若月澪子著『ルポ 過労シニア』(朝日新書)より(1)
2025年 12月 05日
10年前、60歳で定年再雇用となってから、会社の休みの日に飲食業のアルバイトをしていた。
最初にアルバイトを始めたある飲食店には、結果8年勤めたが、会社事情で閉店。
その後、同じような業態の飲食店に半年。
最初の店がバイト仲間の結束も固く、いまだに飲み会の誘いがあるほどだが、二軒目は、違った。
すでに出来上がったヒエラルキー(?)があり、また、朝と昼に、それぞれお局さんがいた。
理不尽な指示も多く、そのうちキレると思い、辞めた。
まだ、Wワークをしようとネットで求人を検索しても、65歳以上の口は限られていた。
結果として、介護施設の調理補助のバイトを二か所。
老健に半年、有料介護付き老人ホームに三ヵ月。
最初の方は、配膳者での運搬、配膳者への食事セット、同じく食後の片付けで足腰に負担が多かった。
二つ目は、真夏での勤務ということもあったが、食洗機と乾燥機の距離が近く、乾燥機は80度設定、ということで二度ほど熱中症に近い状態になって、辞めた。
昨年の8月のことだ。
さすがに、心身ともにきつくなったし、年金ももらっているので、今は会社の契約社員の仕事だけやっている。
実は、介護施設のバイトの後、飲食業のバイトにいくつか応募した。
面接なしで落ちたのが大半。
応募条件に「シニア応援」とある案件に応募しても、実態は60歳までということも多かった。
面接して落ちたのは二つ。
どちらも新規オープンの案件で、応募が多いから、若い人を優先するのは、ある意味当然かもしれない。
なお、マンション管理人の募集にも一件応募し面接の結果採用となったのだが、担当する物件が固定しないということなので、お断りした。
アルバイトをしていた頃に、「Wワーカーおやじの独り言」という題で記事を書いた。
「Wワーカーおやじの独り言」
Wワーカー中に、職場でさまざまな人と出会った。
まだ若いシングルマザーもいた。
私より年長で、年金加入期間が短かったので、まだ働く必要のある方も数名。
引きこもりの四十代の子どもを養っている方、親の介護に苦労している方、などなど。
最初にアルバイトを始めたある飲食店には、私より年上は、8年間で、のべ6名ほどだったかと思う。
ちなみに、その店(チェーン店のフランチャイズ)では、外国人労働者はいなかった。
その後、老健、そして、有料介護老人ホームで、調理補助をした。
どちらも、外国人労働者は、いなかった。
老健では、高齢労働者の割合が高かった。
朝、昼、夜のシフト全体で、4名(朝2名、夜2名)が私より年上だった。
ということで、実体験として、高齢者労働の現場を体験した。
そんな私が、書店でつい手にしたのが、この本。

若月澪子著『ルポ 過労シニア』
若月澪子緒『ルポ 過労シニア』(副題“「高齢労働者」はなぜ激増したのか”)は、朝日新書から2025年11月30日初版。
著者は、1975年生まれ。いわゆる、就職氷河期世代。
大卒後にテレビ局の有期雇用キャスターやディレクターなどに携わって以降、生涯非正規労働者とのこと。
結婚退職後、自殺予防団体の電話相談ボランティアを経験。育児のかたわらウェブライターとして借金苦や終活に関する取材・執筆を行っている。
著書に『副業おじさん』(朝日新聞出版社)がある。
<目次>
□はじめに シニア労働の「プライドと偏見」
□第一章 終わらない「子育て」
□第二章 「貯蓄ゼロ」の実態
□第三章 2000万円では足りない
□第四章 シニア・ケアラー
□第五章 プライドのゆくえ
□第六章 孤独のトンネルを抜けて
□おわりに シニア美談という「話型」
□参考資料
「はじめに」から。
本書はさまざまな階層の21人の「シニア労働者(働く高齢者)」へのインタビュー取材をまとめたものである。今や日本は60~64歳の8割、65~69歳の6割、さらに70歳以上の半数以上が働く時代となった。
日本における労働社会からの退場は、「60歳定年」という華々しい「カットアウト」から、段階を踏んでゆるやかに舞台上から姿を消す「フェードアウト」への変貌している。令和のシニア労働者は、働き続けながらも、主役から脇役へ、脇役から端役へと静かに終わりを迎えている。
本書では令和に生きるシニア労働者が、どのような動機で働き、仕事をどのように捉え、シニア労働の現場にどのような問題が隠されているかを、働くシニアへのインタビューを通して明らかにするものである。
今の日本の労働現場におけるシニア労働者の立ち位置は、女性や外国人労働者と同等、あるいはそれ以下の極めて低い地位にある。シニアには仕事の選択肢が少なく、賃金は低く、そして健康不安を抱えながら働く人も多い。それでも彼らが働くのはなぜなのか。
この後、ある60代女性の話が紹介されている。
「成人した息子が仕事を辞めて実家にひきこもってしまい、生活費を稼ぐために60歳過ぎて働きに出なければならなくなった。長年専業主婦をしていたためパソコンなどと使う仕事はできないので、清掃の仕事を始めた」
次に、70代の女性。
「中学校の頃からひきこもり状態にある40代の息子がいる。70代の夫は年金生活に入っているが、三人で自宅にいて顔を合わせるのがつらい。家族内のトラブルを避けるために、私は今でも会社で庶務の仕事をしている」
私は、自分のバイト仲間の顔が浮かんでくる。
内閣府のサイトに、令和五年のデータだが、65歳以上の労働者の割合のグラフがあったので拝借。
内閣府サイトの該当ページ

全労働者に占める65歳以上の労働者の割合は、13%で、増加傾向にある。
あえて書くが、何らかの事情で働く高齢労働者の世帯に、18歳未満の子どもがいない場合、今回の給付金は回らない。
たとえば、前述のお二人の世帯にも、給付はない。
たしかに、子育て、とは言えないかもしれないが、子供を養っていることには変わりがない。
過労シニアの実態について、次回は、第一章に進む。
