噺の話

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2016年 05月 03日 ( 1 )

 昨日5月2日は、退院後最初の外来診察。
 午前中の診療時間だが、休みをとっていた。順調であることを想定して、落語芸術協会の新真打昇進披露興行が始まった末広亭へ行くつもりだったのである。

 病院が、なんと混んでいたこと。
 花粉症の季節は終わっていないし、この病院は鼻だけでなく耳、喉などの病気も扱っていて、いろんな患者さんで外来の待合室はいつも一杯だ。
 一時間ほど待ってから、主治医S先生の診察。
 軽く鼻腔に麻酔をして、鼻の中から、先生が大きなカサブタを取った。
 S先生「順調ですね。テニスもいいでしょう」
 私  「お酒も大丈夫ですね」
 S先生「飲み過ぎなければね」
 私  「この前我慢したから、まつやで熱燗と“もり”にします」
 S先生「いいねぇ」

 抗生物質と鼻の薬の処方があり、三週間後にまた来るよう言われた。
 もっと早めに来なくてはならないかと思っていたので、嬉しくなった。
 それだけ経過が良い、ということなのだろう。
 ネプライザー(吸入器)でスチームの吸入をして、会計を済まし、実に晴れ晴れしい気持ちで病院を出た。
 
 病院は淡路町、まつやは隣りの須田町だが、徒歩3分ほどの距離。
 まつやに行く途中に、連雀亭の前を通る。
 表に貼ってある番組表を確認。
 1日から4日は、ゴールデンウィークということで、特別公演番組だ。
 第一部(12:30-15:00)は、落語協会の新真打林家彦丸が主任。
 末広亭で披露目に行っていることもあるし、退院の日に来ているので、末広亭で居続けと決めた。
 この二部制(二部は16:00-18:30)の特別公演は、サイトで案内されている内容で明日4日まであるので、ご興味のある方は、ぜひ。
神田連雀亭サイトの該当ページ

 さて、まだ昼食時間帯だがどうかと思って、まつやの入り口を開けたら、一人分なら席があった。
 「熱燗とわさびかまぼこ、後で、もり」と告げる。
 この昼間からの熱燗が、自分へのご褒美。ビールの小瓶とは、違うのだ。
 蕎麦の匂いは、残念ながら、あまり感じない。
 臭覚は、初めて外来でS先生に診察してもらった時点で、神経が戻らないかもしれない、と言われていた。
 いずれにしても、次回の診察までの状況によって、先生に聞いてみよう。

 混んできたこともあり、そばを味わって店を出て、近くの地下鉄の駅から新宿三丁目へ。

 コンビニで夕食用の助六やお茶などを仕入れて末広亭に行って、驚いた。
 まだ午後1時を少し回ったばかりなのに、「立ち見」とのこと。
 五日までの昼の部の主任が、桂歌丸・・・あの、笑点降板発表効果、ということもあるか。

 どこかでお茶でもしようか、と思わないでもなかったが、覚悟(?)を決めて会場に入る。
 立ち見を含め、とにかく、凄い入りだ。
 昨年も同じ五月上席の真打昇進披露も歌丸が昼の主任で立ち見だったが、それ以上。
 桂竹丸の高座の途中だったが、立ち見のお客さんを含め、彼の漫談で笑いの渦、という状態。
 笑いたい人、あるいは、寄席初体験のお客さんも多そうだ。
 しばらく後ろで聴いていた。

 二階に上がる階段にも、座っているお客さんがいたので、その横に腰を掛けていた。
 小南治の高座が始まった。
 その途中、二階から降りてくるお客さんがいて、どうもお帰りになるようだ。まだ、始まったばかりなのに、想像を超えた混み具合で嫌になったのかどうか、理由は分からない。

 ダメ元で二階に上がってみると、三列目の端っこに座布団が空いている。近くの方に「空いていますか?」とお聞きすると、そのようなので、座る。

 さて、最初から聴けた高座を出演順に、短い感想を含め記したい。

桂小南治『ん廻し』 (17分 *13:13~)
 言葉の中の「ん」の数だけ木の芽田楽を食べることができるという余興の前に、手ぬぐいを使った手品や気合術、曲芸(コヨリでボンボンブラザースのような芸^^)などを披露する構成は、初めて聴いたような気がする。
 独特のダミ声での高座、私はしっかりネタを披露したことを含め、好感を持った。

青年団 コント (13分)
 初である。選挙をテーマにしたネタで、アルバイトと立候補者のスタッフ(雇用側)の男との、やりとり。
 政党の名は「降参党」で「白旗」なんてぇギャグが満載。
 途中で、「そういうギャグは、ニュースペーパーに任せときゃいいんだよ」と自らクスグリを入れたが、ややワイルドなニュースペーパー、という感じだ。
 「九条には反対」「どうして?」「四畳半二間か、八畳か十畳だろう、日本は」
 なんてぇギャグでも、大爆笑。
 芸協には、まだこんなおもしろいコンビがいたのか、と色物の引き出しを多さを再確認した。
 よく笑ってくれるお客さんが多かったこともあるが、とにかく笑いが途切れなかった。

桂幸丸 漫談 (15分)
 この人では、漫談ばかりで、ネタを聴いたことがないなぁ。
 人間ドックネタなど、会場は受けていたが、私は笑えなかった。
 ほぼ同年齢の噺家さん、持ち時間がなくても、自作の新作などを披露して欲しかった。

