-
[ 2018-08 -17 20:47 ]
2018年 08月 17日 ( 1 )
鈴本夏まつり さん喬・権太楼特選集 8月16日
居残り会のお仲間I女史からのお誘いで、五人が揃った。
いただいたプログラムでは第29回とのこと。来年30回になるんだねぇ。
四年前に楽日に来て以来。
2014年8月21日のブログ
あの日は、さん喬『水屋の富』、権ちゃんがトリで『唐茄子屋政談』、三本締めを含め50分だった。
居残り会を気にしながら九時半近くでお開きだった。
さて、今年はどうなるものやら。
特別興行なので、前座の開口一番は、ない。
出演順に感想など。
柳家甚語楼『浮世根問』 (14分 *17:20~)
トップバッターは、十日間日替わりで、この日は甚語楼。
休養万全なのだろう、実に元気いっぱいの楽しい高座。
八五郎がご隠居に「極楽はどこにある」としつこく聞くのに対し、「いいだろ、どこでも、どうせお前は行かないんだから」でご通家が多いと察する客席も爆笑。
二人の会話のリズム、間、実に小気味良い。
寄席の逸品賞候補として、色をつけておく。
鏡味仙三郎社中 太神楽 (9分)
三人で登場。傘->五階茶碗->土瓶->花笠とバチを、この時間内でしっかり。
とにかく、元気な寄席の吉右衛門を見ることができれば、それで嬉しい。
五街道雲助『強情灸』 (15分)
マクラの湯屋で熱い湯を我慢する場面が、秀逸。
後から入った男が、「こうやって股ぐらに湯をかけて洗ってから入るもんだ」と桶で湯をかけた後の苦悶の表情の後、「ゆで卵が二個できるとこだった」は、なんとも可笑しい。その男が湯船に入った後にもう一人に話しかけると、なんとも苦しそうな表情で、「湯が、ぬるい時には、しゃばるな!」でも笑い。
「夜中の小便のような、目のさめるようないい女」、であるとか、「ただモグサを乗っけておくだけか。石燈籠の頭じゃねぇやい」なんて科白も、この人にかかると実に味がある。
春風亭一之輔『新聞記事』 (15分)
やはり、一之輔は凄い、と居残り会でも一致した高座。
このネタで、あれほど笑ったのは初めてだ。
導入部は、八五郎とご隠居の根問いモノに近く、甚語楼とツクなぁ、なんて思っていたが、そんなことを度外視させる大爆笑高座。
鸚鵡返しによる言い間違えが、この噺の魅力だが、この人にかかると現代らしい味付けで、それがまた可笑しい。
「天麩羅屋だけに、あげられた」の洒落がなかなかわからない男に、「天麩羅を揚げる、犯人を挙げる・・・ダブル・ミーニング」などの英語まで交えるのも、この人らしさ。
ビルマの竪琴の水島は出るわ、佐野元春も出演(?)するわの高座。
実は、八五郎が話していた相手が、当の天麩羅屋の竹さんだった、というサゲも洒落ている。
この高座も、寄席の逸品賞候補だなぁ。
柳亭市馬『山号寺号』 (14分)
後半は出演者を織り込んだ噺に仕立てた。無難な一席。
ホンキートンク 漫才 (13分)
楽しい掛け合いの途中で爆笑となり、後半の科白が聞こえにくいほど。
若手では、もっともノッてる二人かもしれない。
柳家喬太郎『宮戸川』 (14分)
途中で咳き込むのは、やや六日目で疲れが出たか。
あえて現代風のクスグリなどを排した内容は、好感が持てた。
こういう興行でのネタ選びの難しさも感じさせた高座。
あまり受けても、師匠には申し訳ない、という心理も働くだろうしね。
露の新治『鹿政談』 (19分)
仲入りは、ここ数年恒例のこの人。
マクラで奈良名物に「奈良判定」を加えるあたりは、この人ならでは。
豆腐屋六兵衛は、六十三歳。あら、私と同じではないか^^
上方で名奉行の名が高かった「松野河内守」の逸話を基にした噺とされるが、奉行の名は根岸備前守で演じる人が多い。しかし、新治はその松野河内守としていた。
途中で若干の言い直しなどがあったのは残念。
やはり六日目ということと、暑さによってお疲れだったからだろうか。
