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戯作の種類などー杉浦日向子著『江戸へようこそ』より。


 9日の「べらぼう」では、鱗形屋と蔦重の会話で「青本」の話題が出てきた。

 鱗形屋孫兵衛の父親が、青本を最初に始め、孫兵衛もそれを継いでいるのだが、蔦重が吉原の面々に聞くと、青本は面白くないと言われ、なんとかそれを改善したい、という話だった。


 今後、いろんな戯作が登場すると思うので、あの本から戯作について再確認しようと思う。

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杉浦日向子『江戸へようこそ』
 杉浦日向子さんの『江戸へようこそ』、「真(まこと)があって運のつきー戯作について」の章から。

 戯作の種類

 戯作は、現在ふたとおりの意味に使われます。ひとつは「戯れに作る」という字のとおり、筆のすさびと解して、戯作精神などと言います。いまひとつは、文学史上の区分の一で、近世後期小説類、それを様式で言えば、洒落本・滑稽本・読本(よみほん)・人情本・草双紙(これを細別して、赤本・黒本・青本・黄表紙・合巻(ごうかん))、これらを指す用語としてです。
 前者は、創作の姿勢です。きちんとした正道のものに対して、へりくだった意味合いがあります。御菓子に対して駄菓子というような語感です。和歌を戯作すれば狂歌になり、俳句を戯作すれば川柳になり、小説を戯作すれば洒落本、滑稽本、読本、人情本になり、絵物語を戯作すれば草双紙となります。
 ここでは、この創作の姿勢としての戯作について考えたいと思いますが、その前に、ごく簡単に、用語としての戯作の種類を確認します。
 洒落本は、遊所での遊びを書いた小説です。代表作に田舎老人多田爺作『遊子方言』、山東京伝作『傾城賈四十八手』などがあります。風俗描写が主で、その名の通り、おシャレのマニュアルです。こんな風に遊ぶのが通だとか、あの店が美味しいとか、縞の着物ならどこで買うのが良くって、柄を描かせるのなら誰が良いとか、そういう情報が盛りだくさんで、たとえが古くて恐縮ですが『なんとなく、クリスタル』に良く似た文芸です。『ポパイ』や『ホット・ドック・プレス』の役割も兼ねていたようです。ひととおり読めば、いっぱしのシティ・ボーイになったような錯覚が楽しめます。(もちろん、あまりマニュアル通りの着こなしをすれば野暮なのですが)
 滑稽本も字義通り、面白おかしいことが書いてある本で、落語の速記本に近い形です。代表作に、式亭三馬作『浮世風呂』、十返舎一九作『東海道中膝栗毛』などがあります。落語と滑稽本は、実際、作者もダブっていますし、噺家が滑稽本を書いたり、また戯作者の書いた滑稽本をそのまま高座にかけたりします。

 落語ということになると、ちょっと口を挟みたくなる。

 たとえば、落語『浮世床』は、その背景に式亭三馬の滑稽本の存在抜きには考えられない。

 また、『蛙茶番』は、前半の役揉めの部分は、素人狂言物の滑稽本が元で、後半のふんどしの趣向は咄本から得たと言われている。

 他にも、戯作と落語の関係を書き始めるときりがないので、このへんで。
 
 引用を続ける。

 読本は、ズバリ、伝奇小説です。曲亭馬琴の大作『南総里見八犬伝』『椿説弓張月』などがそうです。波乱万丈のストーリーを手に汗握って、ハラハラしながら読むとうものです。
 人情本、これも、ズバリ、『ハーレクインロマンス』の世界です。為永春水の『春色梅児誉美』、『春告鳥』、などがそうです。対象が若い女性で、描かれているのは、とりとめのない恋愛です。いつまでもすれ違いをつづける『君の名は』的題材が喜ばれました。
 草双紙は、絵入り本の総称で、表紙の色で内容が大別できます。赤本は幼童向けで、桃太郎とか金太郎とかの世界です。黒本は、ひと昔前の少年小説のようなもので、英雄の武勇譚とか、敵討、忠義の話が主です。青本は、少年と女性向けの本で、芝居噺が中心で、その絵とセリフを見ながら舞台を思い出すといった、ビデオテープ的機能もありました。黄表紙は、青本の発展形で、後世、文学史上の草双紙の区分として称えられた名で、江戸期は一般に青本と呼ばれていました。表紙の色も青(浅黄といって水色)だったのですが、その青が陽に当るとすぐに黄色に変色してしまうので、後には、はじめっから黄色に染めれば良いじゃないかという事で黄色の表紙にしました。黄色の表紙になってからも、青本と呼んでいました。表紙の色の他に青本と黄表紙は、描かれる内容も変化しています。青本は、お芝居の二番煎じのような、婦女幼童のなぐさみだったのですが、黄表紙はガラリと大人向けの遊びの絵本となっています。

 ということで、戯作にも、いろいろと種類があるのだ。

 青本がどう変貌を遂げるかは、今後の「べらぼう」でも描かれるのであろう。


 『江戸へようこそ』には、黄表紙の代表作と言われる恋川春町の『金々先生栄花夢』まで載っている。

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 黄表紙と森銑三に出会ったのが、杉浦さんが江戸時代に興味を抱く発端だったと言われる。

 四十七歳での旅立ちから、今年で20年になろうとしている。

 杉浦さんがご存命だったなら、「べらぼう」を機に江戸が見直されている今、忙しい日々を送っているに違いない。

 文字通り美人薄命だった杉浦さんの著作が、今年は多くの方にあらためて読まれることになりそうだ。
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by kogotokoubei | 2025-02-11 17:18 | 江戸関連 | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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