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噺の話

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2017年 01月 31日 ( 1 )

 寄席禁断症状のため、午後から休みを取って、少し本屋に立ち寄ってから末広亭の下席楽日に駆けつけた。

 旧暦なら正月三日、まだ休み、と言い聞かせて休んだ次第^^

 三時を少し回った昼の部の仲入り後、クイツキの鯉橋『道灌』の途中で入場。
 鯉橋、少し貫禄がついた印象。
 ゆめ子・京太の漫才は後ろのパイプ椅子で聴いた後、桟敷も結構な入りなので、椅子席の空きをみつけて、残りの昼の部を聴いた。

 順に感想など。

<昼の部>
三遊亭とん馬『他行(出張)』 (15分 *15:25~)
 この人も、このネタを生で聴くのも、初である。とん馬としては三代目、師匠遊三が二代目だったらしい。ちなみに、大師匠の四代目円馬が初代とん馬。
 見た目は、志ん輔に似ていなくもない。
 与太郎が、父親に頼まれ借金取りが来たら、「お父さんは出張でいない」と答えて追い返せ、と口上を書いてもらい、父親は二階で昼寝。
 何人かは目論見通り追い返したものの、風が吹いて口上書きが飛ばされ、やっと見つけて読み上げると、相手から「出張って何か知っているのか」「知ってるよ、二階で昼寝することだ」でサゲ。小咄に近いネタ。
 「他行」では今の時代に通じないから、「出張」なのだろう。
 デジタル大辞泉で調べると、「他行」はこう説明されている。
た‐ぎょう〔‐ギヤウ〕【他行】
[名](スル)よそへ行くこと。外出すること。たこう。
「明日から―するかも知れないが」〈木下尚江・火の柱〉

た‐こう〔‐カウ〕【他行】
[名](スル)「たぎょう(他行)」に同じ。
「此両三日職務上―したり」〈蘆花・不如帰〉
 落語って、勉強になるねぇ。
 あえてマクラで仕込んで「他行」のままでも良いようにも思うが、それだけ時間が長くなるね。難しいところだ。
 珍しいネタを楽しませてくれた後に、かっぽれも披露。
 芸協の寄席だなぁ、と感じさせてくれる好高座。

桂歌春『強情灸』 (16分)
 マクラで、落語家に本当の江戸っ子は少ない、師匠歌丸は横浜とふってから自分はロサンゼルスのビバリーヒルズと言って実際の出身地は言わなかったが、宮崎日向の出だ。
 軽いノリで、いつも朗らかな高座は、安心して聴いていられる。
 この人や、桂伸治などが高座に上がると、なんとなくホッとする。
 客を緊張させたり、身構えさせる噺家さんもいるからね^^

ボンボンブラザース 曲芸 (14分)
 十八番の紙の芸で、下手桟敷まで出張(他行?)し、帽子でも同じ場所のお客さんを巻き込む。このお客さんが、結構マジに帽子を投げるのだが、明後日の方角に行くものだから、客席大爆笑。
 いつもながら、流石の芸で、しっかり膝代わりを務めた。

三遊亭遊三『子は鎹』 (26分 *~16:37)
 最近、いわゆる“マイブーム”のネタ。
 期待して聴いていたのだが、正直なところ、熊さんと別れた女房の口調も同じように感じる一本調子で、噺にメリハリがつかない印象。
 母親が握るのが玄能ではなくカナヅチだったのも、残念。
 つい、耳に残る志ん朝や小三治、そして小満んと比べてしまうからかもしれないが、楽日の高座としては、期待外れと言わざるを得ないなぁ。

 ここで、昼の部がハネた。

 一斉にお客さんが退場。
 好みの下手桟敷に場所を確保し、コンビニで買ったおにぎりで夜の部に備えた。
 昼の部がほぼ満席近かったのに比べ、四割程度の入りにまで減ったのは、少し残念。

<夜の部>
春風亭昇市『つる』 (10分 *16:47~)
 初。昇太の七番弟子とのこと。
 ご隠居の科白が、仲間同士の会話に聞こえる。無駄なクスグリなど入れずに、本来の二人の会話をそれぞれの人物の気持ちになって語る稽古をして欲しいものだ。

橘ノ双葉『一眼国』 (10分)
 初めての女流。こういうネタに挑むのは結構なのだが、やや上すべり気味。
 マクラでは、もう少し仕込みが必要だった。持ち時間がないから焦ったのかなぁ。

