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噺の話

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2015年 10月 06日 ( 1 )

 暑さ寒さも彼岸まで、の彼岸が過ぎ、もうじき旧暦9月、長月になる。

 長月の名の由来は諸説あるが、次第に夜が長くなるから、というのが本命(?)だろう。

 来週13日が旧暦の9月1日、再来週21日が重陽の節句の9月9日。

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荒井修著『江戸・東京 下町の歳時記』(集英社新書)

 以前にも紹介したことがあるが、『江戸・東京 下町の歳時記』は、浅草の老舗舞扇店である荒井文扇堂の四代目社長、荒井修さんの本。

 なぜ「重陽」の節句なのか・・・・・・。

 本書から重陽の節句に関する部分を引用したい。
■重陽の節句

 九月九日は「重陽の節句」です。陰と陽があるでしょう、陰は偶数、陽は奇数という考え方があって、この日は「九」という陽の数字が、それもいちばん大きい奇数が重なっている。それで「重陽」。なにかの祝いのときに、一万、三万、五万というような奇数のお金を入れるでしょう。これは陽の数字だからなんだね。だから、お金を渡すときに、ピン札の角をちょっと折って袋の中に入れるっていうのも、紙片の角を四つより五つにしたいがためなんですね。
 陰と陽の数字、知っているようで知らないことでしょう。
 勉強になるねぇ。
 引用を続ける。
 重陽の節句では、菊の節句ともいわれるので菊を手向けたり、菊切り蕎麦なんていうお蕎麦を食べたりもする。菊切りは普通に食べるもんじゃなくて、おやじなんかがわざわざ連れていってくれた。「どこどこで菊切りが始まったから、食いにいこう」なんて言ってね。あたしは、菊切りより、香りの立つ柚子切りのほうが好きなんだけど、季節のもんだからよく食べたりしましたよ。
 浅草寺では「菊供養」というのがあります。十月の十八日に行われているけど、この日は旧暦でいえば九月九日。みんなで菊を供えに行くんですよ。で、外供養といってすでに献菊されたものと交換してくる。
 でも、菊はまだつぼみだよ。つぼみの菊に半紙をぐるぐる巻いて、寺に持っていくの。あたしたちもよく行かされました。
 ついでにいうと、これも十月に入ってからだけど、昔は東京中の大きな神社仏閣では、「菊人形」というのをやってたね。あたちたちもよく見に連れていてもらったりしました。菊人形が芝居の出し物にちなんだものになっていたりすることが多くて、それがなんの芝居なのか、子供が当てられるかどうか試されるわけ。簡単な「助六」なんかはいいんだけど、ちょいと地味なのになると「なんだろう」なんてね。それを当てたりするのがうれしいかったね。

 私は、夏目漱石の『三四郎』に団子坂の菊人形のことが書かれていて、その当時の秋の風物詩のことを初めて知ったものだ。
 今では、菊人形を見ることのできる場所も、限られているように思う。


 さて、この季節、衣替えをすべきかどうか迷う人も多いと思うが、昔の人はどうしていたのか。
 今日では、6月1日、10月1日が、衣更えの目安となっているようだが、かつては、旧暦の特定の日を境に衣更えをしていた。


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松村賢治著『旧暦と暮らす-スローライフの知恵ごよみ-』(文春文庫)

 こちらも以前紹介したことがある本。
 著者は、社団法人大阪南太平洋協会の理事長で、同協会では「旧暦カレンダー」を発行している。
(社)大阪南太平洋協会のサイト

 本書から、ご紹介。
衣更え 

 平安時代の衣替えは、四月一日と十月一日だったそうです。もちろん旧暦の日付です。
 しかし、室町時代になると、武家の生活習慣が規範となって、四月一日に綿入れを袷(あわせ)に替え、さらに五月五日、端午の節供には帷子(かたびら)に替えました。すなわち、裏地を付けない単衣(ひとえ)の着物にしたのです。そして、九月一日には再び袷となり、更に九月九日の重陽の節供から、綿入れを着たそうです。
 これは、あくまで武家など上流社会の習慣で、江戸時代の商家などではこれを見習い、四月一日に綿入れから袷に、そして足袋をやめます。さらに、五月五日には単衣に「衣更え」です。九月一日にはまた袷に変え、足袋を履いて綿入れと、かなり規則正しく、四季の変化に衣装を合わせて、寒暖に対応していたようです。

 なるほど、旧暦の節句(節供)が、一つの季節の替わり目であり、衣更えの目安だったわけだ。
 単衣とか袷なんて言葉、今の若い人は読めるかなぁ。


 旧暦オタクなどと言われそうだが、やはり、自然と密着しているのは、新暦(グレゴリオ暦)ではなく、太陰太陽暦の旧暦だと思う。
 
 天気予報を参考に翌日着るものを選択するのを現代の知恵とするなら、旧暦を踏まえた季節の替り目に、「そうか、長月か」、「重陽の節供だね」などという会話とともに衣更えのことを話題にすることは、古からの知恵、ではなかろうか。
 

by kogotokoubei | 2015-10-06 21:42 | 旧暦 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