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田部隆次著『小泉八雲』(中公文庫)より(4)


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田部隆次著『小泉八雲』(中公文庫)
 
 田部隆次著『小泉八雲』(副題「ラフカディオ・ヘルン」)の四回目。

 初版は1980年に北星堂書店から刊行され、今年3月に中公文庫で再刊。
 とはいえ、本書の「序」で著者は、この伝記の第一版は、大正三年四月、早大出版部から出た、と記している。

<目次>
□序
□故小泉八雲の著作につきて  坪内逍遥 ※「つきて」は原文のママ
□序  西田幾多郎
□小泉八雲先生を懐ふ  内ケ崎作三郎
□1 ギリシャからアイルランドへ
□2 大叔母のてもと
□3 学校生活
□4 シンシナティ
□5 ニューオーリンズ
□6 西印度、フィラデルフィア、ニューヨーク
□7 横浜から松江
□8 熊本
□9 神戸
□10 東京 その一
□11 東京 その二
□12 思い出の記  小泉節子(セツ)
□13 交際と交友
□14 人、思想、芸術
□15 ヘルンの通った道
□16 著書について
□17 余禄
□18 年譜(生涯、著作遺稿等)
□小泉八雲ー名の無き庶民の心を語り継ぐ  池田雅之
□索引

 小泉節子(セツ)の「思い出の記」をご紹介したい。
 適宜、関連する部分を本文からも引用することにする。

 松江の学校での支援者のこと。

 学校は中学と師範の両方へ出ていました。中学の教頭の西田(千太郎)と申す方に大層お世話になりました。二人は互に好き合って非常に親密になりました。ヘルンは西田さんを全く信用してほめていました。「利口と、親切と、よく事を知る、少しも卑怯者の心ありません、私の悪い事、皆言うてくれます、本当の男の心、お世辞ありません、と可愛らしいの男です」お気の毒なことにはこの方は御病身で始終苦しんでいらっしゃいました。
「唯あの病気、如何に神様悪いですねー私立腹」などと言っていました。又「あのような善い人です、あのような病気参ります、ですから世界むごいです、なぜ悪き人に悪き病気参りません」東京に参りましても、この方の病気を大層気にしていました。

 「ばけばけ」の錦織のモデルが、西田千太郎だ。

 本人は結核のため三十代で亡くなっている。
 
 「小泉八雲記念館」では、没後120年の2017年に企画展を開催した。
 同記念館サイトから引用。写真画像も拝借。
「小泉八雲記念館」サイトの該当ページ



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松江雑賀町に生まれ、松江中学校(島根県尋常中学校)の教頭を勤めていた西田は、1890年(明治23年)に着任したハーンと親交をむすぶことになります。松江時代の八雲の取材活動・資料収集・研究調査などに関して最上の協力者となり、私生活でも助力しました。二人の親交はハーンが松江を離れたのちも続きました。ハーンは著書『東の国から』を西田に捧げて感謝の意を表しました。

 「ばけばけ」に錦織は、今のところは、病弱に見えない。

 その錦織が、まず女中としてトキ(セツ)をヘブン(ヘルン)に紹介したことになっている。

 セツの「思い出の記」には、結婚の経緯については、書かれていない。

 よって、本書の「横浜から松江」から引用したい。
 なお、同年、は明治二十三年。

 同年十二月、西田の媒(なかだち)に依って松江の藩士小泉湊の女(むすめ)節子〔正しくはセツ〕と結婚した。小泉家は維新前御番頭を勤めて三百石を食(は)んだ家柄であった。夫人の母方の祖父は放蕩な主君を三たび諫(いさ)めて赤坂見附上の主邸内で切腹した出雲で有名な忠臣、塩見増右衛門と言う家老(知行千四百石)であった。その頃(嘉永以後)江戸では『三本杉家老鑑』と題して永く芝居に演じ、『線香山』と題して講談になった。その後の『河内山宗俊』も同じ事実によって物、『家老高木小右衛門』は塩見増右衛門をモデルにしたのであった。維新後、出雲には奮発家と言う新宿語が永く流行した。発奮して事業を起す人の事であった。夫人の父も奮発家の一人となって織物の工場を起したが、士族の商法が多く陥るべき運命に陥って失敗した。名家の零落は悲惨である。夫人も学問芸能一通り修めたあとで思わぬ不幸に際していた時、西田に勧められてヘルンに嫁する事になった。ヘルンの人となりはその頃松江市中に知れ渡っていたので、夫人も不安のうちに安心して嫁したのであった。

 こちらは、セツが小泉家から稲垣家に養子に出されたことや、その稲垣家も零落し、小泉家の工場で働いていたこと、婿をもらったが別れたことなどが、割愛されている。

 結婚以前のことは、「ばけばけ」の方が詳しいし、最初は女中だったことを含め、ほぼ史実を踏まえていると思う。


 とはいえ、引用部分で印象的なのは、セツの実母である小泉チエの父親(セツの祖父)のことだ。
 忠臣として芝居にも講談にもなった人物の娘が、小泉チエだった。

 「ばけばけ」では北川景子演じる雨清水タエだが、彼女が、なぜあれほどプライドが高いのかが、その血筋から納得できる。

 父は、主君を諫めるため、切腹した人物なのであった。


 松江の学校では、西田の他にもヘルンを支援した人物がいたが、その人に関しては次回。

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by kogotokoubei | 2025-11-14 12:54 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛
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