さん喬の会長就任は、人間国宝の代わり?!
2024年 07月 15日
全国紙などでも取り上げているが、その見出しや内容が、少し気になった「デイリー新潮」から、さん喬の写真も拝借し引用。
「デイリー新潮」の該当記事
「人間国宝」ダメなら会長に 落語協会の“粋な人事”
2024年07月14日
創立100年を迎え、落語協会の顔が代替わりした。6月26日の総会で次期会長に選出されたのは、芸歴57年の柳家さん喬(75)。人情噺(ばなし)も滑稽噺も「名人の域」という大ベテランである。
「平成26年から5期10年にわたって会長を務めた柳亭市馬(62)は弟弟子。二人とも平成7年に人間国宝に選ばれた五代目柳家小さん(故人)の門下ですが、さん喬の入門は市馬より13年も早い。会長就任は前後しましたね」
とは落語担当記者。
たしかに、小三治が市馬を後任に抜擢したため、年齢的にも香盤(協会内の序列)でも、順番的には逆になった。
そして、このさん喬の会長就任について次のように書かれていた。
人間国宝がダメなら…
ちょうど1年前のいまごろ、さん喬と同世代の五街道雲助(76)が人間国宝に認定された。落語家としては五代目小さん、桂米朝(故人)、小三治に続く4人目の栄誉となったが、
「業界の下馬評では、さん喬の方が上でした。それだけに結果を知らされた時、本人は肩を落としていたとか。雲助を除く三人のうち、二人はさん喬と同じ柳家一門だったので、周囲は“文科省が別の一門を優先したのでは”とうわさし合った。“気の毒だなあ”と同情を寄せていたんですよ」
が、捨てる神あれば拾う神あり。落語協会の古参会員がそっと明かす。
「そんな背景もあって、誰が言うともなくさん喬に“落語協会会長”の肩書が用意された。歴代会長には、八代目桂文楽、古今亭志ん生(ともに故人)、圓生、小さん、小三治と、昭和や平成を代表する名人の名が並んでいますから」
もっとも、これで割を食ったお方も。市馬のもとで10年間、副会長を務めてきた林家正蔵(61)である。
「落語協会には“会長の後任は副会長”との暗黙の了解があります。8代会長の圓歌、9代の馬風、11代の市馬らは副会長から昇格して就任した。今回もそれに倣うのが筋でしたが、先の事情を知る正蔵は何も言わずに譲った格好です」
こちとら江戸っ子。なんとも粋な話じゃねえか。
どうも、私には「粋」な人事とは思えない。
いくつか、私見を述べたい。
(1)人間国宝に相応しいのはどっちか
さん喬が、今の落語界で欠かせない噺家であることには異論はない。
しかし、人間国宝として、雲助よりも優先されるべきか、と言うと、私は賛成できない。
さん喬は、人情噺も滑稽噺も達者だし、ネタの数も少なくない。
とはいえ、その芸の幅、奥行きで考えると、私は雲助に軍配を上げる。
さまざまな主催者による独演会によって、私が聴いてもきた。
日本橋劇場での「らくご街道 雲助五拾三次」、浅草見番の「蔵出し」や「ボロ市」が代表的な会だと思う。
落語の優れた聴き手でもある席亭が、雲助のこのような会を企画すること自体、雲助落語の魅力を裏付けている。
特に、雲助の芝居噺の凄さは、十分に人間国宝の名に相応しいだろう。
また、『名人長二』『双蝶々』など40もの噺を掘り起こしたり、五代目古今亭今輔の『ラーメン屋』を舞台を蕎麦屋に替え『夜鷹そば屋』として演じたりする研究熱心さも、評価すべきだろう。
ちなみに、年間50回ほど寄席や落語会に行っていた時期、年間のマイベスト十席にさん喬の高座を選んだのは、2013年、東雲寺での露の新治との二人会での『天狗裁き』一席。
雲助は、ほぼ毎年、複数の高座が候補になり、その中から一席をベストテンに選出した。
