高浜原発「MOX燃料」の危険性について。
2024年 05月 30日
朝日新聞の一面は、原子力規制委員会が、高浜原発3号機、4号機の60年運転を認可したこと。
3.11後、民主党野田政権時代に「例外的」とした40年から60年の延長だったが、これまで申請された4原発8基は、すべて認可された。
表を含め引用。
朝日新聞の該当記事
高浜3、4号機60年運転へ 規制委、延長すべて認可
2024年5月30日 5時00分
来年で運転開始から40年を迎える関西電力高浜原発3、4号機(福井県)について、原子力規制委員会は29日、60年までの運転を認可した。東京電力福島第一原発事故後に原発の運転期間は原則40年となり、政府は最長20年の延長は「極めて例外的」としていたが、これで申請された4原発8基がすべて認可された。
朝日は、社説でも取り上げているので、こちらもご紹介。
朝日新聞の該当社説
(社説)
高浜原発認可 老朽炉を使い続けるな
2024年5月30日 5時00分
原子力規制委員会が関西電力高浜原発の3、4号機の運転延長を認可した。来年で運転開始から40年経つ両基に、さらに20年の運転を認める。延長はこれで8基に達し、来年には、60年を超える運転への道も開かれる。だが、老朽原発はリスクが高く、使い続けることは許されない。
高浜3、4号機は1985年に運転を始めた。規制委は、重要設備に問題は確認されていないとする審査結果を了承。関電が計画的に管理すれば2045年時点でも機能は保てると判断した。
東京電力福島第一原発事故後の法改正で、運転期間は原則40年、1回に限り20年延長可能とされた。当初は延長は「極めて例外的」と説明されていたが、これまでの申請はすべて認可されている。
さらに、昨年成立した原発推進関連法は、審査などでの運転停止期間を計算からはずして60年を超える運転を可能にする新制度を盛り込んだ。法案づくりでは、岸田政権が数カ月の検討で方針転換を決め、経済産業省主導の日程に押される中で、規制委も制度変更を認めた。事故の教訓である「推進と規制の分離」をゆるがす進め方だった。
国際原子力機関(IAEA)によると、米やスイスの原発が運転開始から54年経過しているが、60年超は「未知の領域」だ。それを地震大国で進めていいのか。原発事故は、国の将来を危うくしかねないことを13年前に思い知らされたはずだ。
運転延長で、電力会社や利用者に当面の経済的な利点はあるだろう。だが同時に、老朽化のリスクを抱え込む。安全対策の強化や、古い部品の交換はできても原子炉本体は取り換えられない。設計自体が古く、災害など想定外の事態に対して予期せぬトラブルの恐れも増す。
1月の能登半島地震では、北陸電力志賀原発で外部電源を受ける変圧器の損傷などのトラブルが起きた。周辺では家屋の倒壊や道路の通行不能が相次ぎ、事故時の屋内退避や避難の難しさも露呈した。避難路が限られる地域での住民の不安は高まっている。
原発は、使用済み燃料の扱いや高レベル廃棄物の処分など未解決の問題も山積する。安全対策の費用が増え、経済性でも再生可能エネルギーへの優位が失われつつある。
政府は今月、新しいエネルギー基本計画の議論を始めた。事故後に盛り込んだ「原発依存度を可能な限り低減」との方針は、自民党の政権復帰後も保たれてきた。今後もこれを堅持し、老朽原発に頼るような道は避けるべきだ。
老朽化原発稼働は、もちろん許されるべきではない。
加えて、高浜の3号機、4号機は、他の原発よりも危険性が高い。
記事でふれられていないのだが、高浜原発3号機と4号機は、「MOX燃料」である。
MOX燃料(モックスねんりょう)とは、混合酸化物燃料の略称であり、原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4-9%に高めた核燃料のことである。
「MOX」は、プルトニウムそのものを燃料に使うため、例えば原子炉のブレーキに相当する制御棒が効きにくいなど原発稼動中の危険性も大きいが、その燃料を作る過程や再処理まで危険がいっぱいである。
MOX燃料については、今は更新していない兄弟ブログ「幸兵衛の小言」で七年前に記事を書いた。
「幸兵衛の小言」の該当記事
その記事自体も、その四年前の記事と重複するものだった。
大事なことは、何度でも。
七年前の記事は、フランスはシェルブールの港からMOX燃料が日本に向かっているという内容から始まるものだった。
フランスの原子力産業にとって、日本は実にありがたいお客様。
あらためて、この燃料の危険性について紹介したい。
『新装版 反原発、出前します-高木仁三郎講義録-』(反原発出前のお店編、高木仁三郎監修、七つ森書館)から再度引用。
どれほどMOX燃料を使うと“やっかい”なのか、重要部分を太字にする。

『新装版 反原発、出前します』(七つ森書館)
