青山透子著『日航123便墜落事件 隠された遺体』(23)
2024年 10月 29日

青山透子著『日航123便墜落事件 隠された遺体』
少し時間が空いたが、青山透子さんの『日航123便墜落事件 隠された遺体』(河出書房新社、2024年8月30日初版)の二十三回目。
目次から。
□序 章 最高裁への茨の道
□第一章 独立なき司法の判断
□第二章 看護婦が見た隠された遺体
□第三章 検証ー羽田空港地上衝突・大炎上事故報道
□終 章 未来への道程
あとがき
注釈
補遺
【裁判資料】
引き続き、「第三章 検証ー羽田空港地上衝突・大炎上事故報道」。
以前紹介したように、国交省サイトから「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」の「中間とりまとめ」をダウンロードできる。
国交省サイトの該当ページ
その「とりまとめ」では、管制官と海保機のコミュニケーションの問題が大きく取り上げられ、いくつか改善策が提示されていた。
もちろん、もっと管制の指示内容をお互いが確認し合うべきだったとは思うが、本書では次のような指摘をしている。
海保機が「No.1」と言われてそのつもりになったとか、管制官が海保機に「No.1」と言ったから「Clear for take-off」と誤認したと報道された。有識者会議でもこの言い方を改めるということだった。しかし、現場では、「No.1」と「take-off」とはまったく意味が違い、間違いようがないと元機長は強調する。航空業界ではエアラインパイロットのみならず、プライベートパイロットも誰もがそんなことで間違うことはないと断言している。また海外の空港を含めて「You are No.1」など言い方は様々あり、「No.1」という言葉だけを問題化するのも間違っている。こういった言葉がミスを誘発したという考え方もまた、現場を知らずに出たお門違いな発言なのであり、問題の所在はそこにはない。政府に言われて仕事をしたつもりになった有識者たちは、あまりにもお粗末すぎるのであろう。後日談では、「No.1」という言葉を復活させ、使用することになった。
元機長の手帳にはいまでも次の記述が残っているそうだ。
現役時代の備忘録には「Checkerが独自の賛成者のないマニュアル解釈をもって判断することは許されない。Checkerの良心はあくまで、社会的客観的に納得される良心であらねばならない」(1998年8月記)
社会的、客観的に納得される良心を持ち、その意識で自分を律し教官を務めてきた人の重みのある言葉である。
それに引き換え、「(乗務員の)使命感を誇らしく思う」という言葉を使ってメディアで発言をする鳥取新社長やOGについて私は、「ほめることは内々の話であって、まだ四十九日も経っていない中で無神経な言葉を使ってはんらないのではないか、また新社長就任会見を開いて言うべき言葉ではないのではないか」(当時の日航の内規では四十九日までは派手な広告をしないことになっていた。山本氏の著作にもそう記されている)と言ったところ、元機長らは、「乗客の立場に立って、クルーを叱咤することは、現役の第一線のクルーにとって『襟を正す』ことになる」、「日々の業務を当たり前のルーティンにならないようにするためにも、外からJALを見る人の、厳しい言葉も必要だ」と賛同してくださった。航空会社の一人ひとりが、そして乗務員の一人ひとりが「襟を正す」ことこそが、安全を作り、事故を防ぐのである。
日航の新社長の発言は、青山さんが指摘する通り、まったく無神経である。
初の女性、CA経験者の社長就任ということをPRしたいのだろうが、身内を褒める前に言うべきことがあるはず。
そして、事故の背景にある構造的な問題の解決にあたるべきだ。
なぜ、羽田や関空が危険な空港となったのか。
ラッシュアワー並みの混雑が、事故の発生につながっている。
青山さんが取材した現役パイロットの声から引用する。
