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噺の話

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2014年 10月 11日 ( 1 )

なんとか時間ができたので、オフィスエムズさんに電話したらチケットは残っているとのこと。それで、久し振りの大手町へ。


 去年はこの会に行っていない。一昨年の権太楼の『らくだ』(通し)が絶品だった第13回以来になる。
2012年6月23日のブログ
 ちなみに、この会は第1回にも行っている。ちょっと、自慢^^2010年2月27日のブログ
 ブログを読み返すと、第一回目の会では、結構この会に期待していたことが分かる。しかし、その後頻繁に行く会にはなっていない。その理由などは、後でまた書きたいと思う。

 昨年発行された『席亭志願』という本を読んでからは、この会は初になる。同書は、オフィスエムズの加藤さんのことを中心に書かれた本なのだが、拙ブログで取り上げたことは、ない。なぜかと言うと、あまりにも文章がお粗末で、せっかくの企画が台無しなのだ・・・・・・。

 しかし、加藤さんによる、手作り感たっぷりの落語会開催の意気込み、奮闘は応援したいと思っている。

 たしかに、週末に大手町の立派なホールで開催するというユニークな会であり、サンケイリビングという主催者はいるが、エムズの加藤さんが、この会には不可欠な企画なのだと思う。

 12時過ぎに地下鉄大手町駅に着き、ビル地下のレストラン街を覗く。今ひとつピンとこないので、おにぎり屋さんで昼食。1,000円以上のメニューが並ぶ他の店に比べ、おにぎり二個と味噌汁で500円。
 腹ごしらえをして12時40分頃に日経ホールに上がると、当日券を販売していた。ちょうど準備が始まったばかりで、加藤さんから、チケットを買わせてもらった。結構いい席が空いていた。
 
 本を読みながら時間を潰して13:00に開場。ロビーの売店でコーヒーを奢った。

 開場に入り13:30開演。入りは最終的には七割くらいになったか、もうちょっと少なかったかなぁ。
 
 次のような構成だった。
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三遊亭天どん 『初天神』
三遊亭兼好  『粗忽長屋』
五街道雲助  『品川心中』
(仲入り)
柳亭市馬   『締め込み』
柳家権太楼  『鰻の幇間』
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三遊亭天どん『初天神』 (20分 *13:30~)
 赤い毛氈に赤い着物は、偶然ではなく仕込みだろう。この日から始まる鈴本の夜の部の主任であることを宣伝。ほう、小三治の後・・・か。鈴本も、なかなか遊び心があるなぁ。もちろん、天どんには、それだけの実力があると思う。
 鈴本の前売りもロビーで売るなどのマクラの後、古典の改作。同様の演目として、以前に『たらちね』を聴いたことがある。あのネタの方が出来は良いと思う。
 長屋を一歩出ただけなのに、近くにアメ屋ができ、同じ男が“カラーひよこ屋”、そして凧屋を出している、という設定。
 アメと同じようにカラーひよこを金坊が腹に飲み込んでしまうのが、最後の凧のサゲにつながる。途中でガーコンも登場する楽しい高座で会場を沸かしてはいた。前座の開口一番のいない構成においては、役目は果たしたようだ。

三遊亭兼好『粗忽長屋』 (24分)
 髪型が少し以前より変わったので、印象も変わった印象。天どんは鈴本とイスラム国で忙しい、といじると、下手から本人が抗議の登場。仕込みかアドリブかは分からなかったが、こういう会では不要な演出。
 村の文化祭に呼ばれた、というマクラから十八番の『権助芝居』かと思った。しかし、師匠好楽が地方の独演会に行き、その会場で並んでいる客に、あなたも並びなさい、と言われたというネタから、「人に忘れられるのならまだよくて、自分で自分を忘れるようになると危ない」と、このネタへ。
 この人ならではのリズムの良さで聴かせてくれた。熊が行き倒れを見て、「あぁ、俺と同じ煙草入れ!」と、証拠(?)物件を挟むアイデアは、なかなかおもしろい。
 しかし、「行き倒れ」は「いきだおれ」ではなく、「ゆきだおれ」と言って欲しいなぁ。「生き倒れじゃなく、死に倒れじゃねぇか」というクスグリには楽かもしれないが、そういうもんじゃなかろう。

五街道雲助『品川心中』 (30分)
 廓に関する短いマクラから本編へ。おそめが玉帳(顧客名簿)から心中の相手を探す場面は、噺家さんによって独自のクスグリを入れやすい場面だが、「あぁ、この人は年寄りの禿げ茶瓶で、ほっといてももうじき死ぬしねぇ」というのは、よく考えると対象者として相応しいとも言えそうなのだが、そんな相手と心中しては恰好が悪い、ということか。心中相手にしても、見栄を張るのが、かつては板頭だったおそめのプライドなのだろうなぁ、と後になって合点した。
 あっさり挟んだが、結構艶っぽいクスグリは、先に海に飛び込んだ(飛び込ませた)金蔵にかける言葉の中の、「いつだって早いんだから、お前さんは」の一言。男性客としては、結構ぐさりとくるよ、これは^^
 海から上がった金蔵の様子を、「お台場の石垣」と表わすのが可笑しい。
 もちろん、通しではなく与太郎でサゲたが、流石の高座だった。
 
