人気ブログランキング |

噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

2016年 01月 15日 ( 1 )

 今年の初落語は、この会。第25回、とのこと。

 ネットのニュースで三代目桂春団治の訃報に接し、重~い気持ちで桜木町に向かった。
 
 入院していた喜多八が、いったいどんな姿なのかという思いと、三代目のことが、どうしても交錯してしまう。

 にぎわい座は昨年11月に地下秘密倶楽部(?)のげシャーレに来ているが、この会となると2012年9月以来となる。
2012年9月6日のブログ

 あの時よりはお客さんの入りは良い。八分程度だったろうか。
 入りは程良いのだが、一部、やたら拍手をするお客さんがいたのには、閉口した。

 とにかく、喜多八のことが気がかりだった。

 次のような構成。
------------------------------------
(開口一番 瀧川鯉ん『ん廻し』)
入船亭扇遊 『試し酒』
柳家喜多八 『やかんなめ』
(仲入り)
瀧川鯉昇  『宿屋の富』
------------------------------------

瀧川鯉ん『ん廻し』 (15分 *19:00~)
 2013年8月、新宿での鯉昇・一之輔二人会で聴いて以来。その時の高座、やたら声が大きいことだけは覚えているが、今回も、その大きさには腰が引けた。
 客席の笑いを催促するような“間”も、いただけない。
 よく笑ってくれるお客さんが多くて救われていたように思うが、そろそろ声のボリューム調整も必要ではなかろうか。

入船亭扇遊『試し酒』 (30分)
 まくらで、この後の喜多八が、いわゆる“板つき”で登場するので、いったん緞帳が下りることを説明。まだ、歩けないことが分かった・・・・・・。
 今や古典化しつつある今村信雄による昭和の新作だが、そうなるだけの聴かせどころ、見せ場のある噺を、この人ならではの芸で楽しませてくれた。
 「野を見つくせない」→「飲みつくせない」で「武蔵野」と名付けられた一升入る盃で、近江屋の下男久蔵が五杯飲むそれぞれの場面が圧巻。
 一杯目は、一気。ここで数名のお客さんから間の悪い拍手が起こった。
 二杯目は途中で息継ぎをし、その美味さに驚き、「うちの旦那さま~、こないだ飲んだ酒はひどかった」と毒づく。
 三杯目には、酒を最初に造ったのは中国の儀狄であるという薀蓄を披露し旦那たちを煙に巻いてから、都々逸づくし。
 四杯目は、賭けを仕掛けた旦那が話している間に飲むという演出。
 「ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい、ぐい・・・・・・」
 旦那が久蔵の飲みっぷりを見ながらの科白は、あっけにとられてのフェイドアウト。
 さぁ、五杯目。さすがに二度ほど盃から顔をそらせたものの、久蔵ついに五升を飲み干す。
 扇遊は、師匠扇橋譲りのネタも定評があるが、こういった寄席で鍛えた噺も見事で、今まで私が聴いた高座でハズレたことは皆無。流石だ。

 いったん、扇遊が告知したように、緞帳が下りる。
 ここで、席を立った人がいて、この人が、喜多八の高座が始まってから、戻ってきた。そして、無駄な拍手をする、困った人でもあった。こういう人がいると、実に迷惑。

柳家喜多八『やかんなめ』 (25分)
 久しぶりに聞く出囃子「梅の栄」とともに緞帳が上がり、高座に喜多八の姿。
 痩せた・・・・・・。
 まくらで、栄養失調で1月4日まで入院していた、と語る。入院前は40キロそこそこで、それより3キロ体重は戻ったと言っていたが、頬はこけている。髪も、以前は染めていたのかもしれないが、白っぽい。
 しかし、声は、いつもの喜多八なのだ。あるいは、かつて聴いた中でも、大きいくらい。
 以前演じたネタを調べていたら、「これ、やってなかったんだ」と選んだネタは、十八番の一つ。
 侍がお供の可内(べくない)に向かって何度か「笑うな!」と叫ぶ場面で、会場も大いに沸いた。
 本編にかかるマクラで「一病息災」の言葉があったが、それは自分自身に言い聞かせていたのかと思わないでもない。
 上方では『癪の合い薬(あいぐすり)』の題。
 高座は、何ら健康時とは変わらない、いや、それ以上かもしれない。
 しかし、まだ体重は戻っていないし、歩けない状態は、健康とは言えない。
 喜多八にとっての「合い薬」が見つかり、無事快癒することを祈るばかりだ。

マジックジェミー 奇術 (18分)
 実は初。芸協の寄席には何度も行っているが、これまで縁がなかった。
 ホームページを拝見すると、イリュージョンなどいろいろなネタがあるようなのだが、この日は、紐が中心。お客さんを参加させての楽しいマジックで、高座に色気を添えてくれた。

瀧川鯉昇『宿屋の富』 (37分 *~21:20) 
 トリはこの人。
 調べてみると、2009年1月の会でも聴いている。2009年1月6日のブログ

 喜多八と違って、この人は過去の演目とかぶることを、気にしていないようだ。
 高座でのいつもの無言の時間に、あの困ったお客さんが拍手したため、鯉昇は、すぐに話し始めた。
 少年時代、東京オリンピックの時の浜松での思い出というネタ(?)など約10分ほどのマクラから本編へ。
 冒頭、一文無しが金持ちだと宿の主人を騙る大嘘(奉公人8000人、女中2800人、庭に富士山も琵琶湖もある)のスケールの大きさも楽しいが、見せ場は、この人ならではの「音なしの芸」。
 文無しが一番富を確認する場面の、「子の千三百六十五番・・・・・・」を呟くシーンの繰り返しは、何度聴いても楽しい。また、二番富が当たると神様が約束したという男が、当たった場合の夫婦の食卓に並ぶ“五百両の膳”の料理を、「うなぎがあって、刺身があって・・・・・・」と繰り返す場面。次第に言葉を飲み込んで、仕草と表情の変化だけで沸かせる芸は、鯉昇落語の真骨頂だ。


 帰り際、会場で偶然遭遇した落語ブログ仲間のKさんと、少し立ち話。近いうちの再会を約して、外の喫煙場所で一服し携帯をオンにすると、居残り会仲間のI女史から、末広亭の小三治のネタのご報告が入っていた。いらっしゃると知っていたので、お願いしていたのだ。
 師匠は弟子の喜多八の病状の実態をどれ位ご存じなのだろうか・・・・・・。
 居残り会仲間からのメールは他にも入っており、三代目のことだった。
 皆さん、私なんかより三代目の高座を聴いていたし、ずっと深く愛していらっしゃったことが伝わる。
 
 今年の初落語、三代目の訃報に接したことと、喜多八の久しぶりの高座への複雑な思いが交錯する日として、今後も思い出すことになりそうだ。

by kogotokoubei | 2016-01-15 12:55 | 寄席・落語会 | Comments(9)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