雷門助六『相撲場風景(こり相撲)』 (16分) 
 六代目松鶴の十八番の一つだった上方ネタ。師匠八代目助六が『こり相撲』として演じていたようだが、残念ながら、師匠の姿を髣髴とさせる高座とは言えなかった。
 いつもこの人で気になる、無駄な“間”も、リズムを崩す。どうも、私には相性が悪い。

北見伸・ステファニー 奇術 (13分)
 いっぺんに高座が華やかになる。いい出番での登場だったと思う。

桂米丸 漫談 (17分)
 仲入りは、大正14年4月生まれ、先月91歳を迎えた現役最高齢の方。
 椅子に座っての高座だったが、五代目今輔に入門した頃の思い出や、ある会社の周年行事で落語を披露した際の逸話など、定番ネタではあったが、会場を沸かせた。
 もっとも印象に残るのは、師匠の今輔が、他の噺家は自分の十八番を軽々に弟子には教えなかった時代、今輔が米丸に十八番をどんどん稽古していて、米丸が「いいんですか?」と聞いたら、「いいんです、また作るから」と答えた、という逸話。あらためて今輔の凄さが伝わる話。

座団会 (16分)
 外部にあまり訴求していなかったと思うが、歌丸主任の五日までは、歌丸芸能生活65周年を祝う番組ということで、ゲストの出演を含め、この座団会が組まれている。
 幕が開くと、下手から歌丸の総領弟子の歌春、笑点仲間の好楽、歌丸、米丸の四人が、パイプ椅子に座っている。
 幕が上がった途端の、歓声と拍手の大きかったこと。
 生の歌丸を初めて見ることができた人がそれだけ多かったことと、まさにその“時の人”を目当てにやって来た人が多かったという証だろう。好楽もいたから、多くのお客さんにとって、そこはテレビ「笑点」の世界なのだ。
 歌丸は昭和11(1936)年生まれ、二人目の師匠である米丸は大正14(1925)年生まれなので11歳差なのだが、それを思うと、語り口を含め、米丸の元気さが目立つ。
 なぜ、歌丸が最初の師匠五代目今輔の元から米丸門下になったかについては、お互いにお茶を濁した。
 米丸が歌丸が今も住む横浜真金町の実家のことにふれると、ご本人から「女郎(じょうろ)屋です」とあっけらかんな答え。真金は、歴史のある遊郭街なのである。歌丸は実家のことについて、結構プライドを持っているような、そんな印象さえあった。
 今輔門下の時期、歌丸の歩き姿などが今輔にそっくりで、陰で「歌丸は今輔の隠し子じゃないか」、という噂が流れたらしい。まったく想像がつかないが、当時の歌さんは、“お婆さん”の今輔に似ていた、ということか。
 人形町の末広で、師匠の米丸が主任で、歌丸、右女助(三代目、三遊亭、通称逗子の右女助)と四代目柳好(川崎の師匠)と三人で出演していた頃、国鉄を神田で降りて末広まで歩く時に、三人で小咄を出し合って稽古したことが、随分良い練習になった、と思い出していた。いいねぇ、あったかい話だねぇ。
 歌丸は芸歴65周年を「折り返し点だと思っています」と語ったのだが、いったいいくつまで生きるつもりじゃ(^^)

Wモアモア 漫才 (10分)
 笑いの渦を止めない芸。この位置で出演させる理由が、よく分かる。

桂歌春 漫談 (14分)
 ここまででほぼ三時半。トリの師匠の時間を作るにはネタは難しかっただろう。漫談ながら、客席は湧いていた。しかし、私は10分でもネタをかけて欲しかったなぁ。

三遊亭好楽『親子酒』 (11分)
 座団会にも出演するゲスト出演、この日はこの人。
 ネタをかけてくれたのはいいが、どうもリズムが悪い。よく笑ってくれるお客さんに救われていたが、定席の寄席に出ていない期間の長さを感じる、切れ味の鈍い高座。

やなぎ南玉 曲ごま (10分)
 落語協会の三増紋之助と比べると、こちらの方が語りなど形式的には伝統芸を継承していると言えるのだろうが、紋之助の語りの楽しさをどうしても贔屓にしてしまうなぁ。

桂歌丸『おすわどん』 (28分 ~*16:33)
 去年同席の昇進披露興行同様、板付きだった。
 昨年夏場の腸閉塞での二週間の入院以来、足の筋肉が減って、元々骨と皮なのに、と笑わせる。一週間入院したばかりの私には、リハビリがんばるぞ、との励みになって聴いていた。
 休んでいる間の「笑点」メンバーの司会ぶりをいじったり、結婚して58年になる奥さんの逸話など15分近いマクラから本編だったので、ネタは十数分。
 たしかに、噺をまとめる技量には感心する。しかし、この人の魅力は、地を中心にした怪談などの長講などの方が発揮されるのだろうと思った。
 
 さぁ、私が経験した末広亭では過去最多の入りだった昼の部がハネた。
 多くのお客さんがご退場。
 好みの下手の桟敷が空いて、席を確保。
 助六で腹ごしらえし、お目当ての夜の部に備えたのであった。

 夜の部の内容は・・・明日のお楽しみ、ということで。

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by kogotokoubei | 2016-05-03 15:44 | 寄席・落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