柳亭市馬『締め込み』 (25分)
 仲入り後は、落語協会の会長さんだ。白浪五人男や楼門五三桐など、歌舞伎の世界の泥棒のネタから本編へ。
 正直なところ、マクラで首振りが多いのが気になることもあり、好みの噺家さんとは言えなかったが、この高座は非常に結構だった。
 女房のお福の造型が、なかなか良いと思った。結構シリアスになり過ぎると言えるかもしれないが、「あたしはこの家に死にに来たんだよ」の科白が二度ほどある。夫に「出てけ」と言われても、そのまま出て行くような女じゃない、という鉄火な性格に描くことで、この夫婦喧嘩に迫力が出たように思う。
 だから、泥棒が登場してからの場面転換との落差がはっきり出て、楽しめる噺になったようだ。
 「なんだよ、出てけ、出てけって、寄席で打つ太鼓じゃないよ」の啖呵なども結構。さすが、会長さんだ。

柳家権太楼『鰻の幇間』 (37分 *~16:04)
 マクラが頗る楽しかった。夏場に浅草の楽屋で、一朝、扇遊、南喬と茶飲み話をしていて、「どうして、ほうずき市なのかねぇ」という話題になったらしい。「あれは、薬なんだよ」などと話していたら、前座がスマホで調べて、「えぇ、ほおずき市は」と言おうとした。馬鹿なことをするな、正解を知りたいんじゃないんだよ、と振り返る。
 「ほおずき市に行こうなんて思ってないんだから。話を楽しんでんだから」で、会場は爆笑の渦。「正解を知ったら話が終るでしょ!」の言葉には、結構深いものがあるなぁ。
 弟子のさん光が、新幹線で地方へ行くにあたって権太楼が「どうやって行こうかなぁ」と呟いた途端にスマホ調べて、「えぇ、xx駅からxx線に乗って、x番目の車両に乗ってxx駅からxx時のxx線に乗り換えて東京駅にxx時に着いて、xx時の新幹線に乗れます」、とやったらしい。「馬鹿!」「福岡なんぞから出てきやがって」「東京のことをお前なんかに聞きたくない。こっちは西日暮里ができる前から住んでんだ」で、再び爆笑。
 スマホでカチャカチャが大嫌いなようで、同感だ。私もいまだにガレケーである。会場のお客さんの平均年齢も低くはなさそうで、内容もはまった感じだ。
 大爆笑のマクラを約7分ほどふってから、幇間がいかに自分の意見などなく追従しているか、というマクラは何度聴いても可笑しい。かつての落語家の人数の変化などにも及び、入門した頃、落語協会は名人文楽から前座まで含めて80人くらいだった、とのこと。
 とにかく楽しく幇間の一八を描く。また、扇子の使い方が効いている。さっと片手で拡げたり、扇いで頭を冷やす真似をしたり。仕草、顔の表情、扇子での演出などで、実にダイナミックな高座になる。芝居を観るような印象だ。
 鰻屋では、“よしおちゃん”が大活躍。まず最初に二階で、よしおちゃんがメンコをしているという設定。なんと掛け軸も「初日の出」という、よしおちゃんの作品^^
 一八がお膳を横から見ると、よしおちゃんの足跡が残っているという具合。
 鰻を一口食べて、ようやく噛み切った後に、「こしのある、鰻ですねぇ」、二口目は「男らしいですね」が、なんとも可笑しい。ところどころでの「おねえさん!」という掛声も、噺に良いリズムを付けていた。
 “せんの男”が帰ってしまったと知ってからの“おねえさん”との会話も権太楼ならでは。もちろん、徳利もお猪口も小言のネタ。途中での「聞けぇー!」も笑った。
 マクラから絶好調と思える権太楼ワールド、今年のマイベスト十席候補としたい。

 久し振りの週末の大手町。ひっそりと静まるビル街の中の立派な会場に、女性の和服姿のお客様も多く集う、不思議な雰囲気だったなぁ。たしかに、「ハレ」の日の感じはある会なのだが、周囲が人工的すぎて人の呼吸を感じず、散策の楽しみなどはない。
 地上に飲食店がほとんどないので、事前の昼食は地下街の数店しか選択肢がないのだ。どこも1,000円未満のメニューはほとんどない。大手町価格、か。
 イイノホールは立派になりすぎて敬遠してしまう。席数的には、日経ホールの方が落ち着くとも思うが、天どんがマクラで言っていたように、「国連の会議のよう」というところは難でもある。

 主催のサンケイリビング、そしてオフィスエムズさんは、この会に相当気合いを入れているようで、12月、そして来年3月の開催も案内されている。しかし、この場所は一度来ると、次の機会まで時間を空かせるような、落語会としての相性の悪さを強く私に印象づける。
 同じような顔ぶれで、日本橋なら、もっと私の落語愛好家仲間ともご一緒できそうなのだが、なかなか難しい問題だなぁ。
 エムズさんや、雲助の会などを開催しているいたちやさんなどの主催者の会を応援したいと思っている。それは、落語が好きで、噺家さんたちを大事にしていることを、彼らの企画から感じるからだ。
 しかし、あまり大きかったり、立派すぎる会場での落語会を私は敬遠したいし、また、落語会が開かれる“街”にも魅力があって欲しい。まったく、わがままな落語ファンなのかなぁ。そんなことを考えながら帰宅途中の電車で、大須の志ん朝を聴いていた。
by kogotokoubei | 2014-10-11 18:21 | 寄席・落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