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噺の話

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2019年 05月 30日 ( 1 )

 5月19日の「いだてん」で、森山未來が馬生と志ん朝(朝太)の高座を演じ分けた芸に感心した。

 ビートたけしの志ん生も、最初の頃ほど抵抗感はなくなってきた。

 というか、金栗四三、田畑政治、そして志ん生の三人の物語と思って、楽しんでいる。

 その志ん生が、記録的な改名の歴史を誇る(?)ことは、有名。

 しかし、いつどの名跡を名乗っていたかは、部分的にはご本人の記憶も曖昧で、確たる説はない。

 どんな説があるのかを、ある本から紹介したい。

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保田武宏著『志ん生の昭和』

 その本は、保田武宏さんの『志ん生の昭和』(アスキー新書)。
 著者の保田さんは志ん生のCDとDVDの全作品691のガイドブックも書いているし、志ん生のことを知るには、保田さんの著作に当るべきだろう。

 「第一章 なめくじ長屋」から引用。

 ここで五代目古今亭志ん生の改名について記しておこう。度重なる改名で、本人もはっきり覚えていないほどだが、三つの説がある。
[小島貞二説] まず『びんぼう自慢』を聞き書き、アレンジした小島貞二の説。
   三遊亭盛朝(明治四十年)-三遊亭朝太(明治四十一年)-三遊亭圓菊(大正五年)-
   金原亭馬太郎(大正七年)-全亭武生-吉原朝馬-隅田川馬石-金原亭馬きん(大正十年)-
   古今亭志ん馬-小金井芦風-古今亭馬生(大正十五年)-柳家東三楼(昭和二年)-
   柳家ぎん馬-柳家甚語楼-古今亭志ん馬(昭和七年)-金原亭馬生(昭和九年)-
   古今亭志ん生(昭和十四年)
 馬太郎と馬ぎんのあいだに全亭武生、吉原朝馬、隅田川馬石をまとめて入れているが、年代の裏づけはない。

 古今亭志ん馬を二度名乗っているので、名跡の数は十六。
 保田さんが小島さん以外に紹介しているのは、結城昌治さんと、斎藤忠市郎さんの説。

[結城昌治説] 小説『志ん生一代』の作者の説。
   三遊亭朝太(明治四十三年)-三遊亭圓菊(大正五年)-金原亭馬太郎(大正七年)-
   吉原朝馬(大正八年)-全亭武生(大正九年)-金原亭馬きん(大正十年)-
   古今亭志ん馬(大正十二年)-小金井芦風(大正十三年)-古今亭馬生(大正十五年)-
   古今亭ぎん馬(大正十五年)-柳家東三楼(昭和二年)-柳家甚語楼(昭和二年)-
   隅田川馬石(昭和五年)-柳家甚語楼(昭和五年)-古今亭志ん馬(昭和七年)-
   金原亭馬生(昭和九年)-古今亭志ん生(昭和十四年)
 隅田川馬石を昭和へもってきているが、ぎん馬を古今亭にして柳家東三楼の前にしている。最初の盛朝は入れていない。
 すべてに襲名の時期がある。大正十二年と昭和五年は、同じ年での二度改名していることになる。
 盛朝がなく、古今亭志ん馬と柳家甚語楼が二度あって、名跡は十五種類。

 さて、三っめの説。

[斎藤忠市郎説] 落語史研究家が、新聞、雑誌などの資料にあたって、調べあげた説。筆者も調査してみて、この説が一番正確だと判断した。したがって本書はこの説によっている。
   三遊亭盛朝(明治三十八年)-三遊亭朝太(明治四十三年)-三遊亭圓菊(大正六年)-
   金原亭馬太郎(大正七年)-金原亭武生(大正九年)-金原亭馬きん(大正十年)-
   古今亭志ん馬(大正十三年)-小金井芦風(大正十四年・志ん馬と併用)-
   古今亭馬きん(大正十四年)-古今亭馬生(大正十五年)-柳家東三楼(昭和二年)-
   柳家ぎん馬(昭和二年)-柳家甚語楼(昭和三年)-隅田川馬石(昭和五年)-
   柳家甚語楼(昭和五年)-古今亭志ん馬(昭和七年)-金原亭馬生(昭和九年)-
   古今亭志ん生(昭和十四年)
 吉原朝馬が入っていない。これを名乗のった形跡がないのである。武生は前二説と違って金原亭であり、馬きんは金原亭と古今亭の二度名のっている。ぎん馬は名前から判断すると古今亭のように思えるが、これは三語楼門下になってからであり、柳家で間違いない。

 古今亭志ん馬と柳家甚語楼を二度名乗っているので、名跡の数は十六。

 
 26日の放送では、アントワープオリンピックのマラソンで16位と低迷した金栗四三が、他のメンバーと一緒に帰国せず、ヨーロッパを旅していた。

 アントワープオリンピックの開催は1920年、大正九年。
 斎藤忠市郎説で、志ん生は金原亭馬太郎から金原亭武生に改名した年だ。

 ちなみに、本書で保田さんが書いているが、隅田川馬石の名は、三語楼協会を出てフリーになった時に名乗ったのだが、結局は泣かず飛ばずで、ほぼ一ヶ月後に三語楼に頭を下げて復帰し、再び甚語楼に戻っているとのこと。

 借金取りから逃げるため、と改名の理由を志ん生は語っているが、それだけではない歴史も背後には存在する。
 
 今後、「いだてん」で、若き志ん生にどんな出来事があり、いつどんな名跡を名乗るのか、なんてことも楽しみである。

by kogotokoubei | 2019-05-30 12:59 | 落語家 | Comments(0)

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