映画「NO OTHER LAND」が伝えること(2)
2025年 03月 27日
映画「NO OTHER LAND」の二回目。
その前に、この映画の共同監督の一人で、イスラエル人ユヴァル・アブラハームのXを紹介したい。
彼ら同様に共同監督の一人、ハムダン・バラールがイスラエル軍と入植者の暴行され拷問されていた間、米国アカデミーは、彼らを支援することを拒否したと伝えている。
Sadly, the US Academy, which awarded us an Oscar three weeks ago, declined to publicly support Hamdan Ballal while he was beaten and tortured by Israeli soldiers and settlers.
— Yuval Abraham יובל אברהם (@yuval_abraham) March 26, 2025
The European Academy voiced support, as did countless other award groups and festivals. Several US…
拙訳。
悲しいことに、3週間前には私たちにオスカーを授与した米国アカデミーは、ハムダン・バラールがイスラエル兵と入植者によって殴打され、拷問を受けている間、公的に支援することを拒否した。
欧州アカデミーは支持を表明し、他の無数の賞団体や映画祭も支持した。米国アカデミーの数名の会員(特にドキュメンタリー部門)は声明を出すよう求めたが、最終的には拒否された。私たちは、入植者の襲撃では他のパレスチナ人も暴行を受けたから、映画とは無関係とみなされかねず、対応する必要はないと考えたと聞いた。
アメリカという国の本性が、見えるようだ。
さて、この映画のこと。
こちらが、公式サイト。
映画「NO OTHER LAND」公式サイト
公式サイトから。
イスラエル軍による破壊行為と占領が今まさに進行している、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区<マサーフェル・ヤッタ>。
本作は、この現状をカメラに収め世界に発信することで占領を終結させ故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年バーセル・アドラーと、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年ユヴァル・アブラハームの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間に渡り記録したドキュメンタリーだ。
監督は、彼ら自身を含むパレスチナ人2人・イスラエル人2人による若き映像作家兼活動家の4人。「イスラエル人とパレスチナ人が、抑圧する側とされる側ではなく、本当の平等の中で生きる道を問いかけたい」という彼らの強い意志のもと危険を顧みず製作された。
スマートフォンや手持ちカメラを使用した、そこで暮らす当事者だからこそ捉えることのできた至近距離からの緊迫の映像で、住民たちが家や小学校、ライフラインを目の前で破壊され強制的に追放されていく、あまりに不条理なパレスチナの現実をあぶりだしていく。
予告編。
パンフレットを買った。

あらすじを書く前に、まず、ガザとヨルダン川西岸について確認したい。
公式サイトからコピーしたイスラエルの地図と、この映画の舞台であるマサーフェル・ヤッタ。

こちらは、パンフレットの地図。

ヨルダン川西岸で、パレスチナが行政や治安維持権限を握っている場所は、飛び飛びで散らばっている。
もっとも色の濃いA地区は、行政も治安維持権限もパレスチナ。
しかし、薄いグレーのB地区は、行政はパレスチナで、治安維持権限はイスラエル。
ほとんど色のないC地区は、行政も治安維持権限もイスラエル。
マサーフェル・ヤッタは、C地区である。
だからと言って、イスラエルが好き放題して良いはずはない。
少し歴史を振り返る。
1967年の第三次中東戦争(通称「六日戦争」)で勝利したイスラエルは、エジプトからシナイ半島とガザ地区、ヨルダンからヨルダン川西岸と東エルサレム、そしてシリアからゴラン高原を占領。
後に東エルサレムとゴラン高原は併合し、シナイ半島も82年にエジプトに返還され、ガザ地区とヨルダン川西岸地区にはパレスチナ人自治の地域、いわゆるパレスチナ自治区が存在するようになった。
1993年にイスラエルのラビン首相とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長の間で交わされたオスロ合意に基づき、 翌年、ヨルダン川西岸地区は、ガザ地区と共に「パレスチナ自治区」になった。
しかし、ヨルダン川西岸地区は面積の60%以上がイスラエルの軍事支配下に置かれ、 常に厳しく監視されている。
また、各地に多くのイスラエルの入植地が作られている。
そういう地であることを前提として、映画を振り返りたい。
ドキュメンタリーなので、必ずしも映画の進行に合わせて内容を書くことはないと思うが、できるだけ、記憶のあるうちに、記していこうと思う。
ここからは、ネタバレになるので、ご留意のほどを。
前回の記事の見出し。
(1)バーセルとユヴァル
(2)繰り返されるイスラエル軍の破壊活動
その後。
(3)学校の破壊
イスラエル軍は、マサーフェル・ヤッタの子どもたちが通う学校さえも破壊した。
パンフレットから。
やって来るイスラエル軍に怯える子ども。

容赦なくイスラエル軍は校舎を破壊する。

(4)バーセルへの暴行
相次ぐイスラエル軍によるパレスチナ人家屋の破壊を、スマホなどで撮影し続けるバーセルに、イスラエル軍が向かって来る。
破壊をやめろと抗議するバーセルを、複数の軍人が取り囲んで殴り倒す。
予告編のカット。

軽い怪我で済んだものの、バーセルはイスラエル軍から攻撃対象となった。
(5)銃撃
家を破壊されたパレスチナ人の長男が、イスラエル軍の軍人に抗議した。
彼は、撃たれた。
結果、肩から下が麻痺となり、寝た切りになってしまった。
洞窟を住居とし、息子の姿を眺め、母は、毎日、泣き、怒り、将来に絶望する。
パンフレットから、住居である洞窟の中から撮った母親の後ろ姿。

予告編もパンフレットにも、実際に銃撃を受けた彼女の息子の姿は、ない。
しかし、映画では、その瞬間の銃声が、しっかり記録されていた。
次回は、バーセルの家へのイスラエル軍の急襲など。
