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噺の話

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2011年 08月 03日 ( 2 )

国立演芸場での一之輔の会に初参戦。夢空間の落語会は久しぶりだ。人気落語家を集めただけの1,000人以上収容できるホールの会には行く気がしないが、こういう企画なら一度は来てみようかと思っていた次第。
 300席の会場の入りは九割ほどだろうか。構成は次の通り。
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(開口一番 立川こはる 『権助魚』)
春風亭一之輔 『あくび指南』
春風亭一之輔 『千両みかん』
(中入り)
寒空はだか   漫談
春風亭一之輔 『不動坊』
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立川こはる『権助魚』 (18:30-18:45)
 久しぶりだが、しっかり成長している、という印象。女性噺家の限界を感じさせない高座。権助の田舎言葉も厭味がなく、味わいがある。やや艶っぽい科白などもさり気なく語り、女性のハンディを逆に武器にさえしそうな能力を感じるのは私だけではないだろう。ボサボサ頭だけは、主役の一之輔の坊主頭との比較を含め、ちょっとなぁ、とは思うが、きっと床屋に行く暇もない程忙しいのだろう(?)。今年6年目のこの人が二ツ目になれない理由は、まったく理解できない。

春風亭一之輔『あくび指南』 (18:46-19:15)
 半蔵門の駅でこはると偶然会い、90度のお辞儀で大きな声で挨拶されて驚き、さすが一朝一門とは躾が違う、というマクラから、江戸時代の稽古ごとは女性の師匠目当てが多かった、という話に進み本編へ。
 今夜聞いた一之輔のこの噺にはヤマが明確に二つある。「あくび稽古指南所」の開設準備(?)をしていた美人が師匠だと思っていた八五郎が、師匠は実は彼女の旦那だったということで落胆するまでが最初のヤマ場。師匠のお内儀さんに精一杯の思いで自己紹介をする場面が、なんとも可笑しい。「商売は大工です。・・・・・・家(うち)、建ててます。」の絶妙の間が爆笑を誘う。その後に実際の師匠が登場し、稽古そのものの可笑しさへと続く。やや慌しい印象もあるが、“あくび”という妙な稽古ごとに行くための動機づけとしてお内儀さんに焦点を当てるのは納得がいく。
 ここまではいい。しかし、サゲを少しひねった。その効果というと、難しいところだ。二席目のマクラで、やや反省めいた一言もあったが、自分でも分かっているのだろう。チャレンジ精神は良いが失敗もあるし、彼はまだ失敗も許される。しかし、サゲ直前までは今年のマイベスト十席候補に入れるつもりで聞いていたので、ちょっと残念だ。

春風亭一之輔『千両みかん』 (19:16-19:46)
 冒頭、あくび指南のサゲを思いつきで変えたことを反省する弁。こういうことをやるから叱られる、ということで、以前に、ある師匠から楽屋に呼び出され、「オマエは絶対ダメになる」と言われたことがある、という回想。何をやらかして、どの師匠に言われたのかが気になるところだが、叱られるうちが幸せというものだろう。
 師匠一朝はそれほど細かいことは言わないようだが、我がままではあるらしい。トマト好きの師匠が、あるチェーン店の居酒屋での一門の飲み会で、“冷やしトマト”を切らずのそのまま出してくれ、と注文したがダメだった、というエピソードから本編へ。
 この噺は、まだ自分のものになっていない印象。若旦那の刹那さ、番頭の当惑など、深層心理がうかがえるようなところまでには至っていない。見た目での演技力はあるが、軽さを感じる。今後の稽古に期待。

寒空はだか『漫談』(『スタンダップ・コメディー』と言うらしい・・・) (19:55-20:15)
 名前だけは知っていたが、初めてである。一之輔自身が好きなのでゲストとして呼んだようだが、私は楽しめなかった。加えて、私の席の近くに、とんでもない“ゲラ男”の客がいて、どうでもいいギャグも含め大声で笑い続けており、そっちが気になって舞台の芸を集中して聞けなかったことも、楽しめない原因の一つであった。
 それなりの工夫はしているのだろうし、歌とブラックジョークが売りなのかもしれない。しかし、寄席の漫才や漫談に、もっとブラックジョークが程よく効いて楽しい芸人さんはたくさんいる。歌の駄洒落も私には可笑しくないし、どうも相性が合わない笑いだ。しかし、相性のいいお客さんもいるのだろう。人それぞれ、それでいいと思う。

春風亭一之輔『不動坊』 (20:16-20:56)
 はだかの出番を脇から見ていて、間違いなく怒っている人が一部いた、とマクラで言っていたが、私も含まれていたかもしれない^^
 このネタは一之輔で初めて聞くが、結構楽しめた。前半は、旅の途中に亡くなった講釈師の不動坊火焔の女房お滝を、その借金を含めて女房にもらうことになった吉兵衛が主役。湯屋の湯船に浸りながらの、お滝との会話の妄想が楽しい。後半は、同じ長屋の独身三人連れによる、吉兵衛への復讐作戦が中心だが、アルコールと間違って“アンコロ”を買ってきて、リーダー格の漉返し屋の徳さんに罵倒されるチンドン屋の万さんの、そのいじけ方が可笑しい。なかなか楽しかったが、マイベスト十席候補にするには、あと一歩という印象。


