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噺の話

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2010年 05月 07日 ( 1 )

池袋は演芸場と芸術劇場には度々来るが、ここは初めてである。なんとも繁華街ど真ん中のロケーション。
266席の客席の入りは約六割程度か。映画館が基本の会場だが、席もゆったりとしていて椅子の背もたれも高く、非常に快適。高座の作りは若干無理があるが、それもご愛嬌だろう。

演者とネタは次の通り。
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(開口一番 柳家まめ緑 『狸の札』)
春風亭百栄  『お血脈』
古今亭菊之丞 『愛宕山』
(中入り)
柳家花緑   『紺屋高尾』
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まめ緑(19:00-19:14)
ある意味で初々しい緊張感を漂わせていたようには思うが、あまりにも表情が硬すぎ。昨年花緑に入門したばかりの前座さんで一所懸命さは伝わるが、会場を暖めるまでには今後も修業を積んでもらいましょう。

百栄(19:15-19:47)
マクラから本編まで三年前二ツ目の栄助時代の「第五回 朝日いつかは名人会」(2007年4月25日)のデジャブだった。その時は喬太郎が指南役でもう一人の二ツ目が三遊亭天どん。あの会は対談を含め非常に楽しかった。さて、三年前と今夜の違いは、得意の英語でのクスグリ。小噺の「ねずみがチュー」というネタとトントンオチの「五日六日さ~ん」「七日八日」「九日十日」を英語で演じたところに工夫の跡があった。後者は特に「ディズニー風で」という演出。十年間アメリカにいたことを活かすアイデアとしてはおもしろい。今日の会ではさすがに新作は演りにくかったのだろうし本人にはニンなネタなのだが、できれば地噺ではない古典を聞きたかった。しかし、百栄の良さは初めてのお客さんにも十分伝わっただろう。

菊之丞(19:48-20:20)
マクラで一日で都内の常席寄席四席すべてをハシゴしたというエピソードが披露されたが、たしかに今日ではなかなかあり得ない出来事だろう。幇間のマクラから『鰻の幇間』あたりを想像していたので、うれしい誤算。熱演であったし、非常に楽しかった。いいなぁ、この人のこういう噺も。本寸法の江戸の香りがするとともに、柔らかさと色気がある。高座に上がる姿を見てホッとする噺家さんの一人だ。中入り前、菊之丞のこの噺が先で、果して花緑は大丈夫か、と思っていたが、結果としてそれは杞憂だった。

花緑(20:32-21:25)
今年前半の私のトップ3には入るだろうと思う高座。昨日浅草で小三治師匠の代演だったが、客は十人。しかし、一人が三人分の笑い。『野ざらし』を演じた後に「うまい」の声が客からありうれしかった、というこの人のピュアさを物語る話があった後、なんとこの長講へ。稽古をつけてもらっただけに談春版を彷彿とさせる部分は多いが、全体としては花緑の紺屋になっている。とにかく久蔵がいい。ラスト直前で「寝ている人がいるから言いますけど、ここからが肝腎ですからね~」のアドリブもこの人らしい嫌味のないサービスと思えるから、不思議だ。語り終わったところで、よほど「うまい!」と声をかけようとも思ったが、常連さんの多い会に初めてやってきた私のするべきことではないと思いやめた。それ位、すばらしい出来。


いただいたプログラムに主催者と思しき方の口上があったが、初登場の花緑には相当強い思い入れがあったようだ。そしてその期待に花緑は十分に応えたように思う。長講高尾の出来栄えが良かったことはもちろんだが、彼の立ち居振る舞いからも、彼がこの高座を大切に思っていることが伝わった。
関連してその振る舞いについて。花緑は高座に上がるときに一度舞台の端で一礼する。また高座から下がる時にも一度立ち止まって礼をした。もちろん人それぞれなのだが、私は清清しく感じて肯定的だ。例えば志の輔が高座から下がる際の見た目の印象は良くない。もちろん精魂込めた熱演の後なので目一杯なのかもしれないが、やや偉そうな態度に見えるのは私だけだろうか。あれは損をしていると思う。別に客に媚びろとは言わないが、笑顔あるいは普通の表情と態度で退場して欲しいものだ。

百栄、菊之丞、そして花緑、今日の三人には客への純粋なサービス精神や真摯な姿勢のようなものを感じることができた。
かつてブログにも書いたが、花緑については彼の著書『落語家はなぜ噺を忘れないのか』を読むまでそれほど気になる噺家ではなかった。その後彼の高座を聞く度に、なるほど入門から七年で真打昇進したのは、必ずしも七光りだけではないなぁ、と思えてきた。
2008年12月2日のブログ

帰り際、会場では次回6月9日開催の小満ん、鯉昇出演のチケットが発売されていたが、その日は都合で行けそうにないため、泣く泣く買わずに帰ってきた。こういった渋い顔付けをする主催者、熱心に聞き笑いのタイミングも本寸法(?)な「友の会」の方を含む常連さん。この会は“良心的な地域寄席”という感じで、ぜひまた来たくなる落語会だった。外はまだ小雨。しかし、大いに充実した心持で池袋駅に向かった。
by kogotokoubei | 2010-05-07 23:36 | 寄席・落語会 | Comments(0)

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