噺の話

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2018年 02月 20日 ( 1 )

 長い歴史を誇る八起(やおき)寄席に、ようやく行くことができた。
 相模大野駅近くの焼肉屋さん八起で開催される会。
 電車で隣り駅という近所でありながら、これまで縁がなかったのだ。
 偶数月第三月曜日開催で、奇数月には、近くのグリーンホールで開催されている。

 同会のホームページに、その沿革などが説明されている。
「八起寄席」のホームページ

 焼肉屋さんが、若い落語家が芸を披露できる場が少ないと聞いて、昭和61年に始めたとのこと。三十年を超える歴史がある。

 落語協会、落語芸術協会、立川流、円楽一門の四派からそれぞれ幹事が任命されていて、所属を超えた人選で開催されてきた会。

 旧幹事には柳家喜多八、瀧川鯉昇の名が並んでいた。

 今は、立川談修、瀧川鯉橋、三遊亭兼好、古今亭文菊が幹事となっている。
 幹事役の誰かと若手が出演、というスタイルのようだ。

 今回は鯉橋が幹事で、若手が三遊亭歌太郎。

 電話したところ、席はたぶん大丈夫だろうが、できれば開演三十分前の六時半までに来て欲しい、とのこと。たぶん、女将さんだったと思う。

 ご指導通り、六時二十分頃に着いた。
 正面の入り口を開けると、暖簾があって、その向うが厨房っぽい。要するに、勝手口だったのだ。
 「すいません」と声をかけると、暖簾をはねのけて、私服の歌太郎が出て来た。
 歌太郎が「お客さんですが、入ってもらっていいんですか」と女将さんに声をかけると「ダメダメ、お客さんはお店の玄関から」とのこと。
 歌太郎から、「私も間違えたんですよ」と言われいったん出てみると、なるほど、少し横に客の入り口があった。
 あらためて靴を脱いでポリ袋に入れて中へ。木戸銭千円を、以前は海苔の入れ物だったようなガラス瓶に入れる。先のお客さんは三人。
 最終的に、焼き肉店の中に、約二十人、空席(空きスペース)は二席ほどだったかなぁ。高座のすぐ前のテーブルの席に落ち着く。掘り炬燵風の客席なので、脚が楽だ。

 なんと、開演前なら限定メニューで飲食可能とのことで、お酒一合と、唯一の肴のもやしを注文できた。熱燗で体を温めているうちに、常連と思しき方々が三々五々お越しだった。

 壁には、談志と女将さんが一緒に写っている写真や、その談志の出演したグリーンホールでの会の写真などが貼ってある。
 焼肉屋さんだからであろう、天井は全体が煤けていて、後で歌太郎がマクラで言っていたが、“時代”がついている。

 そんなお店の様子を眺めながら、癖になりそうな美味いもやしで一杯やるうちに、開演時間。

 厨房と客席を仕切る暖簾をくぐって、厨房の方から客席に座っているお客さんの後ろの狭いスペースを体を斜めにして演者が高座に上がる。

 私の席と高座との距離は、二メートルほどか。砂かぶりではなく、唾かぶり席^^

 こんな構成だった。

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開口一番 三遊亭あんぱん 『初天神』
三遊亭歌太郎 『やかん』
瀧川鯉橋   『蒟蒻問答』
(仲入り)
三遊亭歌太郎 『電報違い』
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それぞれ、感想など。

三遊亭あんぱん『初天神』 (12分 *19:02~)
 笑遊の二番弟子の前座さんは、初めて聴く。
 ご通家ばかり二十人の目の前のお客さんを前にした前座さんだから、致し方ないだろうが、なんとも緊張しっぱなしで、可哀相になった。しかし、こういう場で冷汗をかくことが、今後につながるはずだ。頑張って欲しい。

三遊亭歌太郎『やかん』 (21分)
 私服とは、当たり前だが、噺家の姿になって登場すると印象が変わるねぇ。すぐお隣のお客さんが「おめでとう」と声をかけた。きっとNHKの大賞のことだろう。この声に歌太郎は二席目でふれて、マクラでしっかり逸話をご披露。
 やはり、初出演らしい。歌太郎の名の由来などのマクラで客席を温める。久し振りだが、体も噺も大きくなった印象。歌太郎として四代目とのこと。歌ぶとの頃から聴いているが、師匠は、その前座名を漢字にする案を推したらしい。しかし、それが酒の席で、つい「嫌です」と断り、「歌太郎」の名を希望したとのこと。10分弱のマクラからこの噺へ。魚の根問いなどから川中島の合戦となったが、なかなか見事な講釈。終始持ち味の明るさで通した好高座。私より前にいらっしゃったお客さんは、実際に唾かぶりだったのではなかろうか。

