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噺の話

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2012年 02月 07日 ( 1 )

先日紹介した朝日の記事と“根(ルーツ)”は一緒なのだが、少しニュアンスの違う記事が読売に出た。なぜか、「ジョブサーチ」というコーナーの「Biz活」“今を読む”というページでの掲載。YIMIURI ONLINEの該当ページ

落語界に再編の風?
文化部 田中聡
 
 その発言は昨年末、落語芸術協会の納会で飛び出した。

 挨拶に立った新宿末広亭の真山由光社長が「落語芸術協会の定席は、落語協会に比べて客入りが悪い」としたうえで、こんな事を言ったのだ。

 「円楽一門会や立川流と一緒になって欲しい」

 この世界、寄席を経営する席亭の言葉は万金の重みを持つ。ましてや公式行事の席上での発言である。芸協の田沢祐一事務局長は、「正式な要請と認識している。検討したい」という。落語界が賑やかになって来た。

 東京の落語界には、4団体がある。柳家小三治会長の落語協会、桂歌丸会長の落語芸術協会、三遊亭鳳楽会長の五代目円楽一門会。そして、落語立川流である。立川流は家元・談志が昨年11月に亡くなって以降、「会長」「家元」は置いていない。

 もとはといえば、円楽一門会や立川流のルーツは、落語協会にある。真打昇進制度などを巡る意見の相違で袂を分かったのである。1978年に三遊亭円生が一門を率いて協会を離脱、円楽一門会の前身の落語三遊協会を作り、83年には談志一門が脱会した。

 円生が脱会する際、三遊協会が落語協会、落語芸術協会とは別個に寄席興行を行うという案があったが、都内4件の寄席で作る「席亭会議」が否決。都内の寄席興行は、その後も落語協会と落語芸術協会が交互に行っている。つまり、円楽一門会と立川流は通常の寄席興行には出演していない。

 落語協会に所属する落語家は約200人、芸協は100人強、円楽一門会と立川流は50人弱。芸協の落語家の数は、落語協会の約半分で、以前から層の薄さを指摘する声があった。単純に数だけで言えば、芸協に円楽一門会、立川流を加えれば、落語協会に肩を並べる。

 さらにいえば、円楽一門会には三遊亭円楽や三遊亭好楽、立川流には立川志の輔や立川談春といった人気者がいる。両会が合流すれば、芸協の顔ぶれは落語協会に引けを取らないものになるし、これまで寄席に出ていなかった実力者の登場は観客増加の起爆剤になる。まあ、真山社長の発言の背景を筆者なりに補足すればこういう事になろうか。

 五代目円楽が亡くなった後、六代目を継いだ今の円楽が一昨年、落語芸術協会の定席で襲名披露興行を行った。このことの意味も大きい。その後、落語芸術協会と円楽一門会は、"業務提携"の可能性を探っていたからだ。合併まではしないが、円楽一門会の落語家を寄席興行に組み入れようという動きである。賛否両論があったこの案は昨年6月、芸協の理事会でいったん否決されたのだが、「真山発言」で再び議論の俎上に登ることになった。

 21世紀も10年以上が過ぎた。昭和の時代の落語界分裂の当事者の多くは、すでに故人となった。一昨年、三遊亭円生の名跡を巡って門下の確執があったように、まだその傷跡は癒えたとは言えないが、徐々に世代交代が進む中で、微妙に情勢は変わりつつあるようだ。

 三遊協会の寄席興行を否定した「席亭会議」をリードしたのは、当時の新宿末広亭の席亭で、「新宿の大旦那」と言われた北村銀太郎氏だった。年月がたち、三遊協会の末裔、円楽一門会の寄席出演の提案をしたのも、同じ末広亭の席亭、真山氏である。歴史の巡り合わせを感じるのは、筆者だけだろうか。

(2012年2月7日 読売新聞)



 発端は、すでに紹介した通り、昨年の芸協納会における末広亭の真山社長の言葉。

 前回のブログでは、他の一門の加盟は無理があるので、あくまで協会の“企業努力”として集客を増やすための施策を実施したり、根本的な組織改革を進める必要がある、と書いた。
2012年1月27日のブログ

 芸協には落語協会を観客動員で凌駕した歴史もあるし、かつて数多くの名人もいた。また、芸協の“新作”へのこだわりは、やはり継承して欲しい伝統でもある。加えて、今でさえ寄席の出番の少ない二ツ目の出演機会がもっと減ることの問題も指摘した。
 その後いただいたコメントへの返信の内容も含め、会長、副会長があの「笑点」を降りて協会の改革に注力するとか、幹部の顔ぶれも刷新し、たとえば春風亭昇太が副会長になるなどの思い切った施策が必要とも書いた。

 しかし、組織改革、などという悠長なことを言っていられる状況ではない、ということなのだろうか。 
 この記事の中の、合併までにならずとも、円楽一門会を芸協主催の興行に組み入れる、ということが、 「真山発言」で再び議論の俎上に登ることになった。 のが事実なら、その後に動きがあった、ということなのかもしれない。

