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映画「アイム・スティル・ヒア」について(10)


 映画「アイム・スティル・ヒア」の十回目。
 アカデミー賞国際長編映画賞受賞作。

 公式サイト。
映画「I'm Still Here」公式サイト
 
 同サイトの「STORY」を引用。

1970年代、軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員ルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていた。しかしスイス大使誘拐事件を機に空気は一変、軍の抑圧は市民へと雪崩のように押し寄せる。ある日、ルーベンスは軍に連行され、そのまま消息を絶つ。突然、夫を奪われたエウニセは、必死にその行方を追い続けるが、やがて彼女自身も軍に拘束され、過酷な尋問を受けることとなる。数日後に釈放されたものの、夫の消息は一切知らされなかった。沈黙と闘志の狭間で、それでも彼女は夫の名を呼び続けた――。自由を奪われ、絶望の淵に立たされながらも、エウニセの声はやがて、時代を揺るがす静かな力へと変わっていく。

 予告編。



 パンフレットを買った。

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 本編はポルトガル語だが、英語版のシナリオを見つけたので、参考にしたい。
英語版脚本

<スタッフ>
□監督:ウォルター・サレス
□製作:マリア・カルロタ・ブルーノ、ホドリゴ・テイシェイラ、
マルティーヌ・ドゥ・クレルモン=トネール
□原作:マルセロ・ルーベンス・パイヴァ
□脚本:ムリロ・ハウザー ヘイター・ロレガ
□撮影:アドリアン・テイジード
□美術:カルロス・コンティ
□衣装:クラウヂア・コブケ
□編集:アフォンソ・ゴンサウベス
□音楽:ウォーレン・エリス

<キャスト>※役名・俳優名
□エウニセ・パイヴァ:フェンルナンダ・トーレス
□エウニセ(老年期):フェルナンダ・モンテネグロ
□ルーベンス・パイヴァ:セルトン・メロ
□ヴェロカ:ヴァレンチナ・ヘルツァジ
□エリアナ:ルイザ・コソフスキ
□ヴェロカ(成人期):マリア・マノエラ
□エリアナ(成人期):マルジョリエ・エスチアーノ
□ナル:バルバラ・ルス
□バビウ:コーラ・モラ
□ナル(成人期):ガブリエラ・カルネイロ・ダ・クーニャ
□バビウ(成人期):オリヴィア・トーレス
□マルセロ:ギリュルメ・シルヴェイラ
□マルセロ(成人期):アントニオ・サボイア

 では、あらすじ。
 もちろん、ネタバレなので、ご注意のほどを。

 前回までのあらすじの見出し。

(1)レブロンビーチ:エウニセ
(2)レブロンビーチ:子供たちと犬
(3)パイヴァ家:ルーベンスと犬
(4)検問とヴェロカ
(5)パイヴァ家:1970年クリスマス前
(6)パイヴァ家:夫婦の会話
(7)電話
(8)8ミリ映像:新居模型と家族
(9)レストランの家族
(10)ガスパリアン書店
(11)パイヴァ家:書斎
(12)ヴェロカからの便り
(13)ルーベンス連行
(14)エウニセとエリアナの連行
(15)エウニセへの尋問
(16)廊下のエリアナ
(17)エウニセへの尋問(続き
(18)エウニセへの尋問・二日目
(19)エウニセ釈放
(20)エウニセの帰宅
(21)軍事拘置所
(22)マーサ
(23)銀行
(24)パイヴァ家:ヴェロカの手紙、そしてピンパンのこと
(25)ピンパンの埋葬
(26)ヴェロカの手紙:続き
(27)マーサの手紙
(28)フェリックスとエウニセの会話
(29)新築予定地・ボタニコ
(30)設計事務所
(31)銀行
(32)マリア
(33)ヴェロカの帰国
(34)記念写真
(35)パイヴァ家:居間
(36)パイヴァ家:キッチン
(37)引っ越し
(38)サンパウロ:1996年

