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噺の話

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2010年 10月 01日 ( 1 )

 今日10月1日は古今亭志ん朝の命日。落語界が“至宝”を失ってから、早や九年。そして、師匠が命日を前に天国に誘ったかのように総領弟子の志ん五が亡くなった。師匠より早い六十一歳での死が惜しまれる。
*「師匠」を含め敬称は略しますのでご容赦

 志ん朝が亡くなった後、平成13(2001)年10月6日にNHKで放送された追悼番組『古今亭志ん朝さん 江戸の粋をありがとう』を見直した。「NHKクロニクル」の同番組ページ
 番組では冒頭に、亡くなった年の2月、500回記念の東京落語会における『干物箱』の一部が紹介された。やつれた様子はあるが、語り口は流石だ。続いて何人かの方が思い出を語る。円歌、仁鶴、そして「若い季節」で共演した水谷八重子。彼女の言う「朝(ちょう)さま」の呼称が、当時の志ん朝の周囲、特に大人の女性からの見方を物語る。その後に山田五十鈴との昭和49年の舞台「たぬき」の一部が紹介されるが、これがいい。山田五十鈴の声って、なんて色っぽいんだろう・・・・・・。続いてファン代表ということで山藤章二。その後に、元気な姿の談志家元が登場。一年ほど前に会って飲んだ時の回想を、二人の会話をカミ・シモをつけて再現してくれる。こんな会話だ。
志ん朝 「久しぶりにアニさん上手い酒を飲んだよ」
談志  「おい、志ん生になれよ」
志ん朝 「なったほうがいいかしら」
談志  「おれはなるべきだと思うな、志ん生を継げよ。そしておれに口上
     言わせてくれよ」
志ん朝 「アニさん言ってくれる?」
談志  「当り前じゃないか、言うよ。そのかわり、おれが震えるような芸人
     になれよ、もっと上手くなれよ」
 
 家元のことだから、若干の“イリュージョン”があるだろうし酒の席での会話だ。しかし、酒は人間の本音を引き出すこともある。この時の志ん朝の心情はいかばかりだったろう。
 最後は平成5年の東京落語会、55歳の時の『愛宕山』が通し。やはり、素晴らしい。

 行方不明の高齢者の問題があるので、本当の日本人の平均寿命がいくつかは怪しくなってきたが、志ん朝の63歳や志ん五の61歳は、決して“往生”とは言えないだろう。
 私は生の志ん五を見る機会がなかった。しかし、今はもう古い話になってしまうが、2008年10月にNHK BS ハイビジョン「お好み寄席」で志ん五の『柳田格之進』を見て、ブログを書いた。その高座というより、高座の後のインタビューが印象に残り、そのことについて書いたのだが、後半を引用したい。
2008年10月11日のブログ

 また、当時師匠の志ん朝師匠の忙しさは半端ではなかったようで、なかなか稽古をつけてもらえなかったため、一緒にいる時間が長かった志ん生大師匠に稽古をつけてもらった噺が『道灌』『金明竹』『宿屋の富』など十くらいはあるとのこと。そして、クルマで移動する前に運転席の志ん朝師匠が志ん五師を後部座席に乗せ「オヤジに教わった噺をやってみな」とばかり聞いてくれたらしい。バックミラー越しの弟子がさらうのを見聞きし、ひどい出来の場合は「よほどオヤジが具合の悪いときに習ったな、そんなマクラはその噺ではふらないんだ」と駄目出しをしてくれたらしい。想像するにも微笑ましい光景だ。

 そして、志ん五が一番覚えているのは、志ん朝師匠が、「たとえ志ん生だって間違いは間違いだ。俺も神様じゃないんだから間違う時はある。オマエは『師匠は間違えたな』という耳だけは持たなけりゃだめだぞ」と言った言葉とのこと。このへんが、志ん朝の志ん朝らしいところなのだろう。

 大師匠と師匠の名人親子、それは大師匠志ん生と師匠馬生の関係でもあり、古今亭一門も金原亭一門にもさまざまな思い出が伝わっているだろう。昭和48年に亡くなるまで、二人の息子とその一門の弟子達に多くの落語のDNAを伝えたであろう志ん生。その生き証人がまだ元気なうちに、もっとさまざまな逸話や記憶を語っておいて欲しいし、書き残して欲しい、と強く感じたエピソードだった。

 まさか、あの放送から二年で志ん五が亡くなろうとは思わず、つくづく生で味わっておくべきだったと、今になって後悔先に立たず状態。定評のある与太郎噺から晩年の古今亭の人情噺まで、固定ファンは多く、私の知る落語愛好家の方もその一人で、相当ショックは大きかったようだ。あまりにも急だったからね。

 でも、悲しむばかりではいけないだろう、ここは“落語的”発想で頭を切り替えたい。
 天国の「古今亭一門会」を考えてみた。凄い顔ぶれだ。時代は昭和から平成に亡くなった五代目志ん生一門に限るが、私の好みでこんな顔付けを考えた。ネタの中には季節に関わらないものもあるが、あえて「春・夏」版と「秋・冬」版の二つ考えた。

「古今亭志ん生一門会 於:あの世亭」
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     春・夏               秋・冬
                            
古今亭志ん五 『道具屋』         古今亭右朝  『締め込み』 
金原亭馬の助 『権助芝居』        古今亭志ん馬 『替り目』
古今亭志ん朝 『愛宕山』         古今亭志ん朝 『二番煎じ』
( 仲入り)                    (仲入り)
金原亭馬生  『船徳』          金原亭馬生 『目黒のさんま』
三味線豊太郎  俗曲・出囃子       三味線豊太郎 俗曲・出囃子
古今亭志ん生 『唐茄子屋政談』       古今亭志ん生 『富久』 
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 断るまでもないだろうが、志ん馬は八代目、馬の助は初代。三味線豊太郎は志ん生の次女の喜美子さんである。他に三代目の吉原朝馬などの名も志ん生の弟子として挙がるが、音源も聞いたことがなく人物ついてもよく知らないので割愛。
 この顔ぶれとネタを見て、いろいろご不満やツッコミがあろうことは十分に承知。親子三人の持ちネタだって、それぞれあまりにも多いからねぇ。人によって好みも分かれるだろうし、その中から、ほんの軽い気持の余興として二つ選んでいるので、ご勘弁を。とにかく、天国の古今亭一門会は豪華だ。

 これらの噺の音源のほとんどは現在でも入手可能。だから、自前で「古今亭一門会 於:あの世亭」を携帯音楽プレーヤーに入れて楽しむこともできる。しかし、そんなことをたくらんでいるのは、私だけだろうなぁ。
by kogotokoubei | 2010-10-01 21:54 | 今日は何の日 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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