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噺の話

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2010年 12月 14日 ( 1 )

久しぶりの紀伊國屋ホール。ブログを書く前、2008年2月19日の「黒談春」以来である。あの時は『札所の霊験』だったなぁ。そういえば、会場で3月に新百合ヶ丘の麻生市民館での独演会のチケットを売ってたっけ。あの頃は多摩川越えはまだ制覇(?)していなかった。
 回想はここまでとして、今夜の内容。ある程度、この二人でこのテーマなので想像はしていたが、そのお目当てを楽しむことができた趣向だった。次のような構成。

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市馬・喬太郎 プロローグ
市馬 『七段目』
喬太郎『カマ手本忠臣蔵』
(仲入り)
鹿芝居 市馬・喬太郎・二楽
二楽  紙切り
市馬 『俵星玄蕃』
市馬・喬太郎 エピローグ
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プロローグ(19:03-19:13)
ご両人登場。昨晩が初日で今夜が千秋楽という忠臣蔵をテーマにした会について、喬太郎は「最初は談春と三三に依頼があって彼らが断ったのでこの二人になったんでしょう」などと言っていたが、この二人だから、この会なのだろう。二日目なのに、やや不安の色がある喬太郎と、とにかくうれしそうな市馬の表情が対照的だった。

市馬『七段目』(19:14-19:33)
昔の東京落語会の鹿芝居の話がマクラ。七段目で円生の由良助に対して文楽におかるを依頼したが断られ、円生の入れ知恵で小さんにおかる役を頼んだらしいが、今なら涎の出る顔ぶれの鹿芝居だったろう。本編は、あとで喬太郎にいじられていた通り、やや軽めに流した感じ。トリに本番(?)が控えているからね。

喬太郎『カマ手本忠臣蔵』(19:34-20:14)
これを一度は聞きたかったので、まずは目的一つ達成。マクラは笑えたが、あれほど喬太郎に“他言無用”と釘をさされては、書けないなぁ。忠臣蔵を現在の噺家で演じるなら、誰がどの役か、という話なのだが、それ以上は書かない。本編は、“なるほど”という構成、ではある。要するに浅野内匠頭が吉良義央に刀傷におよぶ理由が、内匠頭がオカマだったことにある、という仮説からどんどんストーリーを膨らませている。四十七士を結ぶものは、義でも忠でもなく、オカマの主君への愛であった、という設定が背景にあるのだが、たしかにユニークな筋書きである。しかし、私も、近い席にいた年配の方々もちょっとこの高座には引いてしまう。私の場合、喬太郎の新作は、大いに笑えたりその創作能力に感心したりするるものと、どうしてもついて行けないものとに極端に分かれる。一度聞けたことを良しとするが、やはり彼には古典を期待してしまう。

鹿芝居(20:30-20:42)
市馬の大石内蔵助、喬太郎の吉良、二楽が赤穂浪士の一人、という設定。とりたてて言うこともないが、槍で刺したり、刀で切る効果音と動作のシンクロが合わなすぎる。裏方はもうちょっと練習するなりして臨んで欲しい。いくら鹿芝居だと言っても、あれでは興醒めである。

二楽(20:44-20:58)
市馬も笑いながら言ってはいたが、あまりにも忠臣蔵や落語を知らなすぎるだろう。『中村仲蔵』『淀五郎』というお題をいただくことは十分想定できたはず。また、『淀五郎』について会場に助けと求めた際に、「市馬さんが落語でやる」という答えをいいことに市馬の顔を切ったが、答える客も客だ。「四段目」「あるいは「切腹」と答えて欲しいものだ。

市馬『俵星玄蕃』(20:59-21:10)
これも、一度は聞いて見ておきたかったので、目的の二つ目は達成。確かに唄は上手いが、全体として、やはり三波春夫には勝てない。特に「時は元禄15年12月14日~」の語りの部分の声の艶、リズムが違う。もちろんしょうがないことだが、市馬もお金をとって聴かせるなら、少し浪曲も勉強してあの三波春夫の語り口を真似る必要があるだろう。唄は自分なりにこなしていいが、浪花節をベースにした語りは、一応基本の形や口調がある。語りの部分でもっと盛り上がるはずなのだ、この唄は。


忠臣蔵をテーマにした余興としては楽しかったし、目的とする芸も聞くことはできた。しかし、企画全体が色物という感じで、満足感はあまりない。幕開けが微妙に遅れたり、芝居と音響との度重なるズレ、開演前の館内放送でのつまらない川柳など、正直言って居心地が良いとは言えなかった。これは初めから分かってしかるべきことだったが、同じ高田文夫事務所が企画した4月20日の高円寺での喬太郎の小満んとの会が素晴らしかったので、ないものネダリの期待をしてしまったようだ。2010年4月20日のブログ
こういった企画ものは用心してかからないと、いけない。そんなことを反省しながら新宿駅に向かっていた。
by kogotokoubei | 2010-12-14 23:12 | 寄席・落語会 | Comments(4)

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