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噺の話

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2012年 02月 03日 ( 1 )

 節分、と言うよりも旧暦の正月十二日というつもりで、月を見ていた。もちろん、あの“恵方巻き”などという胡散臭いものは買わないし食べない。昔は立春から新年が始まるので節分は大晦日。陰陽師らによって旧年の厄や災難を祓い清める「追儺(ついな)」の行事はあっても、「開運恵方巻き」は、何ら歴史的に根拠のないキャンペーンである。まぁ、ある特定の業界が盛り上がるのも悪くないのだろうが、まるで昔からある祭事のような誤魔化しが、どうも許せない。あくまで節分は落語『厄払い』のように、豆まきなどで厄を払う日。興味のある方は昨年の節分に書いたブログをご覧のほどを。
2011年2月3日のブログ

 さて、話は先日書いた“古今亭十八番”のこと。
2012年1月25日のブログ

 古今亭志ん輔の日記風ブログ「日々是凡日」にあった内容に刺激されて書いたのだが、やや反省の多い内容だった。
 その際に書いたリストの中に、あの『お直し』を忘れていたり、コメントでご指摘いただいたが、志ん生が発掘した『ぼんぼん唄』など、ぜひ一門で継承して欲しいネタの欠落が多かった。よって、前回の内容は、拙速で軽率な内容であったと反省し、節分の今夜“厄払い”のつもりで、深くお詫びする次第です。

 そこで、あらためて“古今亭十八番”の改訂版を書いてみたい。まず言い訳から。“古今亭十八番”と言っても、志ん生が持ちネタにしていても、必ずしも馬生や志ん朝が高座にかけなかった噺もある。あるいは、長男と次男が師匠である志ん生の十八番を、前座や二ツ目までは稽古の意味も含め高座にかけていたが、後年は手がけなかったものもある。
 だから、志ん生-馬生-志ん朝に共通する、いわば鉄板の“古今亭十八番”と言えるものは、以外と少ないのではないか、とも思うのだ。
 とは言うものの、けじめをつけておきたいので、前回リストアップしたネタに、失念していた二席と悩んだ末割愛したネタ、コメントでご提案いただいたネタなどを加え、やや無理を承知でちょうど十八席とし、次の噺を、ひとまず“古今亭十八番”としておきたい。
*艶笑噺ははずそうかとも思ったが、志ん生『鈴ふり』も途絶えないよう一門で継承してもらいたくて、加えた。
(1)火焔太鼓
(2)黄金餅
(3)幾代餅
(4)柳田格之進
(5)井戸の茶碗
(6)抜け雀
(7)おかめ団子
(8)替り目
(9)鮑のし
(10)搗屋幸兵衛
(11)疝気の虫
(12)宗珉の滝
(13)お直し
(14)ぼんぼん唄
(15)お見立て
(16)首ったけ
(17)化け物使い
(18)鈴ふり

 
 もちろん、異論反論ございましょうが、お許しのほどを。

 さて次に、“原点回帰”ではないが、この件の発端が志ん輔のブログであることを、あらためて考える。
 志ん輔は、必ずしも“古今亭十八番”のみならず、いわば“志ん朝十八番”をネタに多く持つ。そして、志ん朝は、古今亭および三遊亭お家芸の噺に限らず、八代目文楽の十八番や、六代目円生の代表作、さらに柳家のネタだって手がけている。要するに、古典落語の名作、秀作と言われるべきネタを数多く自分のものとしてきた。
 
 その志ん朝の数多いネタを、あえて“十八”に絞るなら何になるか、というまったく個人的な、傍から見れば馬鹿馬鹿しいとも思われそうな試み(暴挙?)をしようと思った^^

 それでは、“志ん朝十八番”を模索したいのだが、好みに頼る恣意的な感覚的なリストにならないよう、できるだけ“実証的”(?)にというか、数字の裏付けを含めて考えたい。

 そうなると、参考になるのが、この本なのだ。
“古今亭十八番”の改訂、そして“志ん朝十八番”を探る。_e0337777_11081817.jpg
『よってたかって古今亭志ん朝』(志ん朝一門、文春文庫)

 ずいぶん前に紹介した(2008年6月22日のブログ)『よってたかって古今亭志ん朝』(志ん朝一門、文春文庫)の巻末には、「古今亭志ん朝 主要演目一覧」が記載されている。

