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噺の話

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2018年 09月 02日 ( 2 )

 今日は雨のため、日曜恒例のテニスは休み。

 ということで(?)、午前中に書いた記事に関連して、二本目の記事。

 午前中、柳家喬太郎の『ハンバーグができるまで』が舞台化されることを書いた。
 自分の過去のブログを検索して、関連する記事を眺めていたら、ある雑誌の落語企画の記事に行き着いた。

 それは、2014年3月号の『Switch』「進化する落語」という特集に関する記事。
 久しぶりに落語を取り上げた好企画として紹介した。
2014年2月22日のブログ

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「Switch」2014年3月号

 四年前の記事では、喬太郎のこんな言葉を紹介していた。

喬太郎 五十歳を迎えて思ったことがあります。これまでに過ごしてきた時間はいっぱいある。でも、未来もまだまだいっぱいある。そういう場所に、今、僕はいるんだということです。ということは、その気になればいろんなものが作れるんだと思う。失敗してもいい。だって、昔もそうだったんだから。すごく楽しみですね。これからは、会によっては「コケまくりの喬太郎」、「笑いがおきない喬太郎」というのが増えてくるんじゃないかな、と。

 これが四年余り前の言葉。

 さて、その後、「コケまくりの喬太郎」や「笑いがおきない喬太郎」が増えたのかどうか。私はそれについた語れるほどは喬太郎を聴いていないので、コメントは慎む。

 この発言の少し前に、喬太郎は新作について、このように語っていた。

喬太郎 僕はね、ときどきスーパーに買い物に行くんですよ。夕暮れ時の商店街とか。その時間帯に行くと、そんなにきれいじゃないけど、一応夕焼けだったりする。晩御飯の買い物で、奥さんたちがいて。さびれた商店街が少しは活気づく時間帯に、普段着にサンダルでレジ袋下げて、「次はどの噺を稽古しようかな」なんて考える。というのも噺家だなよなって思うんですよね。道楽にうつつを抜かして、酒飲んでかみさん泣かせてみたいなのも噺家かもしれないし、売れっ子でいつも飛び回っているのも噺家かもしれない。でもそういった何気ない日常の中から、僕の場合はものが生まれると思うんです。そういうのはすご大事だなと思う。

 こんなことを、喬太郎は考えていたんだ。

 引用を続ける。
ー幅広いレパートリーの中で、五十歳を迎えて、この年齢になったからこそ新しくできる噺や、逆にやりにくくなった噺はありますか。
喬太郎 「純情日記横浜篇」や「すみれ荘二〇一号」はもうやりづらいですね。
ー八十年代の匂いがするんですね。
喬太郎 そう。80年代って一番浮ついた時代だと思うんですよ。でも僕はあの頃一番ダサいところで生きてきたから、シブカジ、ハマトラ、トレンディとか、ああいうものに若干の敵対心があるんです。戦後という時代があって、安保の時代があって、後にはバブルが弾けて若い子が苦労しはじめる時代の間で、俺らは一番チャラチャラしていた。僕は82年に大学に入って、89年に噺家になっていますから、80年代を引きずっているんですよ。

 たしかに、「純情日記横浜篇」や「すみれ荘二〇一号」は、聴いている方も、ちょっと辛いものがある。

 私は74年に大学に入り、78年に社会人になった。
 ほぼ喬太郎と一世代違う。
 さて、私は70年代を引きずっている、と言えるのかどうか。

 さらに、引用。

喬太郎 「江戸の風が吹く吹かない」みたいなことを家元(立川談志)が言い始めたでしょ。「喬太郎さんの古典は面白いけど、江戸の風が吹いてない」と言われることがあった。でもね、80年代の風を吹かせられる人はあんまりいないじゃないかと思うんです。俺は全噺家の中で80年代の風を吹かせられる稀有な例なんだぞ、と。それをお客さんが望んでいるかは別として。
ーそれも個性ですね。
喬太郎 もちろん古典落語家の側面としては、江戸の匂いが出せればいい。努力はします。だけどそれはとても大変な作業で、それをするがために、俺しかできないことをやらずにいたらもったいないと、また最近思いはじめたんです。
 二ツ目の頃は、俺しかできない噺をやりたいと思ってました。その若くて尖がっていた頃の気持ちを思い出したんです。後世の人に名人と思われなくてもいいし、忘れられても構わない。今、生きている俺が俺しかできない落語をやればいい。そういう意味では今の年齢の新作も作りたい。
ーその意味では「ハンバーグができるまで」は年齢的に合う作品ですよね。
喬太郎 「ハンバーグができるまで」を作った時は、中年の等身大の噺が作れたかなと思いました。中高年というと慈愛とかそんなイメージになるけど、そうじゃなくて自分と同世代のニュアンスを、自然体で、しかも面白い噺にすることができないかと思っていたんです。
ーさきほど師匠が大事にしたいとおっしゃった、日常生活の中にある夕方の商店街の情景と「ハンバーグができるまで」は繋がりますね。
喬太郎 本当ですね。発想のきっかけは、離婚した夫婦って何を話すのかなと思ったことなんです。下北沢にあるオオゼキというスーパー。あそこは道路から、お客さんが買ったものを袋に入れている姿が見えるんですよね。その景色がすごく印象に残って、ぼんやりとあったアイデアを練っていくうちに出来たんです。だから、やっぱり日常生活から作り出していったんです。

