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噺の話

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カテゴリ:寄席・落語会( 469 )

 なんとか、国立演芸場の中日、四代目圓歌の襲名披露興行に行くことができた。

 三月二十一日、鈴本の下席から始まり、末広亭、浅草、池袋を経て四十五日目、残り五日となった定席での披露目。

 開場直後の12時20分頃、演芸場に到着。

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 四代目圓歌の幟が、旗めいていた。

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 なんと、平日の昼なのに、「満員御礼」とは。

 後で知るのだが、居残り会では合流したOさん、当日券で大丈夫だろうとタカをくくていたため、チケットを入手できなかったのであった。

 そんなことは露知らずで、会場へ。

 最初の後ろ幕は、「贔屓与利」で、富士山がシンプルな線で描かれて、「晴れてよし くもりでもよし 不二のやま」と書かれていた。
 結局、この日三つの後ろ幕は、すべて「贔屓」贈呈。二枚目は結構派手だったが、最後三枚目は、「寿」の字と女性の絵の描かれた艶っぽいもので、結構だった。

 私は四列目だったが、まだ、前の列にも空席のある状態で、開口一番が始まった。
 その後、客席はほぼ埋まっていたなぁ。

 出演順に、感想などを記す。

三遊亭歌つを『牛ほめ』 (13分 *12:47~)
 開口一番は、初めて聴く前座さん。
 落語協会のHPのプロフィールによると、2017(平成29)年3月三遊亭歌奴に入門、2018(平成30)年1月21日前座となる。前座名「歌つを」、とのこと。
 白酒が「待機児童」と呼んでいた見習い期間が、結構長かったということか。
 髪の毛も短めでスッキリしているし、清潔感のある印象で、見た目は悪くない。しかし、声が高めでキンキンする点は、今後の要改善点。父親とおじさんの口調も、あまり変わりがなく、前座さんではやむをえないかもしれないが、今後の精進を期待しましょう。

春風亭一花『やかん』 (16分)
 日替わりの二ツ目さんの出番、この日は一朝一門のこの人。三度目。
 2014年7月の関内ホールでの師匠の独演会、そして、2016年9月の同じ会場での、小満んの会で聴いている。どちらも、好印象だった。
 この高座も実に良かった。
 知ったかぶりの先生の口調なども悪くない。歌つをは、袖で聴いていて勉強になったのではなかろうか。
 猫も杓子も--->女子(めこ)も赤子(せきし)も、など、三代目金馬の音源を思い浮かべながら聴いていた。講釈部分も、よどみなくリズムが良い。
 立川こはるを初めて聴いた時も感心したが、芸風は違うものの、女流落語家ながら、しっかり古典を語れる人として、今後も期待。
 個人的には、この日一番の高座だと思う。
 何か賞をあげたいので、朱の色を付けておく。
 
三遊亭多歌介 漫談(師匠の思い出、など)(17分)
 ずいぶん久しぶりと思っていたら、2009年の池袋以来、十年ぶりだ。
 あの時は『短命』だったようで、結構、印象が良かったようだ。さすがに、記憶は残っていない^^
 志ん朝の葬儀における名(迷)スピーチなどの師匠三代目圓歌の思い出や、自分の地方での講演での逸話など。この人、講演や講演&落語で全国各地を回っており、平成30年の講演(数?)日本一とのこと。
 でも、ネタをやって欲しかったなぁ。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (16分)
 4月29日の末広亭では、親子二人だったが、この日は仙三郎と仙成の二人。
 いつものように、傘の芸で仙成が鞠と升を回したが、茶碗になって仙三郎が「これは難しいから私が」と代わった。しかし、最初に茶碗を乗せようとして上手く収まらず、やり直そうとして茶碗を舞台に落してしまった^^
 なかなか、お目にかかれない光景。
 五階茶碗を仙成が演じ、仙三郎が土瓶の芸、そして、花笠と撥で締めた。
 
三遊亭若圓歌 漫談&『授業中』 (19分)
 初。経歴を後から調べたら、内弟子を終えて、最初は漫談家としてスタートしたらしい。
 師匠の思い出を語りながら、師匠が昭和天皇に『授業中』を披露してこのネタを封印したため、師匠に代わってこの噺をするようになった、とのこと。
 震災後のボランティアでも、何度も演じたらしい。
 後半の短い時間で、相当はしょってのネタになったが、なかなか味わいがあったので、もっと長く演って欲しかった。

柳亭市馬『粗忽の使者』 (19分)
 日替わりの仲入り、この日は協会会長。
 客席から「待ってましたぁ!」の声がかかったが、この興行が何か分かっていない、野暮な行為としか、私には思えない。
 去年の鈴本夏祭り以来。あの時は『山号寺号』に、噺家の名を取り入れて楽しませてくれた。
 冒頭部分を省略し、大工の留っこが、地武太治部右衛門と田中三太夫のやりとりを盗み聞きした内容を、仕事仲間に話す場面から。
 こういう噺は、ニンだと思う。侍はサマになっている。一時、首の振りが極端だったり、途中で歌を挟むのが嫌で、敬遠していたが、やはり、芸達者であるなぁ、と思わせる高座だった。
 
 口上を楽しみに、一服。

口上 (16分)
 五人並んだ。下手から、司会の多歌介、若圓歌、四代目圓歌、歌司、市馬。
 若圓歌が、七年の内弟子を終えることができたのが、彼の次に入門した歌之介のおかげ、と言っていたが、今では途絶えてきた内弟子仲間の絆は強いものがあると感じた。授業中、浪曲社長、月給日などの師匠の作品は手がけず、自分の作品を大きく育ててきた弟弟子を褒める言葉にも、心がこもっており、圓歌一門の好ましい関係をうかがうことができたなぁ。
 歌司が、三十五年ほど前、宴席で師匠の隣に座っていて、「圓歌は歌之介に継がせたい」と言われたと語る。兄弟子としては、辛い話であったろうに、それを納得させるだけの、一門の歌之介への評価もあったということか。
 歌司は、昭和50(1975)年にNHK新人落語コンクールで『あくび指南』で優秀賞を授賞した人。ちなみに、その時の最優秀賞は『たがや』を演じた小丸、現在の柳亭金車。
 この人が古典重視ということも、三代目が新作派の歌之介に継がせたかった理由かもしれない。
 市馬が、「手を取って 共に登らん 花の山」という三代目圓歌の言葉を聞かせてくれたので、ほぼ七年前のこの会場での一之輔の真打昇進披露のことを思い出した。私は圓歌が披露目すべてに出演した一朝は偉い、と言った言葉と「手を取って~」で、目頭が熱くなったのだ。
2012年5月19日のブログ

 さて、その市馬の音頭で、三本締め。
 圓歌一門の絆の強さ、温かさが伝わる口上だった。

アサダ二世 奇術 (13分)
 いつもの「今日は、しっかりやりますから」に、嘘はなかった^^
 「あと、三分」とか「二分」とか言いながら、芸を始めようとしては、またマイクに戻り、寄席の下座さんがどれだけ大変か、などと話す、その間が絶妙。
 お客さんが選んだトランプを風船の中から取り出す十八番も、良かったよ。

三遊亭歌司『蜘蛛駕籠』 (14分)
 「91になりまして・・・ウェストが」でまず、客席を笑わせる。去年は「86」だったと記憶しているので、太ったか^^
 酔っ払いの繰り返しの科白の部分でも、大いに客席を沸かせる。
 寄席体験の少ないお客さんも多かったとは思うが、芸達者でなければ、この噺の可笑しさをあれだけ引き出すことは難しい。

立花家橘之助 浮世節 (14分)
 二年前の二代目橘之助襲名で、一回り芸が大きくなったようだ。
 最後は時間切れと短めではあったものの「たぬき」を聴かせてくれた。

三遊亭圓歌『母ちゃんのアンカ』 (35分 *~16:21)
 『母のアンカ』が、正式な演題なのかもしれないが、私はサゲで本人も使っていた『母ちゃんのアンカ』の方が良いように思う。
 この噺では、師匠が亡くなって五日後、末広亭の夜の主任を白酒の代演(代バネ)で涙ながらに聴かせてくれた高座を思い出す。
 あの時は、最初『B型人間』だったのが、この噺に代わり、ややとりとめのない流れになったのだが、それもやむなし、という時期だった。
2017年4月30日のブログ
 前半は、小ネタをつないで、客席を温める。4月1日に「令和」の発表で驚いたらしい。師匠の最初の奥さんが、令子、次の奥さんが、和子・・・とのこと。
 師匠の家にいた寒さに弱いアイヌ犬のことや、たわけもの・大納言などの言葉の語源のことで、笑いを取る。おっぱいの元は血液、という話あたりは、ネタとの関連性が、少しはあるかな。
 そして、11月の寒い時期、高野山に招かれ、その宿坊で寝た時の思い出から、ネタそのものは始まる。零下三度、布団には、湯タンポが入っていた。
 その湯タンポで足を温めていると、自然に、子どもの頃、寒いときに布団の中で、足を母ちゃんのまたぐらに入れて、温めていたことを思い出す・・・ということで、さまざまな少年時代の母との逸話が語られる、爆笑ネタとは言えない演目。
 四代目圓歌作の、人情ばなし、とも言えるかもしれない。
 私は、この人は、今後も古典に挑戦などしなくてもいい、爆笑ものの新作を聴きたいと思う。何度聴いても笑える噺、という点で、間違いなく師匠の芸の精神を継承する人だろう。


 さて、お開きとなれば、楽しみは、居残り会。

 佐平次さんの地元の「はじめ(一)」で、ちょうど五時の開店時間から。
 Iさん、Nさん、そして、チケット入手ならずお店に直行して、すでにビールを始めていたOさんの五人。
 最初は生ビール。そして、次々に出される、薬味ハンバーグや鯵の刺身、などなど美味しい肴のおかげで、お勧めの日本酒を一升瓶ごといただき、結局二升が空になった。
 その後は、燗酒も呑んだはず。
 途中で、絶品の揚げパンが出され、また生ビールもらったりしたな。
 話はあっちこっちに飛んだようにも思うが、部分的に覚えていない^^
 落語のサワリをご披露したようにも思うが、よく覚えていない^^

 四時間ほど、宴は続いたのかな。

 とにかく、楽しい居残り会でござんした。

p.s.
 新宿末広亭の披露目にいらっしゃったIさんがお聞きになった後ろ幕の情報を入手。
 最初の富士山の幕は、中村天風作、2枚目のやや派手な幕は、佐藤勝彦作で、お二人とも圓歌本人とご縁のある方らしいです。三枚目の美人画は先代ゆかりのもの、とのことです。。
by kogotokoubei | 2019-05-16 12:59 | 寄席・落語会 | Comments(12)
 平成三十一年四月二十九日、「昭和の日」の末広亭夜の部。

 昼の部からの居続けの方は、二割ほどいらっしゃったような気がするが、大半は仲入り前後のご入場と察する。昼の開口一番からは、たぶん私だけだろう。

 二階は空いたままの大入り。
 主任喬太郎の動員力かな。

 開口一番から順に感想などを記す。

柳家小はだ『饅頭こわい』 (10分 16:45~)
 昼の部の門朗より時間をもらえてネタができた。
 犬好きとしては、猫はともかく、魚屋のポチは食べさせないで欲しい^^
 昨年二月、仏教伝道センターでの三田落語会昼の部での『道灌』以来だが、はん治の弟子は兄弟子小はぜもこの人も、しっかりとした高座を聴かせてくれる。
 また、若いうちは古典を学べ、という師匠の教えがあるような気もする。兄弟子同様、この人も将来が楽しみだ。

柳家小んぶ『幇間腹』 (11分)
 一八のギャグが楽しかった。
 ゴーやのマラソン->苦味走る、カルキが入って->水臭い、など。
 サゲの「今打ったばかりなのに、もうこりました」は、初めて聞くかもしれない。

ホームラン 漫才 (10分)
 ニックスの代演がこの人たちで、得した気分。
 教会での結婚式ネタ、何度聞いても笑える。
 
蜃気楼龍玉『たらちね』 (15分)
 昼の部以降、泥棒ネタが出ていないので、得意の『夏どろ』でも演ってくれるか、と思ったら意外なこの噺。大家が八五郎に、「足入れは仮祝言、腰入れは本祝言」と教える。私も勉強になった^^
 標準的な型と、少し構成が違っており、時間の都合もあるのか八五郎は湯に行かない。また、布団を上げて、そこにたくさんキノコがある、なんてぇのを挟む。
 若手の注目株、もちろん、悪かろうはずのない高座。とはいえ、泥棒ネタのほうが、相性は良さそうに思うなぁ。

柳家喬之助『宮戸川』 (14分)
 マクラで、協会のサイトが、誰かが亡くなるとサーバーが落ちる、などをふくめWebのことをふって、サゲの仕込み。
 霊岸島のおじさんの名が、飲み込みの「久太」としてあった。名前を聞いたのは、初めてかもしれない。
 若手から中堅への過渡期にあると言えるかもしれない。
 元気で清潔感のある噺家さん、というイメージから、良い意味での渋味が少し増してきたような気がする。

