人気ブログランキング |

噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

2014年 09月 15日 ( 1 )

十代目金原亭馬生の三十三回忌追善興行に、なんとか駆けつけることができた。
 行かれた方のブログを拝見すると、開演ぎりぎりでは二階席かもしれないので、いつもより早めに、並ぶのを覚悟で新宿へ。
 電車から、もしや、と思い末広亭友の会の大先輩I女史にメールしたら、すぐ「私も行くわよ」との返信。しかし、少し遅くなるようだ。
 新宿三丁目に着き、コンビニでお茶と助六、お菓子少々を仕入れで並んだのが11時10分頃だが、行列は角のラーメン屋さんのあたりにまで達しており、もうじき曲がりそうな様子。11時半開場、椅子席は相当埋まっているが好みの下手桟敷を確保できた。一服して開演を待つ。

 演者とネタ、所要時間と感想を短く記す。印象の良かった高座にをつける。

金原亭駒松『豆屋』 (8分 *11:52~)
 開口一番は、当代馬生の弟子のこの人。初である。プロフィールを調べたら、大学を出て25歳での入門が2010年。そろそろ三十路の前座さんか。頑張っていたようには思うが、もう少し聴いてみないとコメントはしずらいなぁ。
 ちなみに、この噺は雲助が志ん生に稽古してもらった唯一のネタ。

金原亭馬吉『鮑のし』 (12分)
 二ツ目四人の交互出演、この日は来春同門の馬治と一緒に真打昇進のこの人。たぶん、初。私にはこの人の声は聴きやすい。ネタも結構。志ん生持ちネタについて、志ん朝は、この噺を隠れた十八番としてしている。一門の大事な噺を、丁寧に演じた。今後も期待したい。

 I女史ご来場。桟敷の私の斜め後ろに、ちょうど一人分の席が空いていて、そこに落ち着く。この方には、落語の神様がついているとしか思えない^^

天乃家白馬『お菊の皿』 (12分)
 先代馬生の最後の弟子。初である。滑舌があまり良くない。厳しいようだが、五十路の噺家さんであることを考えると、噺のメリハリやリズムも決して良いとはいえない。ぜひ、一門の先輩たちを見習って、まだ精進をしてもらいたいと思う。長生きも芸、ということもある。どこかで化けるかもしれない。

 ここで十代目馬生の弟子を順に並べてみる。
  金原亭伯楽・故鈴の家馬勇・五代目金原亭馬好・七代目むかし家今松・二代目金原亭馬の助・金原亭駒三・六代目五街道雲助・四代目吉原朝馬・十一代目金原亭馬生・金原亭世之介・初音家左橋・天乃家白馬

 この日、弟子は全員出演した。

金原亭世之介 漫談と小咄 (16分)
 ウクライナにいるロシア人を救うためにロシアは軍隊を繰り出した、だから錦糸町にもロシア軍が来る、というような咄や、外人に日本語の慣用句(「うってかわって」など)を教える小咄、高齢者向けの海外旅行の小咄もあった。
 古典的な雀取りの小咄などもはさんでいたが、なるほど器用で芸達者なのだろうとは思うが、一つの噺を披露しないのは不満である。きつい言い方になるが、「なんでもいいんだよ」が口癖だったらしい師匠だが、器用だけじゃ、天国では喜んでいないのではなかろうか。

とんぼ・まさみ 漫才 (10分)
 前半は一服の時間にさせてもらった。笑組との交互出演。一服後に後ろのパイプ椅子で聴いていたら、以前よりは笑いは取っていたようだ。それにしても、そろそろ客に「えっ?」という間をつくらない漫才をして欲しいものだ。

金原亭駒三『親子酒』 (11分)
 初である。見た目や口調がどことなく先代の文楽に似ている。私は、結構好きだなァ、こういう噺家さん。雲助の本によると、最初に馬生宅に入門を乞いに訪問した際に応対に出たのがこの人だったらしい。

金原亭馬好『初天神』 (10分)
 初である。金坊を連れて初天神に行く場面からだが、その独特の展開が楽しかった。
 七色(七味)唐辛子屋→占い→飴屋、とそれぞれの商売の口上をしっかり演じてみせた。私はこういう噺、好きだなァ。
 仲入り後の座談で、雲助が名前をつける際、師匠は「お前ならいいだろう」と許してくれたが、たとえば馬好のように見た目が雲助のようなら許さなかった、と笑い話をしていたが、なるほど迫力ある見た目である^^

松旭斎美智・美登 奇術 (10分)
 ハワイアン風の衣裳と音楽で、これまでの空間を一変。美智さんの話芸は健在。

吉原朝馬 漫談 (11分)
 結婚披露宴のマクラなど、ネタに入らないままだった。この後の座談の司会のこともあるのかもしれないが、漫談で下がった。器用なだけに、何でもできるのだろうが、私は10分でもネタをして欲しい。