もちろん、雲助の落語会に多数行っていたからでもあるが、それは、行きたくなる魅力があったからだ。
(2)会長は名誉職なのか
人間国宝になれなかったから、代わりに会長、という名誉職を与えたのなら、それは間違いだと思う。
多くの噺家を抱える組織のトップには、本来やるべき職務がある。
落語協会は、落語芸術協会(芸協)が公益社団法人であるのに対し、一般社団法人、である。
以前は、公益社団法人だったが、定められている決算書の提出を怠り、一般社団法人に格下げされたままだ。
二つの法人の違いなどは過去にご紹介したことがあるが、公益社団法人の方が管理面で厳しい分、国からの援助は多い。
2015年4月2日のブログ
ちなみに、昨年度、芸協には補助金が約4000万円、落語協会には半分の2000万円。
今年度は、芸協はほぼ同じ約4000万円、落語協会は、なぜか、約3000万円に増えていた。
落語協会は、ふたたび公益社団法人に戻るよう努めるべきだと思うのだが、そういう動きは、市馬会長時代には、見受けられなかった。
また、今年2月に記事を書いたが、当代円歌のハラスメント問題について、協会は、ほぼ傍観していただけと言える。
2024年2月11日のブログ
小三治が重要無形文化財保持者となっていた時期、落語は重要無形文化財として認定されていた。
つまり、人間国宝の存在が、その芸能が重要無形文化財である、という関係になる。
ともかく、そういう大事な文化を継承しようとしていた若者が、いわれなき師匠の暴力や暴言に苦しんでいたことに対し、協会は、「他の師匠のこと」と見過ごすだけでいいのか。
落語協会会長には、そういった課題の解決に取り組む責任があるはずだ。
(3)割を食った正蔵?
そもそも、市馬会長体制で、副会長に正蔵が就いたことからして、疑問だった。
年齢も、そして、落語の技量も、到底、会長の器ではない。
さん喬会長の新体制では、副会長は置かない。
理事には、若手が並ぶ。
協会のサイトから、引用する。
落語協会サイトの該当ページ
会長 柳家さん喬
理事
柳家小さん、金原亭馬生、林家正蔵、橘家圓太郎、 五明樓玉の輔、林家たい平、柳家喬太郎、入船亭扇辰、林家彦いち、古今亭菊之丞、柳家三三、春風亭一之輔、宝井琴調、立花家橘之助、江戸家猫八
理事の顔ぶれは、中堅、若手の実力者が並んだ。
ぜひ、名誉職なんて思わず、さん喬には、理事たちとしっかり協議をして、落語協会の課題に取り組んで欲しい。
昨日は、テニスの後、仲間と軽く昼食と生ビール。
帰宅して、ユウを風呂でシャワーして散歩。
かみさんは、珍しく職場の方と昼食(昼呑み)だった。
19時を過ぎても帰宅するLINEが入らないので、こっちから連絡すると、まだ、同じ店でいるから来るように、とのこと。
一駅隣の居酒屋へ。
かみさんの同僚Tさん(今年60歳の女性)とかみさんは、13時頃から、ずっと、その席で飲み、食べながら話をしていたらしい。
なかなか楽しいTさんとの会話に私も参加し、結局、店を出たのは22時のラストオーダーの後。
かみさんとTさん、ほぼ9時間、いたことになる。
女同士、そんなに話すことがあるんだね・・・・・・。
ということで、ブログを書くこともできず、シャワーを浴びて爆睡だった。
先代の既視感がいまだに・・・
たしかに市馬とさん喬は順番が逆だった気がします。
また、国宝がダメだから会長にというのも何だか変ですね。違う話だと思います。
確かに、理事に、偉大な先代を継いだ人の名が並びましたね。
さん喬、雲助、今松たちは、第一回真打試験の経験者で、同時昇進。
香盤と、多数派柳家一門ということでの会長就任かと思います。
デイリー新潮のライターは、ほんの一部の情報を、面白可笑しく膨らませたのでしょう。