林家二楽 紙切り (14分)
 二楽には申し訳ないが、喫煙タイムにさせてもらった。

三遊亭萬窓『ぞろぞろ』 (14分)
 この人が出てくると、なぜか、ホッとする。
 優しさ、温かさを醸し出す噺家さんだ。
 また、噺もしっかりしているし、ネタそのものの楽しさだけで、無駄なクスグリなど挟まずに笑わせてくれる。
 なかなか、こういう人、いないんだよねぇ。

柳家小ゑん『フィッ』 (15分)
 昨年、六月の池袋でも聴いた噺だが、このネタは、この日の若いお客さんの多い客席のほうが合っていたし、笑いも多かった。
 圓丈作のようだが、すでに自分のものになっているように思う。

柳家小菊 俗曲 (12分)
 カエル-ミミズ-ナメクジの三部作に、客席が沸く。
 この日は、初寄席と思しきお客さんの反応が、なかなか良かった。
 ♪お酒一樽千両しよっとままよ 主の寝酒は絶やしゃせぬ
 連れ合いに聞かせたい都々逸だが、怖くてとても聞かせられない。

吉原朝馬『松山鏡』 (15分)
 萬窓とは対照的な高座。
 今風のクスグリ、たとえばAKBやエグザイルなどをふんだんに挟むのだが、私はあれだけいじる必要は感じない。無理が、あるように思う。
 どうも、この人とは相性が悪い。
 
柳家小袁治『堪忍袋』 (18分)
 仲入りは、この人。
 マクラで、自分は秋葉原の電気屋の倅で、小ゑんとは違う、と笑わせる。
 磁気ネックレスの効果はイライラしないこと、と本編に相応しいネタをふったには、流石。
 朝馬のように無理に笑わせようというクスグリなどもないが、充分にこの噺の楽しさを味合わせてくれて、休憩。

 一服。
 
鈴々舎馬るこ『大安売り』 (13分)
 マクラの松平健ネタが可笑しかった。
 みんなにご馳走して、領収書の宛名は「上様」だって^^
 この噺のクスグリの工夫は、楽しめた。
 元銀行員の相撲取りに負けた決め技が、引き落とし。元居酒屋は、突き出し、なんてぇのは気が利いている。
 以前、この人の高座には、無理に笑わせようとする姿勢を感じていたが、次第に印象が良くなってきた。
 さすがNHKの大賞受賞者と、今は思う。今後楽しみな若手の一人になった。

ロケット団 漫才 (11分)
 今、落語協会の漫才では、もっとも乗っている二人かもしれない。
 会話のリズム、スピード感が良い。
 ネタも年齢を問わず笑わせるだけのものだし、旬の時事ネタを取り入れるのも早い。満員の客席の温度は、確実に上昇した。

柳亭左龍『英会話』 (12分)
 柳家金語楼作で、当代では古今亭寿輔が十八番としている。
 落語協会ではこの人で二度目だが、他の噺家さんでは聴いたことがない。
 子供が英語を習いたいということで、家族の会話をすべて英語でしよう、ということからのお笑い。お母さんが「ママ」なら、お父さんは「マスター」は、今でも笑える。子供から「犬は?」と聞かれ父親が「ドッグ」、「猫は?」で「キャット」・・・「河童は?」で答えられないので子供が「レインコート」なんてぇやりとりには、『真田小僧』的な味もある。
 
橘家圓太郎『浮世床ー本ー』 (11分)
 源ちゃんが本を読もうと苦悶する姿が、なんとも可笑しい。
 こういう噺の楽しさは、実際に生で見ないと分からない。
 文蔵の代演として、しっかし膝前の役割を務めたのは、当然とはいえ、流石。

翁家勝丸 太神楽 (9分)
 花籠、お手玉、傘の芸を一人でこの時間でこなし、語りで笑いをしっかり取る。
 膝を任せられるだけの実力者と再確認。

柳家喬太郎『任侠流山動物園』 (26分 *~20:59)
 この噺、三遊亭白鳥の平成の新作の傑作だと思う。
 喬太郎では、五年前の浅草で聴いて感心したが、この日の高座も実に良かった。
 浅草の時の記事と重複するが、筋書きなども含めあらためて。
 象のまさお(政五郎)、鶏のチャボ子、牛の牛太郎、豚の豚次の4頭しかいない千葉の流山動物園は、人気のまさおが病気ということもあり、客が少なく大ピンチ。この日もお爺さんと孫の二人しか来場者なし。しかし、平均来場者数1.8なので、二人なら平均以上^^
 この経営の危機を切り抜けるべく、豚次は昔世話になったパンダの親分パン太郎に会いに、常磐自動車道をひたすら走って、上野動物園に行く。人気者のパン太郎親分に流山まで来て欲しいと頼むのだが、親分は逆に舎弟である「虎」夫に豚次の尻の肉を喰わせる始末。命からがらなんとか流山に戻った豚次や仲間が、さてどんな策をもって危機を救うのか・・・・・・。
 喬太郎が、細かな芸として「豚次のときは、手を蹄にしている」と親指と人差し指をつけ、残りの指もつけて蹄のようにしているのを披露したが、たしかに、登場するそれぞれの動物を表現するための技が求められる。
 『動物園』という噺では、ライオンと虎(ほぼ同じ所作)を演じるわけだが、この噺は、豚・鶏・牛・象・パンダ・虎の五匹分を演じ分ける必要がある。
 喬太郎は、いかにも楽しそうに演じて、途中でお約束のように「こんなことをするために、さん喬の弟子になったんじゃない!」などと挟んで、若い方の多い会場は大爆笑。
 動物を真似るのみならず、豚次とパン太郎との緊迫したやりとり、豚次と園長との心温まる関係、そして、象の政五郎登場場面など、いくつか聴かせどころがあり、それらをしっかりと演じなければ、噺としての骨格が固まらない。
 さまざまな技能やセンスが試される噺でもあり、三三もこの噺を演じるのは、挑戦しがいのある噺と評価しているからだと思う。
 喬太郎が、作者白鳥の傑作を、しっかり自分のものにした高座、今年のマイベスト十席候補とする。

 
 さて、九時間居続けの、平成に出かけた「昭和の日」の寄席の令和の記事は、これにてお開き。

by kogotokoubei | 2019-05-02 10:18 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 一昨日「平成」三十一年四月二十九日の「昭和の日」に、久しぶりに末広亭で居続けした昼の部の記事を、「令和」に書いている。
 九時間の居続けの後で、昨日は野暮用もあり、平成のうちに書き終わることができなかったなぁ。

 混むだろうとは思って、いつもより早めに家を出た。
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 11時20分頃に並んだ行列の最後尾。左は、栄寿司。
 ということは、末広亭からの列は、角の洋風居酒屋(?)さんを曲がってここまできている、ということ。

 さて、好きな桟敷が空いているか、と不安があったが、なんとか下手の中央位に一人分を確保。結局、夜の部終演まで、9時間、同じ席にいたことになる。

 後から後からお客さんで、二階も空いた。

 入場に時間がかかり、開口一番も遅く短くなった。

 その前座さんから順に感想などを記す。

橘家門朗『 ? 』 (3分 *12:00~)
 泥棒の小咄をさっとふって、すぐ下がった。

柳家小もん『手紙無筆』 (7分)
 主任の小里んの弟子。小多け時代には何度か聴いているが、小もんでは初めて。
 短い持ち時間ながら、端正な見た目同様、丁寧な高座に好感が持てた。

ダーク広和 奇術 (10分)
 三目並べは、初めて見た。この人、見た目も優しく軽妙な語り口なのだが、結構、凄い腕を持っているような気がする。
 寄席が初めてのお客さんも多かったようで、満員の客席を大いに沸かせた。

入船亭扇蔵『真田小僧』 (9分)
 三朝の代演。遊一時代には何度か聴いているが、扇蔵では初めてかもしれない。
 高座には、小言がある。短い時間とはいえ、按摩さんの姿、白い服(白衣)・ステッキ(杖)・色眼鏡(黒眼鏡)、という仕込みを金坊がふらないのが、気になった。
 聴く者の想像力をかきたてるのが落語であるから、この噺では不可欠な演出だと私は思うのだがなぁ。

桃月庵白酒『子ほめ』 (15分)
 師匠の雲助は、寄席でかけるネタでこの噺が一番好きだと言っているが、それは弟子にも伝承されているような気がする。実に楽しそうに演じていた。
 赤ん坊の横で寝ているのがお爺さんと知り、布巾をかぶせようとするというこの人ならではのクスグリはあったが、基本的にはそれほど本来の噺をいじらず、それでいて実に可笑しい。流石だ。

ジキジキ 音曲漫才 (14分)
 落語協会に強力な色物さんが増えたと思う。
 ギターとピアニカの夫婦音曲漫才なのだが、ともに実に高いレベルの演奏能力を持っているのに加え、語りも楽しい。
 ♪シャレで全国旅巡り、なども楽しいし、♪聖者の行進の「お椀出せ、茶碗出せ」も傑作。♪うらわ、は名曲。♪Let It Beと♪なごり雪のハーモニーなども流石。
 そして、♪トルコ行進曲から、おでこピアニカの♪男はつらいよ、は絶品だ。

橘家富蔵『親子酒』 (13分)
 初である。実に端正な顔立ちで、あの円鏡の円門下とは意外^^
 マクラが楽しかった。ネタばれになるが一つ。
 公園に犬を連れて来た女性がいた。
 「公園にブタを連れて来ちゃだめだよ」「失礼ね、犬よ!」「いや、俺は犬に言っている」・・・オリジナルかどうかは怪しいが、可笑しい^^

桂才賀『カラオケ刑務所』 (13分)
 何度目かなぁ^^
 新作台本コンテストの準優秀作品で、柳昇の『カラオケ病院』への“オマージュ”作品。
 サゲの後に「これで、現金20万円ですよ。締め切り6月まで、まだあります。ぜひご応募を!」と応募を勧めていたのは、いつものことだが、これも大事なPRか^^
 とにかく、才が元気なら、それでいい。

三増紋之助 曲独楽 (17分)
 いつもながらの、見事な芸。
 しかし、チャンレンジもしているのがよくわかった。
 「五つ独楽」は初めて見た。地味ながら、楽しい。

柳亭小燕枝『宗論』 (13分)
 この人が「インテリジェンス」「パーソナリティ」などの科白を繰り出すのが、なんとも楽しい高座だった。
 クリスチャンの息子が父親に「一緒に聖書の訪問販売をしましょう」に笑った。
 サゲの番頭が旦那に言われ「息子のかたを持つとは、番頭さんもキリスト教かい」に「いえ、私は説教でございます」は、ご本人の工夫だろうか、初めて聞いた。
 古典の小燕枝というイメージが強いので、少しお茶目な別の一面を見た、そんな得した気持ち。

金原亭伯楽『猫の皿』 (15分)
 志ん生の思い出として、骨董屋の主人に勧められて五千円で字が読めない書を買ったが、後でよく見ると「いまがわやき」と書いてあったという逸話(ネタ?か)から、無理なく本編へ。
 8分ほどマクラがあったから、本編7分。そうは思えないしっかりとこの噺に楽しさを味合わせてもらった。はた師と茶屋の主との短い会話だけとはいえ、この噺はよく出来ている。

林家正楽 紙切り (15分)
 ご挨拶代りの「相合傘」から、「吹奏楽」「新元号」「ドラエモン」と続き、私の席のすぐ近くの桟敷のお客さんのリクエスト「端午の節句」で締め。
 いつもながら、お見事。
 私は、「端午の節句」で、次の仲入りでの権ちゃんのネタに、淡い期待を抱いていた。

柳家権太楼『人形買い』 (17分)
 年号のことなどから、正楽の紙切りにふれ節句のことへ。
 「おっ、やってくれるか!」と期待に応えてくれるこの噺。
 この人のこの噺、私は大好きだし、まさに旬のネタ。
 人形屋の小僧、定吉の仕方話の可笑しさで、満員の客席がどよめくような笑いに包まれた。
 権太楼も、この噺は三代目桂三木助版を下敷きにしていると思われる。
 『正蔵・三木助集』(ちくま文庫)から、定吉独演会(?)の一部をご紹介。

ちくま文庫_正蔵・三木助集
「先月あたしがおなかが痛くて部屋で寝てェたんで、隣の部屋がおもよさんの部屋なんで、ちょうど、薮入り(やどり)に行く日なんで、すっかり着物を着かえちゃって(右手で顔をなで)鏡台の前でこうやってお化粧をしてえたン・・・・・・そこィトントントンッて若旦那が上がってきて
『おもよ・・・やどりに行くのにそんなに気取って行っちゃァあたしが心配じゃァないか』
 ・・・そ言ってくるんで・・・・・・そしたらおもよさんが、
『女の部屋へ男なんぞ上がってくるもんじゃありません、だれか来るとおかしゅうござんすから下へおりてらっしゃい』
『大変に髪(あたま)が乱れているから、俺がちょいとなでつけてやる』
『女の髪が男になでつけられますか』
『つけられるか、つけられないか、櫛をこっちィ貸してごらん(荷を持った手をそのままに、肩ごと右へ揺する)』
『だれか来ると変だからおよしなさい(今度は左に揺する)』
『櫛をこっちィ貸してごらん(また右へ)』
『そんなとこをさわっちゃくすぐったい(ぐらぐら揺する)』」
「(両手で押える形で)おいおいおい・・・・・・大変な小僧が付いてきやがった・・・・・・(後略)」
 権太楼は、松っつぁんが、「とんでもねぇ小僧だ」と言うと、相棒が「おれ、こういう話、好き。五十銭づつ出して、もう少し聞こう」「馬鹿言っちゃいけねぇ」でサゲ。
 当代でこの噺は、間違いなくこの人が一番。今年のマイベスト十席候補とする。