瀧川鯉橋『蒟蒻問答』 (23分)
 幹事としての出演。鯉昇の四番弟子だったが、その後六年半、下の弟子ができず諦めていたらその後たくさん入門して、今や十五人とのこと。師匠から聞いた大師匠の八代目小柳枝のことや、師匠二番目の師匠である柳昇と四代目柳好との逸話など、こういう席でなければ聴けないマクラが楽しかった。
 八代目小柳枝は、寺に借金のため五万円で売られた、という話から本編へ。師匠のこのネタも何度か聴いているが、この人の高座もなかなかに結構。あまり使いたくないが、この人の“本寸法”の高座、好感が持てる。

 終わって仲入りになったが、近くのお客さん同士が、師匠は、座間で『餃子問答』を演じたとお話しされていた。なるほど、鯉昇ならありそうだ。最近座間に行けてないからなぁ。

三遊亭歌太郎『電報違い』 (33分 *~20:50)
 10分ほどの仲入りの後、再登場。
 一席目の客席からの「おめでとう」は、たぶんNHKのことかと思います、とその時の大変だった旅の話を披露。台風のため新幹線が豊橋で止まり、結果、11時間かかって大阪に着いたとのこと。
 この件は、大賞受賞のニュースでも紹介されていた。
スポニチの該当記事
 高座から落語家の審査員同士がヒソヒソ話をしていて「あれ、何か間違えたか?」と不安になったことや、実は賞金があって、その金額が・・・といった話など、約13分のマクラの後、ネタ帳を見てこれまで演じられていない噺を、と本編へ。とはいえ、前日の落語会でもかけていて、その会にいらっしゃったお客さんの顔があったようで、「初めて聴くつもりで、お願いします」とことわっていた。
 なるほど、この噺なら初めてだろう。
 初代三遊亭円歌の作品で、大師匠の三代目円歌も持ちネタにしていた作品。
 石町の生薬屋の旦那と出入りの植木屋の信太(しんた)が旅に出て、名古屋で心中しようとする若い男女に遭遇して、その二人を助けたことから、帰宅する予定が遅れることになった。旦那が信太に「明日帰れんから、そう電報を打ってくれ」と頼む。
 信太が郵便局に行き『アスアサケエレン』の電報を頼むのだが、担当の職員に、旅の途中の横浜、静岡の遊郭で女にもてすぎて弱った、などと長々話し続ける場面が、聴かせどころだ。
 この場面、『粗忽の釘』で、八五郎がお隣に行って女房との馴れ初めをくどくど聞かせたり、『小言幸兵衛』で、仕立屋を前に、幸兵衛が妄想話を聞かせるのに、似た要素を持った話ともいえる。『うどん屋』の酔っ払いと、うどん屋の会話にも似てなくはない。
 さんざん、どうでもいい話を聞かされた郵便局の職員。
 「分かりました。では電文は『アスアサケエレン』ですね。で、誰のお名前で」
 「ダンナだよ」
 「そのダンナお名前は?」
 「昔から旦那で通っているので、名前は知らねぇ。そうだ、その下に
  俺の名前のシンタと入れておいてくれ」
 ということで、どういう電文になるかは、お察しの通り。
 生では初めて聴くことができた。こういう噺を継承してくれるのは、私は実に嬉しい。
 マクラを含め、今年の新人賞候補として色を付けておく。


 終演後、馴染みのお客さんを八起の女将さんが暖かく見送る。
 手作りの落語会、とは、まさにこういう会のことを言うのだろう。
 来月の第三月曜は談修が幹事でグリーンホールで開催。
 四月は文菊の幹事でお店での開催である。

 また、縁があれば、ぜひ来たいと思う。
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by kogotokoubei | 2018-02-20 21:46 | 寄席・落語会 | Comments(6)

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by 小言幸兵衛