先日は本田宗一郎と藤沢武夫の件で長々と失礼いたしました。
本田宗一郎は自らの姓を社名に入れ、「本田技研工業」としたことも後悔していたという説もありました。
「会社は個人のものではない」という意思を強く抱いていたのでしょうね。
閑話休題。
五街道雲助の人間国宝認定は依存はないにしろ、私はちょっと意外でした。雲助の高座は数回しか見ていませんが、もちろん好きな噺家の一人です。
ただ、個人的には柳家さん喬のほうが私の好みということもあり、残念だったという思いがあります。
小言幸兵衛様のご指摘を拝見してなるほど、そういう見方もあるのだなと考え直しましたが。
噺家、それも同じ東京の落語協会所属という状況で二人同時認定は難しかったのでしょうね。
仮に存命ならば、八代目文楽・五代目志ん生・六代目圓生の三人は確実に認定されていたのでしょう。
個人的に六代目圓生は今一つ好みではないのですが、大ネタより「夏の医者」のような軽い滑稽話のほうが楽しめました。そのあたりが圓生の凄さなのかもしれません。
昔は噺家が人間国宝に認定されるなど、考えもおよばなかったことでしょう。
学生時代、古い新聞の縮刷版を見ていたら、1964(昭和39)年11月に三代目三遊亭金馬が他界した際の訃報があまりにも扱いが小さく、驚いてしまいました。三代目金馬自身、当時の評論家に酷評されていたことも影響していたのでしょうか。仲間内(特に文楽、志ん生)では評価が高かった(圓生だけはあまり高く評価していなかったようですが)というのに…。
またもや長々と失礼いたしました。
猛暑の最中、お身体には十分気をつけてお過ごしください。
三代目金馬については、安藤鶴夫さんが低評価だった影響が大きいように思います。
好みの問題でもありますが、雲助には、ハズレが限りなく少なく、さん喬は、それが特徴でもあるのですが、くどさがどうしても気になる高座が、たまにある、と私には思えます。
とはいえ、寄席で、さん喬の『棒鱈』に出会えたら僥倖です。
お気遣いありがとうございます。
Ponchiさんも、お体ご自愛ください。
さん喬の会長就任のニュースは「えっ」と思わざるを得ませんでした。
技量がどうの、ということではなく、年齢が、なのです。
今の世の中、75歳は確かにまだまだ元気に活躍している人は多く、特に斯界にあっては、
更なる先輩がまだまだ佃煮のようにいらっしゃいます。とはいえ、小三治が指名して会長となり
5期もの間を務めた市馬による若返り人事は、このあとも継続されてしかるべきでないかな、と
個人的にはずっと思っていました。正蔵が後を襲うのかは別として(ww)、理事連の50代が引き続き
会をひっぱっていくようであればいいのに、と期待していたのですが、崩れましたねw。
(さん喬が不満ということではありません)。
人間国宝と会長の住み分けみたいな話は、記者の中途半端な知識によるもので鼻白みます。
最近どうも、こういう半可通の情報が多いような気がしますね。
ご無沙汰しております。
おっしゃる通りですね。
さん喬の会長就任は、いわば、論功行賞のような印象です。
せっかくの小三治がつくった若返りの流れに逆行していますね。
圓歌のパワハラ問題などを含め、落語協会には、今、よどんだ空気が漂っているように感じます。
早く、若手が協会を刷新する日が来ることを期待しましょう。
猛暑が続きますが、ご自愛くださいませ。
お久しぶりです。
市馬の前に、さん喬なら、まったく疑問なしなんですがね。
紹介した記事が、人間国宝の代わりに、という論調だったので、小言を書いた次第です。
たしかに、中堅クラスには、まだ荷が重いでしょうね。
ご指摘ごもっともです。