 仲入りで一服。
 すでに立ち見状態になっている。

柳家海舟『ちりとてちん』 (15分)
 主任の小里ん門下。四十歳を過ぎて脱サラ(ご本人いわく、リストラ^^)して入門した人。以前は、見た目のみならず全体的に固すぎる印象が強かったが、この高座は、知ったかぶりの六さんが苦悶して「ちりとてちん」を食べる表情も楽しく、客席も笑いで包まれた。しっかし、クイツキの仕事を果した。
 

笑組 漫才 (9分)
 久しぶりだ。
 どうしても仲入りは時間調整もあって、長いネタ、私の好きな文学シリーズなどは難しい。
 師匠が内海好江から志ん朝、志ん五と続いて・・・という話から、お互いを揶揄する言葉遊ぶを、リズム良く掛け合い。かずおが噛まなかったのが、珍しい^^
 「第四位」「なんで」「どう(銅)にもならない」なんてぇのも可笑しい。
 短かったから、私を含めお客さんの誰も「古い掃除機のコード(早く引っ込め)」なんて、思わなかったよ。

金原亭馬の助『漫談:相撲の世界(?)』と『百面相』 (15分)
 初めての寄席というお客さんも多かったようで、『百面相』では、結構笑いが多かった。今では、実に貴重な余芸のできる噺家さんだ。

柳家小団治『つる』 (13分)
 オリンピックのメダルのネタは、定番か。
 「金でも銀でも銅でも、鉄でもいいんです」「鉄は錆びるじゃないか」「いえ、参加(酸化)することに意義がある」 
 これは、私の余興の落語のマクラでいただこう^^
 本編には、少し小言を言わざるを得ない。
 八五郎を作り話で騙したご隠居が八五郎が外で言いふらそうと出て行く場面で、「おいおい、外で行っちゃ駄目だよ」というような引き止める所作・科白がなかった。あれでは、ご隠居が悪い人に見えてしまって、後味が良くないように思う。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (10分)
 二人で登場。傘、土瓶、花笠を短時間でもしっかり。これぞ、膝の見本。

柳家小里ん『三人旅-鶴屋善兵衛』 (25分 *~16:30)
 連作の一つだが、「びっこ馬」に続くこの噺を聴くのは初めて。
 びっこ馬の馬方が勧める小田原の宿が、鶴屋善兵衛。
 提灯に宿名が書いてあるが、その字が三人共読めない。
 中に「四角い字は読める。まずは口、それから田、国なら分かるが、鶴屋善兵衛はこの中にあるか」なんて、頓珍漢な会話が挟まれる。
 見つける策をいろいろ考えた末に、「宿場の真ん中で腹痛を起こし、鶴屋善兵衛が指し宿だから連れて行ってくれと頼んだら誰か連れて行ってくれるだろう」、ということになり宿場で一人が腹痛だと仮病を使ったところ、そこに現れた助っ人が、主の鶴屋善兵衛だった、というのが前半。 
 後半は、馬方が言っていた夜のお伽の件。女が二人しかいないと言われ「三人で回しはいけねぇや」と、なんとかしてくれと頼む。そうすると、年増の尼さんでもいいか、と言われ、それでいいとなった。しかし・・・後略^^
 珍しいネタを聴かせてもらった。


 さて、ここで昼の部はお開き。
 夜に備えて、二つ目の弁当を食べたのであった。
 


by kogotokoubei | 2019-05-01 09:47 | 寄席・落語会 | Comments(8)
 先ほどまでの満席だった椅子席は、三割ほどに激減。
 終演時点でも四割くらいだったかな。
 桟敷は、上手、下手にそれぞれ五、六人だった。

 う~ん、六割くらいは動員できないといけないだろうなぁ、芸協さん。

 出演順に、感想などを記す。

三遊亭美よし『小町』 (7分 *16:50~)
 次の鷹治によると、末広亭では初高座の女流の前座さん。
 遊吉の弟子とのこと。
 芸協のHPには、まだ名が載っていない・・・・・・。待機児童扱いか^^
 とにかく、精進していただきましょう。

桂鷹治『普段の袴』 (11分)
 この人も、初、のはず。当代文治の弟子、ということは、結構忍耐力はある、ということか^^
 前座の美よしを気遣う言葉は、好ましい。
 高座は、そう悪くなかった。見た目も大きいし、今後も大きく成長を期待しよう。
 この噺は滑稽噺としの一つの典型「オウム返し」のネタで、噺本来の可笑しさを引き出せれば笑えるし、巧者によって爆笑ネタにもなりえる。
 「祝儀と不祝儀が往来で衝突してその仲裁に行く」とか「なにヒダが崩れた!?それじゃ、高山はてぃへんだ」など、なかなかに楽しい科白で満載。
 八代目正蔵->五代目小さん、と、八代目柳枝->当代円窓、という二つの流れを経て、今につながっているが、当代では、一之輔、そして、正朝の二人が出色ではなかろうか。
 芸協ならこの人、と言われるように、鷹治にも頑張ってもらおう。

カントリーズ 漫才 (11分)
 昼の部の山口君と竹田君の余韻が残っているので、若いのに今一つ、という印象。

昔昔亭桃之助『たらちね』 (13分)
 相変らず末広亭のプログラムには、昔々亭としてあるのは、いただけないなぁ。
 そろそろ草津温泉落語のマクラは、変えて欲しい。もう長いこと聴いているぞ^^

三笑亭可龍『狂言マック』 (14分)
 当代枝太郎作。
 マクドナルドに、狂言師(和泉○○がモデル)がアルバイトとしてやって来て、というネタ。
 枝太郎が二ツ目花丸時代に聴いているが、可龍の狂言師ぶりもなかなか結構。
 古典も、こういう新作もどちらも水準以上の噺家さんで、将来の芸協を背負って立つ人だと思う。

小泉ポロン 奇術 (9分)
 喫煙室を出てから後半のみ、後ろの方で見ていた。
 マイクを離れた時の科白が、ほとんど聞こえなくなる。
 そのあたりは、要修正である。

立川左平次『近日息子』 (13分)
 昼の部は円楽一門の日替わり(この日は、間に合わなかったが、王楽)、夜の部は立川流の日替わりで、この人だった。
 一周忌が過ぎたばかりの左談次唯一の直弟子で、初めて聴くのを楽しみにしていた。
 良く言えば、落ち着いた高座。悪く言うなら、この噺らしい可笑しさを、今ひとつ引き出せない高座だった。
 しばらくしてから、また別なネタで聴いてみたい。

三遊亭円馬『本膳』 (15分)
 この人は、こういう噺の、そのネタの可笑しさだけで客席を沸かせる力がある。
 左平次には、ぜひ、こういう高座を見習って欲しい、などと考えながら聴いていた。
 この噺も典型的な「オウム返し」のネタだが、芸達者が演じると無理にクスグリなど挟まなくても可笑しい。
 新作の芸協にも古典を巧みにこなす、こういう中堅がいる。とはいえ、そういう人は多くはないのも事実なのだが。

春本小助・鏡味小時 太神楽 (14分)
 一つ鞠、三本撥、向き合いの撥、傘、を披露。
 小助が、結構危なっかしい芸で、ハラハラさせるのだが、あれは芸か^^

立川談幸『町内の若い衆』 (15分)
 ニコニコと演じる姿に、「やはり、この人は寄席が好きなんだなぁ」と思いながら聴いていた。
 弟子の吉幸が五月に晴れて真打昇進。そんなことも笑顔につながっているのかもしれない。
 熊公から、熊の家に行って一芝居打ってくれと頼まれた八五郎が、熊の家近くに来ると、「おぅ、寒気がする。寒気がするから、道に迷わなくていいや、この家は」なんて科白も実に可笑しい。
 ニンなネタで、客席を湧かせた。
 
桂幸丸『吉田茂伝』 (18分)
 仲入りは、この人。
 これまでは漫談が多かったが、久しぶりにネタを聴けた。
 吉田茂は、高知の自由民権運動家竹内綱の子で、この父親はよく警察につかまり刑務所で缶詰になった。ツナだけにかんづめになる、なんてギャグを挟みながらの人物伝の自作。
 最近のニュースなど(たとえば横浜にできた○○○ミュージアム)も交え、やや古いネタではあるが、程よい笑いの反応を受けながらの高座で、前半終了。

三笑亭可風 『 ? 』 (12分)
 クイツキは、この人。
 師匠ネタのマクラから新作の本編へ。
 夫を亡くした老婆三人の会話から始まり、三人が一緒に住んだのだが・・・という筋書き。
 毒舌の会話が楽しい。「陽子さんはいいわねぇ、ハロウィーンで被り物がなくても大丈夫だから」なんて科白がポンポン飛び出す。
 少し調べたのだが、演目名が分からない。ご存知の方、お知らせ願えれば幸いです。

青年団 コント (11分)
 二人だけのニュースペーパー、という感じのコンビ。
 人事部長と二階級特進で人事課長になるヒラ社員という設定。
 二人が勤める会社の格付けは「トリプルZマイナス1」で、上が大塚家具、などの時事ネタを含むギャグが満載。
 「私の夢は、課長になることだったんです」「まるで、そろばん三級でやめるようなものだな」などの会話が、なんとも可笑しいのだ。
 シリアのダマスカス支店を出したことから業績が急降下した会社が作っているのは納豆。豆腐にも手を出して「五丁」の損失を出した、だから課長昇格をもってリストラ、という話にヒラ社員が抗議するのだが・・・・・・。
 寄席のコントならではの毒、私は好きだ。

春風亭柳好『長屋の花見』 (14分)
 古典を「久しぶりに聴いた」、という印象の高座。
 とにかく明るいのだ、この人の高座。
 番組構成的にも、季節柄も、程よいネタ選びだった。

桂南なん『反対車』 (14分)
 歌春の代演。プログラムを見るお客さんに向かった、「プログラムには、ありません。特別出演、です」とニッコリ。
 花粉症の薬で眠い、などと言いながら、このネタへ。
 まず、最初の病み上がりの車屋が、なんとも弱弱しく、「ウンコラショッ」「ドッコイショッ」と梶棒を回す場面のユルさが、たまらない。
 そして、二人目の元気な車屋との対照が、この噺の持ち味を充分に引き出していた。
 走り出す前に「保険に入ってますか?」と、自分が保険の外交をしていると言うのに加え、秩父へ行き、「どうです、私の民宿に泊まりませんか」という、したたかな車屋である。
 次は京都へ、そして東京駅へ戻り、車屋が「お客さん、どこへいらっしゃるんですか?」に「京都へ行く・・・・・・」のサゲも可笑しかった。
 寄席の逸品賞候補として、色を付けておく。
 
桧山うめ吉 俗曲 (10分)
 169.png行きに寄ろうか
 169.png梅は咲いたか
 169.png箱入り旦那
 169.png春はうれしや
 の後、踊りで「夜桜」
 いつものように、艶やかで結構でござんした。

柳家蝠丸『死神』 (30分 *~21:04)
 まだ、ネタが決まってないんです、というのは、ネタだろう^^
 主人公の仕事が設定されている。しかし、サゲにつながるので、秘密としたい。
 死神登場の場面は、まさにニン。
 「死神がどんな様子かと言うと、まぁ、私がもう少し年をとったと思っていただければ」という言葉に説得力があったなぁ。
 呪文は「アチャラカモクレンバイアグラ、テケレッツノパー」。
 こんな呪文なので、医者になった男が治した患者は、突如寝床から起き上がって「吉原に行きたい!」と叫ぶ。なるほど^^
 金がたまった男が妾に「寄席に行きたい」と言われて寄席に行き、噺家を連れて飲ませ、食わせる、というのは願望かな。
 地下に降りて、「あの団体で太くて長くて勢いのいいのは」という男の問いに、死神が「もちろん、今日の末広亭のお客さんたちだ」というのは、なかなか結構。
 もう一つの団体のろうそくもあったが、まぁ、それは内緒ということで。
 男の商売を使ったサゲ。なるほど、それもあり、かな。
 幕が下がってから、「あのサゲは私の創作です」と声があり、また、拍手。
 なかなか、サービス精神旺盛な高座だった。


 約七時間半の居続けだったが、足腰はなんともない。
 久しぶりの末広亭、かつ、芸協の昼夜は、売り物の新作も含め、なかなか活気に満ちていた。
 新会長就任のニュースは、良い弾みになっているような気がした。

