としたい。

桃月庵白酒『宿屋の富』 (28分 *~20:26)
 短いマクラだったが、にぎわい座のある野毛の街の変貌を語る中で、「昔は、人生を捨てる場所」などの表現が、この人らしく笑った。桜木町の駅を右に行くか左に行くかで大きな違いがあり、以前はにぎわい座に来る時は、電車で関内まで行ってから歩いて戻った、というのはネタだろうが、可笑しかった。
 たしかに白酒が言うように、最近は、野毛近辺もずいぶん洒落たお店が増えたなぁ。
 それぞれの街には、それぞれの役割があって、と馬喰町につなぐ。実にマクラから本編へ自然な流れ。
 この噺の聞かせどころは、冒頭の宿に泊まりに来た男の作り話とそれを真に受ける宿の主人との会話。そして、二番富の五百両が当たるはずの若い男の、妄想ばなしだろう。
 もう少しこの人ならではの脚色をするかと思ったが、ほぼ古今亭の型と言えるだろう。
 一文なしの男の作り話は、使用人は八百人、身の回りの世話だけでも五十人。泥棒が入ったが十五、六人でも持っていった千両箱は八十ぐらい、というのは志ん生版と同じ。
 二番富の男の妄想も、ほぼ古今亭の内容。膳に、刺身、天ぷら、鰻というのは、人によって違うが、基本の展開は踏襲している。
 一番富も子の千三百六十五番。
 この人らしさが発揮されたのは、一文なしも、宿屋の主人も、一番富と分かって宿に帰った時の、言葉にならないあの科白。『つる』や『短命』のご隠居でも発揮される例の、アレだだから、笑わずにはいられない。
 あえていじらなくても、これだけ楽しい噺なんです、とでも主張するような高座。
 「名作落語の夕べ」となると、あまり改作はできないのかもしれないが、十分にご通家が多いと思しき会場を沸かせた。こちらも、今年のマイベスト十席候補としたい。


 久しぶりの生の落語は、実に楽しかった。

 志の八は初めてだったが、今後もぜひ聴きたくなった。
 寄席では分からない夢太朗の持ち味も発見できた。

 そして、兼好、白酒の堂々とした「名作」の高座に堪能した。

by kogotokoubei | 2018-10-08 18:21 | 寄席・落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