噺の話

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2018年 06月 03日 ( 1 )

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『古典落語 正蔵・三木助集』(飯島友治編・ちくま文庫)

 白洲正子さんの本『西行』から、西行と崇徳院の関係について記事を書いた。

 落語の『崇徳院』について、『古典落語 正蔵・三木助集』をめくった。
 もちろん、三木助。

 飯島友治さんの冒頭の文章から、この噺の作者のことをご紹介。

 原作は上方落語中興の祖ともいわれる、桂派の創始者、初代桂文治(1815没、四十二歳、異説あり)である。文治は『崇徳院』のほか『竜田川』『口合小町』『反古染め(ほうごぞめ)』『昆布巻芝居』『按摩芝居』を初め、多くの制作と改作をつくり、また『臍の宿替』『道具太平記』『大開好色合戦』以下、落語本もたくさん残している。

 『竜田川』は、『千早ふる』のこと。
 あらためて、初代文治の偉大さが、分るね。
 引用を続ける。

 大阪の『崇徳院』とは別に、東京にも『皿屋』『花見扇』の名で、古くから同工の噺があった。これは人情噺『三年目』の発端ともいわれているが、現在は殆んど演(や)り手がなく、湮滅したも同然である。

 『皿屋』に『花見扇』か・・・・・・。
 誰か復活させてくれないものだろうか。

 噺の梗概について飯島さんは、今我々が知っている内容とは違うサゲを紹介してくれる。なお、捜索担当(?)は、若旦那側が本屋の金兵衛、お嬢さん側は、鳶頭(かしら)である。

 ある日披露困憊し、髪結床の羽目にもたれて、ついうとうとしていると、これもまたお嬢さんの親に懸賞付で頼まれた鳶頭が飛び込んできて、床屋の親方に、一部始終を話しているのを小耳にした金兵衛は、しめたとばかりその胸倉をとらえ「・・・・・・この扇子(おうぎ)に歌が書いてある。瀬をはやみ岩にせかるる滝川の、唐桟の上着に更紗の下着、燻んだ羽織に博多の帯、紙入れの中へ金が五十両!・・・・・・」と夢中にまくしたて、はては「うゥッもう目が見えぬ、うゥゥん」と気絶したが、それでも鳶頭の胸から手を離さない。そこで鳶頭が「おいッいいかげんにしろッ苦しくてならねえ、ここォ放せ」ようやく気のついた金兵衛は「いいや、放すんじゃァねえ、合わせ(結婚)て貰うんだ」というのである。
 上方の古い型は、舞台を京都の清水観音堂にとり、なれそめは、双方が供に連れて来た小僧同士が喧嘩を始め、仲裁に入った若旦那に、お嬢さんがぽォッと赤くなって礼を言い、扇子の上の句を達筆にすらすらと書いて渡すのが、きっかけとなる。

 原作は、ずいぶん筋書きもサゲも違っていたんだねぇ。

 「放せ」と「合わせ」、その「合わせ」で「結婚」を意味するサゲ・・・・・・。
 今では、さすがに通じにくい。
 
 だから、三木助は、筋書きもサゲも工夫し、また、独自のクスグリによって、十八番のネタとして練り上げた。

 その三木助のクスグリについて、なかなか興味深いことが書いてあった。

 お嬢さん側鳶頭に「一昨日(おととい)の朝、北海道代表が発ちましてねェ、昨日の朝九州代表が発ってねえ、あたしが四国代表でね」「都市対抗だね、まるで・・・・・・」のやりとり〔本文では削除〕は、楽しく聞けるに相違ないが、それは生前に、一部から批判された。しかし師匠はその演出については、大変な自信をもっており、筆者がその間の事情を問いただしたところ、次のような比喩をもって答えた。「こっちにくさやの干物があって、板わさがあって、ちょいとチーズのあるのが好きで・・・・・・」というのである。

 今日の噺家さんなら、旬のネタで「一昨日の朝、コロンビア代表が発ちましてね、昨日の朝セネガル代表が発ってねえ、今朝はポーランド代表が発った」「サッカーワールドカップだね、まるで・・・・・・」とでも言いそうだ。


 最後のたとえは、なかなか深~い言葉。

 くさやの干物があって、板わさがあって、ちょいと○○○があるのが好き。

 噺家さんによって、この○○○の中に入るものは違うだろう。

 もちろん、好みによる。

 私は、チーズ、いいと思う。

 アボカドは、遠慮する。

 この噺、今では東京の多くの噺家さんも演じる。

 私が、忘れられない高座は、生で一度だけ出会うことができた、2012年8月の、六代目笑福亭松喬、JAL名人会の高座だ。

2012年8月29日のブログ

 音源は、三木助はもちろん良いのだが、志ん朝もこれまた名演。

 実は、9月の同期会、12月のテニス合宿、この『崇徳院』に挑戦しようかと、思っている。

 でも、まだ分からない。

 くさやと板わさに合う、クスグリも考えなければ^^

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by kogotokoubei | 2018-06-03 18:45 | 落語の本 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