青山透子著『日航123便墜落 遺物は真相を語る』より(7)
2023年 09月 24日

青山透子著『日航123便墜落 遺物は真相を語る』
2018年に単行本で発行され、今年8月に河出文庫で再刊された『日航123便墜落 遺物は真相を語る』から七回目。
目次。
□文庫版 はじめに
□第一章 この墜落は何を物語るのかー国産ミサイル開発の最中の墜落
□第二章 焼死体が訴えていることは何かー乗客乗員全員分の未公開資料から
□第三章 遺物調査からわかったことは何かー機体の声が聴こえる
□第四章 証拠物と証言が訴えていることは何かー未来の在り様を考える
□あとがき
□文庫版 おわりに
□主な参考文献
時間が空いたので、前回の復習。
墜落現場は、3.3ヘクタールも焼失していた。
墜落時の残り燃料からは、ありえない範囲。
そして、現地に駆け付けた消防団は、ガソリンとタールの臭いがしたと語っていた。
ジェット燃料のケロシンは灯油の一種であり、そんな臭いはしない。
もし、武器燃料で現場が燃えたのなら、臭いの説明がつくし、火炎放射器なら、燃料の注ぎ足しも可能。
上野村の人々は墜落現場は自分たちの村であると報告していたにも関わらず、現場は長時間特定されなかった。
時間を稼ぎ、武器燃料で現場を焼き尽くす必要があった、という推理ができるのである。
さて、引き続き、第二章 焼死体が訴えていることは何かー乗客乗員全員分の未公開資料、から。
まず、「墜落現場状況と各コンパートメントの遺体状況(事故調査報告書にもとづき作成/乗員と生存者を除き合計505名)」とキャプションのある図をご紹介。

引用する。
図1は、実際に飛行機はどのような状態で墜落し、それぞれの座席に座っていた人たちはどのように投げ出されたのかを事故調査報告書の図と飛行機の部品と遺体状況を重ねて描いたものである。なお、仮設ヘリポートは事故後に作業用に作られたものである。
飛行機は前方のAコンパートメントから激突して、ひっくり返り、B、C、Dとそれぞれぶつ切り状態となって転がり、一番後ろのFコンパートメントだけが、スゲノ沢方向に機体ごと背中からジェットコースターのように木々をなぎ倒しながら一気に滑落していったのである。
最も見てほしい部分は、生存者が発見された場所である。
これが、Eコンパートメントの乗客が発見された部分だ。

最後部のEコンパートメントに座っていた144人は重なり合い、その遺体状況はほぼ完全な遺体であったと記録されている。実はここは山頂からは全く見えない場所で、沢へ滑落して深い森の木々に囲まれている。すぐそばにNo1エンジンとNo2エンジンが二つも転がっていたにもかかわらず、さらにジェット燃料の貯蔵部分の右主翼の一部があるにもかかわらず、燃えていないのである。つまり、他の遺体と異なり、「ジェット燃料で燃えた」ということよりも、むしろ山頂から見えないところだったの、燃えなかったと言わざるを得ない状況である。同じように、燃料貯蔵部分の左右の主翼を見ていくと、左主翼も燃えていない。右主翼はその周辺が燃えている。
ジェット燃料が空中に投げ出されたとしても、前部胴体、機首部、特にCコンパートメントの127人が山頂の向こう側まで投げ出されたのだが、その遺体が広範囲に広がったところに沿うようにして、約3.3ヘクタールが十時間も大火災となるほど燃える燃料が残っていたという言い分にはつながらない。遺体の広がり状況にあわせて燃えており、燃料貯蔵箇所の左右主翼から遠いところまで燃えている。逆に遺体のない場所は燃えていないのである。こんなにきれいに分かれて燃えるものだろうか。
123便には、当時オープンしたばかりのディズニーランド帰りの乗客が多く、そのほとんどが買っていたお土産のミッキーマウスが、なぜか燃えておらずにそばに転がっていたそうだ。化繊で燃えやすいにもかかわらず、不思議な光景であったという。
機内の座席区分ごとの遺体状況は図2の通りである。
これが、図2。

警察医提供の「確認済み遺体状況一覧表」から乗客全員の状況をコンパートメントに分けて集計した。この図2における「完全」とは、全身そろっている状態を指す。医師の定義(後ほど説明する)とは異なる。つまり頭と首がつながって胴体部分も手足がそろった状態であって欠損部分なし、という状況である。「ほぼ完全」とは、頭と首(胴体)はつながっているが、指や手足などの一部が欠損しているものである。「離断」とは、体がいくつもに切断され、その一部しかなかったということである。この三つの大きなくくりで表記した。これで見ても、Eコンパートメントの127体が完全であったことがわかる。
それぞれのコンパートメントでの炭化状態はどうだったのろうか。
炭化と火傷だけに絞って、図3に示した。
医師の「完全」な遺体の定義は、頭と首がつながっていて、もし、三つに裂けていた場合、3つと数えるということである。
さて、、図。

一見して分かる通り、明らかに二階席、A、B、Cの人々が燃えている。特にCコンパートメントの乗客の炭化が著しい。翼のそばで燃料を余計に被ったのだろうとも推定できる。しかし、図1を見ると、そうだとしてもCコンパートメントの乗客は山頂付近から後半ににわたってずいぶんと遠くに飛ばされている人もおり、服に燃料がついていたとしても一律ではない。
亡くなった乗客のみを分析すれば、身元未確認二人を除く503人のうち、確認された炭化は116人、火傷は41人、それ以外の遺体(不明または燃えていないもの)は346人となり、全体の約三分の一が燃えた状態であった。
なぜ、Eコンパートメントの遺体のみ「完全」であって、ほとんど「炭化」せず、他のコンパートメントの遺体は、「離断」「炭化」が多かったのか。
残り燃料からありえない広範囲の火災、現場の臭いに加え、炭化の原因が、灯油の一種であるジェット燃料のケロシンではなく、ガソリンとタールを成分とする武器燃料ではないかという推理の妥当性を、遺体が裏付けていると思う。
それにしても、青山さんの「遺体の声を、根こそぎ拾う」ための執念を感じる。
やはり「臨場」の倉石を思い出すのだ。
そして、根気よく集められた事実、データから、墜落の真相を追い求める姿を知ることは、良質のミステリーを読むような気分にもさせてくれる。
なぜ、Eコンパートメントから四名の生存者が救助されたのか。
それは、山頂からまったく見えなかったからというのが、その理由である可能性が極めて高い。
8月12日の夜、墜落現場において、ガソリンとタールを燃料とする物で何かをしようとしていた者にも、あの場所が見えなかった。
だから、彼らによって、「炭化」するまで焼かれずに済んだ、のだろう。
次回は、「炭化」した遺体と格闘した医師たちの証言をご紹介したい。