 今日は雨のおかげ(?)で連れ合いと外で昼食をとったが、その店の近くにも、オオゼキがあったことを思い出した^^

 そうか、『ハンバーグができるまで』から伝わるリアリズムは、喬太郎の日常生活の観察力と創作能力が融合したものだったんだなぁ。

 最初に大手町落語会で聴いてからほぼ一年後、喬太郎・文左衛門・扇辰の三人会でも聴く機会があったが、ブログにこう書いていた。
2011年2月16日のブログ
前回よりもネタとしての成熟度のようなものを感じた。20分に刈り込んでも、この噺としての訴求力は十分。それぞれに個性的な登場人物も楽しい。

 古典においても描かれる人間についてはそうなのだが、新作にはその舞台設定も含め“同時代性”が求められるだろう。

 舞台化のニュースを目にし、ある雑誌を読み直すことで、一つの新作落語ができる背景を確認することができた。

by kogotokoubei | 2018-09-02 21:13 | 落語のネタ | Comments(12)
 朝日の記事を見て、少し驚いた。
 なんと、柳家喬太郎の新作落語『ハンバーグができるまで』が、舞台化されるらしい。
 引用する。
朝日新聞の該当記事

【「ハンバーグができるまで」舞台化について】
稀代の落語家、柳家喬太郎。本格本寸法の古典落語はもちろん、観客を爆笑の渦にまく、多彩な新作落語も人気、今、最もチケットの取れない落語家の一人です。その柳家喬太郎の新作落語の中でも特に人気のある「ハンバーグができるまで」の舞台化が決定し、来年2019年3月に銀座の博品館劇場にて、全8公演上演されます。
主演であるマモル役には、唯一無二の存在感で、今や、日本映画界に欠かせなくなった俳優、渋川清彦を舞台主演に抜擢。そのマモルの元妻サトミ役を、テレビや映画、舞台など経験豊富な実力派女優、馬渕英里何が演じ、2018年で結成23年を迎える劇団ペテカンがその脇をかためます。脚本・演出は映画そして舞台 柳家喬太郎出演作「スプリング・ハズ・カム」に続き、本田誠人が務めます。

 へぇ、なんとまぁ・・・・・・。

 私が『ハンバーグができるまで』を最初に聴いたのは、ずいぶん前になる。
 2010年2月の、第一回大手町落語会だった。
2010年2月27日のブログ
 今では、あのような大ホールの落語会には行っていないので、「あぁ、行ってたんだなぁ・・・・・・」なんて、ちょっと懐かしい思いもある。
 その高座に、こんな感想を書いていた。

まず最初にSWA仲間である白鳥の噺のサゲを解説してくれた。それも、この人らしさで。そして、白鳥のネタと同様にプログラムに「お楽しみ」となっていた噺は白鳥に対抗するかのような新作。喬太郎らしい。このネタを聞くのは初めてなのだが、以前に他の方のブログで読んでいた内容からは、部分的に演出が変わっていたように思う。それは喬太郎落語が生きている証拠なのだろう。男と女の物語に味付けされた笑いとペーソス、そして必ずしもハッピーエンドではないリアリズム。彼の新作の中でもこの噺は異質な魅力ももっているように思う。サゲもなかなか洒落ている。発表されてから5年位はたつようなので十分に練れていながらも演出への工夫や演技時間による構成の変化があるのだろう。上手いし強い、というのが今日の喬太郎の印象。

 ちなみに白鳥のネタは『はじめてのフライト』。結構大笑いした。

 この時書いたとおりで、喬太郎の新作の中でも、少し異質な作品だと思う。
 そのリアリズム、ペーソス、なるほど舞台には向いているかもしれない。

 先日、AERAの円丈と喬太郎の対談について書いたが、新作落語におけるこの二人の存在は大きい。
 そして、白鳥も重要な新作作者で、三三が『任侠流れの豚次伝』を全国で連続口演することも紹介した。

 そのネタを他の噺家が演じたくなるような魅力は、舞台や映画にしたくなる作品にまで今後発展していくのかもしれない。

 会場の博品館の名を聞くと、どうしても喜多八を思い出す。

 さて、博品館が今後は落語の舞台化の定席になるのかどうか。

 落語ブームは、新たな次元を迎えた・・・と言うと大げさかな。
by kogotokoubei | 2018-09-02 11:43 | 落語のネタ | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