マグナム小林 バイオリン漫談 (11分)
 話芸の部分に、もう少し工夫が欲しい。
 また、この芸なので、和服である必然性はないように思うなぁ。
 特に後半の曲弾きとタップダンスは、洋服の方が似合うのではなかろうか。
 ご本人としては、袴に執着する思いがあるのだろうが・・・・・・。

桂小南治『隣の桜(鼻ねじ)』 (13分)
 円満と昼夜交替したようだ。少し早いですが、と言って披露した上方ネタ。
 独特の声、仕草、表情などで、楽しく聴かせてくれた。花見の宴の場面では、ハメモノ入り。一瞬、高座が上方落語の世界に早変わり。
 この噺では、七代目松鶴を継いだ松葉を思い出す。
 九月に師匠小南の名跡を継ぐが、何とか披露目に行きたいものだ。

桂文月『出来心』 (12分)
 初。後で調べたら、十代目文治の七番弟子のようだ。
 なんとも不思議な印象。もう少し弾けると、南なんのような味が出るような気がするが。

宮田 陽・昇 漫才 (13分)
 芸協の若手(中堅?)漫才の筆頭格か。空席の目立つ客席だが、奮闘。

桂米福『てれすこ』 (14分)
 2015年12月に国立演芸場で『時そば』を聴いて以来。
 米丸一門なのだが、二度とも古典。
 サゲは、かみさんが火物(=干物)断ちをしたから、ではなく、魚は勘弁サバかれる、に替えていた。元は上方ネタで、東京では円生がよく演じていたようだが、こういう噺、好きだなぁ。
 噺家さんらしい見た目も含め、印象は悪くない。

三遊亭円馬『ふぐ鍋』 (15分)
 大いに笑った、圧巻の高座。
 家の主人と出入りの幇間が、初めてフグを食べる、という冒険(?)談。
 二人とも、怖くて箸をつけられない時、お余りをもらいに、おこもさん(乞食)が訪ねてきた。主人が、おこもさんを実検台にしようとフグを少し分け与える。しばらくして幇間の繁が、おこもさんをつけて行って、橋の下で息をして寝ているのを確かめてから、ようやく主人と繁は食べる始めるのだが、その場面の可笑しいこと。
 そのおこもさんが本を読んでいて、それがリフォームの本というクスグリも、なんとも可笑しい。
 鍋から湯気が見えたように思えたし、とにかく主人と幇間の繁が、おそるおそる鍋のフグの身を口に入れようかどうしようかと、相手の様子を探りながら苦闘する場面の、顔や口、目の表情が出色。柳家金語楼を彷彿(?)とさせる演技で、会場からは、実際の倍以上お客さんがいるかのような爆笑が起こった。
 ほぼ、二代目小南の型なのかと思う。
 こういう噺を聴くと、芸協の寄席の良さを再認識する。
 短い寄席の高座だが、今年のマイベスト十席候補としたい。

北見伸 奇術 (15分)
 ちょっと一服の時間とさせていただいた。
 最後に教えてくれた手品は、後ろのパイプ椅子で見ていたが、どこかでやってみようか^^

春雨や雷蔵『権助提灯』 (12分)
 酒も女も過ぎてはいけない、どちらも二合(号)まで、というマクラ、ぜひ使わせてもらおう。
 いいなぁ、こういう高座。
 芸協の寄席では欠かせない人ではなかろうか。
 女房とお妾さんの演じ分けも見事だし、主役の権助もなんとも楽しい。
 寄席の逸品賞候補として印をつけておこう。

神田松鯉『扇の的』 (15分)
 仲入りは、この人の講談。
 落語の間に色物だけでなく、講談が入るのは気分転換にもなって好きだ。
 玉虫御前の美しさを形容する長い言葉があったが、メモるの忘れたなぁ。
 この日は、最後まで眼鏡を外さなかった。そういうことも、あるのだねぇ。

春風亭昇乃進『看板のピン』 (15分)
 クイツキはこの人。柳昇に入門し、現在は小柳枝門下。
 元気なのは結構・・・なのだが。
 師匠は、昨年四月に脳梗塞で倒れ、現在は退院もし寄席復帰を目指していると聞く。
 早く、あの渋い高座に再会したい。

