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噺の話

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2015年 10月 27日 ( 1 )

 昨年師走の第57回以来、久々の、人形町らくだ亭。

 前回は桂九雀の『土橋萬歳』に感心した。
 2014年12月26日のブログ

 小学館主催で、かつては専用サイトを開設していたが、現在では「サライ」のwebサイトで案内をしている。
 ちなみに、今回の案内は次のページ。
「サライ」サイトの該当ページ
 以前の専用サイトがなかなか更新されず、拙ブログでな何度か小言を書いたが、「サライ」での案内は、そこそこのタイミングで更新されているようだ。(当たり前だが)
 しかし、誤字が長らく放置されていたり、まだ問題はある。

 会場の入りは八割ほどだったように思う。サイトの宣伝効果だろうか、以前よりは増えている。
 次のような構成だった。
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(開口一番 春風亭朝太郎『子ほめ』)
隅田川馬石 『粗忽の使者』
露の新治  『中村仲蔵』
(仲入り)
五街道雲助 『持参金』
春風亭一朝 『死神』
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春風亭朝太郎『子ほめ』 (9分 *18:51~)
 初、である。落語協会ホームページによると、「2013(平成25)年4月春風亭一朝に入門 、2014(平成26)年8月前座」、とある。以前、白酒がまくらで、入門者が多くすぐには前座になれず、“待機児童”が多い、と言っていたが、その一人だったのだろう。あるいは他の事情か・・・それは分からない。
 23日に池袋で聴いた林家たま平とほぼ同じキャリアでネタも同じ。持ち時間が違うので比較はしないが、悪くはない。
 往来で年齢による世辞を失敗する場面を省いて赤ん坊を褒めようとする場面のみを演じたが、結構ご通家が多いと見受ける客席から笑いをとっていた。師匠もいいし、見習うべき先輩もいる。ぜひ精進していただこう。

隅田川馬石『粗忽の使者』 (23分)
 まくらが、ややシュールというか、不思議だった。「素麺は油断ならない」とふって、賞味期限がまだ二年と思って置いていたが、いざ食べようとしたら五年前に期限が切れていた・・・というもの。実体験なのかなぁ。そこから、「そそっかしい人はいるもので」と本編につなぐところで「うまく(噺に)もってきましたよ」と言って会場からは笑いがあったが、私には唐突に思えたなぁ。
 地武太治部右衛門が口上を忘れて、田中三太夫に尻をつねってもらう場面を、大工の留っこが隣の部屋から盗み見た、という設定で語らせたが、この演出の必然性があったのだろうか。
 もちろん、相棒の大工に話をふくらませて聞かせる場面は可笑しいのだが、実際に田中三太夫と治部右衛門とのやりとりとして演じてみせて、それを近くで普請をしていた留っこが耳にした、という設定でも不思議はないように思う。留っこは活躍場面が多かったが、田中三太夫の存在がかすんだ、という印象。
 もちろん、この人なので、しっかり会場から笑いをとり、全体の流れもよどみないものだったが、どこか一つにひっかかると、その疑問が頭から離れず噺を楽しめないもので、私はあまり笑えなかった。

露の新治『中村仲蔵』 (33分)
 結論から書くが、圧巻だった。
 土台になっているのは、正蔵版だろう。と言うか、東京から上方にこの噺を移した師匠露の五郎兵衛が、正蔵版を元にしていた、ということだろうか。
 たとえば、円生では、名題の仲蔵に五段目山崎街道の斧定九郎一役しかもらえなかったことを、喧嘩をした立作者の金井三笑のいじわる、と設定している。これは、三代目仲蔵の自叙伝『手前味噌』にある話なので、実話に近いようだが、新治は正蔵と同様、金井三笑の名を出さず、周囲で名題に出世した仲蔵へのやっかみが強く、そういった幕内の連中の仕業、と仲蔵に言わせている。周囲のやっかみが強かったのも事実。
 女房のお岸の描き方が見事なのだが、それも、正蔵の型に近いだろう。もちろん、サゲの煙草入れも、正蔵と一緒。
 新治は、歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』をよく知らない客を想定して、適度に補足説明を入れた。名題になるには、大部屋(稲荷町)-中通り-相中上分-相中-名題下があることや、五段目のみならず、判官切腹の四段目を、上方では「通さん場」(東京では、出物止め)と言うことや、五段目から六段目の主要なあらすじも説明。
 このへんは、あまり丁寧すぎても、くどさが逆効果になる場合もあるが、そのへんは流石の按配。
 蕎麦屋での三村新次郎との出会いの場面。仲蔵が三村に手ぬぐいを渡すという演出は初めて見たが、不自然さはない。そこで、二人の話も進もうというものだ。
 仲蔵は自分の工夫がまったく受けなかったと勘違いして、いったんは上方へ行こうとしたが、芝居を見終えた客が仲蔵の定九郎を褒め上げるのを耳にする。正蔵は魚河岸の若い衆としていたが、新治は、つい中村座の近くまで行ってしまい、小屋から出た客の言葉、としていた。これは、どちらでも良いだろう。「一人でも褒めてくれる人がいた」の言葉が大事。

