森永卓郎著『書いてはいけない』(三五館シンシャ)より(5)
2024年 12月 20日

森永卓郎著『書いてはいけない』
『書いてはいけない』の五回目。
本書は、森永卓郎さんが、前著『ザイム真理教』刊行の際に苦労して探した出版社、三五館シンシャから2024年3月20日初版。
副題は、「日本経済墜落の真相」である。
<目次>
□まえがき
□第一章 ジャニーズ事務所
□第二章 ザイム真理教
□第三章 日航123便はなぜ墜落したのか
□第四章 日本経済墜落の真相
□あとがき
引き続き、「第二章 ザイム真理教」から。
前回まで、財務省が、旧統一教会と同質の「継続性」「組織性」「悪質性」を持つ組織であることをご紹介した。
本書では、次にこの内容が続いている。
アベノミクスとはなんだったのか?
財政緊縮派、すなわちザイム真理教信者の皆さんが、ほぼ例外なく批判するのがアベノミクスだ。そこで、まずアベノミクスとはいったいなんだったのか説明しておこう。
2012年12月に発足した第二次安倍晋三政権は、アベノミクスを掲げて日本経済のデフレからの脱却を図ろうと、政策の大転換をした。
①金融緩和、②財政出動、③成長戦略の3本柱だった。
3番目の「成長戦略」に関しては、たいした中身はなかったし、そもそも成長戦略は民間が作るものなので、政府がやれることは限られている。だからアベノミクスの本質は「金融緩和」と「財政出動」だ。
実際に安倍元総理は約束どおり政策を断行した。財政出動もある程度実施した。たとえば、GDP統計で見ると、実質公的固定資本形成(公共投資)の前年比伸び率は、2011年度が▲2.2%、2012年度が1.1%だったのに対して、実質的に第二次安倍政権のスタートとなった2013年度は8.5%と、近年ではもっとも高い伸びを実現した。
そして、アベノミクスでとくに注目を集めたのが金融緩和だった。それまで常に緊縮指向だった日銀改革するため、安倍政権は2013年3月に日銀総裁に黒田東彦(はるひこ)氏を就任させ、政策の大転換を図った。いわゆる異次元の金融緩和だ。長引くデフレから脱却するため、2013年4月からインフレターゲット政策を導入し、2%の物価上昇目標達成されるまで、大規模な資金供給拡大を続けることを宣言したのだ。
財務省は、アベノミクスというより、安倍晋三を嫌っていた。
それは、布教活動である「ご説明」の効果がないからであり、消費税の引き上げを二度にわたって安倍政権が延期したからである。
1997年、橋本龍太郎内閣時代に消費税が3%から5%に上がったことが影響して、日本経済は15年間にわたり物価が下がり続けデフレに苦しんだ。
しかし、アベノミクスというか、森永さんも指摘しているが、マクロ経済学の教科書にも書いてる「不況になったら、金融緩和と財政出動」を行なったことで、2013年12月には物価上昇率がほぼ2%となり2014年3月まで継続した。
しかし、問題は、2014年4月の消費税の5%から8%への増税である。
引用する。
物価上昇率が、目標物価上昇率の2%から急速に転落して、1年足らずでデフレに舞い戻ってしまったのだ。アベノミクスは、消費税増税によって破壊されたのだ。
私はわけがわからなかった。金融緩和を継続するなかで消費税増税をするということは、アクセルを踏みながらブレーキを踏む運転に等しい。そんなことをしたら、クルマは正常な動きができなくなってしまう。経済学の常識に反する経済政策を採られた理由を、私は理解できないでいた。
しかし、最近になって当時の事情が明らかになってきた。じつは、安倍政権は、日銀総裁を黒田東彦氏に入れ替えただけではなかった。副総裁や審議委員を次々に金融緩和派に入れ替えていった。なかでも、新任の岩田規久男副総裁は、異次元金融緩和に理論的バックボーンを与える重要な役割を果たしていた。岩田副総裁は、異次元金融緩和と殺してしまう消費税増税に明確に反対して、そのことを黒田東彦総裁にも進言したという。
ところが、黒田東彦総裁は、岩田副総裁をこう斬り捨てたという。
「消費税の引き上げは、景気動向に一切影響を与えない」
黒田総裁は、法学部出身ではあるものの、財務省時代にはオックスフォード大学に留学して経済学を学ぶなど、経済の専門家だ。だから、アクセルとブレーキを同時に踏んではいけないことなど常識でわかっているはずだ。にもかかわらず、消費税増税を簡単に容認してしまった。ここがザイム真理教の恐ろしいとことなのだ。経済理論よりも、教団の教義が優先されてしまう。
結局、この消費税増税は経済に致命的な被害を与えた。翌2014年度の実質的経済成長率はマイナス0.4%に転落し、その後も低成長が続くことになったからだ。
2014年4月の消費税増税については、黒田日銀総裁のみならず、多くの「エコノミスト」と呼ばれる人たちが、その景気への影響を読み違えていた。
「ダイヤモンド・オンライン」の2020年8月の記事から引用する。
「ダイヤモンド・オンライン」の該当記事
多くの専門家が見誤った
2014年4月の消費税増税(5%から8%への引き上げ)に関しては、多くのエコノミストや経済学者が、その影響は小さいと予想していた。政府が行った13年8月の「集中点検会合」および14年11月の「点検会合」では、「消費増税で景気は腰折れしない。公共投資が景気を支える」「消費増税を景気回復の初期にやる方が、景気反落リスクが小さい」などという発言があった
多くのエコノミストや経済学者は、ご自身がザイム真理教信者、あるいは、財務省の布教活動である「ご説明」に丸め込まれたのであろう。
ともかく、アベノミクスは、決して、魔法の経済政策ではなく、不況時に行うべきことを、やや派手な宣伝文句で行ったのであり、結局、最後には、やってはいけない消費税増税により、せっかく吹かしたアクセルに急ブレーキがかかった、ということだ。
103万円の壁に関しては、これでもかというほどの報道があるが、いまだに、106万円の壁撤廃という権力側の悪行への批判を、マスメディアでは見かけない。
テレビや大手新聞への財務省の「ご説明」が、よほど効果があるのかもしれない。
