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噺の話

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2016年 03月 14日 ( 1 )

 テニスの後の食事会(≒飲み会)が、複数のメンバーの都合が悪く中止。

 そうとなれば、と「さがみはら若手落語家選手権」の本選会に駆けつけた。

 すでに拙ブログで書いたように、残念ながら桂宮治は出場しない。
 主催者のサイトにあるように、次の五人による決戦だ。
「杜のホールはしもと」サイトの該当ページ

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 これまで、多目的室での予選には何度か行ったことがあるが、ホールでの本選会は、初めて。

 当日券販売開始の12時直前に会場に到着。
 一階だけでも400席はあるので、まだ席はあるだろう、という予想に反して、二階席しか残っていなかった。
 これもしょうがないこと。
 過去に参加した予選でも大勢のお客さんがいたが、なるほど、相模原の落語愛好家のすそ野は広い。

 近所で昼食を済ませて、ふたたび会場へ。

 次のような構成で、会は進行した。
 ちなみに、出場者のネタは事前に公開されており、ネタと名前の印刷された投票用紙が受付で配布されていた。
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司会挨拶と出場者紹介、大会概要説明、出場順抽選
開口一番 春風亭朝太郎『転失気』

<出場者の高座>
昔昔亭A太郎『罪と罰』
三遊亭橘也 『死ぬなら今』
三遊亭たん丈『新・寿限無』
(仲入り)
柳家花ん謝 『妾馬』
古今亭志ん吉『片棒』

<投票>
ゲストの高座
橘家円太郎『馬の田楽』

審査結果発表
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司会挨拶と出場者紹介、大会概要説明、出場順抽選(9分 *13:30~)
 女性の司会者が登場。さすがに、予選会と違って大学落研所属の素人の女性には任せられない、ということだろう。
 宮治のことも、出場条件である5月22日の「しろやま寄席」に出場できないため辞退、と説明があった。
 協賛各社の説明、そして、出場者の紹介の後に出演順を抽選で決定。
 さて決戦か、と思いきや、開口一番。朝太郎には悪いが、不要だろう。

□開口一番 春風亭朝太郎『転失気』 (14分)
 昨年10月の人形町らくだ亭以来。高座そのものは悪くなかった。しかし、この後に五人の高座、そしてゲストの高座と続くことを考えると、開口一番の必要性は、まったく感じない。

ここから出場者の高座になる。
司会者が持ち時間を説明しなかったので、しばらく「20分か?」と思っていたが、どうも25分だったようだ。前半の出場者二人は、時間を余したといいうことなのだろう。
 では、それぞれのネタと寸評。

昔昔亭A太郎『罪と罰』 (18分)
 2013年2月の予選で『皿屋敷』を聴いて感心し、一票投じた人。
 宮治が辞退したための出場だ。
 最初に伊達メガメをつけたり外したり、という行為が、ほとんど意味がなかったなぁ。
 口跡ははっきりしていて、マクラは結構楽しめた。お婆ちゃんの携帯メールの返信が、すべからく「了解しました」というのは、自分にも当てはまるので笑えた。
 岐阜のお婆ちゃんが孫のためにリヤカーでチラシを配り、400人のお客さんを集めて落語会を開いてくれた、という話はどこまでネタか分からないが、お婆ちゃんの楽しさと優しさが伝わった。
 100歳のお爺ちゃんの趣味が貯金で「老後のため」というのも、どこかで聴いた気もするが、悪くない。
 新作の本編は、中年女性が電話で話し中に強盗がやって来て包丁を突き出すことが発端。しかし、この女性はまったく怖がらず、電話での通販の話題などと強盗の行為がごっちゃになったりし、ついに強盗に包丁でネギや豆腐を切らせて料理をさせる、といった内容。
 三年前に古典をしっかり聴かせてくれたことを考えると、このネタ選びは疑問。空間の広がりがあまりない上に、サゲも平凡だ。新作としてなら、もっと工夫の必要があっただろう。
 加えて、題の『罪と罰』は、前半に少しだけ登場するのみで、これを演題とするのは、相応しいと思えなかった。
 マクラは悪くなかったので、やや残念な気がした。
 私がメモした10点満点の採点では、7点。

三遊亭橘也『死ぬなら今』 (18分)
 この二人まで、20分以内だったので、持ち時間を20分だと思っていたのである。昨年11月、にぎわい座のげシャーレで『もぐら泥』を聴いて以来。
 来春真打でこの大会は最後のチャンス、とのこと。円楽一門なので、入門から十二年での昇進と、両協会よりは早いのだ。
 この噺は鯉昇などで聴いているが、内容は少し違っている。まず、しわい屋けち兵衛が、「地獄の沙汰も金次第」として死ぬ際に身代の五分の一をあの世に持って行くのだが、にせ金ではない。初代けち兵衛死後三百年、十八代目がアタッシュケースに金が入りきらないのでクレジットカードも持参する、という内容。地獄にはATMもあるので、閻魔大王にはたっぷり袖の下を支払うことができる。
 金持ちになった地獄の大王や鬼たちが株に手を出し、極楽の株価の変動も大きくなって大王や鬼たちが極楽の監獄に入れられて、地獄は今は誰もいない。だから、ネタの題になる、というサゲ。
 本人による改作かどうかは知らないが、やや内容に無理がある。歌舞伎で使うにせ金を死んだ主に持って行かせる、という筋書きの方がスッキリしているし、古典の香りも残るように思う。閻魔大王への袖の下、他の鬼たちへのワイロの配布、という部分は繰り返し登場するのだが、そこにも科白などで工夫が欲しかった。
 私の採点は、6だった。

