柔道混合団体銀メダルで「屈辱?」ー柔道とフェンシングで、考えたこと。
2024年 08月 04日
これは、フランスに対して、実に失礼な言葉ではないだろうか。
フェンシングでは女子サーブル団体で、日本が3位決定戦で地元、そしてフェンシング発祥のフランスを破り銅メダル。
果たして、フランスの監督は「屈辱」と言うだろうか。言わないだろう。
ちなみに、決勝は日本が準決勝で敗れたウクライナが韓国を破って、これまでのところ、唯一の金メダル獲得だった。
また、男子エペ個人決勝で加納選手がフランスのボレル選手に勝った時、フランス応援団の人たちも、総立ちで拍手していた。
それが、スポーツの好ましい姿であり、「国の威信」など、必要ない。
どうも、柔道とフェンシングが対照的に思えたので、少し調べてみた。
近代オリンピックは1896年のアテネ大会で始まった。
実施された競技は、次の通り。
□陸上競技(円盤投げ)
□競泳競技
□体操
□ウエイトリフティング
□レスリング(グレコローマンスタイル)
□フェンシング
□射撃
□自転車
□テニス
ということで、フェンシングは第一回大会から実施されている歴史のある競技。
フェンシングと柔道の概要を確認。
フェンシング 柔道
□発祥 フランス 日本
□オリンピック採用 1896年アテネ 1964年日本
□審判の言語 フランス語 日本語
□競技人口 フランス 50000人 53万人
日本 6000人 12万人
フランスで柔道は、サッカーやテニス、乗馬に次ぐ規模の競技人口があり、国内には約5200の教室がある。
日本の柔道場の数は、2000余り。
発祥、歴史は、当たり前だが、現在のその競技の総合力の指標とはならない。
現在の柔道大国は、間違いなくフランスである。
そして、前回東京大会の混合団体のチャンピオンである。
何をもって「屈辱」なのか・・・・・・。
そこには、歴史のみを後ろ盾とする、あやまった考え方があるように思う。
「屈辱」という言葉を耳にした時に選手はどう思うか、という配慮がない。
二回戦で代表選に勝ち、かろうじて準々決勝に進んだが、二回戦敗退も十分ありえた状況での銀メダルは、むしろ、大いに喜ぶべきではないのか。
「国の威信」など、本来の五輪精神とは相いれないものだ。
「全日本柔道連盟(全柔連)」のサイトを確認した。
「長期育成方針」の説明があるので引用。
「全日本柔道連盟」サイトの該当ページ
「長期育成指針」について
2023年08月24日
当連盟では、「JUDO for ALL」を合言葉に、年齢、性別、障がいの有無の分け隔てなく、誰もが柔道に親しめる環境づくりに注力しております。この取組を推進し、あらゆる人が多様な柔道の価値を享受できる体制を構築することが、柔道界が担う社会的役割であるといえます。
当連盟の登録人口減少の原因を調査したところ、人口が急激に減少した時期に共通して問題視されたことは、指導者不足(指導者養成不足)と環境の不備でした。さらに、他国のスポーツ離れとの共通項を探ると、『勝敗』という画一的な評価が影響していることがわかりました。
そこで当連盟では、現代社会における柔道の役割や価値を再定義するべく、オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカ等のLTAD(Long-Term Athlete Development)を参考に、「長期育成指針」を策定いたしました。本指針を連盟の戦略的グランドデザインと位置づけ、柔道の普及活動に取り組んでまいります。
「長期育成指針」とは・・・
柔道に関わる全ての人、国民に対し、柔道を通して成熱していく理想的な姿を提案すべく策定した指針。
生涯発達のプロセスを6つの段階に分け、それぞれの段階で求められる育成の視点を提示している。
参考とする国に、なぜ、フランスがないのだろうか。
資料PDFをダウンロードできる。
やたら文章が多い内容だが、その中の一部。
Ⅱ 日本の課題
日本の総人口は2008(平成20)年に最多の1 億2,808 万人となり,その前後から死亡数が出生数を上回って推
移している.すなわち日本の人口は減少局面にある.さらに65 歳以上人口が総人口に占める割合「高齢化率」は
急速に増大し28.9%(2021 年10 月1 日)に達する一方,「合計特殊出生率*4」は低い水準を維持している.これ
は人口の減少だけでなく,人口構成の不均衡(少子高齢化)を意味している.
人口減少と人口構成の不均衡は,国力の低下に直結すると考えられ,日本が直面している解決すべき緊要の
課題である.出産,子育て,あるいは教育への社会的支援等の充実によって少子化対策を講じ,健康寿命*6を延
伸して高齢者の活躍促進を図って社会全体の活力を増大させることが期待される.
このような課題を抱える現下の日本において,柔道が国民に対して果たすべき役割を示す必要がある
人口減少と高齢化に、柔道がどう役割を果たすというのか。
全柔連が、「国」を「個人」より優先して考えているから、こんな文章が含まれるのだろう。
途中で図やグラフもあるのだが、見ただけではよく分からないものがほとんど。
「日本フェンシング連盟」サイトを見た。
「中期計画資料(2023年~2025年)23年度」のPDFをダウンロードできる。
「日本フェンシング協会」サイトの該当ページ
かつて1万2千人いた競技人口が、コロナ禍もあり6000人に減少している現実を確認し、いかに、競技人口を増やし、選手を育成するか、図・表を中心にまとめている。
「中期計画の骨子」のページ。

この後、それぞれに詳しい計画が説明されている。
具体的に何をすべきかが、示されている。
太田雄貴元会長以降、フェンシングのことを社会により幅広く伝え、親しみをもってもらおうという努力が続いていると思う。
フェンシングと柔道、フランスと日本という観点から、どうしても、日本の柔道を取り巻く問題ばかりが見えてくる。
重要なことは、まず、現実を直面すること。
積極的に他の国の良い事例を学ぶこと。柔道でフランスに学ぶことは多いはずだ。
あくまでスポーツは、競技者が健康になり楽しむことが優先。
そこに「国」の威信などは存在しない、ということ。
くどいが、混合団体で日本がフランスに負けたのは、総合力の差だ。代表戦ルーレットの運の問題でもない。
二回戦スペインに敗戦もありえたことを真摯に見つめ、何が問題か考えるべきではないか。
体重差のある相手に勝った角田は素晴らしいし、阿部一二三も階級上の銀メダルの選手とよく戦った。
しかし、なぜ、同じクラスの選手を出場させられなかったのか、よく考えるべきではないか。
何より、日本のお家芸とかいう思いを捨てるべきだし、敗戦を「屈辱」と言う精神構造から、直すべきだ。
