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「不適切にもほどがある!」で思う、「言葉狩り」のことなど。


 昨夜のTBS「不適切にもほどがある!」では、令和に昭和の歌がコンプライアンスの観点で問題があるということで、カラオケで、どの歌がコンプラ違反になるか検証する場面があった。

 主人公の市郎が、沢田研二の♪カサブランカ・ダンディ、を選び、「ききわけのない女の頬を 一つ二つはりたおして」と歌うと、すかさず聞いていた渚から「はいダメー! もうこれパワハラっていうかDVじゃん」と止められた。


 コンプライアンスにより放送禁止、というネタ(?)から思うのは、かつてある小説家が直面した、差別を理由にした「言葉狩り」のことだ。

 筒井康隆は、ある表現をめぐるトラブルで、一時、断筆した。

 そのことを含め、文藝春秋の2022年2月号に掲載された筒井康隆のコメントを含む記事を、文春オンラインで読むことができる。
文春オンラインの該当記事

 タイトルは、次の通り。

《「美人」「主人」「奥さん」は使わないほうがいい?》断筆宣言の筒井康隆氏が考える現代の“言葉狩り”

 引用する。

 ルッキズムだけではなく「主人」「旦那」や「奥さん」のように、性別によって立場や役割を決めつけるような言葉も使わないほうがいい、とされているとか。

 私に言わせれば、その程度でワーワーと騒ぎ立てるほうがおかしい。それこそ本当の言葉狩りになってしまいます。

 1993年ですから、いまから30年ほど前になりますが、私はこんなことを書いています。
〈小説に美人が登場しても差別につながるという常識が一般化した社会を想像することもでき、そんな想像を現実よりも先にしてしまうのが「炭坑のカナリヤ」としての作家であろう〉

「炭坑のカナリヤ」というのは、炭坑夫がガスの突出をいち早く知るためつれて入る、ガスに敏感なカナリヤのことで、これは私が発表した「断筆宣言」の一部です。

〈93年、国語教科書に掲載された筒井氏の短編「無人警察」に対し、日本てんかん協会が〈てんかんに対する差別を助長し、誤解を広める〉として抗議したことを契機に、筒井氏は「差別表現への糾弾がますます過激になる今の社会の風潮は、小説の自由にとって極めて不都合になってきた」として、「筆を断つことにした」と宣言した。〉

〈筒井氏は、てんかん協会と2度、往復書簡を交わして、互いの権利を尊重することで合意したが、断筆はその後も3年以上も続いた。解除されたのは96年。角川書店、新潮社、文藝春秋の3社と、「著者に断りなく表現を変えない」「抗議があった場合は著者の意思を充分に尊重して対処する」といった内容の覚書をかわして、執筆が再開された。〉


 この記事の冒頭では、30年ほど前の作品『残像に口紅を』が、リバイバルヒットしていることが紹介されている。
 同書は、日本語の音が消えていく「文字落とし」という、和歌などで古来より使われている手法で書かれていて、「あ」という音がなくなれば「愛」という言葉は消える、という実験小説だった。

 今のところ、「あ」という音は、消えてはいないのは、幸い。

 しかし、コンプライアンスとは、法令順守、という意味かと思う。

 令和の現代、その法令違反を問われるべきなのは、昭和の歌の歌詞ではなく、文字通り、政治資金規正法という法律に違反している政治家であってしかるべき。


 言葉狩りは困るが、法律違反は許されてはならない。


 なぜ、法令違反が、倫理審査会に出る出ないという低次元な舞台に引き下ろされているのだろうか。

 筒井康隆が、小説家として言葉に執着したように、国民は、納税者として、その税金の使われ方に執着したい。

 断筆ならず、断納税をしたい、そんな季節である。
Commented by dokkkoi at 2024-02-17 22:22
納税一揆したいです。
Commented by kogotokoubei at 2024-02-17 22:35
>dokkoiさんへ

コメントありがとうございます。
お気持ち、よく分かります。
自分の税金も、ふるさと納税と同じように、自分で選びたい、そんな思いがします。
Commented by ぱたぱた at 2024-02-19 20:39
こんばんは。この記事を見て思い出したのが古今亭のどちらといえば若手の真打が鈴本のマクラで「テレビで落語を口演するときにテレビ局から言い換え用語集(?)なるものがあり、それによると親方というのはチーフと言い換えるんだそうです。それじゃぁ落語の風情もあったものではない。」というのが思い出されました。全く十把一絡げにされても迷惑かと思います。
Commented by kogotokoubei at 2024-02-19 20:52
>ぱたぱたさんへ

「親方」=「チーフ」ですか(^^)
だったら、「姉さん」=「シスター」、「小僧」=「ボーイ」かな。
寄席で定番のマクラで、「三ぼう」があります。
寄席に来ないのが「泥棒」「つんぼう」「けちんぼう」ですが、放送は、無理ですね。
Commented by tanatali3 at 2024-02-21 09:33
筒井康隆は昔よく読んだとおもいますが、断筆宣言当時の詳細はよく知らないのです。甥っ子がニューヨークに来た当時、私の本棚から彼の本を色々取り出して、「文章が下手」とまで言ったりしましたが、ことさら言葉に自信を持つ若者の驕りだなと思ったりしたものです。
いわゆる若気の至りで、視野が狭く許容できないのです。そんな彼も、少しは丸くなっただろうかと思う今日この頃、庶民はお上に寛容ですね。^^
Commented by kogotokoubei at 2024-02-21 15:57
>tanatali3さんへ

筒井康隆は、大学時代、当時発行されていた作品の九割くらいは読んだと思います。
「俗物図鑑」などの長編も良いですが、「お助け」など、短編にも佳作がありますね。
直木賞が取れないから「大いなる助走」という傑作が生まれました。
赤塚不二夫や山下洋輔など、仲間も奇才揃い^_^
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by kogotokoubei | 2024-02-17 22:09 | 幸兵衛の独り言 | Trackback | Comments(6)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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