三遊亭たん丈『新・寿限無』 (24分)
 初、である。42歳で円丈に入門し、現在54歳という二ツ目さん。
 秋田県男鹿半島の出身、ということで「ナマハゲ」小咄というのを五つも披露したが、三つもあれば十分でしょう。たとえば、「ナマハゲさん、うちの子勉強できないんですが、どうしたらいいでしょう」「だったら、これを使え!」「あら、これは土を掘る道具」「ドリルじゃあー」
 次に同じ土を掘る道具で「スコップ」も登場したが、正直、あまり笑えなかった。
 持ち時間の半分以上を小咄などのマクラで使った後の本編は、師匠の作らしい。バイオテクノロジーの大家である斉藤さんが名付け親。だから、こんな名前だ。
 「酸素、酸素、クローンの擦り切れ、細胞壁原形質膜細胞分裂減数分裂、喰う寝るところは2DK、窒素リン酸カリ肥料、人間アセとアルデヒド、アミノ酸リボ核酸龍角散、DNAのRNAのヌクレオチドのヘモグロビンのヘモスケ」
 後半は本人も言い間違えそうになっていた。それなら、自分なりに改作してはどうかと思うのだが、師匠の作品としてそれはできない、のだろうか。今ならSTAP細胞などのネタもあるのだが。
 口調が、師匠に似ている。あるいは、似せているのだろうか。よほど好きなのだろうということは伝わったが、年齢相応の芸とは言いにくい。昔なら、天狗連として生涯趣味で落語を楽しむタイプの人だろうなぁ、などと思いながら聴いていた。
 果たして、食べていけるのだろうか、などと余計な心配をしてしまった高座、採点は5点。ここで、仲入り。

柳家花ん謝『妾馬』 (25分)
 初、である。拙ブログにいただいたコメントで高く評価をされていた方がいて、楽しみにしていた人だ。
 「ここからは、古典落語をお楽しみください」と言って、マクラも短く本編へ。
 たしかに、前半三人は古典にしても改作が施されていて、三作とも新作の趣きだったので、この後の二人の高座は楽しみだった。
 ほとんど無駄なクスグリもなく、本来の噺をしっかり演じた、という印象。
 しかし、お客さんは本来の噺の筋でもしっかり笑ってくれていた。会場の雰囲気にも助けられたように思うが、無理に笑わせようとせずに笑いをとっていた技量は高いものがある。
 八五郎が、自分の孫なのに抱くこともできない、と母親の言葉を妹つるに伝える場面で、三太夫がもらい泣きするという演出を挟んだが、それもわざとらしさがなく好印象。
 この後、八五郎が殿様に召し抱えられたことを地で語ってサゲ。
 好印象で、私の採点は、8。

古今亭志ん吉『片棒』 (24分)
 以前はよく聴いた人だが、2014年7月、雲助の浅草見番以来。
 語り口が、以前にも増してしっかりしてきた印象。
 寄席で悪口を言える「三ぼう」のマクラから本編へ。
 長男の金太郎が、三夜に渡る超豪華な通夜の企画を語り、父親が「出て行け!」と叫び、次男の銀次郎登場。ここが山場だ。
 棟梁の木遣り、芸者衆の手古舞、山車は父親けち兵衛の人形、江戸囃子の行列、御輿が繰り出し、花火が上がって空から位牌が落ち、弔辞へ。
 途中のお囃子の太鼓、笛も見事にこなした。
 三男の鉄三郎、棺桶は菜漬けの樽、と言うと、けち兵衛が「親こうこうの洒落かい」などと返すあたりも、可笑しい。「お父っあん、相談ですが、蓋はいる?」というクスグリは、あまり聴かないが、師匠譲りだろうか。
 持ち時間を上手く使って、しっかりとサゲまで。
 悩ましいところだが、花ん謝との比較では、ネタの華やかさで志ん吉が上か、と思い、採点は9点とした。

 さて、全員の高座が終わり、司会者と五人が登場し、司会者があらためてそれぞれの出場者とネタを紹介。
 その後、係りの人が投票用紙を回収。私は採点の通り、志ん吉に投じた。
 
