青山透子著『日航123便墜落事件 隠された遺体』(21)
2024年 10月 22日

青山透子著『日航123便墜落事件 隠された遺体』
少し時間が空いたが、青山透子さんの『日航123便墜落事件 隠された遺体』(河出書房新社、2024年8月30日初版)の二十一回目。
目次から。
□序 章 最高裁への茨の道
□第一章 独立なき司法の判断
□第二章 看護婦が見た隠された遺体
□第三章 検証ー羽田空港地上衝突・大炎上事故報道
□終 章 未来への道程
あとがき
注釈
補遺
【裁判資料】
引き続き、「第三章 検証ー羽田空港地上衝突・大炎上事故報道」。
今年1月2日の、羽田空港地上衝突・大炎上事故については、管制官と海上保安庁機との連絡のミスばかり追求されて、ゴー・アラウンド(着陸の中止)をしなかった日航の516便についての疑問などは、ほとんどかき消された。
日航はOB、OGを動員して、乗客全員の脱出を美化し続けた。
本当に、滑走路上の海保機を発見することは、そんなに難しかったのだろうか。
引用する。
さて、各社の報道から、海保機が40秒ほど滑走路に留まっていた後に衝突したことが明らかになった。衝突から40秒まえというと、JAL機は高度約80メートル、衝突地点まで約2~3キロでだったことが推定される。その時点で海保機に気づいたとすれば、約20秒ほどで、再びエンジンパワーを上げて上昇し、衝突を回避するのが可能で加納であったはずである。このゴーアラウンドこそ、唯一、衝突回避のための最善の方法であった。そうすれば、海保機の五名が亡くなることもなかった。JAL機側の三名のパイロットたち全員が海保機を見逃したとすれば、衝突したJAL側の「見張り義務違反」や「前方不注意」が問われる可能性も出てくるのである。
なぜ、ゴーアラウンドができなかったのか、ここが大きな疑問である。
日航パイロットが三人の目で見ても、40秒間も滑走路上に停止していた海保機を発見できなかったという点について、現役のパイロットい聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「JAL機のパイロットは、着陸直後に何か白いものが一瞬見えたということでしたが、おそらく滑走路上で動きのない物だったから気づきにくかったともいえます。
訓練では最初の段階から毎回ゴーアラウンドの訓練を行っています。日没後はビーコンライトやストロボライトの点灯は必須です。しかしながら、日没後の羽田空港の場合、滑走路上にある夥しいライトにそれらのライトが溶け込みやすいのも実際のところです。
もしも滑走路上にライトに気づいたとき、衝突地点ませに20秒あれば、ゴーアラウンドは可能だったろうと思います。ただ、日中ならば可能ですが、夜間の場合は、気づくのが遅かった可能性は否定できません。本当に見えにくいのが現状ですが、最終的判断が早ければ、約20秒あればゴーアラウンドはできた可能性はあります」
青山さんは、後日、このパイロットは、ニューヨーク便の行き帰りで羽田空港に着陸したときの状況を報告してもらっている。
たしかに、滑走路上の機体は、夜間には非常に見えにくくなるとのことだった。
今回の事故を教訓として、滑走路状態表示灯(RWSA: Runway Status Lights)や、GPS位置情報を使ったTCAS(Traffic Alert and Avoidance System)/航空機衝突防止装置を全空港で設置するなどの改善が必要と語っている。
このような具体的な意見は大変貴重である。政府主導型の有識者会議では出づらい視点である。同僚の事故が起きぬよう対策を練るにあたっては、こうした現場の体験談を積極的に収集し検討しなけでばならない。その必要性を改めて強く感じた。
前回の記事で、国土交通省のサイトから、羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会による、6月24日付けの「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会 中間取りまとめ(案)」から、管制官と海保機の会話を紹介した。
国土交通省サイトの該当ページ
同サイトには、「中間取りまとめ」として「案」がとれた最終版が公開されている。
同サイトから、対策検討委員会メンバーを引用する。
「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」委員名簿
<座長>
小松原明哲 早稲田大学理工学術院創造理工学部経営システム工学科 教授
<有識者>
青木義郎 自動車技術総合機構 上席研究員
伊藤恵理 東京大学先端科学技術研究センター 教授
小林宏之 航空評論家
鈴木正則 航空保安研究センター 業務執行理事
武市昇 東京都立大学システムデザイン研究科 教授
平田輝満 茨城大学理工学研究科 教授
福島幸子 電子航法研究所航空交通管理領域 領域長
松尾亜紀子 慶應義塾大学理工学部 教授
<関係団体>
定期航空協会
日本航空機操縦士協会
この中に、元パイロットがいるのかどうか、知らない。
また、会議に、元パイロットが加わったのかどうかも、分からない。
「中間取りまとめ」には、RWSAやTCASの必要性は、書かれているから、本書で現役パイロットが指摘している対策は、盛り込まれてはいるようだ。
<関係団体>に名が記されている、公益社団法人「日本航空機操縦士協会(JAPA)」のサイトに、この「中間取りまとめ」について、次のように記されている。
「日本航空機操縦士協会」サイトの該当ページ
2024.08.01 NEW 航空局通達等
【お知らせ】羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会 中間取りまとめの報告
6月24日にJAPAも関係団体として参加している第7回羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会が開催され、中間取りまとめが行われ、国土交通大臣へ提言しました。
第1回からの検討委員会の議事内容は、全て国土交通省HPに掲載されています。
検討委員会としては、本中間取りまとめを踏まえ、政府及び関係者において、航空の安全・安心の確保に向けて、必要な体制整備や予算措置、制度改正を含め、可及的速やかに対策の具現化と実現が図られること強く求めました。
また、今回提言した対策にとどまらず、将来的な航空需要の増加や科学技術の発展も見据えながら、関係者全体で対策を不断に検討し、必要に応じ見直していくことも忘れてはなりません。
今後、検討委員会は、本中間取りまとめに基づく取り組みの進捗や、今後明らかになる事実関係も踏まえながら、最終取りまとめに向けて、引き続き議論を行なっていく予定です。
羽田空港の事故防止対策は、早急に検討されるべきだろう。
いつ、どんな事故が起きても不思議がない位の過密で危険な空港である。
それはそれとして、516便の方にも落ち度がなかったか、ということは、検討されるべきだ。
報道の中では、エアバスA-350の「HUD:ヘッド・アップ・ディスプレイ」が、視界を見えにくくさせた可能性も指摘されていた。
この最新設備が、海保機発見を邪魔したのかどうか、については次回。
失礼しました。
