噺の話

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2017年 12月 02日 ( 1 )

 仕事を休み、池袋へ。

 行きたかった、橘之助の襲名披露興行の初日だ。

 この興行では、「二代目」ではなく「二代」としているので、それに従うことにする。
 少し早めに池袋に着き、熊本復興のために(?)桂花ラーメンの昼食をとって、会場へ。

 すでに、五割ほど席が埋まっていただろうか。平日の池袋にしては異例。やはり、披露目の効果か。
 結果として、終演時には八割ほどは入っていた。

 高座の上手には、菰樽(爛漫)、下手には、初代橘之助の楽屋用箱鏡台が置いてあり、「贈 山田五十鈴」とあった。

 二代本人から何か説明があるかと期待していたのだが、残念ながら何ら解説はなかったなぁ。

 今年一月、初代橘之助の看板を預かっていたのは、寄席文字の橘右近だったことを書いた。
2017年1月7日のブログ
 後で調べたところ、看板同様この鏡台も右近が仲が良かった“横浜の志ん馬”(四代目志ん馬)から譲られたらしいが、右近が「たぬき」を演じた山田五十鈴に贈呈したらしい。その後、橘流に戻ったようだが、なかなか由緒ある代物だ。

 さて、そんな演出のある高座での披露目。
 腕時計が壊れてしまい、修理に出そうか買おうか迷っていたので、各高座の所要時間は、今回は記録しない。開演と終演時刻のみ、会場の時計で確認した。
 とはいえ、仲入りまでは、ほぼ15分づつであったと思う。

 出演順に感想などを記す。

柳家小多け『寿限無』 (12:15~)
 開口一番は、この人。久し振りに聴く、小里んの弟子。
 昨年3月、紀伊國屋での権太楼独演会で初めて聴いた時の印象は、そう悪くない。
 さて、今回はどうかと言うと・・・言い立ては何度も間違わずに言えたし、客席からも若干の笑いがあったのだが、どうも、一年半という時間の流れを感じさせないのだ。
 また、しばらくして別のネタを聴いてみたいものだ。

古今亭駒次『ガールトーク』
 師匠志ん駒の逸話から、この自作へ。
 喫茶店でたむろしている奥さん達が、途中で帰って行く人を順にネタにしていく、という十分にありそうな話。客席は結構笑いが出ていた。
 初めて聴いたが、サゲが結構早くに分かってしまった。もう少し、磨く必要があるような気がする。
 この人も、来秋真打昇進だ。たまには、古典も聴いてみたいなぁ。

三遊亭歌奴『宮戸川』
 圓歌一門のトップバッター。
 開口一番の小多け、そして駒次の後に、この人のような実力者が出て来ると、真打ちという格の高さが明白に客席にも伝わるようだ。
 これが、落語だ、と頷きながら聴いていた。
 島崎又玄の「木曽殿と背中合わせの寒さかな」なんてぇ句を挟まれると、嬉しくなる。
 お花の白い足の形容、「雪にカンナをかけて、トクサで磨いたような」なんてぇのも、いいね。
 また、筋書きを披露目用に替えたのも、楽しかった。
 こう変わった。
 なんでも飲み込むから「うわばみ」と呼ばれる霊岸島の叔父さんの家の二階で結ばれたお花と半七は、その後、うわばみ叔父さんの仲介で晴れて夫婦になった。そして、玉のような女の子が生まれた。小さい頃から三味線や踊りが好きで・・・二代橘之助誕生物語の一席。
 ねぇ、なかなかいい趣向でしょ^^

マギー隆司 奇術
 この人のなんとも言えない味、だんだん好きになってきた^^

古今亭志ん陽『のめる(二人癖)』
 ご隠居に大根と醤油樽の策を授かった後の男が、相手の男を訪ねた際、「これで騙せる」と思うのだろう、ついふくみ笑いが止まらなくなる場面は、たとえば『つる』で白酒が演じるご隠居の姿を思わせ、なかなか可笑しかった。