 女房のお岸が際立つ高座だった。新治の女性の描き方には、感心する。
 仲蔵が、斧定九郎一役と知ってふてくされて、上方に行こうか、とぼやく場面。お岸は「やるだけやってみなはれ。役者の意地は舞台で通すもの」と言う。仲蔵は、この女房の言葉で、思い直す。ここで、「夢でもいいから持ちたいものは 金の成る木と いい女房」の都々逸を挟むが、これまた正蔵の型に同じだ。
 そして、お岸の造形とは対照的に、師匠である伝九郎を描く際の声の太い調子を含む貫禄ある姿も、実に良かった。
 仲蔵とお岸が上方言葉を使うのは、私には気にならなかった。
 つけ打ち、三味線のはめものも、少ないながら効果的だった。
 新治が、非常に印象的な言葉「夢に向かって、仲蔵が走り出す」と形容した仲蔵版斧定九郎の舞台。
 山賊姿から一新された白塗りの顔、のびた月代、黒羽二重の単衣に白献上の帯、朱鞘の大小を落とし差しして、腕をまくって尻からげ、白塗りの足。イノシシを狙った勘平が撃った鉄砲の弾が間違って定九郎に当たり、口から紅でつくった赤い血が真っ白な足に流れ出る・・・しっかりと山崎街道の斧定九郎の姿が見えた高座、迷いなく今年のマイベスト十席候補としたい。

五街道雲助『持参金』 (17分)
 ネタ出しされていなかったので、何を演ってくれるのか楽しみにしていたのだが、この噺。
 仲入りの新治、主任の一朝がともに大ネタなので、考えた末の軽い滑稽噺、ということか。このへんの気配りが、やはり雲助だなぁ、と思う。
 元は埋もれかかっていた上方落語を米朝が継承し、東京には談志が移したとも言われている。配役やサゲは噺家さんによって、いろいろだ。
 雲助は、伊勢屋の番頭が男に貸した十万円を返して欲しいと請求する役、伊勢屋のご隠居が、男に持参金十万円付きの伊勢屋の女中おなべを結婚相手として紹介する役としていた。なるほど、こういう設定もありだね、と思う。
 「つりあいの取れた顔」のおなべの形容に大笑い。
 雲助というと、どうしても芝居噺や円朝ものなどのイメージが強いようだが、実は『ざるや』を筆頭に、寄席で鍛えた短い滑稽話にも得難い味があることを、あらためて認識した高座。

春風亭一朝『死神』 (33分 *~21:03)
 この人のこの噺は、昨年6月の三田落語会以来。
2014年6月29日のブログ
 
 全体として、昨年聴いた時よりは、ずいぶんと良かったと思う。
 回向院の貧乏神のご開帳という短いまくらから本編へ。
 一朝のこの噺の良さは、ご本人の柄もあるが、暗い噺にはしないところだろう。
 途中で、彦六の声色なども入るのが楽しいし、ちょっとしたくすぐりも個性的だ。

 男が死神から医者になる儲け話を聞いて、かまぼこ板に「いしや」とかな釘流で書いてすぐにやって来た男が、「先生は?」と聞かれ、「先生は・・・あっし!」と答え、男が「あっし!?」と応じる場面なども、実に可笑しい。
 その男に連れられて行った患者の家で、男がこれまでもいろんな名医と言われる人に診てもらったがダメだっと、と語り、その例として“高島平終点先生”の見立ては“先がない”、というのは他の噺家さんも使うように思うが、“寄席の昼夜先生”の、“夜までもつかどうか”というくすぐりは、他の人では聴いたことがないと思う。これ、落語愛好家としては、実に可笑しい。
 サゲ前の場面で、男が死神に命乞いをするが、死神が「ダメ!」と断った後で、彦六の声色が登場し、爆笑。
 サゲは・・・・・・内緒にしておこう。
 楽しい高座だったが、やはり、一朝の噺は、江戸っ子の啖呵が聴きたくなるのだなぁ、私は。


 終演後は、新治の仲蔵をようやく聴くことができたことをに感謝しながら、地下鉄の駅へ向かった。
 もちろん、他の高座も悪くはなかったが、この日は仲蔵、そして女房のお岸が主役だった。

 会場ロビーでは、人形町末広で収録された「圓生独演会」のCD16枚セット(27,000円)を販売していた。
 また、次回の前売りを販売していたが、顔ぶれや日程から躊躇し、買わなかった。
 ちなみにプログラムに書かれた情報によると、次回は12月22日(火)の開催で、主任は龍玉の『鰍沢』、他にさん喬『按摩の炬燵』、ネタ出しはされていないが、志ん輔、立川こはるも出演。

 せっかく「サライ」のサイトのことを少し褒めたのだが、まだ次回の案内はサイトに掲載されていない。このへんが、小学館のやる気を疑う点なのだよなあ。
 「サライ」の「らくだ亭」のページ

 私の席の近くには、その会話から小学館の社員と思しき人が複数いらっしゃった。動員されたのかどうかは知らないが、客の視点で、ぜひサイトの誤字があることや、更新をすぐするよう、社内で助言して欲しいものだ。

 また、この会の記事では、小言めいたことを書くはめになってしまった(^^)

by kogotokoubei | 2015-10-27 12:54 | 寄席・落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