名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。
2024年 04月 12日
二日目の中盤では、50手目☖9五角、58手目☖4四角などに、藤井対策の成果が見えて、接戦が続いていた。
帰宅し、ユウの散歩の間も、スマホのAbema将棋チャンネルの音声は聞いていた。
Abema将棋チャンネル
これが、99手目先手藤井名人の☗3四香の盤面。

解説は北浜健介八段、聞き手山口恵梨子女流三段。
藤井名人は、二つ目の桂馬が手に入れば有利だったが、その危険を察知した豊島九段が84手目に☖9三桂と跳ねて、馬に取られるのを避けていた。
よって、あらたな作戦を立てる必要があるが、まずは、豊島九段の攻撃をなんとかしのがなくてはならない。
AIは、☗4六金を推奨していたが、三筋の玉頭に歩を打たれるのが嫌なので、あえて香車を打ち、相手に歩を合い駒させる狙いだった。
評価値は直前までほぼ互角だったが、この手で若干後手有利に振れた。
しかし、この手、加藤一二三こと「ひふみん」は、高く評価していた。
日刊スポーツの「ひふみんアイ」から引用。
日刊スポーツの該当記事
大変面白い将棋でした。「何をやってくるか分からない」豊島九段に対し、藤井名人が臨機応変にその場その場で対応して「備えができているな」という全体の印象でした。
特に光ったのが終盤3筋に香を打ち込んで歩を受けに使わせ、攻めで予想された打ち込みを消したところ。あの危機管理は見事です。
だから、必ずしもAIだけで評価してはいけない、ということなのである。
狙い通り、豊島九段が☖3三歩、と合い駒を打ってくれた後、次の101手目で狙いの☗4六金、102手目☖5七桂(成らず)、103手目は☗4八金、104手☖3四歩、105手6八歩、106手に☖5九飛と進んだ。

勝勢はほぼ互角。
そして107手目、一枚では心もとない桂馬を使い、どうしても打ちたかったと思われる☗2四桂の盤面。AIの推奨は☗5八銀だった。

勝勢は後手に大きく傾いた。
このあたりで散歩から帰宅したはず。
パソコンに切り替え、その後の推移を見守る。
120手目後手☖3九飛の王手。勝勢は後手70%を超えた。

121手目☗4六玉とした場面。

この後、AI評価値の表示が出る間もなく(画面のコピーをする間もなく)、122手目、豊島九段が☖4四香。

解説の佐藤康光九段から、「ヒェーッ!?」の声。
AIの評価値が、互角に戻った。
こう打つのなら、先に☖4八龍と金を取っておくべきだったし、AIの推奨は、☖3八桂成だった。
この後、山口女流三段は「第3ラウンドの始まりです」と言ったが、確かにその通り。
後で、佐藤康光九段が、藤井名人の狙いに気が付いたが、☗3七桂と上がるのが、詰めろなのだった。
※詰めろ:次に何もしなければ詰ませられる状態にあること。
だから、AIは、☖3八桂成を推奨していたのであった。
ここが、一つ目の分岐点。
予想通り、123手目☗57玉。

124手目☖4五香。

125手目の☗8八歩は、馬の効きを殺す妙手。

とはいっても、AI勝勢は、まったくの互角。
まだまだ分からない局面で、AIは、再び☖3八桂成を推奨している。
藤井名人が、席を外した。
ここで、豊島九段が、終盤二つ目のミス。
126手目は、☖7九龍だった。

ここで、勝勢は先手にふれ、最後まで戻らなかった。
佐藤康光九段も、ついさっきまで気が付かなかった☗3七桂からの詰めろを、豊島九段は、見逃していたのだろう。
席を外していた藤井名人が戻って来た。
右手を口元に当ててフッっと一息。
解説の佐藤康光九段が、この仕草を見て「あ、このポーズは危険です・・・危険と言うのはおかしいですが、何かを発見している雰囲気・・・・・・」。
満を持しての☗3七桂。
佐藤康光九段、「うわ~!」。

その後、手は進んで、139手目、☗8二飛。

豊島九段、狙われた馬が取られても先手の飛車を取り返すため、王手にもなる☖7八飛とするかと思われたが、なぜか、☖9八飛。
これも、ミスと言えるだろう。

ここで、AI勝勢は一気に先手99%となった。
これは、的確に指せば詰みがある、という意味だ。
実は、☗4一銀からの詰めろなのである。
しかし、後で確認すると、他のAIは☗7八金打ちを推奨していたようだ。
AIによっては、この詰み、見えていなかったということか。
山口女流三段が☗4一銀のことを告げても、佐藤康光九段は「詰めろ、なのかなぁ」といぶかし気。
藤井名人には、見えていた。
141手目、☗4一銀。

そして、豊島九段にも、詰めろがみえていた。
残り時間30秒を過ぎたところで、投了。

逆転勝ち、と言えるのかもしれないが、藤井名人にとっては、それほど終盤で危機感はなかったのかもしれない。
そして、もはや、AI超えという言葉は、藤井八冠の将棋においては、特別なことではない。
きっと、AI最善手を察していながらも、自分の信じる、人間が相手の最善手を選ぶ、それが藤井聡太将棋なのかもしれない。
たとえば、最初にご紹介した99手目の☗3四香のように、AI最善手が、必ずしも人間同士の対局における最善とは言えない、ということだろう。
驚くのは、感想戦でも、藤井名人が豊島九段を圧倒したことだ。
感想戦では、あの122手目の時、☖4四香ではなく☖4八龍を先に指した場合の検討をしていたが、それでも123手目に☗6三銀と打つなどの手を示し、先手有利であることを示した。
対局者のみならずAIを含め、たった一人だけ、どんな盤面でも全体が見えていた、としか思えない。
第二局は、4月23(火)24日(水)、場所は成田山新勝寺。
その前のタイトル棋戦は、20日の叡王戦第二局での、伊藤匠七段との対局。
大山康晴15世名人の17連勝に並ぶのか、それとも、伊藤七段が一矢報いるのか、楽しみである。
