噺の話

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2011年 11月 23日 ( 1 )

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 茅ヶ崎市民文化会館HPの該当ページより

 震災がなければ、3月12日の土曜日に開催される予定だった会。茅ヶ崎市民文化会館ホームページには、次にように記されている。

振替開催日が決定しました!
【振替開催日】
平成23年11月23日(水祝)午後2時30分開演

ちがさき寄席
「江戸日和−柳家の噺を聴く」


 実は、私は先の予定が分からないこともあり、払い戻しをしていた。しかし、なんとかやりくりできそうになり、柳家のまったく同じ顔ぶれで開催されることや、“茅ヶ崎”という地名の魅力(?)からチケットを取り直した。震災からの“仕切り直し”の意味もあったのかもしれない。
 
 自宅から小田急江ノ島線で藤沢まで行きJR東海道線に乗り換えて二駅目。1時間はかからないのだ、茅ヶ崎まで。少し余裕をもって着いた駅の会場とは逆の南口から海へ向かった。
 東海岸通りをゆっくり歩き、15分ほどで茅ヶ崎の海に出た。釣りをする人、バーベキューをする家族、海外通りをジョギングする人や自転車の人。まことに平穏な光景だ。
 つい撮った写真を、私のブログらしくなく掲載した。携帯での撮影で技術もないので決していい写真ではないが、のどかな光景は、3月12日には存在しなかっただろう。
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こういう構成だった。
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(開口一番 柳家おじさん 『転失気』)
柳家三三  『たらちね』
めおと楽団ジキジキ 
柳家権太楼 『笠碁』
(仲入り)
柳貴家小雪 大神楽
柳家さん喬 『妾馬』
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柳家おじさん『転失気』 (14:31-14:43)
たぶん権太楼の最後の弟子になるだろう、入門から三年目だが、私は何度か聞いている。ずいぶん良くなった。会場の暖かい反応にも救われただろうが、噺家らしくなってきたし、落着きができてきた。今後も頑張ってもらおう。

柳家三三『たらちね』 (14:44-15:05)
 さすがに一昨日の紀伊国屋寄席のような毒気はなかったが、定番ネタを含めマクラも好調。昨夜は新潟直江津での落語会、今朝新幹線で戻りこの会へ。この後は地元小田原の居酒屋のカウンターで落語をするらしい。
 本編は、場所柄選んだ前座噺なのだろう、これまで逆に聞く機会がなく新鮮だった。持ち時間のせいで、ねぎ屋がひれ伏す場面でサゲたが、なかなか後味は良かったし、余裕の高座。会場には初三三のお客さんが多かったように見受けたが、これで茅ヶ崎にも三三ファンが増えただろうと思う。

めおと楽団ジキジキ (15:06-15:22)
 実は3月にこの会に行こうと思ったのは、柳家の三人のみならず、この二人の出演が動機づけていた。ネットか何かで、この夫婦の芸が凄いらしいという情報を得て、大いに興味を持っていたのだ。
 結論から。素晴らしい芸と演奏技術を堪能した。次のような演題だったが、そのギャグの中身やサゲは明かさない。
 ・聖者の行進
 ・農協(JA)テーマソング
 ・ココドコタンゴ
 ・ご当地ソング「浦和」
 ・ベートーベン 第88番
 ・ベートーベン 第33番
 ・トルコ行進曲
 ・「男はつらいよ」(おでこピアニカ!)、
 ・ビューティフルサンデー(会場を回りながら“おでこピアニカ”

 この二人、笑いも芸も、ホント凄いよ。

柳家権太楼『笠碁』 (15:23-15:59)
 こういう地域での落語会ではお馴染みのマクラなのだが、やはり笑える。「時の経つのは早いもので・・・・・・ついこの前、マッカーサーが」や、居酒屋で喧嘩する親子のネタ、そしてこのネタの後で、ある南の町の落語会でのオバさんのこと、などなど。元気にこういうマクラをふってくれる権ちゃんの高座を見るだけで、実はうれしい。二年前の南大沢での落語会もそうだったが、この人は地域寄席を大事にしていて、精一杯演じているのが、よく伝わってくる。
 縁台将棋の小噺から本編へ。まさかこの噺が聞けるとは思わなかった。権太楼版の大袈裟な演出はあっても、本寸法である。菅笠でやって来た碁仲間が店の中に入るのを躊躇するやりとりで笑わせ、店の主が「どっちがヘボで、どっちがザルなのか、いっちょうやるか!」というきっかけで、ようやく「やるとも!」と仲直りした時、会場で笑いと拍手が起こる。花緑の改作に小言を言ったが、やはりサゲも権太楼のように笠から雨の滴が落ちなければね。十分に楽しませていただきました。もちろん、今年のマイベスト十席候補に入れさせてもらう。

柳貴家小雪 太神楽 (16:10-16:27)
 会場も巻き込んでの楽しい芸。定席にでも行かなければ味わえない色物を、こうやって地域の落語会で妙齢(?)の女性が演じるのは、非常に良い試みだと思う。

柳家さん喬『妾馬』 (16:28-17:06)
 紋付、羽織、袴での登場で、ネタは想像できたが、この人らしい律儀な高座で茅ヶ崎のお客さんも満足だろう・・・・・・と思っているが、ごく一部のお客さんと主催者には、あえて小言を言う。途中ぼそぼそ話し声がしたのだ。真ん中から少し後の席の複数の高齢の男性達が何か話している。私も他のお客さんも目線で合図をするが、気がつかないのか、感じないのか、なかなか止まなかった。せっかくのさん喬の名演も、“犯人”であるあのお客さん達と、会場の隅にただ立っていただけでお客さんに注意をしなかったスタッフ達のせいで、残念ながら十分に楽しめなかった。何のためにあのスタッフの彼や彼女は会場にいたのだろう。ああいう客を注意しないのなら、会場に腕章をして入る意味がない。


 震災前に予定されていた会の“仕切り直し”と思って参上した茅ヶ崎。その海は、さん喬がマクラで言っていた「普通の生活ができる幸せ」を物語っていた。特に、こういう地域の落語会における権太楼が、独演会でも珍しいネタで会場を沸かせ、唸らせていた。
 そして、このブログを書いている途中で、談志の死を知った。途中、やや書く手が止まった。亡くなったのは一昨日らしい。権太楼もさん喬も、知っていたのだろう、この会の前には。
 特に権ちゃんは、ガンを患っていたことで、いろいろ思うこともあるだろう。談志家元が地域の落語会には力を入れ、数々の名演や快演を残したことは、もちろんよく知っていたはず。今思うと、権太楼の『笠碁』には、師匠小さんへの思い、そして談志への何らかの気持ちがこもっていたのかもしれない。そんな気がする。
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by kogotokoubei | 2011-11-23 19:08 | 寄席・落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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