噺の話

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2015年 05月 06日 ( 1 )

 新宿末広亭で始まった、落語芸術協会の三人の真打昇進披露興行の五日目に行くことができた。
 この興行が良いのは、披露口上も三人一緒だし、主任のみならず、全員の高座を楽しむことができること。
 この日は、初めて聴くことになる、三笑亭朝夢あらため小夢が主任。
 
 午後4時40分頃に行くと、昼の部の膝前で歌春が『たらちね』の途中。
 連休なので混んでいることは予想したが、二階も一杯で一階桟敷の外に二重の人だかりとは思わなかった。
 昼の部が跳ねるまでは、下手桟敷前方の外側で聴いていた。高座は目の前だ。

 歌春が下がって、膝替わりには初めて聴く、音曲の松乃家扇鶴 が上がった。
 なんとも、ゆる~い感じの人。歴代の横綱の言い立ても含め、10分で下がったが、ここで緞帳がいったん下りた。この日まで主任の歌丸に、何かあったか・・・・・・。
 そして、緞帳が上がった高座に歌丸の姿。
 二週間インフルエンザで入院したため、足腰が弱っていて、「楽屋から高座に自分で歩くと30分かかる」と笑わせながらの種明かし。緞帳が下がった時は「(釈)台つきか?」と思ったが、台はなくても座ることはできるようだ。
 マクラで笑点五十年などの話題をふってから、ネタは、『城木屋』。この噺の作者は確定できにくいと思うのだが、歌丸は初代三笑亭可楽が、「東海道五十三次」、「伊勢の壺屋の煙草入れ」そして「江戸一番の評判の美人」というお客さんからの題を元に作った三題噺と説明して演じた。
 志ん生のような艶笑ネタにしなかったが、なかなか楽しい高座。五十三次の言い立てを聴いていると、高座そのものにはインフルエンザの悪影響はなかったように思える。マクラを除くと、20分未満で演じたことになる。この方をお目当てのお客さんは、喜んで帰られたことだろう。

 昼の部がお開きとなって、お客さんの大部分が帰られ、空いた下手桟敷の好きな場所を確保し、一服。
 
 夜の部の出演順に感想などを短く記したい。印象の良かったものにをつける。

柳家蝠よし『金明竹』 (9分 *16:46~)
 開口一番のこの人は、初である。不思議な上方言葉を使う男が、加賀屋佐吉の使いではなく、仲買の弥市の使いのように女房が説明していたのは修正の要ありだ。言い立て全体もややぎこちなく、ぜひ稽古に努めてもらいたい。

柳亭小痴楽『真田小僧』 (6分)
 楽しみだった人だが、非常に良かった。
 父親が金坊に向って「お前は親を屁とも思わない」に金坊が「これからは屁と思う」などというやりとりも可笑しく聴かせる。父親の留守に母親を男が訪ねてきたのに、小遣いをもらった金坊が外に遊びに行った、と聞いた父が「お前は何のために生まれて来たんだ」という一言も、笑わせていた。
 たった6分の高座でも、リズムの良さ、メリハリ、そして効果的な科白などが光る。やはり、この人はただ者ではない。

Wモアモア 漫才 (5分)
 芸術協会の色物は多彩だが、中堅の漫才ではこの人たちの存在が大きいと思う。同じネタでも何度も笑ってしまう。

三笑亭可龍『大安売り』&踊り「せつほんかいな」(17分)
 久しぶりだ。噺の中で馴染みの相撲取りが十日間興行の五日目に寝坊で不戦敗したと言うと、「最近は小痴楽でさえ寝坊しない」とか、夢丸が新発田から出てきて30キロ太ったとか、千秋楽の相手が肥った大小柳というシコ名であるなどと後輩たちのことを楽しく挟みながらの、余裕の高座、という印象。結構、彼らへのライバル意識もありそうだ^^
 まさか一席の後に踊るとは思わなかったが、こういうところも、この人の味になってくるだろう。ネタも踊りも、実に結構。

春風亭柳之助『子ほめ』 (14分)
 この人は最初に同じ末広亭で聴いた時も、こんな上手い人がいたのかと思ったが、今回も実に良かった。以前よりも、貫録がついてきた、という印象。あえて難点を言うなら、二枚目すぎることかもしれない^^

