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噺の話

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2019年 09月 07日 ( 1 )

 この記事、同期会の旅行先である有馬温泉に向うための新幹線の中で書いている。

 ついに、最終回。
 昨夜は、ラグビーに高校野球と見たいスポーツがあったので、録画をして後から見た。

 日曜の再放送後に公開すべきだと思うのだが、同期会やその後の予定の記事のことを考え、再放送前にこの記事を公開。

 よって、原作を含めネタバレがあるので、再放送まで知りたくない方は、ご覧にならないようご注意申し上げます。

--------------ネタバレ注意-------------------

 さて、原作には登場しない人物、叔父夫婦が市之進に再婚を勧めた雪江が、轟平九郎の口車に乗って、市之進に罪を認めさせたのだが、轟の約束、恩赦で市之進を助けるなんてぇのは、もちろん嘘。
 
 だんご兵衛から、市之進が、遠い東北の地に追いやられることになったと聞いた菜々。
 市之進が、罪を認めたのは、自分を助けるためであることを知った菜々。
 
 さて、父、そして市之進の仇、轟への反逆の道はあるのか。

 という時に、御前試合があることを知る菜々。
 
 女は、本来は参加できない。
 しかし、仇討ちならば・・・ということで訴えると、これが受け入れられる。
 日向屋と轟は、これ幸いと、邪魔な菜々を堂々と御前試合で退けようとするのだ。


 菜々を取り巻く誰もが、轟平九郎との御前試合に挑むことを、暴挙と止めにかかるが、菜々には秘策があった。

 だんご兵衛との真剣での稽古が始まる。
 この場面、実に良かった。

 亡くなった佐知が菜々の前に現われ、菜々の母親も仇討ちは望んでいなかったのではないか、と言うのだが、「母は最期に言いました。『武士の誇りを決して忘れるな』と。でも奥様と旦那様のもとに奉公に上がって分かったのです。武士の誇りとは、父の仇を討つことではなく、みずからの信じる道を歩むことなのだと」と答える菜々。

 凛々しい!

 そして、ついに御前試合。

 菜々は、強かったねぇ。心も、剣も。

 原作には登場しない、父の形見の守り刀が、最後は重要な武器となった。

 父が和歌集の和紙と和紙の間に隠して残してくれた、轟と日向屋の悪事の証拠を手に殿に直訴する菜々。
 それを、支援する柚木弥左衛門。 
 イッセー尾形、「いだてん」の東京市長より、ずっといい役^^


 最後のハッピーエンドも、なんとも爽やか。

 主役清原果耶の、17歳とは思えない名演、熱演。
 脇役陣も好演。
 葉室麟の原作を程よく脚色した、実に良質なドラマだった。

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葉室麟著『蛍草』
 原作『蛍草』は、双葉社から2012年に単行本が発行され、2015年に文庫化された。


 副審が掲げた幔幕をくぐり、奈々は試合の場に出た。
 五兵衛が扇子を手に威儀を正して立っていた。正面に設えられた御座所に藩主勝豊が座っている。勝豊は眉が太く整った顔立ちをしており、恰幅がよかった。
 居並ぶ重臣たちの中に柚木弥左衛門の姿も見えた。市之進を訪ねてきたおりに弥左衛門は菜々の顔を見知っているはずだが、素知らぬ顔で床机に座り、目を向けてこなかった。
「これへ」
 五兵衛が声をかけると、菜々は一礼して試合場の中央に進み出た。すでに白襷をかけ、鉢巻を締めた平九郎が立っていた。
 平九郎と向かい合った時、吹き寄せる風に馬場の周囲で咲き誇る桜の花びらが吹雪のように散った。思わず見惚れる菜々に、平九郎が声をかけてきた。
「わしに挑むとは笑止な。命が惜しくないと見える。女だからと情けはかけぬぞ」
 菜々は黙って平九郎を見返した。怖くはなかった。菜々が口辺(こうへん)に笑みをわずかに浮かべると平九郎は訝しげな顔をした。
「貴様ー」
 平九郎がなおも言い募ろうとするのを、五兵衛が遮った。
「もはや立ち合いの刻限である。双方、構えい」
 菜々はさっと脇差を抜き、正眼に構えた。平九郎は、悠然と刀を抜いた。すかさず菜々は、
ー勇気
 と念じつつ斬り込んだ。


 緊張感漂う、場面。

 そして、山場。
 
 平九郎は薄く笑って引導を渡すように言った。
「そろそろ決着をつけようか」
 菜々は、とっさに目を閉じた。
(刀を見てはいけない。気を感じなければ)
 菜々が目をつぶったのを見た平九郎は、すっと横に動いた。足音も立てずに、ゆっくりと脇をまわりこみ、やがて平九郎は菜々の背後にまで移動した。
 その動きを目で追いながら、五兵衛は歯噛みした。剣の腕において菜々と比べるべくもない平九郎が、卑怯にも背後にまわって斬撃を見舞おうとしている。それを目の前にして五兵衛はどうすることもできない。
 五兵衛の額から冷や汗が滴り落ちた。
 
 そのころ節斎の塾で正助と妹のとよは、手習いをしていた。
 
「とよ、どうしたんだ」
 正助が声をかけた。とよは振り向いて、
「菜々は戻ってくるって言ったよね」
 と念を押すように言う。
「菜々がそう言ったんだから、きっと戻ってくるよ」
 正助が自分に言い聞かせるように言うと、とよは泣き出しそうに声を震わせた。
「菜々が母上のようにいなくなったら、嫌だ」 
 菜々がいなくなってしまう。正助も同じ不安を抱いて唇を噛んだ。ふたりの様子を見た節斎が穏やかな表情でとよに語りかけた。
「大丈夫だ。あの娘は必ず、そなたちのもとに帰ってくるぞ」
「本当に?」
 とよは、節斎の顔をうかがうように見ていたが、やがて縁側から空を見上げた。春霞のかかる空に鷲が高く舞っている。とよは、母親を呼ぶ時のように大きな声をあげた。
「菜々ー」
 とよの声は青空に吸い込まれていく。

 平九郎の気配がしなくて不安を覚えた菜々は、思わず目を見開いた。アッと思った。目の前に誰もいない。
(どこに消えたんだろう)
 うろたえた菜々が全身を緊張させた時、
ー菜々
 と呼ぶ、とよの声を聞いた。
(おとよ様がわたしを呼んでいる)
 正助ととよのもとに戻らなければと思った瞬間、背後からの気を感じ取った。

 とよが菜々を思う気持ちが、届いたんだねぇ。

 子役を含め脇役たちも良かったが、とにかく、主役の清原果耶には、驚いた。

 すでに、『透明なゆりかご』や『マンゴーの樹の下で』での主演、そして、NHKの朝ドラの脇役でも思ったが、17歳であの演技力。

 将来楽しみな、正統派の女優さんだ。


 さて、ドラマはドラマとして、役者さんを含め視覚に訴える魅力はある。

 しかし、原作本にも、読んでいて、その場面を空想する楽しみがある。

 落語も、生の高座は別とすると、映像も悪くはないが、音源による空想する楽しみの方を好む。

 葉室麟、短い間に数々の傑作を残してくれた。

 次は、ぜひ、『川あかり』のドラマ化を期待するなぁ。

 ロケが大変そうだが、あの作品も、映像化に相応しいい内容に思う。

 もちろん、他にも名作はたくさんある。
 
 次第に、読み残した作品が減ってきた。

 大事に、読んでいこうと思っている。


by kogotokoubei | 2019-09-07 12:36 | ドラマや時代劇 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