MOX燃料を使うためには、ウラン濃縮度がいろいろ違った燃料を作らなくてはなりません。さらにプルトニウムの冨化度(濃度)もいろいろと違ったものを作らなくてはいけないのです。仮にそれを再処理するとなるとどういうことになるかを考えると、頭が混乱してきます。同じ組成のものは一度に再処理できますが、違った組成のものは一度に再処理できないので、原子炉からでてきた使用済み燃料を何通りにも分けなくてはなりません。このように核燃料サイクルがきわめて複雑になるのです。
もう一つ、MOX燃料加工の場合に問題になるのは、プルトニウムn半減期の問題です。プルトニウム-239の半減期は2万4000年ですが、プルトニウム-240の半減期は6600年です。それからプルトニウム-241の半減期は14年で、プルトニウム-242の半減期は37万年です。このような放射能ができるのです。これが原子炉ごとに違ってくるのですが、問題はプルトニウム-241です。この半減期が短いので早く崩壊していって、アメリシウム-241になります。半減期が14年ですから、一年もすればけっこうたまってきます。アメリシウム-241はガンマ線を強く出しますので、取り扱いが面倒な上に核特性が違ってきます。燃料としては品質が劣化します。このアメリシウム-241がMOX燃料の加工をやっているうちに、たまってきてしまうと、強いガンマ線のために工場に立ち入れなくなることもあります。ですから、「プルトニウムを長い間置いておくな!」「プルトニウムは取り出したらすぐ使え!」といわれています。
このように、通常のウラン燃料さえ原発のゴミはやっかいなのに、MOX燃料の原発でできるゴミは、もっとやっかいだし、危険性が増すばかりなのだ。
危険性の問題のみならず、経済性の面でも、MOX燃料は割に合わない。

高木仁三郎著『原子力神話からの解放』
高木仁三郎さんの『原子力神話からの解放』は、初版が光文社カッパ・ブックスから亡くなる直前2000年8月に発行され、講談社+α文庫で再刊された。
「第9章 『核燃料はリサイクルできる』という神話」から、MOX燃料が危険なだけでなく、経済性の面でもメリットがないことについて引用。
リサイクルで放射能が増える!
MOX燃料は私の専門分野ですから、大きな国際研究もやりましたし、いろいろなレポートも書いています。ここではくわしく述べませんが、プルサーマル計画、つまりMOX燃料をやると、どのくらいエネルギー的に得をするのか研究したことがあります。たとえ1パーセント以下とはいえ、本来なら捨ててしまうプルトニウムをまた使うわけですから、それによる燃料節約の効果も一定程度はあるだろうと、計算上は考えられるわけです。そこで、私たちの国際研究であるIMAプロジェクトのなかで、このメリットについて研究してみました。
IMA研究の正式な名前は「MOX燃料の軽水炉利用の社会的影響に関する包括的評価」というものです。私たちがこの研究をやって明らかにした一つの重要な点は、プルトニウムを取り出して燃やすことは、安全性の問題は別にしても、燃料資源上のメリットはまったくないということです。とくに、リサイクルによって環境の負荷を少なくするといったメリットは、まったくありません。
ウランが原発の燃料となるプロセスは、非常に長い道のりだという話はすでにしましたけれども、使用済み燃料を再処理して取り出すことは、それをさらに複雑にした流れとなります。プルトニウムをあちこちに動かし、いろいろな工程を経てプルサーマルという名の再利用を行なうと、その過程でいろいろな廃棄物が出てくるうえに、そうやって燃やしたプルトニウム自体が結局、最終的には使用済みのMOX燃料というゴミとなって残ってしまいます。ゴミを減らすことになるどころか、この計画はかえってゴミを増やすことになるのです。
“リサイクル”などと言う言葉に誤魔化されてはいけない。通常のウラン燃料より放射能のゴミが増えるし、稼動後の危険性も増すのに、経済的な効果もないMOX燃料原発。
そもそも、高浜の3号機では、昨年の定期検査中にタービンを回すために使う「蒸気発生器」の配管2本に傷ができていたことが分かり、年末の再稼働が延期になっていた。
それでなくても危険極まりない原発の中で、MOX燃料を使っている原発は、決して、60年も稼働させてはならない。
MOX燃料の原発は、次の通り。
■東京電力(株)福島第一原子力発電所3号機-3.11の爆発事故により廃炉決定
■九州電力(株)玄海原子力発電所3号機
■中部電力(株)浜岡原子力発電所4号機
■四国電力(株)伊方原子力発電所3号機
■北海道電力(株)泊原子力発電所3号機
■関西電力(株)高浜原子力発電所3号機および4号機
60年稼働を認めた原発の中で、高浜の二基のみ、MOX燃料なのである。
60年への延長も論外だが、高浜の3号機、4号機まで認めるのは、科学的にも経済的にも道義的にも、許せない。
原子力規制委員会には、どんな専門家がいるのだろうか。
私には、原子力規制委員会が、原子力「寄生」委員会になりつつある気がしてならない。