北見マキ 奇術 (12分)
 久しぶり。指をコヨリで縛ってのネタが見事。以前より、親しみやすくなったような気がするのは、年齢のせいかな。

春風亭柳好『のっぺらぼう』 (12分)
 この人のこの噺は以前も聴いているが、寄席らしい楽しい噺で好きだなぁ。マクラの「恐怖の味噌汁」などの小ネタも可笑しい。

三笑亭夢太朗『転宅』 (17分)
 通常の筋書きと、結構違う内容で演じていた。
 昔泥棒だったお妾さんの師匠は高橋お伝ではなく、蝮のお政。翌日、家に入っていいかどうかの合図は三味線ではなく外に置いたバケツ、など。師匠夢楽の型なのかどうか勉強不足で分からないが、馴染みがないことと、やや説明口調っぽい高座に感じ、残念ながら、あまり楽しめなかった。別のネタであらためてこの人の高座を聴きたい。
 
東京ボーイズ 漫謡 (10分)
 プログラムに、「漫謡」とあったが、漫談歌謡は、漫謡と言うのか^^
 いつものように、なぞかけ問答が楽しい。
 「テニスの錦織」のお題で「子連れ狼の大五郎」と解いて、「いつもチャンがついている」、なんて新旧を見事に融合させた傑作ではなかろうか。会場を十分に温めてくれた。今や数少ないボーイズとして、少しでも長くご活躍を願いたいお二人。

三笑亭可楽 漫談 (13分)
 介添えありでの登場。歌丸と同じ昭和11年生まれなので、今年79歳になる。
 この日に因んだ五月人形や雛人形の薀蓄を聴かせてくれた。下がる時は楽屋で心配する目が並んでいたが、一人で楽屋へ。この日、この人は後の口上で大活躍だった。

三遊亭小遊三『田楽喰い(ん廻し)』 (11分)
 『寄合酒』かと思ったら、後半のこちらだった。打ち上げ疲れ(?)なのか、やや元気のないご様子。お客さんは、テレビの人が出ているだけでも嬉しいという方は多いだろうが、仲入りとしては、少し残念な高座。

 仲入りで、コンビニで買ったおにぎりを食べて、一服。
 
 緞帳が下がっているが中からごそごそと音がする。さぁ、口上だ。

真打昇進披露口上 (14分)
 緞帳が上がった。下手から司会役の夢花、夢太朗、夢吉あらため二代目夢丸、朝夢あらため小夢、笑松あらため小柳、小柳枝、可楽、小遊三の八名が並ぶ。これだけ並べるんだ、とちょっと驚く。
 夢太朗が、同じ三笑亭一門の二人について、小柳が体は鉛筆のように細いが芯はしっかりしている、夢丸は少々のことでは動じない、など結構真面目に(?)紹介。師匠が亡くなったことなど、湿っぽいことが一切なかったのは良かったと思う。もう、次の段階に彼らは向かっているということだろう。
 次に可楽。自分が昭和30年に入門した時は、三笑亭は可楽と夢楽の二人だけだったが、今では真打だけで10人、とのこと。ここから「名前なんてものは、どうでもいいんです。売れれば。この人のように」と隣の小遊三を指さす。このへんから笑い出して「もうじき歌丸がいなくなったら、その後釜になって売れればいい」と、新真打に向って励まし、その笑いが止まらなくなり、会場も爆笑の渦。
 この後の小柳枝が、最初は、実にやりにくそうだった^^
 小柳は五人目の一番下の弟子で、これで春風亭の真打は22名になるらしい。小柳という名は過去に四名いて、真打として名乗るのは初とのこと。
 この口上、とにかく可楽の独壇場、という感じで、笑った。計算づくで面白いことを言ったのではなく、高座も含め、やや渋面が普通の可楽が真っ赤になって笑っていたのが、忘れられない。

春風亭小柳『つる』 (14分)
 口上の後、最初に登場したのが新真打のこの人。昨年7月に、同じ末広亭でもこの噺を聴いている。
2014年7月25日のブログ
 昨年の記事を読むと、それほど悪くなかったようだが、今回は緊張もあるかもしれない。次が夢丸ということもあろう、力みもあったように思う。
 米朝の本で四代目米團治のこの噺に関する「短い中に話術のほとんどのテクニックがそろっている」、という指摘を引用した。米團治は、そのテクニックとして、「説いて聞かせる」「軽く流す」「かぶせる」「はずす」「戸惑う」「運ぶ」「強く押し出す」「気を変える」などを挙げて米朝に伝えたようだが、小柳の高座では、「はずす」「戸惑う」あたりの要素に物足りなさがあったように思う。まだまだこれからだ。明るい持ち味を生かして、今後も精進してもらおう。
 この日の後ろ幕、開演時の最初はこの人のもので、日本大学文理学部落語研究会OB会からだった。