 主要なホール落語会や“志ん朝の会”、先代柳朝との“二朝会”、そして大須での独演会を含め、次のような落語会における全演目が記されている。

・東横落語会    72回
・紀伊国屋寄席   68回
・東京落語会     71回
・落語研究会    101回
・二朝会        28回
・志ん朝の会     19回
・志ん朝七夜     7回
・大須独演会     30回

 さて、この合計396回の落語会において、どのネタが何度高座にかけられたのか、以前に調べてみたことがある。ホール落語会では、一回につき一席だが、志ん朝の会や七夜、そして大須では一日で二席、あるいは三席なので、ネタの延べ総数は400をはるかに超えている。東横落語会の昭和33年11月10日の『天災』から、亡くなる平成13年4月25日の落語研究会『刀屋』までのネタの中で、回数が多い順に並べてみた。

12回( 1) 愛宕山
11回( 2) 黄金餅・夢金
10回( 4) 付き馬・火焔太鼓・品川心中・化け物使い
 9回( 9) 船徳・搗屋幸兵衛・富久・酢豆腐・抜け雀・大工調べ・三枚起請・
      明烏・唐茄子屋政談
 8回( 4) 井戸の茶碗・居残り佐平次・鰻の幇間・三年目
 7回( 4) 大山詣り・厩火事・柳田格之進・お若伊之助
 6回( 7) お化け長屋・文違い・干物箱・五人廻し・二番煎じ・宿屋の富・
      芝浜
 5回(14) 巌流島・お直し・今戸の狐・火事息子・子別れ・甲府い・
      締め込み・茶金・お見立て・寝床・碁泥・刀屋・首提灯・四段目
 4回(11) 粗忽の使者・猫の皿・小言幸兵衛・稽古屋・三方一両損・幾代餅・
      宗珉の滝・佃祭り・もう半分・百年目・坊主の遊び
 3回(12) 花見の仇討ち・そば清・高田馬場・試し酒・妾馬・駒長・
      口入屋(引越しの夢)・崇徳院・三軒長屋・蒟蒻問答・文七元結・
      水屋の富
 2回(20) 王子の狐・風呂敷・錦の袈裟・替り目・らくだ・花色木綿・
      中村仲蔵・おかめ団子・お茶汲み・雛鍔・ぞろぞろ・紙入れ・
      たがや・御慶・へっつい幽霊・豊志賀の死・百川・真田小僧・
      蔵前駕籠・浜野矩随
 1回(38) 天災・元犬・粗忽の釘・ずっこけ・のめる・二人かしまし・
      和歌三神・近日息子・蛙茶番・麻のれん・三助の遊び・たぬき・
      つるつる・疝気の虫・因果塚の由来・宮戸川・夏の医者・
      三人無筆・しびん・禁酒番屋・紺屋高尾・長屋の花見・
      ちきり伊勢屋・素人鰻・首ったけ・佐々木政談・反魂香・
      近江八景・代脈・堀の内・羽織の遊び・幇間腹・千両みかん・
      野ざらし・あくび指南・強情灸・藁人形・時そば

 ネタの延べ数は、次の計算で求められる。
 (12回 x 1席) + (11 x 2) + (10 x 4) + (9 x 9) + (8 x 4) + (7 x 4) + (6 x 7) + (5 x 14) + (4 x 11) + (3 x 12) + (2 x 20) + (1 x 38) = 485

 ということで、これは志ん朝が、396回の主要落語会で演じた、485席の噺の口演回数順リスト、ということになる。『愛宕山』『黄金餅』『夢金』がトップ3となった。

 さて、“十八”席の選定で、この回数順でどこまで拾うか、思案した結果、10回以上の七席は無条件でリストアップしよう。何と言っても、主要落語会で二桁の回数、高座にかけられたネタなのだから。

 愛宕山・黄金餅・夢金・付き馬・火焔太鼓・品川心中・化け物使い

 この中では、『付き馬』が意外だった。こんなにかけていたんだぁ、と驚く。しかし、亡くなった志ん五などにしっかり継承されていたし、吉原を舞台にした落語らしいネタ、と言えるかもしれない。

