映画「敵」が伝えるもの(3)
2025年 01月 27日
とはいえ、若干は記事も書いているので、今日は特別(?)に、記事を二本公開(^^)
映画「敵」の三回目。
予告編の1カット。

東京国際映画祭の最高賞、最優秀監督賞(吉田大八)、最優秀男優賞(長塚京三)を受賞したことを知り、本棚から原作の文庫を引っ張り出して再読した。
しかし、11月に書いていたブログの記事は、ユウが体調を崩したため、6回で終了していた。
ご興味のある方はご覧のほどを。
2024年11月13日のブログ
2024年11月14日のブログ
2024年11月15日のブログ
2024年11月16日のブログ
2024年11月20日のブログ
2024年11月21日のブログ
こちらが公式サイト。
映画「敵」公式サイト
「Story」を引用。
渡辺儀助、77歳。
大学教授の職を辞して10年―妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている。料理は自分でつくり、晩酌を楽しみ、多くの友人たちとは疎遠になったが、気の置けない僅かな友人と酒を飲み交わし、時には教え子を招いてディナーを振る舞う。預貯金が後何年持つか、すなわち自身が後何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向かって日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。
だがそんなある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。
予告編。
残念ながら、パンフレットは売り切れだった。
<主なスタッフ>
□監督:吉田大八
□原作:筒井康隆
□脚本:吉田大八
□企画:小澤祐治
□プロデュース:小澤祐治
□プロデューサー:江守徹
□撮影:四宮秀俊
□照明:秋山恵二郎
□録音:伊豆田廉明
□美術:富田麻友美
□装飾:羽場しおり
□衣装:宮本茉莉
□VFXスーパーバイザー:白石哲也
□編集:曽根俊一
□音楽:千葉広樹
<主なキャスト>
□長塚京三:渡辺儀助
□瀧内公美:鷹司靖子
□河合優実:菅井歩美
□黒沢あすか:渡辺信子
□松尾貴史:湯島定一
□松尾諭:椛島光則
あらすじの続き。
もちろん、ネタバレ、なのでご留意のほどを。
また、記憶がどんどん失われていることとあり、必ずしも時系列通りではないことを、先にお詫び。
先に、前回までのあらすじの見出しのみ確認。
(1)規則正しい独居老人の生活
(2)数少ない友人湯島定一との会話
(3)訪問者鷹司靖子
(4)夜間飛行と歩美
(5)隣家の主人と犬の糞
(6)韓国冷麺と内視鏡検査
今回は、先に補足の意味で、原作から以前ご紹介できなかった部分を少し引用したい。

これが目次。

「風呂」の章から。
洗面台の反対側は衣装戸棚で今でも儀助が特に好きだった妻の服が何着か入っている。一度滅多に着ないミンクの半コートに黴が生えたと大騒ぎした信子は半日庭で虫干しした後コートを抱えて風呂場に入り自分が入浴している間ハンガーの金具を窓枠に引っかけて毛皮を蒸気に当てていた。儀助は風呂から出た彼女が脱衣所で桃色の裸体のままコートを掲げ点検しているのを見て酷く欲情したことを想い出す。
では、あらすじの続き。
(7)信子の幻影
儀助は、衣装戸棚から自分の上着を取り出そうとした時、妻信子が好きだったコートを見て、追憶に浸る。
そのコートを戸棚から出し書斎の壁にかけ、しばし眺める儀助。
儀助の願いが叶ったのかどうか、その後、信子が目の前に現れるようになる。
テーブルに座り、お茶を飲みながらの会話。
その中で信子が言う。
「パリへ連れてってもらえませんでしたね」
きっと、結婚する時にでも、儀助がそんな約束をしていたのだろう。
一瞬の間の後、儀助が言う。
「実は、フランス語の会話に自信がなかったんだ」
その後の言葉つつなごうとすると、すでに信子の姿は消えている。
※原作では、拙ブログの最終六回目(2024年11月21日)の記事「八畳」で紹介したが、、夜ひとりの時、
たまに台所から信子が呼ぶ声がする、ということが書かれていた。
(8)椛島光則の手伝い
儀助の少ない若い友人の一人、大学教授時代初期の教え子の椛島光則は、儀助を「先生先生」と慕い、家や庭の掃除なども手伝ってくれる。
椛島は、演劇の小道具を扱う小さな会社を経営している。
※拙ブログ二回目(2024年11月14日)の記事の「友人」で、椛島をはじめ湯島や他の友人についてご紹介した。
その日は、滅多に開けることのない古い物置の整理をしてくれていた。
奥から双眼鏡が出てきた。
椛島が「新品ですか?」と聞くと、儀助が、「質流れで買った」と言う。
「鳥でも見るんですか?」と椛島が聞くと、儀助がこう答える。
「映画裏窓の主人公気どりで、二階からいろんなものを見たよ。あの映画の主人公は実に下司だねぇ」
※原作の「物置」では、こうなっている。
“二階の窓から下町の家が覗けるのでヒッチコック映画『裏窓』の主人公を
気取って書斎の電灯を消しあちこち見るうちにあの映画の主人公は実は
とんでもなく下司下賤下根下劣醜悪陋劣な人物であると知るほどのさまざま
なものを見てしまったのだ”
暑い盛りで、儀助と椛島が麦茶を飲んで休んでいると、椛島が庭の古井戸に目をやり、
「先生、あの井戸、まだ水が出るんじゃないですか」
「無理だろう」と義助が言うが、
「水脈なんてどこでもあるます。今度私が掘ってみます」と椛島は言い、
「水が出たら、もっと冷たい美味しい麦茶が飲めますよ」と続ける。
この双眼鏡、そして井戸は、その後の展開で結構重要な役割を果たす。
(9)菅井歩美
バー夜間飛行に儀助が行くと、オーナーの姪の菅井歩美がいた。
最初に会ってから歩美に惹かれていた儀助は、何度か一人で店に来た。
この店で頻繁に待ち合わせしていた湯島には、あえて、連絡しなかった。
カウンターで、本を読んでいた歩美。
本は、バタイユの『青空』だった。
他の客の応対で歩美が席を離れた時、つい、栞の部分を開いた儀助。
その栞は、実は、授業料滞納に関する大学からの催促状だった。
歩美が席に戻りそうなので慌てて本を閉じる儀助。
儀助が、「どう大学は」と聞くと、一瞬の間の後、
「私、先生に教えてもらいたかったな」と歩美。
驚きながらも嬉しさを隠せない儀助。
「何か、困ったことがあったら、相談してもらっていいよ」
と、儀助。
儀助は、鷹司靖子という三十台半ばの成熟しつつある女性の魅力も感じながら、二十代の菅井歩美の若々しさにも惹かれている。
そして、時おり現れる妻信子への郷愁もあるのだった。
次回は、ついに、「敵」の文字が、登場する。