金原亭馬の助『権助芝居』 (17分)
 番頭が足らなくなった役者の代りにしようと権助を呼出し、「村芝居で十八番は何だった?」と聞くと権助が「18番は、村長の電話番号」に、無性に笑えた。七段目で権助のお軽が二階から飛び降りて客席から野次られ、「今年のお軽は、マツコデラックス」でサゲた。その後、お約束の百面相。大黒→恵比寿→達磨大師→線香花火→カチカチ山の狸、をしっかり。
 こういう芸、ぜひとも若手に継承して欲しいものだ。

むかし家今松『家見舞』 (16分)
 「人に物 ただやるだけも 上手下手」とふって、本編へ。淡々とこの人ならではの語り口で進める。気をてらったクスグリなどはないが、要所要所でしっかり笑いもとる。古道具屋で値切る時に、「その焼き火箸を水に突っ込んだような、ジューッという音のしないように願いたい」などの科白でも、私も他の多くのお客さんも笑ってしまう。さすが特別興行、良い客席である。この日の高座の中ではもっとも印象が良かった。

ペペ桜井 ギター漫談 (9分)
 衣装がいつもより立派^^特別興行だからか。

金原亭馬生『目黒のさんま』 (14分)
 仲とりは、当代。師匠の十八番で、かつ旬のネタがうれしい。端正、上品、という言葉が相応しい高座。しかし、家来の名に安倍、石破、小沢などとつけるクスグリは、意外だった。こういう遊びも悪くはないが、私はこの人には似合わないような気がするなぁ。
 
座談会と抽選会 (38分)
 仲入り後、まず下手から朝馬、雲助、二人分の席を空けて、上手に馬生。後から、池波志乃と中尾彬が順に登場。
 朝馬に入門時期を問われた雲助が、「昭和23年」と誕生年と間違えて答えたので、これが最後までクスグリに使われていた。あまり詳しくは書かないが、出演者のことの方が主役の馬生のことより多くなっていたのは少し残念だが、中尾、志乃夫妻の馴れ初めなどは知らなかったので、貴重な話ではなかろうか。(有名か?)
 もっとも印象に残るのは、最後の朗読だ。中尾彬はテレビでのタレントとしての印象があまり良くなく、好きな俳優とは言えないのだが、馬生の蕎麦にまつわる随筆(日本の名随筆に選ばれているらしい)を朗読した時には、感心もしたし、感動もした。それにしても毎日行われるので、出演者も大変だろうなぁ。

初音家左橋『粗忽の釘』 (10分)
 雲助がトリなので、くいつき役がこの人。座談会の後で、やりにくさもあろう。時間調整も必要だったろうから、やや窮屈な印象になったのは、やむを得ないか。

金原亭伯楽 小咄など (11分)
 いくつか小咄を披露。そして、十年以上前からの陸前高田での落語会や学校寄席、ボランティア寄席などの話になったので、3.11以降の話もあるのだろうと思っていたら、それはなく下がった。お世話になった池之端の病院長のご次男が当地で歯科医をやっていて始まった、という話を興味深く聞いていたので、やや肩透かし的な印象。

翁家和楽社中 太神楽 (8分)
 小楽、和助、小花の三人が元気に登場。拍手の大きさは、和楽が亡くなったばかりということをほとんどのお客さんが知っているからだろう。
 小花の芸をヒヤヒヤしながら見るのが、この社中の楽しさ^^

五街道雲助『幾代餅』 (32分 *~16:33)
 落語会の時よりは、短縮版と言えるが、要所では流石の芸。前半の搗き米屋の女将が清蔵が恋煩いだと聞いて、指をさしながら爆笑する場面などは、何度見ても笑える。廓での場面をあっさりと。幾代餅開店後、若い衆同士の会話で、「行ったかい、幾代餅」「なにそれ?」「・・・死ね!」が頗る可笑しい。浅草見番や日本橋劇場とはまた別な明るい高座で、師匠に手向けをしたように思う。

 
 終演後、I女史から、馬生が挿絵を描いた貴重な本をお借りした。私家本300冊限定の立派な和紙の本。詳しくは後日書きたいと思う。
 一服し帰路へ。 全体的には、非常に結構な特別興行だったと思う。馬生門下で初めて聴くことのできた人も多かった。

 帰宅して、連れ合いと一緒に、我が家の「吾輩は犬である」と威張っている二匹と散歩。その後、一杯やりながら、ブログを書いていたが、いろいろと思い出すこともあり、あれだけのボリュームである、残りを翌朝回しとして爆睡。
 
 翌朝振り返ってみても、なんとも言えない空間だったと思う。一階は満席、二階にもお客さんがいらっしゃったが、皆さん落語通の方ばかりと見えて、笑いどころのツボを外さないし、暖かい気持ちで高座に接していたように思う。出演する馬生門下の皆さんも、三十三回忌ともなると、ジメジメしたところはなく、あれから三十余年になる自分史も振り返りながらの追善興行だったのではなかろうか。

 夏目漱石の猫と馬生の命日が偶然にも同じ9月13日。猫のことを書いたばかりだったので、不思議な縁を感じた。

 馬生については、三年前の命日に、いくつかの本からの引用を中心に書いたことがある。ご興味のある方はご覧のほどを。2011年9月13日のブログ
by kogotokoubei | 2014-09-15 19:11 | 寄席・落語会 | Comments(11)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