 芸協の寄席の噺家さん、落語協会の実力者、たとえば、権太楼、さん喬、雲助、一朝などや、中堅の喬太郎や文蔵、扇辰、若手の白酒、一之輔などの顔ぶれと比べると、たしかに量的には負けている。あくまで、現時点では。
 しかし、新作に古典という落語そのものもバラエティに富んでいたし、漫才やコントに太神楽などの色物を含め、総体としての寄席として、なかなか楽しめた。

 落語家だって、この日の南なん、鶴光や若手の今輔、可龍、夢丸などの個性的な高座は、得がたいものだ。
 そして、もっと若手に目を向ければ、「成金」メンバーに代表されるように、イキのいい顔ぶれが揃っている。
 先日の「さがみはら若手落語家選手権」は、落語協会の歌太郎、小太郎、小辰、そして立川寸志を相手に、桂竹千代(竹丸門下)が優勝した。

 彼ら若手の今後には、大いに期待できる。
 

 さて、鈴本では四代目円歌襲名の披露目が始まっている。

 いつ行けるものやら分からないが、なんとか駆けつけたい。

 五月には、芸協の真打昇進の披露目が続く。

 そして、秋には落語協会の四人と、芸協の小痴楽単独の真打昇進披露がかち合うことになる。ぜひ、小痴楽の披露目には行きたいものだ。

 寄席から目が離せない、そんな一年になりそうだ。

by kogotokoubei | 2019-03-25 21:36 | 寄席・落語会 | Comments(10)
 末広亭の友の会に入っているので、三ヵ月ごとに入場券が送られてくる。
 今月末までの券を使わずにいたら、期限が近づいていた。

 本当は、夜の主任白酒の中席に行こうと思っていたのだが、野暮用続きで行けず、どうも昨日しか機会がなさそうなので、日曜恒例のテニスを少し早めに抜けて、芸協の下席へ。
 昇太の次期会長就任のニュースもあったことだし、芸協の寄席にも行きたかったからね。

 新宿三丁目に着き、コンビニで夜食の助六やお茶などを仕入れてから会場に入ると、ちょうど、「コント山口君と竹田君」が始まったところ。
 椅子席はほぼ満席で、桟敷も八割ほど埋まっている。
 お茶子さん(でいいのかな^^)に勧められた上手の桟敷の空いたスペースに落ち着く。 

 出演順に感想などを記す。

コント山口君と竹田君 コント (13分位 *たぶん、13:33頃~)
 寄席では初めて。
 後で調べても、芸協の色物のリストには客演を含め、載っていない。
 特別出演だろうか。
 二人とも私とほぼ同年齢なのだが、若々しい。
 竹田が温泉旅館に泊まった客、山口がその宿の主人、という設定。
 竹田の隣部屋の客がうるさいので苦情を言い、山口が応対するという内容なのだが、これが、なんとも可笑しい。
 満席近い客席が爆笑に包まれた。
 もし、今後、正式に芸協に入るのなら、また色物が強力になるなぁ。

古今亭今輔『雑学刑事(でか)』 (14分)
 米福の代演で、この人。
 定番のクイズに関するマクラから、そのマクラに相応しいネタへ。
 クイズ大好き、雑学の達人の刑事(まるで、本人^^)が、強盗犯人にクイズを出して困らせるという筋書き。
 目出し帽は、クリミア戦争で、ウクライナのパラクラバとい町で初めて使われたので、この帽子の名がパラクラバになった。
 世界で最初の銀行強盗はジェシー・ジェームズで、1866年2月13日に初めて彼が銀行強盗を成功させたので、2月13日は「銀行強盗の日」となっている、なんてぇ雑学が満載。
 新作の芸協、という看板を今後背負って立つ一人が、この人だと思う。

神田紫 講談『山内一豊の妻』 (13分)
 初。検索すると、日本講談協会会長さんらしい。
 少し、喉の調子が悪いのだろうか、ややつまり気味。
 若い時は、さぞかし別嬪さんだったろうなぁ、と思いながら聴いていた。
 (今も別嬪よ、とのご本人の声が聞こえてきそう^^)

一矢 相撲漫談 (12分)
 喫煙室で一服してから、客席後方で聴いていたが、私の経験上これまでで一番ウケていた。この日が、大相撲の千秋楽、ということもあるかな。

笑福亭鶴光『袈裟御前』 (16分)
 仲入りは、この人。
 またか、という感じではあったが、何度聴いても笑えるというのも、芸のうち。
 短縮版であったが、客席を大いに暖めて、前半を締めた。


 あらためて客席を眺めると、若いお客さんが多い。
 アベックや、女性連れも何組か目立つ。
 昭和元禄、しぶらく、NHKのムービー、イケメン落語家など、さまざまな要素があるのだろうが、日曜とはいえ、芸協の席で若いお客さんを含む盛況ぶりを、私はなんとも嬉しく思いながら、煎餅をかじっていた。

三笑亭夢丸『旧婚旅行』 (12分)
 この人は、古典も新作もこなすが、この日は、この新作。
 老夫婦が、五十年前の新婚旅行で行った同じ温泉旅館を訪ねる設定。
 あの時と同じように、お互い裸になって、部屋の両端から走って来て抱き合おう、なんてことを考えるから、大変なことになる。
 内容としては、「古いなぁ」、という印象は拭えないのだが、この人の芸で爆笑ものになった。
 以前に比べ、早口過ぎて上っ滑りすることもなく、見た目も含め、落ち着きが出てきたような気がする。
 しっかり、クイツキの役割を果たした。

東京太・ゆめ子 漫才 (14分)
 円熟の芸。
 「おかげさまで、夫婦で43回目の花見に行けます」で、客席から拍手。
 京太は昭和18年生まれで私の一回り上、今年76歳になる。
 ゆめ子は、協会HPで生年月日を公開していないが、ほぼ同年齢だろう。
 両協会のベテラン漫才師が寄席から姿を消す中、現役として最高齢漫才コンビになったのではなかろうか。
 まだまだ、色物の芸協を引っ張ってくれそうだ。

三遊亭とん馬 漫談&踊り「かっぽれ」 (17分)
 この人では以前『他行』という珍しい噺を聴いている。
 九官鳥、交通事故車の中の猿などの小咄をふって時間が押し、「あと二分になったので、踊りを」とカッポレを披露。
 小咄も受けていたし、逃げの高座とは思えなかった。ご本人もネタをしたかったのが、客席の反応の良さで、つい小咄が長引いた、という印象。しかし、次の小南からは、いじられた。

桂小南 『ふぐ鍋』 (18分)
 膝前は、久しぶりのこの人。
 「私は、漫談と踊りでお茶を濁すようなことはしません」で客席から笑い。
 半分冗談、しかし、半分本気の言葉かな。
 こういうひと言は、悪くない。とん馬も決して投げた高座ではなかったが、協会メンバー同士の自浄能力があることを示したひと言と感じた。
 好き嫌いは別れるだろうが、なんとも独特のダミ声は印象的だ。
 二人で、恐る恐る河豚をつつく場面の可笑しさは、寄席で実際に見るしか分からない。
 『菜刀息子(弱法師)』など、師匠の十八番をそのうち聴きたいものだ。
 
やなぎ南玉 曲独楽 (9分)
 扇を使った地紙止め、真剣を使った切っ先木の葉止め、大きな独楽での風車、最後は糸渡り。
 この人の経歴は多岐に渡っており、最初は八代目正蔵の身内、次に橘右近に寄席文字を習い、その後で、曲独楽の世界へ入ったようだ。
 だから、協会の色物の香盤はそんなに高くない。
 落語協会の三増紋之助とは、年代も芸風も好対照。静かにヒヤヒヤ観る芸も、悪くない。

三笑亭夢太朗『ねずみ』 (27分 *~16:11)
 夢樂の弟子。直弟子としては、初代夢丸に続く二番弟子。
 昭和54年のNHK新人落語コンクールでは、正雀に大賞を譲っての優秀賞。
 また昭和55年には、小遊三などと「芸協若手五人衆」の一人として、文化庁芸術祭優秀賞を受賞。「優秀賞」に馴染みの深い人^^
 寄席の短い噺はたくさん聴いているが、長講は、昨年10月、横浜にぎわい座「名作落語の夕べ」での『時そば』以来。
 丁寧な高座、というのが強く印象に残る。旅館ねずみやの息子の可愛さはよく表現されていたのだが、父親が甚五郎に昔話を聞かせる場面が、やや平板に思えた。
 虎屋に頼まれた彫刻家、飯田丹下の名が最初出ず、後から付け加えたことで、サゲ近くのリズムが悪くなったのが残念。
 丁寧で、大らかなのは良いが、もう少し深みというか、味わいが欲しい。


 これにて、昼の部はお開き。

 若い方が多かった客席は、一気に寂しくなった。

 好きな下手の桟敷に移り、コンビニで買った助六を食べて備えた夜の部は、次の記事にてご紹介。

by kogotokoubei | 2019-03-25 12:47 | 寄席・落語会 | Comments(2)
 オスカー受賞作の『グリーンブック』を桜木町の映画館で観てから関内へ。
 ホールに着いた時は、まだ涙が乾いていなかったかもしれない。

 二十五年間続いた関内の小満んの会が、百五十回をもって千秋楽。

 土曜の午後の開催ということもあり、関内ホールの小ホールは、七割ほどの入り。

 これまで半分も入ったことのない会だったので、ロビーのモニターを見て、「毎回、最終回と言って続けてくれないかな・・・・・・」などと思っていた。

 受付でこれまでの全演目一覧をいただく。
 なんとも幅広いネタを演じられてきたことか。

 久しぶりに師匠の奥様もいらっしゃった。
 どこか、すっきりした笑顔でお客さんを迎えていた。
 
 会場に入ると、お誘いしたOさんのお隣が空いていたので、そこに落ち着く。

 出演順に感想などを記す。
 なお、今回は、記録としては、師匠という敬称は省略するが、後半は、どうしても呼び捨てにはできないので、表記が混在すること、ご容赦のほどを。

柳家り助『二人旅』 (12分 *14:00~)
 初。協会のHPを見ると海舟の弟子のようだが、四年前に真打に昇進した人が、もう弟子をとっていたんだ。
 噺家らしい見た目。印象は悪くない。
 それにしても、この噺は、いわゆる放送禁止用語たっぷりだなぁ、と思いながら聞いていた。「いざり」「おし」「つんぼ」などが続々登場^^
 もはや、落語以外では聞かれない言葉になりつつある。
 その言葉を発することが差別、という風習、なんとかならないものだろうか。

柳家小満ん『長屋の花見』 (23分)
 短いマクラから本編へ。
 二人目の師匠小さん型が基本だが、ところどころに独自性があった。
 大家の花見の誘いを受けた戸無し長屋の一行。
 「どうする、上野の山へ行くかい」と問われたお調子者が「行くとも、上野の山でも、カムチャッカでも」というクスグリは、小さん譲り。
 終演後の居残り会で、「あそこは、他の場所じゃだめで、カムチャッカしかないなぁ」と皆が同意^^
 月番が幹事役に立候補するというのは、小満んの工夫か。
 幹事役として何か目印にという話題に「サイダーの口金でも」で笑った。
 卵焼き(たくわん)と蒲鉾(大根のこうこ)の器は「切り溜め」。
 最初はピンとこなかったが、切った野菜などを入れる木箱のことだから、箱膳やお重と言わず、切り溜めのほうが、貧乏花見には相応しいわけだ。
 「甘茶でかっぽれ、番茶でさっぱり」などとぶつぶつ言いながらの、ご一行の宴会の様子が目に浮かぶ。いったん飲んだお茶けを吐きだす者や、「大家さん、最近では練馬のカマボコ畑も少なくなって」なんて言い出す者など、このネタのなんとも言えない可笑しさが描かれる。
 「大家さん、酒柱が立った」でサゲ。まさに、軽妙洒脱と言える好高座。

柳家小満ん『狸の鯉』 (21分)
 すぐに高座に引き返して、二席目。
 『狸』の噺には、「札」「賽」「釜」「鯉」と四話あるが、この日は今では珍しいネタ。
 とはいえ、狸の「札」もあって、長寿庵の蕎麦代を払って、逃げてくる。
 兄貴分の子供の初節句の祝いにと、次に狸が鯉に変身。
 兄貴分が、鯉こく、あらいにして食おうと言うのを聞いて怖がる狸の姿が可笑しい。
 師匠小さんが説く「狸の気持ち」になっての佳品。


 仲入りとなって、師匠の奥さんに、この日の私の企み(?)を明かす。
 それは、『小満んのご馳走』という本を持参していて、ぜひ、この本に何か書いていただきたかったのである。
 「これに何か書いていただきたいのですが」と奥さんにお聞きすると、私の肩を掻いて「かいてあげる」と笑う。
 さすが、噺家の女房^^
 終演後に直接頼んでみますね、と言うと、「そうしな!」と優しい笑顔が答えていた。
 
