人気ブログランキング | 話題のタグを見る

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。

 藤井名人と元名人の豊島九段の名人戦第一局二日目の終盤を迎えた昨夜、最後まで目が離せない内容だった。

 二日目の中盤では、50手目☖9五角、58手目☖4四角などに、藤井対策の成果が見えて、接戦が続いていた。

 帰宅し、ユウの散歩の間も、スマホのAbema将棋チャンネルの音声は聞いていた。

Abema将棋チャンネル

 これが、99手目先手藤井名人の☗3四香の盤面。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_12100167.png


 解説は北浜健介八段、聞き手山口恵梨子女流三段。

 藤井名人は、二つ目の桂馬が手に入れば有利だったが、その危険を察知した豊島九段が84手目に☖9三桂と跳ねて、馬に取られるのを避けていた。

 よって、あらたな作戦を立てる必要があるが、まずは、豊島九段の攻撃をなんとかしのがなくてはならない。

 AIは、☗4六金を推奨していたが、三筋の玉頭に歩を打たれるのが嫌なので、あえて香車を打ち、相手に歩を合い駒させる狙いだった。

 評価値は直前までほぼ互角だったが、この手で若干後手有利に振れた。

 しかし、この手、加藤一二三こと「ひふみん」は、高く評価していた。

 日刊スポーツの「ひふみんアイ」から引用。
日刊スポーツの該当記事

大変面白い将棋でした。「何をやってくるか分からない」豊島九段に対し、藤井名人が臨機応変にその場その場で対応して「備えができているな」という全体の印象でした。

特に光ったのが終盤3筋に香を打ち込んで歩を受けに使わせ、攻めで予想された打ち込みを消したところ。あの危機管理は見事です。

 だから、必ずしもAIだけで評価してはいけない、ということなのである。

 狙い通り、豊島九段が☖3三歩、と合い駒を打ってくれた後、次の101手目で狙いの☗4六金、102手目☖5七桂(成らず)、103手目は☗4八金、104手☖3四歩、105手6八歩、106手に☖5九飛と進んだ。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13131807.png


 勝勢はほぼ互角。

 そして107手目、一枚では心もとない桂馬を使い、どうしても打ちたかったと思われる☗2四桂の盤面。AIの推奨は☗5八銀だった。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13113740.png


 勝勢は後手に大きく傾いた。

 このあたりで散歩から帰宅したはず。

 パソコンに切り替え、その後の推移を見守る。

 120手目後手☖3九飛の王手。勝勢は後手70%を超えた。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13270438.png


 121手目☗4六玉とした場面。
名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13201401.png


 この後、AI評価値の表示が出る間もなく(画面のコピーをする間もなく)、122手目、豊島九段が☖4四香。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13272993.png


 解説の佐藤康光九段から、「ヒェーッ!?」の声。
 AIの評価値が、互角に戻った。

 こう打つのなら、先に☖4八龍と金を取っておくべきだったし、AIの推奨は、☖3八桂成だった。

 この後、山口女流三段は「第3ラウンドの始まりです」と言ったが、確かにその通り。

 後で、佐藤康光九段が、藤井名人の狙いに気が付いたが、☗3七桂と上がるのが、詰めろなのだった。
 ※詰めろ:次に何もしなければ詰ませられる状態にあること。

 だから、AIは、☖3八桂成を推奨していたのであった。

 ここが、一つ目の分岐点。

 予想通り、123手目☗57玉。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13382570.png



 124手目☖4五香。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13384412.png


 125手目の☗8八歩は、馬の効きを殺す妙手。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13400346.png


 とはいっても、AI勝勢は、まったくの互角。
 まだまだ分からない局面で、AIは、再び☖3八桂成を推奨している。
 
 藤井名人が、席を外した。

 ここで、豊島九段が、終盤二つ目のミス。

 126手目は、☖7九龍だった。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13441786.png


 ここで、勝勢は先手にふれ、最後まで戻らなかった。

 佐藤康光九段も、ついさっきまで気が付かなかった☗3七桂からの詰めろを、豊島九段は、見逃していたのだろう。

 席を外していた藤井名人が戻って来た。
 右手を口元に当ててフッっと一息。
 解説の佐藤康光九段が、この仕草を見て「あ、このポーズは危険です・・・危険と言うのはおかしいですが、何かを発見している雰囲気・・・・・・」。
 満を持しての☗3七桂。
 佐藤康光九段、「うわ~!」。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_13492147.png


 その後、手は進んで、139手目、☗8二飛。
名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_14100415.png


 豊島九段、狙われた馬が取られても先手の飛車を取り返すため、王手にもなる☖7八飛とするかと思われたが、なぜか、☖9八飛。
 これも、ミスと言えるだろう。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_14102367.png


 ここで、AI勝勢は一気に先手99%となった。

 これは、的確に指せば詰みがある、という意味だ。

 実は、☗4一銀からの詰めろなのである。

 しかし、後で確認すると、他のAIは☗7八金打ちを推奨していたようだ。
 AIによっては、この詰み、見えていなかったということか。

 山口女流三段が☗4一銀のことを告げても、佐藤康光九段は「詰めろ、なのかなぁ」といぶかし気。
 
 藤井名人には、見えていた。

 141手目、☗4一銀。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_14112961.png


 そして、豊島九段にも、詰めろがみえていた。

 残り時間30秒を過ぎたところで、投了。

名人戦第一局、激戦の中で一人だけ見えていた藤井名人。_e0337777_14172470.png
 


 逆転勝ち、と言えるのかもしれないが、藤井名人にとっては、それほど終盤で危機感はなかったのかもしれない。

 そして、もはや、AI超えという言葉は、藤井八冠の将棋においては、特別なことではない。

 きっと、AI最善手を察していながらも、自分の信じる、人間が相手の最善手を選ぶ、それが藤井聡太将棋なのかもしれない。

 たとえば、最初にご紹介した99手目の☗3四香のように、AI最善手が、必ずしも人間同士の対局における最善とは言えない、ということだろう。

 驚くのは、感想戦でも、藤井名人が豊島九段を圧倒したことだ。


 感想戦では、あの122手目の時、☖4四香ではなく☖4八龍を先に指した場合の検討をしていたが、それでも123手目に☗6三銀と打つなどの手を示し、先手有利であることを示した。


 対局者のみならずAIを含め、たった一人だけ、どんな盤面でも全体が見えていた、としか思えない。

 第二局は、4月23(火)24日(水)、場所は成田山新勝寺。


 その前のタイトル棋戦は、20日の叡王戦第二局での、伊藤匠七段との対局。

 大山康晴15世名人の17連勝に並ぶのか、それとも、伊藤七段が一矢報いるのか、楽しみである。

名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by kogotokoubei | 2024-04-12 18:36 | 将棋など | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31