Wモアモア 漫才 (14分)
 前半は千代田区長選挙やトランプのイスラム七か国入国禁止令などの時事問題を、結構真剣に語る。
 やや、会場が冷えてきたとみて、いつものネタに入り、場内の笑いの温度も上がった。
 相撲ネタから下手の東城しんが、行司の口調を繰り返すネタは、初めて聴いた。
 しんが家に行司の口調で帰宅を告げ、女房役の東城けんに向かって「飯だ」と言って、けんが冷や飯を出し「何だ、この冷や飯は」への返事は・・・お察しの通り^^

桂南なん『徳ちゃん』 (14分)
 この噺を芸協の噺家さんで聴くのは初めてではなかろうか。
 見た目が、なんとも言えない芸人さんの味がある人なので、こういう噺も実にニンだ。 人によってクスグリをたくさん入れることができるネタ。
 徳ちゃんが通される“離れ”の形容などが、頗る可笑しかった。
 貧乏噺家に向かって妓夫太郎が「この手のひらに愛を乗せて!」なんて一言も笑える。
 サゲも工夫されていて、終始会場を沸かせた。

三笑亭夢太朗『浮世床』 (13分)
 師匠夢楽が神田の生まれと言っていたが、調べてみると岐阜の地名だった、とのこと。
 主任の茶楽の時間を作るためだろう、あっさり目でサゲた。

翁家 喜楽・喜乃 太神楽 (10分)
 喜乃さんの芸、以前より落ち着いてきた印象。
 その笑顔が、なんとも良い彩りとなる。

三笑亭茶楽『芝浜』 (26分 *~21:00)
 旧暦では、この席の間に年を越した勘定になるから、このネタは旬のうち。
 三木助版を基本としているのだろう、芝の浜で財布を拾う場面も挟んでこの時間なのだから、よくぞ縮めたものだ。
 冒頭場面で登場するキーワード(?)、「盤台の糸底」や「ばにゅう」も、しっかり押さえる。
 今では、こういう言葉も落語でしか聞けないねぇ。
新宿末広亭 一月下席 昼の部(仲入り後)&夜の部 1月30日_e0337777_13383450.jpg

『古典落語 正蔵・三木助集』(飯島友治編・ちくま文庫)

『古典落語 正蔵・三木助集』の注を引用しておこう。
盤台の糸底 棒手振が天秤でになう盤台は、普通、小判型盥状の木桶である。長く使わないでいると、木が乾燥して水が漏るので、裏返して、糸底、つまり底板を嵌め込んだところへ水を満たして木を膨張させてから使う。
ばにゅう 盤台の上に重ねて載せる木製の容器。棒手振の魚屋は、これに包丁その他道具類を入れる。
 茶楽の高座、サゲ前の福茶なども含め、こういった季節や職人さんたちに関わる言葉を大事にしているんだろうなぁ、と思わせた。
 やや短縮版にした分だけ駆け足の感は拭えないが、予想もしなかったネタに満足。
 

 今年の初寄席、いろんな高座があったが、何より円馬が特筆ものだったし、雷蔵や南なんも寄席らしい好高座。とん馬との出会いもあった。
 そして、楽日に、今松のように『芝浜』で締めた茶楽も良かった。

 夜の部の客の入りは、昼に比べて激減したが、決して芸協の寄席は悪くない。
 果たして落語研究会のプロデューサーは、芸協の寄席に通ったことがあるのだろうか、などと思いながら地下鉄で帰路についた。

 本格的な古典落語を演じる実力者が落語協会に多いのは、百も承知。
 しかし、現在の第五次落語研究会が始まった頃、四代目三遊亭円遊がレギュラー的な扱いだった時期がある。発案者の川戸貞吉さんには、円遊のような味わいのある噺家を評価する鑑識眼もあった、ということだろう。
 来月主任の鯉昇はよく声がかかるようだが、他にも芸協ならではの味のある噺家さんはいるのだ。
 茶楽や円馬などは、ぜひ知って欲しいなぁ。蝙丸、雷蔵、伸治、柳好などもいる。
 そうだ、寿輔だって、半分の客が席を立とうが、いいじゃないか^^
 せめて、割合にして五人に一人は芸協から出演者を選んでも不思議はない、などと思いながらビールを飲んでいたら、物足らなくなって日本酒も少々。
 肴は、末広亭の売店で買った豆菓子の残り。
 残念ながら、ふぐ鍋は、なかった。
 

by kogotokoubei | 2017-01-31 22:06 | 寄席・落語会 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