柳家小満ん『らくだ』 (44分 *~15:56)
 小満ん落語の醍醐味は、まず、受けを狙ったあざといクスグリなどはないこと。たとえば、それは一席目の『長屋の花見』で言うなら、今では多くの噺家が挟む「長屋中 歯を食いしばる 花見かな」という三代目蝶花楼馬楽の専売特許(?)とも言える句を、小満んは加えない。ご自身でも俳句たしなみ、川柳にも造詣が深いから、あえて、人様の句を借りることもない、とも言えるが、風潮などには背を向ける姿勢を感じる。
 また、ネタの本来の味わいとして、あるいは、演出上で、割愛しても良いと思われる部分は大胆にカットするところも、特徴だろう。
 この高座では、屑屋長さんがらくだの兄貴分に言われ、長屋の月番に出向いて香典を頼む場面を割愛。また、らくだの頭を剃る場も短く、あっと言う間につるつるにしている。
 あの場面は、剃刀で剃るにしても、毛を抜くにしても、あまり聴いていて気持ちの良いシーンとはいえない。そのへんは、品を大事にする小満んらしさか。
 とはいえ、あの場面は、毛を毟る志ん生の演出には、この噺の奥の深さを思わせる面もあるのだが、それについては、別の機会に書くとしよう。
 この高座で初めて聴いたのは、らくだの火葬代の稼ぎ方。
 長さんの知り合いの隠亡がいる落合の火屋に連れて行くことになったが、その隠亡への手間賃を、らくだの兄貴分が、質屋の奥で賭場が開かれているのを知っていて、それをネタに強請って二両巻き上げるというのは、初めて聴いた。
 その二両をまるまる、隠亡に渡すところは、江戸っ子!
 そういった筋書きの妙もあったが、やはり圧巻は、屑屋と兄貴分の主客逆転の場面だ。
 大家がカンカンノウに怯えてもって来た、まあまあの酒を兄貴分が屑屋に「かけつけ三杯だ」と飲ませようとして、屑屋が「勧め上手だねぇ」と言うあたりから、逆転が始まる。
 長さんの科白。「できるときは、やったほうがいいね。どれほど金があっても、高みの見物・・・俺だって、見てられねぇ性分だからねぇ・・・」
 その三杯目を飲み干して、煮しめを食べた後の屑屋の「なぁ、兄弟!」も効果的。
 四杯目に、らくだが「絵を買って欲しい」と言って背中の彫り物を見せたことを思い出す時分には、完全に屑屋が上だ。
 サゲの願人坊主の絶叫まで、堪能した。
 二十五年、百五十回を締める絶品の高座、今年のマイベスト十席候補であるのは当然である。

 さて、終演。

 大事な仕事(?)が、残っている。
 いつものように、お客様を見送る小満ん師匠の姿を見ながら、最後のお見送りが済んだと思しき頃、『小満のご馳走』を手に、お声をかけた。

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「東京かわら版」サイトの該当ページ
 この本は、発行直後にこの会で「東京かわら版」の方が販売していたのを入手したのだった。

 読後、二回記事にしている。
2015年7月24日のブログ
2015年7月25日のブログ

 さて、私にとって、初めての試み。こんなにミーハーになるとは^^

 師匠に声をおかけした。
 「ぜひ、この本に何か書いていただけますか。師匠は、大好きな堀口大學さんからは、書いていただけなかったようですが」と切り出すと、「そうですか、では、大學さんに代わって。」と笑顔で、私が差し出した筆ペンで、ささっと、大學の詩を書いてくださったのである。

 その本に、こう師匠は書かれている。
 
堀口大學は私にとって、運命であり、母校である。そんな風に感じている。

 そんな師匠のある思い出。

 叙勲の際にとある会で逢えるかもしれないチャンスがあって、この時、羽織を持っていった。

 「エロスの技法」
 “お手(てて)で口説くのよ”

 間が良ければ、このフレーズを書いてもらおうと思って持っていったが、いらっしゃらなかった・・・・・・。私はほとんど、こういうことをしたことがなかったけれど、この時だけは特別な気持ちだった。

 私もほとんどこんなことをしたことはなかった。
 でも、師匠は願いを叶えてくれて

 
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 「お手ゝで 口説くのよ」 大学様に代って

 としたためていただいたのだ。

 さて、心も躍る宝物を頂戴した後は、居残り会。
 師匠に書いていただく間、お待ちいただいた居残り会仲間の方と、関内で四十年の老舗、団欒へ。

 本来はお休みのところを開けていただき、落語会を聴いた佐平次さん、I女史、Oさんと私のよったりに、近くでお芝居をご覧になった後にお越しのM女史、そして、Nさんも合流。

 お任せでご用意いただいた刺身も他の肴も、いつものように絶品、小満ん落語のことや、さまざまな話題も、これまた絶品。男山の燗の具合も、絶品。
 他にどんな話題が飛び出していたのやら、半ば記憶は飛んでいるが、あっと言う間に三時間余りが経つ。

 帰り際、Nさんからはお菓子のお土産をいただき、団欒のご主人からは手拭を頂戴した。

 そして、何より、小満ん師匠からいただいた、宝物を大事に持って帰宅し、最良の一日が暮れたのであった。

 さて、お江戸日本橋亭の会は、元々、本牧亭で始まった独演会の流れのある、四十年を超える歴史のある会で、そちらは継続されるとのこと。

 あちらへ行かなきゃならないなぁ、これからは。

 そして、団欒へは、落語会とは関係なく宴会を企画し、皆さんをお誘いしようと思っている。

 関内の千秋楽で、いい思い出をつくっていただいた。

 小満ん師匠、ありがとうございます。


by kogotokoubei | 2019-03-18 12:25 | 寄席・落語会 | Comments(4)
 居残り仲間のM女史が携っていらっしゃる会に、居残り仲間と一緒に赴いた。

 都民劇場の落語会の企画として、喬太郎が人選などプロデューサーとなり、紀伊国屋“ホール”で“寄席”を開催する、というもの。

 落語あり、講談あり、色物あり、という趣向だ。

 出演順に感想などを記す。

橘家門朗『あなごでからぬけ』 (10分 *18:23~)
 初。文蔵の弟子のようだが、落語協会ホームページには、次のように書かれている。
   2014(平成26)年12月15日 橘家文左衛門に入門
   2016(平成28)年4月1日 前座となる 前座名「門朗」
 入門から前座になるまでの期間が長くなっているとは聞いているが、「待機児童」が増えているのだろうなぁ。 
 次の小辰が「みんな、怖かった」といじっていたが、たしかに強面ではある。
 しかし、語り口はしっかりしているし、印象は悪くない。
 
入船亭小辰『悋気の独楽』 (17分)
 生では、久しぶりだ。
 テレビでは、昨年のNHK新人落語大賞で『真田小僧』を観ている。優勝して不思議のない高座だった。
 実力が着実についていることは、この日の高座でも明らか。
 特に、女性が良い。師匠より上ではなかろうか^^
 この噺は、女房と妾をどう演じるかが重要なのだが、見事。定吉も憎らしく、可愛い。
 “寄席”ならではのネタであり、高座だった。

林家たけ平 漫談&『袈裟御前』 (19分)
 ずいぶん久しぶりだ。まだブログを始める前、二ツ目時代には何度か聴いているが、十年以上空いている。
 当代正蔵が、こぶ平時代に入門した総領弟子だが、良い意味で弟、妹弟子からの刺激を受けているのかもしれない。若々しい高座だが、キャリアも感じさせた。
 お客さんの笑いにも救われていたが、漫談のネタも、そんなに悪くない。
 北千住に高齢者が多く、老人会に青年部ができた、というネタはどこかで聞いた気もするが、ありそうな話^^
 「トマト工場に泥棒が入った」「みんなでカゴメ」「泥棒は、デルモンテ」なんてぇネタでも、笑ってしまった。この日の客席の空気もあっただろう。
 近所の高齢のお爺さん(東山さん)が家族から注目されることもあるという、どんな時かと言うと、「餅を食べる時」というのも、ほどよい切れ味のジョーク。
 そんな漫談風マクラが十分余りあった後の本編なので、遠藤盛遠、後の文覚上人が、袈裟御前の家に忍び込む前でサゲた。
 林家に伝わる『源平盛衰記』ではなく、上方のこの噺を東京の噺家さんで聴いたのは初めて。ちなみに、この噺の元、文覚上人と袈裟御前の逸話は、カンヌ・グランプリ『地獄門』につながっているなんてぇ蛇足を加えておこう。
 たけ平、客席を乗せ、また、その客席の空気に乗せられた、そんな感じの楽しい高座だった。ホールに、寄席の風が吹いていたなぁ。

翁家和助 太神楽 (13分)
 一人で見るのは、初めてか。
 長撥-五階茶碗-土瓶、と十八番の芸を披露。
 五階茶碗で、茶碗と茶碗の間の板を飛ばす技は、寄席で見たことがない。あんなこともやるんだね。
 日常生活に役立つ芸、ということで、スーパーでたくさん買い物をした荷物が多いときに雨が降ってきたら、と傘を額に立たせてみて、客席は爆笑。
 ご飯を早く食べさせようとするには、なんてのもあったなぁ。
 また、芸がどうやって生まれたかを考えた、とアツアツの焼き芋を持とうとして出来た(んじゃないかな)、と再現(?)してみせた。これも笑ったねぇ^^
 あの「チコちゃん」のドラマを見るような感覚になったよ。
 締めの皿回し、包丁三本をつないだ上で皿を回した芸は、圧巻。
 亡き和楽師匠の芸を、彼らしい味付けでしっかり継承している。
 これまた、寄席の風が、ほどよく吹いていた。

三遊亭兼好『夏どろ』 (20分)
 仲入りは、この人。
 足立区民として、“都民”特選寄席に出演でき嬉しい。足立区は「埼玉?」なんて言われているが、立派な都民で、浦安の人たちが千葉県民なのに都民のように振舞うのとは違う、などと、この人らしいマクラの入り。
 東京マラソンに出場できる確立は8.6%、落した財布が戻るのは59%、などの数字を並べていたのは、客席の温度を測っていたのか。結構、あったまっているのを確認して本編へつないだような気がする。
 冒頭、泥棒が、なかなか開かない長屋の戸を開けようとする場面を、擬音効果と顔の表情や仕草で演じるが、こういう細かいところ、結構上手いんだよなぁ。
 一文無しの底抜けの明るさと、つい道具箱などの質草を出して来いと財布から金を出す泥棒の人の好さとの対比が、実に可笑しい。
 男が、「せっかくだがこの五円を返す、利息分が足らない」、と言うと、「えっ、それもオレー!?」と呻く泥棒の姿が、なんとも可笑しい。
 着物も、当面の生活費も含め、有り金全部男に恵んでしまう泥棒が、「博打は、もうやめて働け」「分かった、博打はやめる、賭けてもいい」「それがいけねぇんだ」といった良いやりとりでも、会場から笑い。
 泥棒の、「遠くから見守っているからな」や、「戸締りはしっかりしておけ。オレみたいなかわいそうな泥棒がでねぇように」などの科白も、秀逸だ。
 仲入りに相応しい好高座。寄席の逸品賞候補としたい。

 さて、後半。

一龍斎貞寿『石川一夢』 (20分)
 貞心門下の女流講釈師が登場。初。
 張り扇のことを少し説明して、本編へ。
 講釈師の石川一夢が高座を務めた後で大川端を歩いていると、心中をしようとする若い男女を見かけた。一夢は後ろから二人の襟首をつかんで引きとめる。
 男は笹川五岳の倅で芳次郎だった。五岳は一夢の先輩講釈師だが、一夢が中座読み(落語家の二ツ目相当)時代、いろいろ嫌がらせを受けていた。
 事情を聞くと二人はは同じ古着屋に勤めていて惚れ合う中になったが、やむを得ぬ理由から店の金、十両に手を付けてしまいどうにもならなくなったと言う。彼らのために一夢は自らの十八番『佐倉義民伝』を相生町の質屋伊勢屋万衛門に質入れし、十両の金を拵えた。古着屋で事情を話して許され、芳次郎たちは、晴れて夫婦となることができた。しかし、日本橋の翁亭に出た一夢は、河岸の若い衆から『佐倉義民伝』を聞かせてくれと強く頼まれる。さて、困った一夢、事情を話すと客たちが・・・といった内容。 講談は、そう多く聴いていないが、この高座は聞きやすかったし、松之丞のような無駄なクスグリもなく、なかなか良かった。

林家正楽 紙切り (17分)
 大きなスクリーンが背後に下り、高座にはOHPがセットされた。
 ご挨拶代わりの①相合傘から、②ひな祭り(親子が一つづつ持つ雛人形の細工が見事)、③はやぶさⅡ、④紀伊国屋文佐衛門、⑤ボヘミアン・ラプソディ

 なんと言っても最後の作のご注文の後、下座がすぐ「We Will Rock You」を演奏。
 恩田えり嬢、やるねぇ。太鼓は、たぶん、小辰だろう。
 客席も拍手で応える。
 この日の会場、客同志の一体感があったなぁ。
 また、正楽師匠の、フレディー・マーキュリーとブライアン・メイも、良かったねぇ。
 恩田えりさんには、下座ではあるが、何か賞をあげたいので、朱書きにしておこう。

