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噺の話

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2019年 11月 18日 ( 1 )

 15日の真打昇進披露興行における、柳亭小痴楽の『宿屋の仇討』は、今でも、特筆すべき高座だったと思う。

 翌日の夜に書いた記事では、最後の方は両方の瞼がくっつきそうになって、詳しい設定などは割愛したが、高座の良さとは別に、舞台設定や人名について、誰に稽古してもらったのだろう、という疑問は残っていた。

 この噺は、元は上方のネタ『宿屋敵(仇)』を三代目柳家小さんが東京に移したものだが、この噺を上方で修行中に師匠二代目三木助から伝承され、さらに工夫を加えた三代目桂三木助の十八番としても有名。

 また、八代目林家正蔵もネタにしていたが、本人よりも弟子の六代目春風亭柳朝の方が、持ち味の江戸っ子の啖呵が生きていて、私も柳朝の音源は大好きだ。
 ちなみに、円生が柳朝の高座を聴いて、「師匠より、いいねぇ」と言ったことから、正蔵と円生との溝がいっそう深くなったとか、ならなかったとか。

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 興津要さんの『古典落語』では「続々」に収録されており、巻末にこのように記されている。

 原話は、天保年間ごろ(1830年代)刊の笑話本「無塩諸美味」所収の「百物語」。
 別名を「宿屋敵」「万事世話九郎」といい、本書所収のそれは、上方種のものだが、江戸のそれは、「庚申待ち」「甲子待ち」といい、馬喰町の旅籠屋で、庚申の夜に寝ると、腹中の虫が昇天し、命がうばわれるというので、寝ずにすごした「庚申待ち」の晩には、とりとめのないはなしをしているうちに、仇討さわぎがおこるという設定になっている。
 いずれにしても、過大なるじまんから生まれた悲喜劇が中心になっている点においてはかわりはないが、上方種のほうが、にぎやかでおもしろいことは否定できない。

 『庚申待ち』は、志ん生の十八番。
 
 さて、この噺、人によって、舞台設定や人名に微妙に違いがある。
 
 源兵衛の“色事師”ばなしの舞台となった場所、そして侍の名で、違いを並べてみる。

 ちなみに、元の上方版(『宿屋敵(仇)』は、三人連れは兵庫出身、源兵衛(源やん)の色事師話の舞台は高槻の城下、侍の名は小柳彦九郎で、彼の弟の名は大造。

(1)五代目柳家小さん型
   場所は、川越。侍は小柳彦九郎、弟は大五郎。

(2)三代目桂三木助型
   場所は、川越。侍は石坂段右衛門、弟は大助。

(3)八代目林家正蔵型
   場所は高崎。侍は三浦忠太夫、弟は大造。

 小痴楽は、源兵衛のおじさんの居所は高崎、その妻と弟を斬って逐電したという侍の名を、三浦忠太夫、弟を大助としていた。

 これは、三木助型と正蔵型の折衷版、と言えるかもしれない。
 しかし、多分に、正蔵型と言えるだろう。

 柳亭、という亭号は、もちろん柳家由来。
 
 場所は川越でもなく、侍が小柳でもない、というのは、若干不思議ではある。
 
 実は、同じように柳家なのに、ほぼ正蔵の型で演じた高座を経験している。

 それは、七年余り前の、喜多八の博品館での高座だった。
2012年5月17日のブログ

 小痴楽の設定、この喜多八の高座と似ている。

 この記事にいただいたコメントで、師匠小三治は、その師匠小さんの型を踏襲しているとのこと。

 では、喜多八は、なぜ、大師匠の型ではなく、正蔵の型だったのか・・・・・・。

 また、後で、六代目柳朝の音源を聴いてみると、小痴楽は、どうも、この柳朝の音源を相当聴きこんでいるような気がした。設定のみならず、細かな科白回しなども、よく似ているのだ。

 柳朝のことや、彼のこの噺のことは、六年前の命日の記事で書いた。
2013年2月7日のブログ

 いいんだよね、この人の落語。
 江戸っ子の啖呵が利いて・・・そうか、小痴楽は、もしかすると、自分の持ち味を認識し、柳朝を意識して模範としているのかもしれないなぁ。

 父五代目痴楽が、もしかして、柳朝にこの噺の稽古をしてもらっていたのか。

 あるいは、小痴楽が、喜多八から稽古してもらった?


 15日の国立演芸場で、小痴楽の著書(『まくらばな』)をサイン入りで販売していたが、帰りがけに行列で出来ていたこともあり、購入しなかった。

 もしかすると、あの本に、この疑問への答えがあるのか、どうか。

 噺本来の楽しさは、紹介したような設定や人名には関係がなく、伝わる。

 設定などより、演者によって、違ってくる。

 とはいえ、小痴楽の『宿屋の仇討』が、どんな歴史を背景にしているのか、ちょっと、気になっている。

 いずれにしても、小痴楽の本、読まなきゃならないな。

by kogotokoubei | 2019-11-18 19:36 | 落語のネタ | Comments(2)

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