三笑亭夢丸『宗論』 (15分)
 元気に楽屋から高座へ。いろんな宗教があるが信じるのは自由なので、とふって本編へ入った。
 God Of The Sky、などの英語も交え、楽しい高座だったが、マクラは少し緊張もあったかもしれない。この人の持ち味であるスピード感は、リズムが悪いと、やや聴き心地が良くない場合がある。マクラでは、そんな印象もあった。なかなか難しいのかもしれないが、マクラはもう少しゆったりと落ち着いて話す方が良いように思う。
 本編ではそのスピード感が効果を発揮するのだが、マクラはアイドリングでいいだろう、そんなことを思いながら聴いていた。会場では、若いお客さん中心に、笑いが渦巻いていたので、決して悪い高座ではないし、クスグリも効果的だった。ぜひ、二代目として師匠の名を一層大きくしてもらいたい。
 口上の際の後ろ幕は、出身地の新発田(しばた)から贈られたものだった。越後出身者同士として、扇辰との二人会などを開いてくれるなら、ぜひ行きたいものだ。

三笑亭夢花『二人旅』 (8分)
 夢丸の総領弟子。この人の個性的な顔を見ると、二年前の3月、池袋でこの人が『長屋の花見』で下がった後に、師匠の夢丸が上がって『短命』をかけた時のことを思い出す。
2013年3月3日のブログ
 夢丸が主任の寄席で、スケ(助演)で高座に上がりたい、という思いも、弟子二人の真打昇進披露にも出ることは叶わなかったが、きっと天国で見つめていることだろう。
 そんな湿っぽいことを少し思い出していたのだが、高座には笑いすぎて涙が出てきた。
 とにかく、お茶屋の婆さんが、凄すぎる。狂気を帯びた、と評しても良い壊れ方での話しぶりに、会場全体が爆笑の渦。知らなかったが、この人には、こういう‘キラー・コンテンツ’があったのか^^

春風亭小柳枝『やかん』 (10分)
 口上に続き、やりにくい巡り合わせでの登場。「やりにくいですねぇ」と本音が最初に出た。
 とは言っても流石なもので、寄席ならではの噺を楽しく聴かせてくれた。魚の名前の由来の部分をあっさりと縮め、川中島の言い立てはフルバージョンでこの時間にまとめるあたりが、名人上手の技。また今回も『青菜』には出会えなかったが、この高座でも十分満足である。

ボンボンブラザース 曲芸 (12分)
 紙の芸で、私のいる下手桟敷まで入ってくる大サービス。この後の主任小夢が下がる時、私服で暖かい表情で楽屋で待つ姿も拝見できた。下手の桟敷が好きなのは、こういうことがあるからなのである。

三笑亭小夢『お見立て』 (26分 *~21:00)
 後ろ幕は、横須賀など複数の立教大学の会から贈られたもの。
 なるほど、高座であらためて見ると、体は細いなぁ。「一所懸命」の言葉を五回は言っていたかと思う。真面目そうな人。口調は好きだ。聴きやすいし、色気も感じる。ただし、この日のクスグリは、あまり似合わないような気がしたし、せっかくの噺の流れを途切らせるようで、勿体ないように思った。墓をつくったのはメモリアルアート大野屋、というのは必要ないだろう。また、最後の墓参り場面で、喜助がオカマっ気のある生け花の師匠を真似るのも、余計なものに感じた。
 土台は出来ているようだし、噺の筋で聴かせるだけの力量はあるはず。もちろん、緊張もあったろうとは思う。
 本格派を狙って欲しいし、それが出来る人ではないだろうか。夢丸をライバルとして、今後も精進をして欲しい。しばらくしてから、ぜひ聴いてみたいと思う。


 真打昇進の三名のみならず、歌丸、可楽から小痴楽まで、芸術協会のさまざまな噺家さん、芸人さんを楽しんだ満足感で帰路についた。

 十人の真打の披露興行真っ最中で、いまだにホ-ムページが工事中の落語協会の寄席には、ホームページがリニューアルされるまでは行かないことにした。

 対照的に、芸術協会では、当たり前ではあるが、しっかりと今後の披露興行の案内を出している。いつ誰が主任かも記されている。
落語芸術協会ホームページの真打昇進披露興行の案内

 芸術協会のホームページの最近の充実ぶりは、寄席の充実ぶりにつながっているような気がした。
 この二つの協会を比べると、お客さんを大事にしようという、その了見が大きく違っているのではなかろうか。

 小夢が引き上げた楽屋から、大きな声や笑い声が聞こえてきたが、楽屋の結束も良さそうだ。あの三人の成長を厳しく、そして暖かく見守る先輩たちの姿が想像できる。
 連休だから、という理由だけで、夜の部も二階までお客さんが入ったわけではないように思う。そんな思いで家路を急いだ。



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by kogotokoubei | 2015-05-06 15:39 | 寄席・落語会 | Comments(12)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