柳家喬太郎『掛取万歳』 (20分 *~21:00)
 「ボヘミアン・ラプソディー」の後で、いったい何をやったらいいですか!?
 と叫ぶ。
 まぁ、ネタは決めていただろうが、気合を入れなおし、自らを鼓舞するための咆哮を上げて、噺家の時知らず、なんて言いましてと本編へ。
 まさに、喬太郎ならではの掛取りだ。
 最初の魚勝は、落語、なかでもホール落語が好き。
 ということで、『芝浜』の世界に魚勝を引き込み、女房役になった八五郎が「お前さん、お願いだから河岸いっとくれよ」と頼むと、勝さん、天秤棒をかつぎ出て「いってくるぜ!」で、追い出した。
 村松屋は、ウルトラマン好き。ということで、ガヴァドン登場!
 ウルトラマンとガヴァドンの対決の最中、女房に「ガヴァドンを殺さないで!」と叫ばせ、ウルトラマン撤退で、二人目も攻略。
 三人目は、末広屋。大の寄席好き。
 ここでは、落語家、講釈師の高座への出を様子を形態模写。
 円丈、馬風、貞水、さん喬、雲助。
 さすがに、師匠さん喬の真似は、遠慮がちだったかな^^
 最後は、紀伊国屋。つかこうへい大好きとのことで、「熱海殺人事件」が始まる。
 八五郎が三浦洋一扮した木村伝兵衛となり、紀伊国屋を平田満が演じた熊田留吉に仕立てる。
 木村が、熊田に向かった「行け!」と言うと、熊田が出て行き、無事攻略。
 テレビでしか見ていないが、喬太郎、芝居も好きなんだなぁ、とつくづく思わせた場面だ。
 自分が楽しめればいいんだ、と冒頭言っていたが、なに、十分に客席も楽しんだ高座。
 ピッタリ20分で、九時のお開き。
 この高座の楽しさ、そして、この席のプロデューサーとしての特別賞も想定し、朱を付けておこう。

 喬太郎の人選も良く、また、それぞれが持ち味を発揮し、一人もダレるこのない会だった。
 これだけ笑った落語会もない。

 終演後は、楽しみだった、いつものお店で、五人での居残り会。
 興奮冷めやらぬこの会のことはもちろん、佐平次さん、Kさん、I女史が偶然日曜日に行っていたが会わずにいた国立名人会での志ん輔の高座の話題、などなどで盛り上がる。F女史はご子息とご一緒に会にお越しだったが、居残り会には、しっかり参加。
 話題も楽しいし、石川県は珠洲市の酒、宗玄の生原酒が、すこぶるいける。
 厚岸の牡蠣や・・・いろんな肴も美味しくいただきながら、あっと言う間に時間が過ぎる。

 もちろん(?)、帰宅は日付変更線を過ぎたのであった。

 こんな素晴らしい会を催してくれたM女史に、大感謝!

by kogotokoubei | 2019-02-27 12:57 | 寄席・落語会 | Comments(6)
 11日の祝日、野暮用が早く片付きそうなので、何か良い落語会はないかと、落語協会、芸術協会のホームページを探してみた。

 目に入ったのが「立川左談次を偲ぶ会」の文字。

 立川流で左談次の弟弟子(談生)だった、鈴々亭馬桜が発起人の会のようだ。
 その日の日本橋亭を借り切って、三つ開催する馬桜主催の会の夜の部で、六時開演。
 これなら間に合う。
 馬桜のホームページも確認。

 左談次は、残念ながら聴くことができなかった。
 その生の高座を体験しようと思っていた矢先に訃報に接し、その無念さを昨年書いたことがある。
2018年3月22日のブログ

 客演は、落語協会で左談次と同時代に前座、二ツ目時代を過ごした雲助、一朝。

 これは行かねばなるまい。
 メールで依頼すると、ほどなく馬桜ご本人から了解の返信。

 せっかくなので(?)、居残り会メンバーにもメールでご案内。
 すぐに、複数の方から、電話で予約したとのご返事があり、ご紹介した私も嬉しい限り。

 なお、馬桜は、昭和44(1969)年3月に談志に入門。
 そのほぼ一年前、昭和43(1968)年4月に入門した兄弟子が、左談次。
 そして、ほぼ一年後、昭和45(1970)年3月入門の弟弟子が、談四楼だ。

 談四楼の『シャレのち曇り』から、立川流設立直後、馬桜(談生)が師匠が協会に戻ると固く信じていた様子を、先日紹介した。
2019年2月6日のブログ
 寄席が好きだったのだろう、やはり、この人は協会に戻ったのだった。

 野暮用を午後四時に済ませ、東急線で三越前で下車。
 A10の出口を出て、久しぶりに日本橋亭へ着くと、長蛇の列にびっくり。
 前方に佐平次さんを発見。
 しばらくすると後方でI女史が手を振っている姿があった。

 開演後、冒頭の馬桜の挨拶で判明したのだが、90人で打ち切る予定が、手違いで120名を超えるお客さんを受け入れてしまったらしい。
 受付では、メールと電話予約別にチケットの入った封筒に名前が書かれているものと照合するなどを含めて時間を要しており、そのための行列であった。

 受付で、馬桜さんにメールで予約した幸兵衛と伝え、私の名前の書かれた封筒をいただき、入場する際にプログラムとCDを頂戴することができた。
 
 そのプログラムには、この会開催のいきさつや、この日の演題についての解説が載っていた。
 小さくて読めないでしょうが、これがその内容。

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 「噺のはなし」とあるのが、なにやら、嬉しい^^

 さて、馬桜のご挨拶やお詫びの後、開口一番以降について、感想などを記す。

鈴々舎美馬『あなごでからぬけ』 (3分 18:09~)
 馬桜の口上で、「前座はいらなかったかな」の一言があったが、「短く!」という指示もあったであろう、この長さ。
 初めて聴く女流。見た目は女子大生のようで、可愛いいこともあり後味は悪くないが、プログラムによると、馬るこの弟子、らしい。
 えっ、馬るこが弟子をとった・・・十年早い。

鈴々舎八ゑ馬『つる』 (11分)
 昨年12月24日の末広亭以来だが、マクラはほぼ同じ。
 ネタは、あの時のよく分からない新作よりは、こっちの方がずいぶんと良かった。関西出身の馬風門下、という変わり種。
 
鼎談 雲助・一朝・馬桜 (27分)

 鼎談の内容の前に、この三人と左談次について、入門、二ツ目昇進、真打昇進時期を、整理しておく。

 昭和43年 2月 雲助が馬生に入門
       3月 一朝が柳朝に入門
       4月 左談次が談志に入門
 昭和44年 3月 馬桜が談志に入門
 昭和47年 11月 雲助が二ツ目に昇進
 昭和48年 9月 一朝、左談次が二ツ目に昇進
 昭和50年 5月 馬桜が二ツ目に昇進
 昭和56年 3月 雲助が真打に昇進(第一回真打昇進試験合格)
  *この「第一回真打昇進試験」については、雲助の本から記事を書いたことがある。2014年7月21日のブログ
 昭和57年 12月 一朝、左談次、馬桜が真打に昇進(真打昇進試験に十人受験し全員合格)

 ということで、左談次との関係では、雲助は一年兄弟子、一朝は、ほぼ同期、馬桜が真打昇進では追いついたが、一年弟弟子。
 
 では、鼎談。馬桜が聞き役。
 雲助、一朝からも上述の左談次との関係について、説明があった。
 このご両人が、左談次のことを「さだやん」と呼ぶことから、左談次という人の人柄が偲ばれる。
 馬桜(談生)からは、左談次と弟弟子の現在の龍志との三人会を開いていたが、それが、後に左談次&談生と、雲助、そして、一朝との三人会につながったと説明。
 雲助と「さだやん」との最初の出会いは、今はなき人形町末広だったとのこと。
 二人とも「さだやん」の思い出で共通するのは、酒の上での大立ち回りによる、トラ箱入り。
 西浅草警察署、荒川警察署、という名が登場する。
 そんな話の中、一朝が、「雲助兄いは、(警察の聴取中に)落語会のチケットを売っていた」と話す。テレビドラマと同じで、年配と若手の二人の警官が事情聴取する中、「おまえ、落語家か」となって、つい、持っていたチケットを押し付けたというから、さすが、雲助^^
 これ以上は詳しく書けないが、左談次の志ん朝宅でのマージャンでの逸話なども披露された。
 そして、馬桜が二人に「左談次の一席となると何ですか」とふる。
 雲助「大安売り」、一朝「真田小僧」。
 雲助は、「さだやんの、あの軽さ、今の落語家にはない。協会に戻って来て欲しかった」は、本音だろう。
 一朝は、「楽屋で他人の噺で笑うことは、ほとんどないけど、さだやんのあの『真田小僧』には、腹を抱えた」と振り返る。
 ますます、生で聴けなかったことを悔やむ鼎談だった。

 ここで仲入り。
 通路にまでパイプ椅子が置かれた中、少し長めのトイレタイムだったが、席でプログラムを眺めながら再開を待っていた。
 
 後半の三席。

鈴々舎馬桜『大安売り』 (19分)
 プログラムにも載っていたが、この噺は、左談次が上方の橘ノ円都に稽古をつけてもらい、東京で最初に演じたと説明。知らなかった。
 橘ノ円都については、ほぼ一年前、桂小南(先代)の本を記事にした中で、ご紹介したので、ご興味のある方はご覧のほどを。
2018年2月4日のブログ

 マクラで知ったが、馬桜は、千賀の浦部屋の贔屓だったらしい。それも、前の親方である舛田山時代とのことで、あら、それでは居残り会仲間のYさんと共通しているではないか。
 そんな短めのマクラから左談次由来のネタへ。
 江戸っ子が、知り合いの関取に出会い、一杯飲ませながら、地方場所での相撲の結果を聞く噺だが、左談次の高座をなぞっていたのだろう、軽妙な語り口は、聴いていて飽きない。
 上方での十日間の後、京都に行って「土つかず」は当然で、風疹で休んでいた。その後、浜松で八、九歳の子供にまで負けたという関取に対し、「それじゃ、シコ名を変えたらどうだい。丸焼けってのはどうだ。きっと、全勝(全焼)でしょう」というサゲは、馬桜の工夫とのこと。

春風亭一朝『宿屋の富』 (26分)
 楽屋で、「さだやん」の逸話を思い出したとのことで、前座時代の海水浴での思い出や鹿芝居の女形のことなどをマクラで語ってくれた。
 六段目の勘平が雲助、お軽が左談次なんてぇ芝居、見たかったなぁ。
 本編は、見事な志ん朝型。
 前半は、一文なし男と宿屋の主人の会話がとにかく楽しい。
 この男が「身の回りの世話だけで、五、六十人」とか、「番頭が百五十人で勘定しても、一年経っても終わらない」とか、「泥棒が、十五、六人もいて、千両箱、たった八十箱しか減ってない」なんて話を真に受ける宿屋の主人、私も会ってみたい^^
 その主からなけなしの一分で富籤を買わされた後の「これで、本当に一文なしになっちゃった」が、なぜか哀れさを伴いながらも可笑しくて笑った。
 その後、富興行が行われている湯島天神の場。
 夢に神様が現われて、二番富が当たるはず、という男が楽しい。もし五百両当ったら吉原の女を身請けして所帯を持つという妄想ばなし。
 銀の簪をまげてまで飲ませてくれる女の優しさで泣く男の姿が楽しい。
 一反のさらしで作った大財布の中から、細かくした五百両を取り出す場面の「ズンズンズン」「ドカーン」といった擬音でも、爆笑。
 「お膳にお銚子が一本のっていて、刺身があって鰻があって天麩羅があってお椀がある。“どうだお前も一杯”“いや~ん、酔っちゃうから”“いいじゃないか、酔ったって”“そう・・・あぁ酔っちゃった、寝ましょう”・・・起きて湯に行って帰ってくると、お膳にお銚子が一本のっていて~」の繰り返しも、小気味の良い語り口で、江戸落語の一つの醍醐味を味わわせてくれる。
 一文なしの男が一番富に当たっているのを確認する過程も、くどくなり過ぎずに楽しませてくれる。「あっちが、子の千、三百、六十五、こっちが、子の、千、三百、六十、五・・・・・・近いだけに悔しい」という間も結構だし、目の仕草や声の調子で微妙な心理の変化を表現するあたりも、流石である。
 宿屋の主人が、すぐに一番富と分かるテンポの良さが対照的で結構。
 飛んで帰ってから、宿屋の主人が、「あわあわ・・・」と言葉にならない驚きを見せているのを訝しがる女房、半分の五百両を貰えると分かった途端、女房も「あわあわ・・・五、五、五・・・」には、『火焔太鼓』のサゲ前の夫婦の姿を見るような可笑しさがあった。
 左談次のCDの内容は別途書くとして、その「さだやん」への思いも込めていただろう好高座、今年のマイベスト十席候補としたい。

