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噺の話

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2013年 01月 10日 ( 1 )

にぎわい座は、12月1日の「芸術祭受賞者公演」以来。これまでこの会場での雲助独演会には縁がなかったが、今もっとも充実した高座を聴かせていると思われる雲助を、年の初めに聴きたかったのと、今回は終演後の「居残り会」(新年会)も楽しみに、桜木町へ参上。

次のような構成だった。雲助の二席は、事前にネタ出しされていたもの。まさに旬の噺。
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(開口一番 古今亭きょう介『手紙無筆』)
桃月庵白酒 『寿限無』
五街道雲助 『二番煎じ』
(仲入り)
五街道雲助 『芝浜』
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古今亭きょう介『手紙無筆』 (19:00-19:14)
 昨年10月の浅草での志ん陽、文菊の真打昇進披露興行以来。ようやく『たらちね』以外のネタに出会えた。ややつかえる場面もあったが、会場のよく笑ってくれるお客さんに救われたように思う。入門五年目を迎え、少しづつだが成長はしているように思うが、同じ一門で少し後輩の半輔の最近の充実ぶりを見ると、少し歩みは遅いか。精進してもらいましょう。

桃月庵白酒『寿限無』 (19:15-19:32)
 マクラでは、正月初席は噺家も暮れから続く酒と疲れで、出番も短くまともな落語など出来るわけがない。中席あたりから通常に戻るのに、こういう時期に独演会を開く師匠は偉い、と妙なヨイショ。自分は気楽な思いで高座をつとめてさっさと帰ります、とふって本編へ。
 こういう前座噺も、この人にかかると大爆笑ネタになるから、やはり大したものだ。八五郎と大家との楽しい掛け合いの後、寿限無が成長して学校に上がり、教師が点呼をする場面では政治家でのクスグリ。「麻生太郎君、・・・漫画を読まないように」「安倍晋三君、・・・今度は頼むよ」「小沢一郎君、・・・また転校か」などで、会場は大うけである。寄席で鍛えた芸、と言えるだろう。やはり、この人は今年もしっかり聴こう、と思わせる佳作だった。

五街道雲助『二番煎じ』 (19:33-20:15)
 寒くなってきたが、実は昨年の冬も寒かった。そして、夏は暑かった。四季ではなく二季ではなかろうか、というネタにしっかりつながるマクラから本編へ。
 雲助のこの噺は初めて、と思っていたが、自分のブログを検索したところ、なんと2009年1月17日の朝日名人会で聴いていた。
2009年1月17日のブログ

