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噺の話

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2011年 06月 09日 ( 1 )

本来は3月14日に予定されていた会。その時は都合が悪かったのだが、震災の影響で延期になり行くことができた。震災の影響では、延期で行けなかった会が一つ、強行開催(?)されたが、とても行く気になれなかった会が一つという被害があったが、逆にこういうご利益もあった、ということか。すべからく、今回の震災や原発事故が、「災い転じて福と成す」という方向につながって欲しいものだ。
 朝方の雨が止み、梅雨の晴れ間でじんわりと汗ばむ気候の中、仕事の関係で開演直前での会場到着。
*混んでいるエレベーターを避けて階段で4階の会場へ向かったが、階段からの来場を避けるようなポールとテープでの“通せんぼ(?)”がある。それを自分でどけて、エレベーター側にだけいる係の人に「階段で来た」と言って、もぎってもらった。階段側にも出入り口を設けるべきではないのかなぁ。 
 
 こんな構成だった。
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(開口一番 桂宮治 『元犬』)
金原亭馬治 『粗忽の釘』
立川談幸  『時そば』
柳家小満ん 『花見小僧』*『おせつ徳三郎』(上)
(仲入り)
柳家さん喬 『刀屋』*『おせつ徳三郎』(下)
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宮治『元犬』 (18:50-19:00)
にぎわい座の一之輔の会などでも見かけるし、このネタで聞いたこともある。これまでも結構プラスの評価をしてきたが、あらためて褒めたい(!?)。相対比較で、次に登場した馬治よりも会場の笑いは確実に大きかったし、芸も上回っていたように思う。社会人を経験してからの入門で妻子もいるらしい。どんどん活躍の場を広げて欲しい、楽しみな人。オマケで、師匠伸治の「オフィシャルサイト」から、三年前の入門したばかりの師匠とのツーショットを紹介しよう。一之輔が「キン肉マン」と評する、芸人にとって得な表情をご確認の程を。(今の髪型は、モヒカン刈りになっている)桂伸治オフィシャルサイトの該当ページ

馬治『粗忽の釘』 (19:01-19:18)
2000年に十一代目馬生に入門した二ツ目さん。師匠同様、というか真面目な高座ではあるが、会場の反応が物語っていたが、このネタならもっと笑いをとらなきゃいけないだろう。比べては可哀想な気もするが、入門で一年後輩の一之輔の同じネタを最近聞いて、ひっくり返って笑ったばかりなので、なおさら物足りなさを感じた。悪くはない、しかし、それほど良くもない、もっとも評するのが難しいタイプ。

談幸『時そば』 (19:19-19:39)
立川流門下で唯一家元の内弟子経験者という、ほぼ同年代の人。いろいろエピソードのネタはあるのだろうが、この会では披露しずらかったのだろう、全国各地の麺類紹介から本編へ。これまた、何とも言いがたい高座だった。もちろんベテランで水準以上ではあるが、立川一門としては(というのは偏見だろうけど)本寸法で、特段ユニークなクスグリを入れるでもなく、すっきりした内容。再び比較になるのだが、このネタはどうしても鯉昇や、上方版をベースに弾ける昇太のイメージが強く、物足りなさを感じる。気持の良い高座ではあり後味も悪くない。独演会や立川流の会であれば、マクラを含めもっと幅のある高座なのかもしれない。今後、あらためて別な環境で聞いてみなければいけないのだろう。

小満ん『花見小僧』 (19:40-20:10)
マクラからしてこの人らしく、箱入り娘に関する川柳で楽しませる。「白状を 娘は乳母に してもらい」などで、大家(たいけ)の“お嬢さん”と“婆や”が、この噺の陰の主人公であることを匂わせるあたりは、なんともいえない味わい。本編は、二人目の師匠五代目小さん版をベースだと思うが、随所にこの人らしい可愛さ(?)があって、笑いのツボもはずさない。奉公先のお嬢さんを称して、小僧の定吉が、「あのおてんばが!」と言う一言も効いている。なかでも、昨年の花見を回顧する定吉の話の中で、“桜餅”で有名な長命寺の場面、定吉と主人の主客が逆転し、つい調子に乗って薀蓄を披露する主人の話に、定吉が薄笑いを浮かべて相槌を打って、「それから?」と繰り返すところは、聞いているほうの期待とシンクロする楽しさがあって、なんとも可笑しい。もちろん、師匠小さんのこのネタの音源も大好きだが、師匠の名人芸がしっかり継承されているこの高座を聞けてうれしかった。仲入り後に、さん喬が、小満んが前半を先に選んでずるい、というニュアンスのグチを言っていたように、この通し口演では噺そのものの可笑しさは、間違いなくこっちなのだが、演者の力量だって重要だ。流石だった。もちろん、今年のマイベスト十席候補である。

さん喬『刀屋』 (20:22-20:58)
「仲入りの間に、小満ん師匠はさっさと着替えて帰った・・・本来はトリは先輩がとるものだろうに、先に前半を選ばれたら後輩は逆らえない・・・」云々と、半分時間稼ぎ、半分は笑いの少ない後半部分に関する言い訳的(?)な解説から本編へ。たしかに、この噺のほうが難しいだろうとは思う。しかし、志ん生、志ん朝親子は、こっちだけで見事な音源を残しているので、そういったプレッシャーも感じながらの高座だったのかもしれない。最後の身投げの場面の前に浄瑠璃での迷子探しの演出を詳しく解説してつなげたあたりは、私は良かったと思う。本来は『鰍沢』と同じサゲだが、“刀”にかけた別なサゲにしていた。「刀屋」の場所は当時の日本橋村松町、現在の東日本橋一丁目なので、地元のネタと言えなくはない。その村松町の刀屋の主が、徳三郎の暴挙を諌めようとするやり取りがヤマ場だが、この人ならでは演出だった。ご本人は、本音で『花見小僧』のほうをやりたかったのだろうなぁ。機会があればぜひ聞きたいものだ。

 『花見小僧』は、通し口演でもなければ、なかなか聞く機会がない。好企画に震災のおかげ(?)で来ることができた。さて、終演後は落語ブログ仲間のSさんYさんとの、今月の「居残り会」だった。歴史を感じる(?)居酒屋での会話は盛り上がり、ついつい盃は進む。もちろん、帰宅は日付変更線を超えた。いろいろ政府や原発村などへの不満はある。まだまだ気の抜けない危機的状況も続く。しかし、そこから逃避することなく、すべてを日常としてとらえるしかないのだろう。今後も、好きな落語を楽しみ、同好の士と美味い酒を飲みたいものだ。世の中、そんな捨てたもんじゃない、と心底思える日々が来ることを信じて、水天宮前駅に向かっていた。
by kogotokoubei | 2011-06-09 09:34 | 寄席・落語会 | Comments(6)

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