五街道雲助『付き馬』 (35分 ~20:38)
 左談次の『権兵衛狸』の思い出から、本編へ。
 丁寧に「馬」とは何かを解説。
 聴いていて、「まるで、小満んだ!」と思うくらい、川柳や気の利いた科白が程よく挟まる。
 吉原をひやかす客の様子を「見ぬようで見るようで 客は扇の垣根より」や、つい遊びに行く様子を「田楽の串で小判の封を切り」なんて科白は、なかなか若手では似合わないが、ピタっとはまる。
 「提灯を持つ」なんてぇ科白も二度ほどあったが、若い人に、その意味が分かっただろうか。こういう言葉、大好きだ。落語に登場する、死語になりつつある言葉、ぜひ、小満んや雲助のように使い続けて欲しい。「分からないから、変える」というのは簡単だが、変えない魅力が、落語にはあるのだよ。
 さて、この男、若い衆、妓夫太郎をまんまと騙したあくる朝も、浅草田町のオバさんが貸した金を集金に行く予定の仲通りの店を見て、「ちょっと早すぎたねぇ」の後、「居続けの ばかばかしさに 上天気」なんてことを言って、若い衆を大門から外に連れ出そうとする。
 「なに、土手を上がるだけ」の後、「私の目を見ろ、目を」と指で目を指してみせる姿が、この後にも出てくるが、可笑しくてならない。
 それからの道中については、見事な言い立て、と評することができる。
 湯屋->豆腐屋->花屋敷->銅像->観音様->ハトに豆をやるおばさん->仁王像->仲見世の人形焼->オモチャ屋->豆屋->紅梅焼き->雷門->神谷バー->築地行きのボギー車、と辿って、「ボギー車、乗る?」なんて聞かれたら、もう若い衆も黙っちゃいない。
 しかし、若い衆の剣幕に、この男が動じるはずもない。筋書きがすでに出来ているわけで、「田原町のオジさんの所で、勘定をこしらえてもらう」と答える。周到な詐欺の仕上げが近づく。
 勘定は二十三円六十五銭だが、「十円札を三枚上げよう」に加え、「帯源の帯を付けよう。一度しか使っていない。五十の着物に百の帯、なんて言うじゃないか」と、騙しの微細な演出の見事なこと。
 最後の、“オジさん”の早桶屋での主人と若い衆の頓珍漢な会話は、お手の物。
 「長かったんですか」->「たった一晩でして」
 「だいぶ、はれたようで」->「ほれたかはれたかわかんないんですが」
 「仏様はお喜びでしょう」->「ばかな喜びようで、しまいには裸でカッポレ」
 このあたりの会話の妙は、この噺がよく出来ているなぁ、と再認識させる。
 もちろん、演じ手が悪けりゃ、噺本来の持ち味を引き出すことはできない。
 久しぶりの雲助だったが、さすがだ。

 この噺では、2013年、県民ホール寄席の300回記念における小三治の名高座を思い出す。
2013年9月26日のブログ
 居残り会では、最近では、漫談か短い噺しか聴くことのできないらしい小三治だが、あの日のこの噺は、凄かったなぁ。

 雲助も、この噺の持つ魅力を出し尽くすかのような高座。今年のマイベスト十席候補とする。

 最後は、馬桜、寄席文字の右橘さん、そして、左談次のお内儀も出てきて、雲助による三本締めにてお開き。


 終演後は、佐平次さん、Kさん、I女史、M女史の五人で、佐平次さんがよくご存知の東京駅のビル内のお店で、楽しみだった居残り会。

 ステーキ屋さんだが、他の料理もワインに合い、話も弾む。
 I女史の直近の海外旅行でのちょっとした騒動のことや、Kさんが十歳で一人で寄席に出かけて行った時の、甘く淡い思い出なども飛び出し、あっという間に閉店時間。
 十一時の閉店まで粘っていては、帰宅は日付変更線を超えるのだよね。

 皆さんをお誘いした甲斐のある、結構な追善落語会、そして、居残り会だった。

 M女史からは、居残りメンバーがほぼ全員揃う予定の落語会のチケットを受領した。
 その会も、そして、居残りも、楽しみだ。
by kogotokoubei | 2019-02-13 12:47 | 寄席・落語会 | Comments(10)
 本年の落語初めは、この会になった。

 久しぶりに、改装された関内ホールでの小満んの会。

 以前はなかったホール入口の飾りつけの前に、看板が出ていた。

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 これが、看板のアップ。

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 この会、次の三月の会で、終了してしまうのだ・・・・・・。

 ホールに入ると、ロビーのモニターで金原亭駒六の開口一番が映っていた。
 ネタは、『無精床』。
 コンビニで買ったおにぎりを食べ終えて、駒六の高座の終盤に会場へ。

 綺麗になった264席の客席に、四割ほどのお客さんか。
 なんとも寂しい。

 小満んの三席の感想などを記す。

柳家小満ん『天狗裁き』 (22分、18:45~)
 「初夢や 顔を洗って 忘れけり」「初夢や 文楽志ん生 ほか五人」などの楽しい川柳から、正月二日に見る夢が初夢と説明する短いマクラから本編へ。
 熊さんの女房が、足袋屋の六さんは、初夢で百足(ムカデ)を見て、表通りに「百足屋」という看板を上げてから運が向いたんだから、早く初夢を見なさいとと催促する。縁起ものの宝船の絵も敷いてある、という設定が、サゲにつながるとは思わなかったなぁ。
 この噺は、同じようなセリフ「女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、大家が・・・・・・」が繰り返されるので、下手な演者の場合にやや冗長になり聴いていて辛くなることがあるが、小満んは、そのリフレインを一切割愛した。これは、実に良かった。
 また、熊が大家に向かって「見てないものは、大家さんどころか、お奉行様にも話せない」と言うのを大家が引きとって、申し立ててすぐにお白洲の場となり、その奉行に向かって「見てないものは、天狗様にも話せない」と答えたのを奉行が引き取って、すぐ天狗の森に連れて行く、というスピーディな場面展開は、一般的なこの噺の持つ弱点を補っていた。
 熊さん、天狗の羽団扇をだまし取って、扇いで天空に上り、眺めに見とれて羽団扇を扇ぐのを止め、落ちたところが宝船。
 弁天様が「大丈夫ですか?」と聞く声は、実は女房で、「どんな夢、見たんだい?」でサゲ。

 この筋書きは、初めて聴いた。
 とはいえ、宝船に落ちるという設定は、どこかで読んだなぁ、と思ったら、自分のブログだった。
 2012年3月13日の記事で、馬生の音源を聴いた後に、三種類の『天狗裁き』を並べていたが、その中の『羽団扇』が、そういうサゲだった。
 2012年3月13日のブログ
 あの記事では、志ん生・馬生の型、そして上方に米朝が移し、それがまた東京に逆輸入(?)され、現在主流になっている型、そして、『羽団扇』と言う型の三つを紹介した。
 どうも小満んは、『羽団扇』に近い。
 実は、終演後、居残り会の店へ向かう道すがら、Kさんが、『羽団扇』では、とおっしゃったのを否定してしまっていた。大変、失礼しました。『羽団扇』のサゲが、馬生が演じるような、商家の大店に空から落ちて、羽団扇でその娘の病気を治し結婚することになる、という筋と勘違いしていたのだ。

 とはいえ、『羽団扇』とも、この高座は少し違うのである。
 以前の記事で確認する。
 たびたびお世話になる「落語の舞台を歩く」からの引用を含んでいる。
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『羽団扇』 
 二代目の三遊亭円歌や立川談志が演じていたようだが、この噺は、天狗からだまし取った羽団扇を仰いで空に舞い上がった主人公が落ちた場所は、下記のように七福神の宝船。引用は、いつもお世話になっている河合昌次さんの「落語の舞台を歩く」から。
落ちたところが、七福神の宝船の中。「今日は正月だから七福神が集まって吉例の宴会をしている」と大黒。それでは仲間に入れてと頼んだが、「何か、芸が出来れば」と許され、仲間の中に。
 そこには綺麗な弁天が居て、お酌をしてもらいご機嫌で、恵比寿にも勧めたがお酒は駄目でビールだけという(エビスビールのシャレですよ)。肴は恵比寿様が釣った鯛のお刺身、またこれが美味いこと。飲んで食べて、芸をする間もなく寝入ってしまった。弁天様に起こされると・・・

 これ以上の解説は、ぜひ「落語の舞台を歩く」でご確認のほどを。なお、ネタ元は談志の高座。
「落語の舞台を歩く」の『羽団扇』のページ
 ちなみに、この噺は、正月二日の“初夢”という設定で、“旬”の明確な落語となっている。
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 引用した、宝船での宴会を、小満んは割愛している。
 宴会を含むパターンも演じるのかどうかは、調査不足。
 ともかく、くどい部分を省いた、この人ならではの“軽妙洒脱”な高座。今年のマイベスト十席候補とする。

柳家小満ん『ふぐ鍋』 (17分)
 いったん下がってすぐ高座へ。
 九州大分では、毒のある肝も勧めるということや、サバフグのこと、「ふぐ鍋を 食わぬ愚かと 食う愚か」などから本編へ。
 幇間の一八は、お手の物。『つるつる』のような猫にまでヨイショする様子が、実に可笑しい。
 旦那と一八が、ふぐに箸を出しかねていると、そこへ物もらいがやって来る。
 そうだ、乞食に食べさせて、様子を見よう。大丈夫なら、自分たちも食べよう、という作戦。
 一八が見に行くと、乞食が何ごともなく寝ているので、これなら大丈夫と、旦那と一八は箸をつけ、美味い美味いと舌鼓。そこへ、乞食がやって来て、二人の様子を確認し「それじゃあこっちも食べよう」というサゲ。
 終演後の居残り会で、佐平次さんは、この旦那と一八の悪だくみを、現在の政治にたとえていたような気がするが、記憶が定かではない^^
 こちらも、旦那と一八が、最初にこわごわと箸をつける際に、白菜やネギを食べる様子が、絶妙だった。好高座。
 

柳家小満ん『紺屋高尾』 (34分 ~20:16)
 仲入り後、この長講。
 「紺屋のあさって」というのは、初めて聴いた。
 頼んだ染物ができないので、いつできるか、と聞くと「明後日には」と答えるのが、紺屋とのこと。蕎麦屋の出前と似たような、業界の決まりか^^
 この噺では、お玉が池の先生、らんせつ(蘭雪?)が活躍する。
 久蔵が恋煩いと分かり、大名道具と言っても売り物買い物、三年頑張って働き十両できたら、連れて行こう、と言うのも、この先生。主人の吉兵衛ではない。
 久蔵が、花魁道中で三浦屋の高尾を見て一目ぼれ、帰ってから何を見ても高尾に見える。
 染物の刷毛が高尾、甕の中にも高尾、めしを食べてもご飯が高尾、先生の顔も高尾・・・というのは、『崇徳院』を彷彿とさせる。
 三年一所懸命に働いた、久蔵。主人の吉兵衛が一両上乗せしてくれて十両。
 買い物があると久蔵が言うと、吉兵衛が、何を買いたいと聞く。
 「たかおかいたい」と言うと「鷹を、よしなよ鶯にでもしな」は可笑しかった。
 小満んの噺は、このネタでは定番となっているような科白も、くどいと思われるものは、あっさりと割愛する。たとえば、高尾を待つ間の「来年三月」などの科白の繰り返しは、ない。
 また、床入りの場面なども、実にあっさり。上品、なのだ。
 とはいえ、笑わせどころも、しっかりあって、例えば、久蔵の下帯は「おととしの十二月からはきっぱなし」と聞いた吉兵衛、小僧に「地面を三尺掘って埋めろ」なんてところは、なんとも笑える。
 高尾が「次はいつ来てくんなます」と聞かれた久蔵、つい、自分は野田のお大尽などではなく、紺屋の職人で、三年経たなきゃ来れないと答えると、高尾が、「横領罪でゴーンさんみたいに」と時事的なギャグを挟む遊び心もある。
 しかし、真相を知った高尾、「金で源平藤橘四姓の人と枕を交わす卑しい身を、三年も思い詰めてくれるとは、なんと情けのある人か」という科白などは、当代の噺家さんでは、なかなか聞けないね。
 終盤も、甕のぞき、という言葉は出てくるものの、下品な内容にはならない。藍のあっさり染めで、紺屋高尾は、大繁盛。
 たまに見受けられる言いよどみなどはほとんどない、実に楽しい高座だった。


 終演後は、楽しみだった居残り会。
 佐平次さん、Kさん、I女史、N女史と五人で、会場から徒歩五分ほどのDへ。
 さて、何を食べ、何を話したのか、少し記憶が怪しくなるくらい北海道の男山の燗の徳利が何本空いたものやら。
 しかし、小満んの会は終演が早いので、帰宅は日付変更線を超えることは、なかったのだ。
by kogotokoubei | 2019-01-22 21:54 | 寄席・落語会 | Comments(4)