三遊亭歌武蔵 漫談
 圓歌一門の、二人目。
 いつものようなマクラに加え、この時期である、あの事件のことに触れないわけにはいかない。
 この“旬”の話題、あの世界にいた人間だからこそ、説得力もある。
 今回は、ネタをやって欲しかったとの小言は、書かない。
 「第一ラウンドは終了、これからいろいろ出てくる・・・私は知っているが、これ以上は池袋の木戸銭位では話せない」と言っていたが、ホントに知ってんの^^

林家ペー 漫談
 赤い衣装に、例の赤いバッグを下げて登場。
 初代三平一門のことやら、最近のニュースにちなむ、彼ならではの一人語り。
 私は「ミュージシャンですから」というペーの、ギター抱えての「前座ブルース」を聴きたかったのだが。

五明楼玉の輔『マキシム・ド・のん兵衛』
 昔の池袋演芸場のことなどから、白鳥作のこの噺へ。
 この人では二度目か。ほぼ、自分のネタにしている、という印象だが、やはり、作者の創作能力の高さを感じるなぁ。

三遊亭歌る多『松山鏡』
 圓歌一門、三人目。
 先日秋山真志著『寄席の人たち』を元に二代橘之助のことを書いたが、あの本で、先のおくさんを亡くした後、圓歌にとって当時の小円朝とこの人の存在が大きかったことを知り、この人、見直した。
 だから、芸風と言っても良いのだろう、途中で筋書きをフィードバックして解説するのもくどく感じなくなった。この人の、優しさなのだろう、と思ってしまう。
 仲入りでも、その気配りを感じたのだが、それは後で記す。

ロケット団 漫才
 十八番の四字熟語ネタを中心に。
 山形出身の方、と聞かれて、すぐ隣の方々が手を挙げたのには、少しビックリ^^

金原亭伯楽『猫の皿』
 仲入りは、この人。
 橘之助のことにふれ、色物でのトリは初めて、と言ったのは勘違い。
 この日も出演する当代の正楽が襲名披露でトリをとっている。
 この件は、後でまた書く。
 志ん生のカバン持ち時代の道具屋での逸話をふって本編へ。
 端師(はたし)が一服する茶屋の場所を、八王子としていたが、志ん生は尊敬する円喬を元に中山道熊谷在の石原としていたはず。馬生のこの噺を聴いていないが、師匠の型か。
 舞台設定はともかく、短縮版ながら、この噺の楽しさを無駄、無理なく描いていたと思う。佳品、と言えるだろう。
 
 仲入りで、楽屋横喫煙場所に行くと、歌武蔵と歌る多が小さい声で話している。
 どうも、相撲界のあの件のような雰囲気。木戸銭では話せないことか^^
 ソファーで一服していると、正楽師匠が登場。
 楽屋に荷物を置いて、一服しに来られ歌る多の横に座った。
 つい、「師匠、よろしいですか。伯楽師匠が色物でのトリは橘之助が初めて、とおっしゃいましたが、師匠が襲名披露でトリをとられましたよね」とお聞きした。
 すると、歌る多が私を見て、「そうそう」と言うようにっこり笑って頷いた。
 一拍おいてから正楽師匠、「まぁ、お客さんに橘之助さんを立てたんでしょう」とおっしゃったが、歌る多が、「こういうことは早く言ってあげなきゃ」と楽屋に入った。時間をあまり置かず歌る多が戻ってきて、私に向かい「伯楽師匠、ご存知ありませんでした。ありがとうございました」と礼を言われた。
 伯楽はこの芝居で仲入りを続けるのだから、やはり、そういうことは間違わないにこしたことはなかろう。
 歌る多の素早い対応を含め、実に気持ち良く、席に戻ることができた。

二代立花家橘之助襲名披露口上
 幕が上がり、下手から、司会役の玉の輔、本人、歌司、市馬の四人。
 後ろ幕は、贔屓与り、に替わった。
 最近出向いた披露目の口上では、最小数だが、狭い高座では、それほど寂しくは感じない。
 玉の輔の「楽屋に、この口上を見にたくさんの噺家が来ています。これを、口上見学」は、すべった。
 印象深かったのは、圓歌一門総領弟子である歌司が、三味線という芸について京都の芸妓さんに聞いた、「調子三年、勘どころ八年」、という話。そして、小円歌が初代橘之助の墓詣りに行ったところ、その墓を守っているのが師匠圓歌の弟分だったという話で、橘之助の目が少し潤んだように、私には見えた。
 市馬は、実に久し振りなのだが、こういう席に似合う噺家になってきたなぁ、という印象。会長の貫禄か。
 