「会社が無理な運航スケジュールを作るので、定刻到着を目指すために無理して頑張ってしまうことや、一機だけ遅いと全体の流れを妨げることになるので、どうしてもタキシング(地上走行)が速くなってしまうということもあると思います。JALのパイロットは他の航空会社より、タキシング・スピードが速い傾向にあります。これはJALが安全のために、定刻が守れるダイヤを作ることで防げると個人的には思っています。パイロットが急いでしまったばかりにミスを引き起こす、いわゆるハリーアップ症候群の主な原因は、航空会社の無理なダイヤ設定や、空港のカーフェー(門限)、空港混雑等があると思います。定刻に間に合わせたいと思って、知らないうちのハリーアップになってしまうのです」
青山さんは、こういった構造的な問題をメディアがもっと報道するべきと指摘する。
もっともだと思う。
日経がこの事故のすぐ翌日に、世界の空港の混雑度について記事を掲載した。
日本経済新聞サイトの該当記事
表を含め引用する。
羽田空港の混雑は世界3位 飛行機発着「1分に1.5本」
羽田JAL機炎上
2024年1月3日 22:46
羽田空港の日本航空(JAL)機と海上保安庁の航空機の衝突事故は、同空港が世界有数の過密状態にあることを浮かび上がらせた。
国際空港評議会(ACI)によると、羽田空港は1時間あたり最大90回発着できる。1分に1.5本の飛行機が離陸もしくは着陸している計算で、世界でも有数の忙しい空港だ。国土交通省は2日の羽田空港の状態について「容量いっぱいで使われていた」と指摘する。
英航空情報会社OAGの「世界の混雑空港ランキング」では、羽田空港は2023年に世界3位だった。同ランキングは空港利用者を、空港に就航した旅客機の「提供座席数」の合計で算出する。
国土交通省によると、羽田空港には22年に国内線・国際線あわせて19万便が着陸した。今回の衝突事故が起きた滑走路を閉鎖している影響で4日も一部便が欠航に追い込まれるなど、余裕が少ない運用となっている。
羽田空港は近年、訪日客の増加などを見据え、受け入れを拡大してきた。10年に第4滑走路の運用を始め、発着枠を37.1万回から44.7万回に広げた。
20年には東京都心の上空を飛ぶ新ルートの運用を始めた。これによって国際線の昼間の時間帯の発着可能便数を1日80便から130便に増やせるようになった。
政府が訪日旅行客・ビジネス客の受け入れ拡大を掲げるなかで、5本目の滑走路を沖合につくる案も浮上している。仮に滑走路が増えても、ドル箱路線の羽田便は国内外の航空会社のニーズは高く、過密状態の解消は見込みにくい。
今回、海保機が衝突したように、旅客機以外の航空機も羽田空港を利用している。
今後、貨物便の利用増加も見込まれる。4月からトラック運転手の時間外労働に上限規制が適用されると、一部貨物の輸送がトラックから航空にシフトすることが予想されるためだ。
いっそうの過密状態になると、今回の事故のようにひとたび不測の事態が発生した場合、旅客から貨物輸送まで影響はより大きくなっていく。(湯沢維久、逸見純也)
1分間に1.5本の離着陸、なのである。
こういう記事は、貴重だ。
516便の乗客全員救助、という美談ばかりがメディアで目立ったが、なぜ、こんな大事故が起きたのかという構造的な問題への視点が必要だ。
また、管制官と海保機のコミュニケーションの問題に原因を帰結するだけでなく、516便側にも問題があったのではないか、という声は、まったくメディアからは聞こえなかった。
そして、本来、真相を究明する役割を担う運輸安全委員会は、いったい何をやっているのか。
次回は、その点について、同じ章から。
日航123便墜落事件の真相をひたすら隠そうとする国、JAL。
異常外力などは、なかったことにしようとしている。
そして、もし、石破が、萩生田、西村という非公認での当選者を公認することになれば、それは、裏金問題などなかったことにしようとする悪行である。
もはや、政策の相違点などを乗り越え、まず、自民党を政権の座から引きずり下ろすことが野党の役割ではないのか。

