噺の話

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2012年 04月 14日 ( 1 )

久しぶりに芸協の定席を見たいと思っていたら、国立演芸場の中席がなかなかの顔ぶれに加え、主任の歌丸会長が『双蝶々 雪の子別れ』のネタ出し。十日間同じネタというのも不思議な感じだが、評判は聞くが歌丸の円朝ものは一度も聞いたことがなく、土曜昼雨の中隼町へ。

 少し早めにと、12時50分に会場に入ったが、すでに開口一番の声が聞こえる。土曜ということもあるのだろう、八分ほどの入り。平日の空席が推察できる。聞こえていた高座は瀧川鯉和の『子ほめ』。15分前から開口一番は始まっていたようだ。途中から聞いたのでコメントは差し控える。鯉和の次は日替わりの二ツ目の中から小痴楽。この高座から、所要時間と感想を書きたい。

柳亭小痴楽『反対俥』 (15分)
 昨年の末広亭初席以来だが、少し小言を書かないわけにはいかない。このネタ特有とは言え、あまりにも激しく動くので着物の前がはだけて足が丸見え。本人も分かっていてギャグにするのだが、まったく感心できない。せっかく懐かしい名跡を襲名したのだから、もう少し真っ当な高座をして欲しい。会場はよく笑うお客さんが多く結構沸いていたが、品のない高座には目をそむけたくなった。

鏡味正二郎 曲芸 (14分)
 正統派の芸。色物は芸協も決して落語協会に劣っているとは思わないが、こういう人達が支えているのだと思う。

三遊亭遊雀『粗忽長屋』 (18分)
 雨だったので四谷からタクシーに乗った、というマクラなどで会場を暖めて本編へ。落語の中でも、これだけシュールなネタもないが、遊雀ならではのギャグを抑え目にほぼ本寸法の高座。ようやく真っ当な高座にめぐり合えた。この人の落語会は私が行かない土曜夜や日曜が多く、なかなか最近聞いていなかったが、芸協の定席に人を呼ぶには欠かせない中堅である。

コントD51 コント (14分)
 本日一番受けたのは、本来の東京ボーイズの代演だったこの二人。よく笑うお客さんと掛け合いに応じるお客さのおかげで、会場はなんともアットホームな空気に包まれた。定番のコントに程よく会場を引き込む二人の技も流石であった。私は、こういう芸、嫌いではない。 

雷門助六『浮世床』と踊り (27分)
 せっかくコントD51が盛上げ暖めた会場を、この大ベテランは目一杯冷やす。途中でわざわざ着物の中に入れてきた歌丸の本(『恩返し』)を紹介し、途中私服の歌丸が高座に登場するという(たぶん予定された)ハプニングなどを含め、どうでもいいマクラと、まったく受けない駄洒落で12分を費やした。
 本編も、あえて小言を言うなら二ツ目でももっと上手い人がいる。昭和22年生まれで、マクラでも言っていたが歌丸よりほぼ一回り若い65才、団塊の世代。体調がよほど悪くないのなら、もっとしっかりした高座をして欲しい。最後の踊りは師匠譲りだが、まず大事なのは落語だろう。
 せっかくコントD51が盛上げた会場をここまで冷やしてしまうベテランの存在に、芸協の問題の一面が見えたような気がした。私の席の近くにいらっしゃったお客さんは、小声ながら何度も「真面目にやれ!」と呟いていた。私もまったく同感である。

三遊亭円丸『宮戸川』 (23分)
 仲入り後のクイツキは、本来の平治の代演のこの人。初めてである。大きな顔と体で、なかなかの本寸法。名前からは分かりにくいが小遊三の弟子。そういう雰囲気もないではない。しかし、三遊亭で円がつく名でもあり、爆笑ネタよりも本格古典が似合いそうだ。

桧山うめ吉 踊り (6分)
 風邪で踊りのみとのこと。「奴さん~姉さん」「夜桜」。楽しみにしていた三味線と俗曲がないのは、あまりにも残念。

桂歌丸『双蝶々 雪の子別れ』 (48分)
 どう言えばいいのだろう。なぜ今までこの人を聞かず嫌いでいたのかを、今は反省している。音源なら何と言っても円生になるが、最近は五街道雲助一門が、『長屋』~『定吉殺し』~『権九郎殺し』~『雪の子別れ』の通しで演じるなど、新たな試みもあって決して過去の噺ではなくなったが、歌丸の円朝もの(このネタは円朝作ではないという説もあるが)への取り組みは年季が入っているようだ。
 談志と同じ昭和11年生まれ今年76歳の歌丸の口跡ははっきりしているし、地の部分と登場人物が語る部分も流れるように展開されていく。たしかに、白酒が一門の会の楽屋ネタとして、この噺は病気の老人の噺でつまらない、という会話があったと言っていたが、本来『双蝶々』と言えば、この噺。終盤、雪に見立てた紙吹雪の演出と三味線も程よく効果的。この高座に出会えただけでもこの中席は満足である。もちろん、今年のマイベスト十席候補とする。


 終演後に玄関脇で一服していて思ったのが、下座さんの素晴らしさ。唄わないうめ吉の踊りに三味線と唄をつけ、歌丸の高座でも効果的な鳴物。出囃子はもちろん、曲芸でもその三味線が一味違っていた印象。

 歌丸会長の高座を見て、芸協の若手、中堅、そしてベテラン陣も何か考えることがあるはず。十日間通しの『雪の子別れ』、実は客のためだけに歌丸が演じているのではないのではないか、そんな気がした。

 帰り道はまだ止まない雨の中なのになぜか嬉しかったのは、歌丸の高座のみならず、仲入りの時に五月中席の一之輔真打昇進披露興行の空席を入手できたこともある。ネットでは売り切れていたが、演芸場にはまだ若干の空席があったのだ。これまた僥倖であろう。
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by kogotokoubei | 2012-04-14 19:17 | 寄席・落語会 | Comments(10)

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by 小言幸兵衛