三遊亭歌司『長短』
 口上の後、圓歌門下四人目は、総領弟子。
 「86になりまして・・・ウェストが」は、お決まりのツカミ。
 「十人十色と言いまして・・・といえば、池袋のお客様なら、どの噺かはお分かりでしょう。柳家の噺で」とこのネタへ。
 へぇ、こんな噺も演るんだぁ、と思っていたら、とんでもない、実に見事な高座だった。
 長さんを与太郎にはせず、特に間合いの長い言い方ばかりではなく演じながら、短七の早い科白とリズムで、この二人の味のある会話を描いてくれた。
 この噺では南喬の末広亭での高座が印象に残るが、甲乙つけがたい味があった。
 寄席の逸品賞候補としたい。

林家正楽 紙切り
 相合傘・橘之助・たぬき・襲名披露・餅つき
 実に気持ちよさそうに五作。
 もしかすると、仲入りでの私の一言が、嬉しかったのか、と勝手に解釈していた。

柳亭市馬『厄払い』br>
 この人のこのネタ、以前、横浜にぎわい座で聴いて以来か。
2010年1月8日のブログ
 白酒の独演会に、スケが市馬。七年前だからありえたことだろう。
 あの日、初めて生でこのネタを聴くことができたことが嬉しかった。
 そして、この高座も、短縮版とはいえ、この人の持ち味を十分感じることができた。
 以前ほど、必要以上に首を左右にふることもなくなった。
 一人の噺家としては、やはり高く評価できる人だ。
 会長と思うから、いろいろ邪念が入るのだろう。

二代立花家橘之助 浮世節 (~16:32)
 茶の鮮やかな着物が映える。
 初代は、三歳で都々逸を演じ、五歳で入門し、八歳で真打となった名人、と説明。
 「でも、昭和10年に亡くなっているので、知っている人がいないからねぇ」と笑う。
 いやいや、今はその音源を聴くこともできるのだよ^^
 流石に、高い調子は苦しそう。
 しかし、しっかりと伝統を継いでくれそうだ、と確認できた好高座。
 たぶん、語りを交えて30分ほどだったと思う。
 三味線と唄の芸は次の三作。
 ①浮世節(「かんちろりん」)
 ②吹き寄せ
 ③たぬき
 特に、「たぬき」は圧巻で、10分以上の大作だった。
 一作目は、師匠圓歌が「こういうのがある」と教えてくれたらしいが、「きっと、芸者さんの膝枕で聴いたんでしょう」。
 二作目は、吹き寄せとはどういうものかを説明して演ってくれた。私はそれほど小唄や長唄に詳しくないが、その転調(?)のおもしろさは、分かった。
 途中、下座のやまとが狸の着ぐるみで鼓の叩いたが、この絶妙な共演を含む長編。
 考えてみれば、「たぬき」の“さわり”は以前から演じてきているが、その全編は、まったく異次元の作品だ。
 橘之助の左手の指使いの妙、そして、右手の撥の強さを感じた熱演。
 最後には、寄席の膝の時のような、かっぽれ、奴さんではなく、『稽古屋』に登場する道成寺の手まり唄を艶っぽく踊ってくれた。まさに(名)トリの踊りである。今は、師範だけどね。
 五十日間連続興行の三十一日目の疲れは、微塵にも感じなかった。
 色物とはいえ、三味に唄に踊りにと、多彩にして充実の高座、今年のマイベスト十席候補としたい。


 なんとか、橘之助の披露目にも行くことができた。
 圓歌一門全員がトリの橘之助までをしっかりつなぐ、絆を感じた。
 池袋ならではの一体感のある空間の余韻に浸りながら、帰路についた。

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by kogotokoubei | 2017-12-02 22:05 | 寄席・落語会 | Comments(10)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