今年のマイベスト十席

 さて、今年のマイベスト十席の発表。

 前回の記事で、複数の高座が候補となった人について、一席に絞るルールを今年も適用することにして、小満ん、白酒、兼好の各二席から一席に絞った。
 
 その結果、候補は次の十七席。

(1)柳家一琴『小言幸兵衛』
>池袋演芸場 1月下席 昼の部 1月25日
(2)桂かい枝『子は鎹』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
(3)三遊亭兼好『品川心中』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
(4)入船亭扇遊『明烏』
>第54回 三田落語会・昼席 仏教伝道センター 2月24日
(5)瀧川鯉昇『味噌蔵』
>二人三客の会 横浜にぎわい座 4月11日
(6)立川談幸『宗珉の滝』
>池袋演芸場 4月中席・夜の部 4月13日
(7)古今亭菊丸『片棒』
>横浜にぎわい寄席 5月2日
(8)柳家小満ん『花色木綿』
>柳家小満んの会 吉野町市民プラザ 5月17日
(9)柳家権太楼『猫の災難』
>池袋演芸場 六月上席 昼の部 6月8日
(10)桃月庵白酒『お見立て』
>池袋演芸場 上席 夜の部 6月8日
(11)春雨や雷蔵『子別れー通しー』
>国立演芸場 中席 6月19日
(12)三遊亭歌奴『御神酒徳利』
>新宿末広亭 下席 昼の部 6月29日
(13)立川龍志『片棒』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日
(14)古今亭志ん輔『船徳』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日
(15)柳家さん喬『五人廻し』
>鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集 8月16日
(16)柳家小ゑん『長い夜』
>新宿末広亭 12月下席 昼の部 12月24日
(17)むかし家今松『火事息子』
>新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月24日


 候補が少ないから楽かというと、そんなことはなく、並べてみると、やはり悩む。
 七席を除外するのが、つらい・・・・・・。

 それぞれの高座のブログの内容を読めば読むほど、悩む。

 しかし、ここは心を鬼にして(少し大袈裟^^)選ぶことにしよう。

 では、今年のマイベスト十席は、こちら。
 ちなみに数字はあくまで聴いた時期が早い順であって、ランキングではない。


(1)桂かい枝『子は鎹』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
創作能力の高さを発揮した上方版『子別れ』を堪能!
 ブログではあらすじの紹介の後、こんな感想を書いていた。
2018年2月14日のブログ
この噺を上方に伝えたのは、円朝門下の二代目三遊亭円馬と言われており、その内容は柳派の『子別れ』と違って、子供が父親の元に残る、円朝作の『女の子別れ』だったようだ。
 しかし、噺家さんにもよるが、上方でも母親と子供が一緒に出て行く型も多いらしいし、実際、かい枝もそうだった。
 かい枝の高座は、泣きの場面にも程よく笑いどころを挟みながら、上方の噺家さんとしては(?)、落ち着きのある、人情噺に仕立てていた。
 中でも、熊と寅との再会、そして、サゲ前の復縁の場面が秀逸。
 わざとらしくなく、くどすぎず、親子、そして、男女の情愛のふれあう姿が描かれていたように思う。
 こういうネタも、しっかりこなすのが分かると、なおさら、文枝の名はこの人が継ぐべきだったなぁ、と思わずにはいられない。
 芸の幅広さを示した高座、今年のマイベスト十席候補とする。

(2)三遊亭兼好『品川心中』
>西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月13日
兼好流“通し”の高座で、「幕末太陽傳」の小沢昭一さんが目に浮かんだ!
 兼好の工夫について、ブログから引用。
2018年2月14日のブログ
 金蔵が、自分で用意した、頭には三角、下はツンツルテンの死装束を着たままお染に背中を押されて品川の海にドボン。
 この衣装の仕込みがあったので、改作の「下」にすんなりとつながった。
 そう、通しだったのだ。その遠浅の海から抜け出し、親分の家にやって来た場面あたりで約30分だったろうか。だから、例のドタバタでさげるかなぁ、と思っていたので、驚きながら、嬉しい誤算。
 親分はじめご一行が協力して、早桶に金蔵を入れて白木屋に連れて行き、「金蔵が幽霊で現れた、線香の一本も上げて供養しないと浮かばれない」、とお染に迫る、という展開になった。
 こういう下の描写、いったい誰の型なのか・・・オリジナルかな。
 私は聴いていて、『幕末太陽傳』の小沢昭一さんの金蔵役の姿を思い起こしていた。

(3)入船亭扇遊『明烏』
>第54回 三田落語会・昼席 仏教伝道センター 2月24日
三田落語会を締めくくる高座に、落語の王道を見た!
 王道という形容については、ブログの記事が裏付ける。
2018年2月25日のブログ
 こういう高座を、どう言えばいいのだろう。大いに、「変えないことの大事さ」を感じた。
 本来の筋、くすぐりを、一切いじっていない。
 時次郎が吉原でぐずる際は、「女郎を買うと、かさをかきます」もそのままだし、二宮金次郎も登場する。翌朝、ふられた男の小道具は、お決まり、甘納豆。
 噺本来の持ち味を、存分に引き出し、笑わせどころは、しっかり。
 この人ならではと思ったのは、時次郎の泣きじゃくる場面などに感じたが、それはそれで、大いに結構なのだ。
 数年前は、独演会はほとんど開かなかったこの人や一朝、今では独演会の数がなんと多くなったことか。
 六十歳半ば、本格派で艶もあり、今もっとも乗っている人かもしれない。
 すでに出来上がった噺は、そのままでも楽しいです、そのまま演ればいいんです、という確固たる哲学があるようにさえ思えた高座
 なお、三田落語会は、文化放送の支援で再開されるらしい。良かったね。

(4)瀧川鯉昇『味噌蔵』
>二人三客の会 横浜にぎわい座 4月11日
十八番の“食べる噺”で、睦会の後継落語会が沸いた!
2018年4月12日のブログ
 女房の実家に泊まるはずの旦那が帰った後のドタバタで、蛸の酢の物の大皿を股の下に隠す甚助さんの何とも言えない表情が、秀逸。
 その酔った甚助さんの、解読不能の言葉にも会場大爆笑。
 食べる場面は、お手のもの。
 たっぷりの山葵で刺身を挟んで食べた時の驚愕の表情や、芋の煮っころがしをフウフウしながら頬張る場面などは、面目躍如。
 三人とも十八番ネタの競演の中で、芸協を代表して(?)の好高座

(5)古今亭菊丸『片棒』
>横浜にぎわい寄席 5月2日
声よし芸よし、あらためてこの人の凄さを認識!
 次男鉄次郎の弔い計画について、こう書いていた。
2018年5月2日のブログ
 その色っぽい弔い行列の先頭は、頭(かしら)ご一行の木遣りだが、菊丸の声の良さに、いささか驚いた。
 よく通る高い声で、♪よ~~お~ん~やりよ~ぉ~、の一節。
 会場から自然と拍手が起こった。
 次に手古舞が、♪しゃらん、からん、とリズム良く続く。
 山車のケチ兵衛人形には、団子鼻の脇にホクロがあって、毛が二本出ているというリアルさ^^
 神輿がやって来て、♪テンテンテレツク、♪ワッセワッセ、♪チャンチャカチャン、という擬音で、なんとも賑やかな行列の光景が目に浮かぶ。
 花火が上がり、位牌のついたパラシュートが落ちてくるのを地上で待ち構えるのが、海老一染之助・染太郎。「いつもより多く廻ってます」で会場が大爆笑。

(6)柳家小満ん『花色木綿』
>柳家小満んの会 吉野町市民プラザ 5月17日
「軽妙洒脱」とは、まさにこの高座のこと!
 ブログの記事は結構長いのだが、後半のみご紹介。
2018年5月18日のブログ
 大家「布団の表は」「表は、にぎやか」などのトンチンカンな会話が、笑える。八五郎が、大家さんの家の布団と同じと言うと、「表が唐草、裏は花色木綿」ということになり、それからは、黒羽二重も帯も箪笥までも「裏は、花色木綿」と八五郎が馬鹿の一つ覚えで繰り返すのだが、分かっていても、実に笑える。
 そんな会話の中にも、大家は「蚊帳は一張り」「刀は、一振り」などと数えるんだと教える場面があり、落語はいろいろタメになるのだ。
 縁の下で聞いていた泥棒が、たまらず出て来て、八五郎に向かって「嘘つきは泥棒のはじまりだ」にも笑った。泥棒が八の嘘をバラしていると今度は八が縁の下へ。その八がまた出て来て、泥棒の科白を真似て、「ほんの、出来心でございます」でサゲ。この展開も、ありだろう。
 まさに、軽妙洒脱という形容が相応しい好高座

(7)柳家権太楼『猫の災難』
>池袋演芸場 六月上席 昼の部 6月8日
代々小さんの十八番をしっかり継承する名演!
 “小さんの噺”という理由は、ブログの記事でご確認のほどを。
2018年6月10日のブログ
途中の科白も楽しい。
 「あいつは、なんかアテがなきゃ飲まない・・・意地汚ねえんだよ」
 「どこまで行ってんだ・・・待つ身のつらさが分かんねぇのか」
 という熊の科白に、つい、熊に同情しそうになるのが、人間の性か^^
 この噺は、元々上方で三代目小さんが東京に移したもの。
 今では、柳家の十八番になっている。
 相棒が酒を買いに行く際に「三丁ばかり行くと、酢屋満てえ酒屋があるから」と熊は教えるが、これは五代目が家の近所にある酒屋の名を使った内容を踏襲している。
 二人目の師匠から継いだネタを、大事にしているなぁ、と思いながら聴いていた。

(8)桃月庵白酒『お見立て』
>池袋演芸場 上席 夜の部 6月8日
真骨頂のデフォルメの芸が生きた爆笑高座!
 昼の権太楼のみならず、居続けの夜も実に楽しいトリの高座だった。
2018年6月10日のブログ
 杢兵衛が、とにかく可笑しい。この人の持ち味は、いわばデフォルメの芸だが、田舎者の杢兵衛大尽の言葉や仕草の、まぁ凄いこと。
 また、この人ならではのクスグリのセンスの良さは、喜助の喜瀬川への言葉などで発揮される。喜瀬川が杢兵衛に会いたくないあまりに病気だとか死んだという嘘を平気でこしらえるのに対し、「また、腹にないことをいけしゃあしゃあと言えますね」という言葉も、実にタイミングよく挟まれるので、可笑しいのだ。
 喜助がお茶を目に塗って泣いた真似をしていると杢兵衛が、「喜助、茶殻が目についとるぞ」、喜助が「悲しいとこうなるんです」に「体質改善しろ」にも笑った。
 笑わないようにと喜助が自分の体をつねったりする仕草も、なんとも言えず楽しい。
 それでいて、噺本来の味は、決して壊していないのだ。

(9)立川龍志『片棒』
>龍志・志ん輔二人会 国立演芸場 7月29日
三人の息子と親との会話で、江戸の風が高座に吹いた!
 こんなことを書いていた。
2018年7月30日のブログ
 鉄が「菜漬けの樽を荒縄で巻いて」の言葉に「まるで罪人だね」と言うケチ兵衛だが、鉄のケチぶりに次第に感心していく。そして、サゲ。
 見事に三人の個性を描き分け、なかでも次男の銀が秀逸。
 五月に聴いた横浜にぎわい座での古今亭菊丸のこの噺も見事だったが、龍志も負けてはいない。
 菊丸は実に丁寧に三人の息子を描き、なかでも次男の唄が秀逸だった。その菊丸よりは龍志が描く銀のぞろっぺいな姿も、まさに江戸っ子で悪くない。江戸の風と粋、そんなものを感じさせてくれた高座

(10)むかし家今松『火事息子』
>新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月24日
父と母の愛情表現の違いを描き、うつむく籐三郎の姿も浮かんだ名演!
 つい先日の記事だが、こう書いていた。
2018年12月26日のブログ
 母親は籐三郎に、「お父さんだって、お前のことをどれだけ気にかけていたか」と言うと、父親が「なにを言っている」というようなやり取りが二度、いや三度くらいあっただろうか。これで、そうか、父親だって、そうだろうとも、と聴く者も心が和むのだ。
 そして、母親が着物を持たせて、と言うと、父親が、「捨てなさい、捨てりゃ、拾うものもいるだろうから」の謎かけを母親が合点し、「そうですね、箪笥ごと捨てましょ、千両箱も捨てましょ」で聴く者が救われる。
 籐三郎の科白はないが、その表情が察せられる。きっと、涙ぐんで下を向いているのだろう。そんな姿も見えてきた今松の高座だった。


 なんとか、十席選ぶことができた。

 回数的にたくさん寄席や落語会に行けた前半の高座が多いのは当然のこと。

 さて、来年はどんな高座に出会えることやら。

 回数はともかく、まだ出会っていない噺家さんや、若手の高座、そして、コツコツ地道に続けている地域寄席などにも行ってみたいとは思っている。

 大晦日は目の前。

 今年は私の両親は九十を超えてまだ元気でいるが、連れ合いのほうはお父さんが二月に亡くなった。お母さんが今、入院中。お二人とも、昭和七年生まれ。

 自分が還暦をすでに過ぎている。

 健康が第一だなぁ、と思う日々。

 拙ブログをお読みいただいた皆さん、良いお年をお迎えください。

by kogotokoubei | 2018-12-28 21:27 | 寄席・落語会 | Comments(8)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