全体的には悪くないが、この人への期待感が高いので、これまで聴いた中では、上出来とは言いにくい。
柳家小菊 粋曲 (9分)
食いつきがこの人、というのも特別興行ならでは。
「金来節」から朝顔の都々逸、なすかぼで締めた。
柳家さん喬『五人廻し』 (33分)
アメリカ人が前座の研究論文を書くためにやって来たため、楽屋に背の高い男がいる、とのこと。かつて松葉屋で開かれていた落語会の顔付けが、文楽、志ん生、圓生、そして志ん朝、前座でさん喬とは、なんとも豪華だったなぁ。
マクラ約10分で本編へ。
一人目は「とにかく、よしゃーよかった」と後悔し続ける男。
二人目が『酢豆腐』の若旦那のような、キザ男。「でげしょ!」連発^^
お次は、「おらぁ、イドっ子だ」の田舎者。
四人目は、病気の妻が給料袋の封を切らず「私の代わりに」と吉原へ送り出してくれた、という涙、涙(?)の役人風。
喜瀬川が付いていたのはお大尽。
それぞれ、しっかりと演じ分けていたし、楽しかった。
なかでも、二人目の「でげしょ!」が秀逸。
後からメモを見て、少し驚いた。
本編時間は二十分余りだったことを考えると、急ぐこともなく、五人をしっかり廻した高座は、やはり凄い。今年のマイベスト十席候補とする。
権ちゃんの高座が、意外な展開でやや楽しめなかったこともあり、この日はさん喬の日だったか。
林家正楽 紙切り (11分)
ご挨拶代りの①線香花火、②お座敷遊び、③露の新治、④盆踊り、とこの時間で、それも見事に切ってくれた。流石だ。
柳家権太楼『子別れ』 (51分 *~21:21)
これまでの出演者が、時計のように正確な進行で、予定通り八時半から。
マクラ、この日の浅草のお客さんのことで、笑った。
また、正楽の紙切りの途中で、下座さんの三味線の糸が切れて若干パニックだったらしい。う~ん、そういう不吉なことがあったのか・・・・・・。
爆笑のマクラの後の本編は「えっ、通し!?何時に終わるの?」と時計を見てしまった。
とはいえ、「上(強飯の女郎買い)」の吉原の店に上る場面から「中(浮名のお勝)」は、ほぼ地でつないで「子は鎹」へ。この時点で八時五十二分。
この後半が、とにかく饒舌で、泣きがたっぷりなのであった。
亀と出会った熊も泣く。もちろん、亀も泣く。女房も番頭までも泣く。
亀のと再会の場面で、「額の傷の件は割愛したか、それもいいだろう」、と思っていたら、順番を入れ替えて加えた。
最後の鰻屋の場面の主役はお店の番頭。
「熊のことなんかどうでもいい。亀ちゃんのために、よりを戻してくれ」と別れた女房に番頭が頼み込む。
居残り会でも、全員が首をひねった泣きの多さと、筋書きの改訂。
浅草で語り足らなかった分を、こっちで語ったのか^^
あるいは、権太楼の新たな解釈なのかもしれないが、この噺で登場人物がこれだけ泣くと、聴いている方は、泣けない。
この噺は、うっすらと涙が浮かんでくる程度で、演じてもらいたかった。
さて、終演後は楽しみだった五人での居残り会。
私が予約していた店に電話して、少し遅れたことを告げる。
快く答えてくれたお店の方の声を聞き、初めて行く店に期待したが、まあまあのお店で、皆さんも喜んでもらえたようだ。
九時半近くからの居残り会は、とにかく話題が満載。この日の高座のことから、奈良判定や日大アメフト部、78歳のボランティア爺さんは偉い、ということやそれに比べて今の政治は、などなど。
なかでも興味深かったのは、ある事故(事件?)の謎に関し、佐平次さんとM女史から、それぞれ別の本の興味深い内容を紹介していただいたこと。この二冊、読まなきゃなぁ。I女史から志ん五がトリの時の国立のポスターというお土産に、Yさんは大喜び。I女史からは佐平次さんと私にもプレゼントがあり、嬉しい限り。M女史はまた佐平次さんに自分が読んだお奨めの本をお貸ししていたなぁ。二人とも読書量は、半端ない^^
あっと言う間に十一時の閉店時間となり、もちろん、帰宅は日付変更線を越えたのであった。やはり、この五人の居残り会は楽しいね。