 一之輔の持ち味はいくつかあるが、やはり、“目の演技力”が秀逸だと思う。『あくび指南』の八五郎、『千両みかん』の若旦那、そして『不動坊』のチンドン屋の万さんなどに、その技が生かされていた。そして、彼独特の“間”のことも指摘しないわけにはいかない。この日もっとも印象的だったのは、『あくび指南』の八五郎が、あくび稽古の師匠のお内儀さんへの思いいれたっぷりの自己紹介で、「商売は大工です・・・・・・家(うち)、建ててます。」の部分に凝縮されていたように思う。本寸法な噺でも効果的な間の取り方で味を出すこともあるが、オリジナルのクスグリでは、いっそう噺を引き立たせるようにも思う。

 ゲストとの相性はしょうがないとして、三席しっかり一之輔を楽しめた。なんと言っても一席目を普通にサゲていてくれたら、マイベスト十席候補だったのになぁ、などど独りよがりのことを考えながら、ゲリラ夕立の上がった街を、永田町の駅へ向かった。
by kogotokoubei | 2011-08-03 23:04 | 寄席・落語会 | Comments(3)
落語芸術協会のホームページで、来春の真打昇進者5名が発表された。桂平治の十一代目桂文治襲名のことと併せて、一昨日下記の内容が掲載されている。落語芸術協会HPの該当ニュース

平成二十四年真打昇進と桂文治襲名披露について

平成二十四年春、下記の五名を真打昇進いたします。

昔昔亭健太郎 (昔昔亭桃太郎門下)
春風亭柳太 (春風亭柳好門下)
昔昔亭笑海  (昔昔亭桃太郎門下)
瀧川鯉橋 (瀧川鯉昇門下)
笑福亭里光 (笑福亭鶴光門下)
披露興行は平成二十四年五月上席より執り行います。

また、平成二十四年秋、桂平治が「十一代目桂文治」を襲名いたします。
披露興行は平成二十四年九月下席より執り行います。

何卒よろしくお願い申し上げます。



協会HPから、簡単に紹介。
昔昔亭健太郎
・平成9(1997)年12月 春風亭柳昇に入門
・平成14(2002)年2月 二ツ目
・平成15(2003)年7月 柳昇死去により、昔昔亭桃太郎門下へ

春風亭柳太
・平成9(1997)年11月 春風亭小柳枝に入門
・平成14(2002)年3月 二ツ目
・平成15(2003)年6月 五代目柳好門下へ
 *HPには、平成15年に「小柳枝門下」となっているが、兄弟子の柳好の間違い。HPは速やかに修正すべき!

昔昔亭笑海
・平成10(1998)年4月 春風亭柳昇に入門
・平成14(2002)年6月 二ツ目 
・平成15(2003)年6月 柳昇死去により、昔昔亭桃太郎門下へ

瀧川鯉橋
・平成10(1998)年4月 瀧川鯉昇に入門
・平成14(2002)年6月 二ツ目

笑福亭里光
・平成10(1998)年6月 笑福亭鶴光に入門
・平成14(2002)年7月 二ツ目

 平成9年と平成10年の入門組が5人。全員が平成14年に二ツ目昇格者。来年が入門から14年目と15年目になる。香盤通りの年功。
 これからホームページでプロフィールを見る人も増えるだろうから、間違いを修正し、もっと自分をアピールすべきだろう、そういう意味では柳太の芸協HPのプロフィールは問題だ。柳太は小柳枝に最初に入門したが、その後兄弟子の柳好門下になったはずなので、芸協ホームページのプロフィールは、早急に修正すべきだろう。HP担当のミスかもしれないが、小柳枝には失礼な誤りである。
 この五人で生の高座を見たことがあるのは、鯉橋だけだと思う。今年4月、喬太郎をゲストに迎えた桂平治独演会で、『厩火事』を聞いた。地味ながら結構本寸法の高座には好感が持てた。
 
 今年の真打昇進がないのは、五代目円楽グループ(現状じゃ“六代目円楽グループ”と言えなくもないか?)の芸協加入問題があったことが影響していると察する。
 しかし、昔昔桃太郎が、ある落語会で、円楽グループの芸協加入の可能性は消えた、と語ったらしい。落語愛好家仲間から桃太郎の語った内容を伝え聞いたが、それを暴露することは差し控えるものの、円楽グループ問題にケリがついたことで、来春の昇進を発表するに至ったのだろう。


 落語協会は、いつ発表があるのだろうか。実力主義で決めるだろう、という憶測のある小三治会長の選考の中に、果たして一之輔が入るのか否か。それとも、しばらくは従来通りの年功で決めるのか。なかなか興味深いものがある。
by kogotokoubei | 2011-08-03 10:30 | 真打 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