 おまけに、この高座はCD化されている。
朝日名人会ライブシリーズ73 五街道雲助「文違い」「二番煎じ」
 それだけ名演だったようだ・・・・・・。四年もたつと、すっかり忘れている。だから、備忘録替わりのブログが大事、という苦しい言訳^^
 あらためて昨夜のことを思い出しながら書く。雲助の高座は見事だった。火の用心のために夜回りをすることになった、商家の旦那衆を中心とする老人たち(半ちゃんのみ若い)が、なんとも妙な調子で唄ったり、夜回り後の番小屋で隠し持った酒を飲み、猪(しし)鍋をつつきながら都々逸の廻しっこなどでワイワイ無邪気に宴会を繰り広げる場面が生き生きと描かれていた。
 しかし、古今亭ながら、私が好きな志ん朝の音源と比べると、演出も登場人物の名前も、相当違っている。師匠馬生のこの噺を聴いていないので師匠譲りかどうかは分からない。いろんな噺家さんが持ちネタにしているので、他の誰かの型なのか、あるはオリジナルなのか不勉強で残念ながら分からない。今後の宿題である。
 まず、番小屋には先に上方出身の河内屋と宗助がいて、そこに月番の上総屋が入ってくる。その後に伊勢屋など他の登場人物一人づつやって来るという構成。全員がすでに揃っているよりも、個々の人物像が明確になって、なるほどと感心した。また、志ん朝では、大勢で回ってもしょうがないので二組に分けて行く、という設定だが、雲助版は、宗助を留守番にして、他の者が回るという設定。
 月番の上総屋が一人一人に役割を分担して、寒い晩に夜回りに出発。鳴子の担当は、上方の人間の典型ともいえそうな河内屋。嫁に行き遅れた娘を気にかけている最年長で謡の師匠高田先生は、拍子木。江戸っ子の威勢の良さを誇る職人の半ちゃんが金棒。店の者の中で一番ヒマしていると言われて駆り出された気の弱そうな伊勢屋の主人が提灯持ち。
 夜回り中に声を出す場面は、次の順番。
①月番:「火の用心、ヘ~クション」と、くしゃみで次に渡す。
②伊勢屋:都々逸「人の寝ている夜更けの町を なんの因果か火の用心 あ~やだやだ」
③河内屋:「でろれんざいもん(祭文)」
④高田の先生:義太夫風の「火の用心」で犬が吠えだす
⑤半ちゃん:吉原での自慢話から、本寸法の「火の用心 さっしゃりましょう~」
 この中では、河内屋の「でろれん祭文」に笑った。浪曲のルーツとも言われるようだが、今日ではなかなか聴くことはない。落語は、やっぱりタメになる^^
 また、半ちゃんが、かつて吉原仲之町の夜回りをしていた時にもてた自慢話も、なかなか結構だった。「煙管の雨が降るようだ」の言葉が、好きだ。
 番小屋に戻ってからの酒と猪鍋の宴会も、頗る楽しかった。猪鍋があるのが、しっかりと高座に見えたし、それぞれがなんと美味そうに食べることか。宴会が盛り上がり都々逸の廻しっこで騒いでいるところに、見回り役人が登場。酒(煎じ薬)と鍋(口直し)に役人が喜び、「お前たちの次の番はいつじゃ」「やな明後日(あさって)でございます」「うむ・・・明後日(みょうごにち)にしなさい」と言う会話も、なかなか渋い演出。
 この高座、迷うことなく、本年のマイベスト十席候補第一号である。
 
五街道雲助『芝浜』 (20:25-21:02)
 「旧暦では、まだ十一月下旬、元旦は二月十日あたり」とマクラでふってくれるところが、この人ならでは。まさにこの日は旧暦十一月二十八日だった。旧暦の元旦(旧正月)は新暦二月十日である。だから、このネタは季節はずれどころか、これからが旬なのである。わかっているのよ、雲助は。
 実家が蕎麦屋であった子供の頃の大晦日の忙しさや、正月の街並みの様子などに続いて本編へ。
 古今亭の型は、浜で財布を拾う場面をカットするのだが、雲助はこのシーンを入れている。かと言って三木助のような抒情的な演出でもない。これまた師匠馬生版を知らないので、師匠譲りかどうか分からない。また宿題が増えた。悪くはない。しかし、終演後の「居残り会」でリーダーSさんも指摘されていたが、流れに腑に落ちない点もあった。たとえば、浜で財布を拾ったのが夢であると、女房の嘘にだまされた勝五郎が、「こうなったら、大川に身を投げて死ぬしかねぇ・・・・・・」とぼやくと、女房が勝の頬を強くぶつ、という演出。「これは、男勝りの強い女房という設定だな」と思っていたのだが、後半は、何ともしおらしい女房である。もちろん、女性には(男もだが)鬼となる時も、天女になる時もあるが、やや性格設定に一貫性を欠いている印象。サゲに近づき、少し終演時間を気にしたようにも感じ、結構ではあったが、マイベスト十席候補に推す高座ではなかった。


 終演後は、今年最初の「居残り会」。会場と桜木町駅の間にある居酒屋で、リーダーSさん、正月らしい素敵な着物姿の紅一点Iさん、そしてYさんと私のレギュラーメンバーで新年会を兼ねた宴席には、猪鍋こそなかったが、落語の話を肴に大いに盛り上がり、二合徳利が瞬く間に空いていく。次の会の相談をして店を後にし駅に向かう時は、十一時近くになっていた。帰宅はギリギリ日付変更線を越える前ではあったが、とてもブログを書く状態ではなかった。雲助の『二番煎じ』を思い出しながら、風呂上りに即熟睡。朝目覚めてパソコンを立ち上げ、実は四年前にも聴いていたことに気付いた、というオソマツであった。しかし、忘れることも必要なのだ、と思わないでもない。だからこそのブログ、と言訳の繰り返しで今回はお開き。
by kogotokoubei | 2013-01-10 06:54 | 寄席・落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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