 集計の時間を利用して、ゲストの円太郎の高座。

橘家円太郎『馬の田楽』 (32分)
 交通が便利になって、京王線で橋本へ来れるようになったが、風景はそう変わらない、と電車内での老夫婦の会話、というマクラへ。ラグビーの五郎丸のことを源五郎と間違って言い続ける老婦人、という内容に、会場は大笑い。このへんは、流石の中堅真打、という感じ。
 本編は、予想もしていなかった、この噺。
 調べてみたら、2011年6月、小三治で末広亭で聴いて以来だ。都内からは郊外の地である相模原という場所からの発想なのかどうか分からないが、田舎風景と在郷の人たちの言葉が楽しい。
 小三治の高座では、そうは思わなかったのだが、円太郎の高座で思ったことは、結構この噺は楽ではない、ということ。
 寝ている間に馬がいなくなった後の馬方と子供との会話、耳の遠いお婆さんと馬方との頓珍漢な会話など、結構声も張るし、体力の必要な噺なのである。そうか、決して「逃げ」のネタではないのだなぁ、などと思いながら聴いていた。
 
 さて、円太郎の一席も終了し、あらためて司会者と五人が登場。ここでも出場者を紹介したのは、まったく蛇足。
 円太郎の高座終了時点で、すでに四時四十五分、開演から三時間と十五分が経っている。
 終演予定五時、と案内されていたから文句は言えないのだが、もっと全体の時間を短縮するように構成は検討すべきだろう。少なくとも、開口一番はいらないし、何度も出場者を紹介することもないだろう。

 優勝者発表の前に、協賛6社からの表彰。志ん吉と橘也が二つ、A太郎と花ん謝が一つ獲得。残念ながら、たん丈にはなかった。
 ここで、「優勝は、志ん吉と橘也の争い?」と思わせたが、結論から言うと、花ん謝が優勝。

 私は、少し驚いた。
 無駄なクスグリも遊びもない高座だったが、会場の五百人近いお客さんは、その高座を選んだということ。
 さがみはらの落語愛好家の皆さん、なかなか、渋い!

 私は、志ん吉とは僅差ではなかったろうか、と察するが、準優勝が誰かは発表しなかったはず。
 というのは、司会者がクロージングの挨拶を始めた頃には、いらいらして席をたっていた。

 ロビーで時計を見ると、終演は16:58。
 落語を計七席。お腹いっぱいの大会だった。

 
 帰宅後はすぐに記事を書くこともなく、ビールをやりながら、BS ジャパンの「私の履歴書 桂米朝」(後半)を観た。
 前半は、『高津の富』を「たかつのとみ」と読むなどの初歩的な間違いが多く、がっかりしていたが、後半は大きな間違いはなかったものの、『地獄八景亡者旅』の映像の選択や解説に、やや疑問を感じたなぁ。

 その後、少し記事を書いてから、今度は『真田丸』を観た。
 こんな筋書きだったの・・・と疑問を抱く。池波正太郎の『真田太平記』と、どうしても比べてしまう。
 また、一杯やりながら記事を書こうとも思ったが、すぐに九時からNHKスペシャルの「メルトダウン 88時間~福島第一原発・同時多発事故の全貌~」を見始めたら、ブログどころではなくなった。
 吉田所長役の大杉漣が、好演。とはいえ、当時の東電幹部や政府への批判は、相当抑え気味だったし、88時間後の2号機の問題は、説明不足で少し拍子抜けだったなぁ。

 そんなこんなで、半分ほど記事を書いたものの、さすがにテニスの後に三時間半の落語会の後である、ビールと酒で眠くなり、風呂に入って爆睡であった。

 あらためて思うのは、もし宮治が出場していたら、どうだったろうか、ということ。
 あの花ん謝の『妾馬』を評価した会場のお客さんなら、宮治も必ずしも優勝できるとは言えないかもしれないが、それは実際に出演してみなければ分からないことだ。
 やはり、彼の高座を聴きたかった。
 受付でいただいたチラシの中に、優勝者の出前寄席の希望を書く用紙があった。
 そして、すでに来年の予選と本選の日程、加えて優勝者と準優勝者が出演する「しろやま寄席」の案内が書いてあるチラシもあった。
 なお、「しろやま寄席」の日程は、今年と同じ5月22日日曜日となっていたが、これは21日の誤りだろう。
 宮治の本選会辞退は、この大会の出場資格であった「しろやま寄席」の日程を確保できなかったことだ。優勝や準優勝はできるかどうか分からない段階での日程確保である。
 もちろん、あらかじめ決まっていた規定なので、それに気が付かなかった宮治の責任なのだが、あえて書くが、「しろやま」だって、優勝者が決まってから、本人たちと日程を調整してもよいのではなかろうか。全席自由、五百円の木戸銭という良心的な会。ぜひ、出演者にも良心的な気配りを期待したい。

 予選、本選に加え、もう一日、それも日曜日を予め空けて臨まなければならないのは、結構つらいのではなかろうか。

 まぁ、この件は、このくらいで。

 それにしても、花ん謝の『妾馬』を選んださがみはらの落語愛好家は、いわゆる本寸法の古典がお好きなのだろうなぁ、と思った初体験の本選会だった。
 
p.s.
後で確認したところ、準優勝は橘也、志ん吉は三番手だったようだ。
橘也が多くの笑いをとっていたことは事実だが、今年がラストチャンス、ということも影響したかもしれないなぁ。
本選出場者は、翌年参加できないらしい。志ん吉には再来年にあらためて期待しよう。

by kogotokoubei | 2016-03-14 12:47 | 寄席・落語会 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