青山透子著『日航123便墜落事件 隠された遺体』(27)
2024年 11月 12日

青山透子著『日航123便墜落事件 隠された遺体』
少し時間が空いたが、青山透子さんの『日航123便墜落事件 隠された遺体』(河出書房新社、2024年8月30日初版)の二十七回目。
目次。
□序 章 最高裁への茨の道
□第一章 独立なき司法の判断
□第二章 看護婦が見た隠された遺体
□第三章 検証ー羽田空港地上衝突・大炎上事故報道
□終 章 未来への道程
あとがき
注釈
補遺
【裁判資料】
引き続き、「終章 未来への道程」から。
吉備素子さんを原告とする裁判の最高裁への上告は、3月末に棄却された。
5月23日の弁護側の記者会見では、担当した弁護士が最高裁の決定への思いを語っていた。
前回は、赤石ゆり子弁護士、佐々木健次弁護士の言葉を紹介した。
その後を引用。
さて、次は佐久間敬子弁護士である。佐久間弁護士は、2023年2月18日の仙台弁護士会での裁判報告会や私の講演会を取りまとめでくださった。交友関係も幅広く、著名人も含む、いろいろな方とつばいでくださった。
「まず情報とは多様な、重層的なものです。今回開示を求めたボイスレコーダー等は、吉備さんにとっては最愛のご主人が亡くなった理由を知るための大切な手がかりです。だからこそ情報は開示されなければならないですし、それは可能だと考えて弁護しました。結論から言いますと、裁判所はやはり保守的で先進的判断はしたくない、という場であることがわかりました。社会に一歩先駆けるような判断をしていただきたかったと思います。大変残念だと思います。また、佐々木弁護士が申したように、損害賠償請求の和解と情報開示は、種類が違うものであって、裁判所は無理がある判断をしたと思います。和解条項も、念には念を入れて作成された文章です。あまりにも強い和解条項で、一切今後なにも請求できないとは驚きであり、何かあると勘ぐらざるを得ません。吉備さんはご主人の死因を突き止めて、墓前に報告したい一心でしたが、裁判所に蹴られてしまったことはとても残念です。事故原因に様々な疑問が出ているのであれば、疑問を解き、真実に近づくという意味でも、裁判所は大きな役割を果たせたのでではないでしょうか。しかしながら、今回裁判所は(この日航123便墜落事件を)闇に葬ってしまいました。本当に残念ですが、世間にこの裁判が注目されたことで社会に与えた影響は小さくはない、そう思います」
JALが、「他の人に賠償金が支払われないと困るから」などの言葉で吉備さん達に署名させた和解文にある“脅し”とも言える内容を、裁判所までもが支持したのである。
さて、この5月23日の記者会見の写真が、「日航123便 墜落の真相を明らかにする会」のサイトに掲載されていたので、お借りする。
「日航123便 墜落の真相を明らかにする会」サイトの該当ページ

左から二番目が、吉備素子さん。
赤石弁護士、佐久間弁護士も、この中にいらっしゃるのだと思う。
引用を続ける。
次に、光前幸一弁護士は、裁判官の経歴を持ち、1977年い裁判官任官、1991年から弁護士となり、日弁連・労働法制委員会委員、東京弁護士会・労働法制特別委員会委員長をされている。特に企業や組織の内部告発者を守るための法律に詳しく、企業や団体の不正を正し、解雇や左遷などの報復を受けることなく内部告発ができる法律を目指した公益通報者保護法改正にもかかわったが、この法律は内部告発者に不利益な取り扱いをした組織に対する罰則規定がいまだに欠けている。また光前弁護士は、内部告発をしたら「報復」の懲戒処分を受けたという現役の陸上自衛官の訴えを支持し、国を相手に裁判を起こし、懲戒処分(停職6日)の取消しと国家賠償を求めた裁判を担当した経験も持つ。
「いつも森友事件を思い出します。このときは、文章の改竄に関与させられ、悩んだ挙げ句に自殺された赤木さんのご家族が、なぜ赤木さんが死ななければならなかったのか、事実を知りたいという裁判でした。原告はお金が目的ではなかったので、あえて賠償金を高額に設定しましたが、裁判が始まり証人喚問を始めようとしたところ、国が訴えを認諾してしまったんです。日本は公務員孤児の違法責任は追及できないことになっています。公務員の故意過失にかかわらず、罪を問わないという特典を与えているのです。違法行為を命じたとしても追及できない建前となっている。森友事件の裁判が高裁が『肉親が死に至るまでの状況を知りたいと考えるのは当然だ』という判断を示したので、最高裁がどう判断するか注目されています。
さて、吉備素子さんの裁判は森友事件と同様で、墜落の真相を知りたい、という目的でしたが、裁判所は運送契約上の役割と理由説明については認めたものの、だからといってボーイング社とJALと和解して一切請求しないという合意を吉備さんが結んでいるのだから、だめだという判断でした。これは、信義則上の情報提供に協力する義務まで消滅させていいのか、という点です。裁判所は、『和解の頃にはそれはすでに消滅しているので、たとあJALが運送契約上の義務を負っていたとしても、本件は消滅している、原告が現時点で事故調査委報告書に疑問を持ったとしても、JALが事故原因究明に協力する義務を負っている、とは認められない』と判断しました。そうなると、もっと事故原因の証拠を積み上げればよかったのかとも思われてきます。過去の和解は、国に対して何かを想定している和解ではないので、新たな原因が出てくればまた別の話が出てきてしかるべきです。ここが突破できなかったのは弁護士として残念だったと思っています」
裁判官を経験されているからこそ、裁判所の判断基準の難しさと、裁判官としての苦しさを同時に感じているようであった。
光前弁護士の言葉から、まだ、真相究明のための法廷への挑み方があるような気がする。
国交省運輸安全委員会のサイトから、日航123便墜落事故(事件)の事故調査報告書をダウンロードできる。
運輸安全委員会サイトの該当ページ

直球勝負で考えるなら、この事故調査報告書が結論とした後部圧力隔壁原因説は疑わしいから、駿河湾沖に存在する機体残骸の再調査を含め、真相を究明すべき、という訴えになるのだろう。
青山さんの著作で明らかになった数々の目撃者の証言、遺物の分析結果で判明した不合理、当然報告書に存在した異常外力着力点のこと、そして、高浜機長の遺体の発見時期やその損傷度合いに報告書とは異なる信憑性の高い証言があることなどなど、青山さん達がこれまで集めた数々の証拠を元に、遺族の和解で裁判所が逃げられないような闘い方の模索になるのだろう。
次回も、同じ章から他の弁護士の言葉や、吉備素子さんの言葉をご紹介したい。
光前弁護士が、引き合いにした森友事件のこと。
赤木俊夫さん(当時54)の妻雅子さん(53)が、存否も明かさず関連文書の開示を拒んだ国に不開示決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審が10月18日、大阪高裁(牧賢二裁判長)で結審し、判決は来年1月30日に言い渡される。
なぜ夫は亡くなったのか、その真相を知りたい一心で権力と闘う二人の女性を、心から応援したい。