 その後。

(39)法科大学院:講堂
 エウニセが、プロジェクターの脇で話をしている。
 スクリーンには先住民集落の航空写真が映し出されている。
 エウニセは、高速道路建設のために先住民が不正な契約で土地を奪われていると説明する。
 彼女が言う。
 「土地収奪者による不正契約の無効化を申請します。マヌエラと私がパタショ族のために行ったように」
 そのマヌエラが言う。
 「エウニセの報告書全文を読みたい方は、授業後にコピーを受け取りに来てください」
 エウニセが話し始めると、スタッフがマヌエラに何か伝言して。
 マヌエラは、エウニセに言う。
 「緊急の電話です」
 エウニセは急いで事務所に駆け付け、受話器を取る。
 緊張した面持ちで話を聞いている。
 突然、彼女の膝ががくんと崩れた。
 机に手をついて立ち上がり、両手で顔を覆う。

(40)裁判所
 電動車椅子がゆっくりと舗道を進んでいる。
 白いドレスシャツにネクタイを締めたマルセロだ。
 エウニセに近づくと、彼女が言う。
 「髪くらい、梳いてこないと」
 と息子の髪に触れるが、マルセロがそれをかわす。
 「ネクタイはしたよ、ママ」
 横でバビウが笑っている。
 三人が建物の中に入って行く。
 マルセロの姿を見て、受付のカーラが近づいて来た。
 「サインをいただいていいですか?」
 と彼の著書とペンを渡す。
 サインをしてマルセロが彼女に聞く。
 「気に入った?」
 カーラは言う。
 「すごく泣きました」
 マルセロ「えっ! 笑えるはずなんだけど」
 彼女「いえ、あなたの事故のこと」

 三人は、案内された部屋に向かう。
 いったい何が始まろうとしているのだろうか。
 事務員がルーベンスの死亡診断書エウニセに渡す。
 彼女は、政府が夫の死を認めた公式書類を見つめ、口元に笑みを浮かべる。
 エウニセ「ありがとう」
 バビウが「見せて」と言うので、娘にその書類を渡す。
 夫、父親の死を告げる書類が、25年の時を経て、公式に渡されたのである。

(41)記者会見
 裁判所のロビーで、大勢の記者やカメラマンが待ち構えていた。
 カメラのフラッシュが光る。
 エウニセは、そのカメラの向かってルーベンスの死亡証明書を掲げる。
 エウニセ「死亡証明書を見て安堵感を覚えるのは、奇妙なことですよね」
 記者「ご主人が残した空虚感に、どのように対処しましたか?」
 エウニセ「強制失踪は、当時の政権による最も残酷な行為の一つでした。一人を殺せば、残りの全員を
永遠の精神的拷問に追いやるのです」
 記者「民主主義が回復した今、政府は過去の清算よりももっと緊急の課題を抱えているのではないでしょうか?」
 エウニセ「いいえ。遺族への補償は絶対に必要だと思います。そして、最も重要なこと、つまり独裁政権下で犯されたすべての犯罪を解明し、裁くことです。さもなければ、犯罪はこれからも不処罰のまま犯され続けるでしょう」
カメラのフラッシュがさらに光る。

(42)エウニセのアパート
 ネクタイを外したマルセロが、死亡証明書を見ながら煙草をくゆらしている。
 エウニセが、戸棚の中を探している。
 マルセロ「安物はいやだよ」
 ウィスキーを取り出したエウニセが、グラス三つに注ぐ。
 マルセロ「やっと終わったね。そろそろ引退してもいいんじゃない?」
 バビウが言う。
 「少し休んで、ベルンにいる私とダニエルに会いに来て」
 エウニセ「休むには、ビーチに行かなきゃね」
 三人は、乾杯をする。
 エウニセが死亡証明書を手にして言う。
 「この紙切れで事件は動き出すかもしれないけど、何が起こったのかは書いてない。誰が責任者なのかも書いてない。まだ先は長いわ」
 バビウ「新聞のお父さんの写真が載っていたわ」
 それを聴いて、エウニセがヴェロカに電話をした。
 エウニセ「やあ、ハニー、うん、うまくいったわ。今、帰ったところ」
 バビウが口を挟む。
 「愛を込めて!」
 マルセロ「ジョージによろしく!」
 エウニセが受話器を置いて、席を離れる。
 バビウが宝箱から写真を取り出す。
 ヴェロカの送別会の写真や、愛犬と遊んでいる写真を、二人が見つめる。

 この日まで、あまりに長い年月が経った。


 あらすじは、次回まで。

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by kogotokoubei | 2025-09-26 12:57 | 映画など | Trackback | Comments(0)

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