 たしかに、組織改革には時間と労力がかかる。そう簡単にはいかないのも事実。長らく芸人の“置屋”として歩んできた協会の体質は、一朝一夕には変わらないし、会長が何か提案しても、反体制派(?)も少なからずいるだろう。だから、協会の改革などを気長に待っている余裕はない、という席亭達の思いがあるとしても不思議ではない。とにかく、客を呼びたいのだろう。たしかに、六代目円楽襲名披露興行には客が来たのかもしれない。

 六代目円生や先代円楽をよく思わない芸協の噺家は少なくないと思うが、三人の席亭が、「円楽一門と一緒に興行しないなら、寄席に出さない!」と強行策に出たら、彼らも従わないわけにはいかないなぁ。

 さぁ、これからどんな展開を示すのか。

 円楽一門会の顔ぶれを確認したい。以前に存在していた「星企画」のサイトがなくなっているので、Wikipediaから引用する。( )内の人数は幸兵衛の計算。Wikipedia「円楽一門会」
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構成員
※以下一覧では、孫弟子の見分けとして、《1》( = 鳳楽の弟子)、《2》( = 好楽の弟子)、《3》( = 圓橘の弟子)、《4》( = 6代目円楽の弟子)を末尾に付記。

総帥
5代目三遊亭圓楽(2009年10月29日死去)

会長(1)
三遊亭鳳楽

幹部(4)
三遊亭好楽、6代目三遊亭圓橘、6代目三遊亭円楽(楽太郎改め)、三遊亭楽之介

真打(30)
三遊亭貴楽、三遊亭小圓楽、三遊亭喜八楽、三遊亭五九楽、三遊亭楽麻呂、三遊亭圓左衛門、三遊亭道楽、三遊亭栄楽、三遊亭とん楽、三遊亭楽春、三遊亭洋楽、三遊亭真楽、三遊亭好太郎《2》、三遊亭楽松《1》、三遊亭竜楽、三遊亭良楽、三遊亭愛楽、三遊亭京楽、三遊亭全楽、4代目三遊亭小圓朝《3》、三遊亭鳳好《1》、三遊亭神楽、三遊亭上楽、三遊亭楽生《4》(楽花生改め)、三遊亭圓福(福楽改め)、三遊亭楽京《4》(花楽京改め)、三遊亭兼好《2》(好二郎改め)、三遊亭大楽、三遊亭鳳志《1》、三遊亭王楽

二ツ目(6)
三遊亭楽市《4》、三遊亭きつつき《3》、三遊亭橘也《3》、三遊亭好の助《2》、三遊亭鳳笑《1》、三遊亭楽大《4》

前座(4)
三遊亭一太郎《4》、三遊亭好吉《2》、三遊亭たい好《2》、三遊亭こうもり《2》

色物(1)
ニックス《4》
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 計46名。落語家のみで45名。
 
 芸協は、先日のブログでも書いた通り、真打ち86名、二ツ目が31名、前座19名、色物が40組という所帯である。落語家のみで136名。よって、円楽一門を合わせると、落語家が181名ということになる。まだ足らないが、落語協会に迫る“数”にはなる。

 しかし、単純に「噺家の数」の問題ではないわけで、真山社長はじめ席亭は、「観客動員数」の増加を期待しているわけだ。

 円楽一門の中で、芸協主催の席に加わることで、観客増を期待できる噺家とは・・・・・・。

 個人的な好みは別として、「笑点」の二人は、名前だけは売れている。鳳楽も、定席で聞いたことのない人は、最初だけでも「観てみよう」となるかもしれない。もちろん、兼好は動員力は大きいだろう。王楽も、一応、NHK新人演芸大賞受賞者という勲章がある。あと、円楽一門に詳しくなくても落語愛好家が知る名前は、二ツ目ではあるが、きつつきかなぁ。

 もちろん、他の噺家さんも、私を含めて聞いていないだけで魅力のある人もいるのかもしれない。

 しかし、前回も書いたが、上席、中席、下席の十日間通しの寄席で、出演できる落語家枠は、せいぜい12名位なのだ。そして、通例であれば、開口一番は前座。プログラムに載るトップバッターは、二ツ目。ともに、日替わりのことが多い。残る10名の真打枠を芸協と2:1の割合で分けるとして3~4名出演することになる。そうなると、上述したような人たちの誰かと、他の真打との組合せとなるのだろうなぁ。

 そういった番組を組んだ場合、本当に観客動員は増えるのだろうか・・・・・・。最初は興味本位のお客と仲間内も含めて客が来るかもしれないが、果たしてどこまで長続きするだろうか。

 ここからは、個人的な見解。もし、芸協の顔ぶれがそれ相応で、そこに兼好が出演するなら、私は行くことに大いに動機づけられるだろう。元々昨年から芸協の寄席に行く努力(?)もしているのだから。しかし、他の顔ぶれには・・・・・・。

 私の持論は、あくまで芸協の自助努力なのだが、観客動員が減ってさらに定席寄席が減るようなことは望まない。
 立川流は芸協と一緒に寄席興行するとは思えない。芸協が、今回の席亭達の要請に従って円楽一門と手を組むのは、試みとしては面白いかもしれない。少しでも“寄席”が活気づくことを良しと考えることにしよう。しかし、そう簡単に決着はつかないかもしれないなぁ、企業体ではない組織、それも芸人の世界のことだから。
 
by kogotokoubei | 2012-02-07 17:11 | 落語芸術協会 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