 次に、回数のみならず、志ん朝の思い入れを反映する会として、どうしても別格として考えたいのが、あの“志ん朝七夜”のネタ。

昭和56(1981)年4月に本駒込の三百人劇場での歴史的な七日間のネタは次の通り。
◇第1夜 (1981/04/11) 『大山詣り』『首提灯』
◇第2夜 (1981/04/12) 『百川』『高田馬場』
◇第3夜 (1981/04/13) 『代脈』『蔵前駕籠』『お化け長屋』
◇第4夜 (1981/04/14) 『大工調べ』『甲府い』
◇第5夜 (1981/04/15) 『堀の内』『化け物使い』『明烏』
◇第6夜 (1981/04/16) 『火事息子』『雛鍔』
◇第7夜 (1981/04/17) 『真田小僧』『駒長』『干物箱』

 『首提灯』以外の音源が発売されている。円生一門の脱会騒動から三年後、志ん朝43歳での歴史的な会。この会には、ご本人も相当ネタ選びには慎重になっただろうし、こだわりもあったと思う。
 この会のネタで、全体での回数も7回以上演じられている次の3席を、優先してリストに加えたいと思う。
 
 大山詣り・大工調べ・明烏

 さて、これで十席。さて、あと8つ。
 
 先に二席の長講を、これまでの定量的な切り口から、定性的というか好みで加えたい。「やはり、この噺ははずせないでしょう!」と思うネタ。主要落語会で演じられた回数は少なく、意外なようで、実はそうだろうなぁとも思う、『文七元結』と『三軒長屋』。ともに3回なのだ。しかし、あれだけの大作である、そう頻繁にはかけられない。そう考えると『愛宕山』の数の多さに驚く。八代目文楽の独壇場だった噺への意気込みが、これだけの高座数に反映したのだろう。もちろん、全て文楽が亡くなった後の高座。

 さぁ、あと6席。ということで、あらためて回数の上位、9回と8回、7回のネタの中から選びたい。すでに“七夜”に入っていて選定したネタを除くと、次の中からの選択になる。

 9回 船徳・搗屋幸兵衛・富久・酢豆腐・抜け雀・三枚起請・唐茄子屋政談
 8回 井戸の茶碗・居残り佐平次・鰻の幇間・三年目
 7回 厩火事・柳田格之進・お若伊之助

 14席から6席の選択なのだが、悩む・・・・・・。どれを落とせばいいのか。どれも好きなんだが、心を鬼にして(?)選んだ。その全てを並べてみる。

(1)愛宕山
(2)黄金餅
(3)夢金
(4)付き馬
(5)火焔太鼓
(6)品川心中
(7)化け物使い
(8)大山詣り
(9)大工調べ
(10)明烏
(11)文七元結
(12)三軒長屋
(13)船徳
(14)抜け雀
(15)唐茄子屋政談
(16)井戸の茶碗
(17)居残り佐平次
(18)柳田格之進
 

「なぜ、あのネタがはずれるのか!?」というお叱りの声を感じつつも、“十八席”に絞らねばならない苦しさをお察しのほどを。

 さて、あらためて、冒頭の改訂版「古今亭十八番」と、この「志ん朝十八番」で共通のネタを取り出してみる。

  黄金餅・火焔太鼓・化け物使い・抜け雀・井戸の茶碗・柳田格之進

 そして、文楽への挑戦(?)とでも言えそうなのが、愛宕山・明烏・船徳だろう。円生を意識していたと思える噺が、品川心中、文七元結、唐茄子屋政談、そして居残り佐平次あたりだろうか。唐茄子屋は父志ん生の十八番でもあった。夢金や付き馬は、たぶん三代目金馬チャレンジという思いがあったのではなかろうか。三軒長屋も金馬、そして小さんを意識していただろう。大山詣り、大工調べは、多くの噺家さんが手がけるが、小さんの持ちネタだでもあるなぁ。早い話が、昭和の名人たちが手がけた代表的な古典落語が並んだ、ということ。


 古今亭志ん輔がこだわった“古今亭十八番”が、どういったネタを想定していたのかは、まだ明らかになっていない。しかし、ここで私が書いた“古今亭”や“志ん朝”の「十八番」は、そうはずれていないように思っている。もしかすると、「えっ!?」と思うネタが今後明らかになるかもしれない。それも、また楽しいと思う。

 外は寒い。おっ、「おん厄はらいましょう~厄おとし」の声が・・・聞こえないなぁ、もちろん。

 もうじき立春だ。いい年になりますように。
by kogotokoubei | 2012-02-03 21:50 | 落語のネタ | Comments(10)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