鈴木エイト著『「山上徹也」とは何者だったのか』より(8)
2023年 08月 21日

鈴木エイト著『「山上徹也」とは何者だったのか』
鈴木エイト著『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書、7月19日初版)の八回目。
目次。
□はじめに
□序 章 風化する「統一教会問題」と「なかったことにしたい」勢力
□第一章 山上徹也と安倍晋三、鈴木エイトをつなぐ「奇妙な縁」
□第二章 銃撃事件後、逮捕された山上が供述した「恨み」
□第三章 鑑定留置中の山上徹也に送った手紙
□第四章 事件の約一週間前に山上徹也から届いていたメッセージ(前編)
□第五章 山上徹也に複雑な思いを抱く「宗教二世」たち
□第六章 事件の約一週間前に山上徹也から届いていたメッセージ(後編)
□第七章 山上徹也が抱えていた「マグマのような憤り」の正体
□第八章 山上徹也は事件前からSOSを発していた
□第九章 山上徹也が見た「絶望」の正体
□第十章 「統一教会の被害を食い止めた」ために罪が重くなる可能性
□おわりに
引き続き、第一章 山上徹也と安倍晋三、鈴木エイトをつなぐ「奇妙な縁」、から。
前回、2021年の三人の動向をご紹介した。
その中で、事件と密接に関係すると思われる、安倍晋三の行動について再確認しておく。
なお、UPFは、統一教会関連政治団体「天宙平和連合」のこと。
●2021年の<安倍晋三>
8月24日 国際勝共連合会長とUPFジャパン議長を兼任する梶栗正義からの直接の依頼によりUPF大会用のビデオメッセージ撮影を承諾。
9月7日 UPF大会用ビデオメッセージを撮影。
9月12日 韓国清平でUPFが開催した「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022 希望前進大会」にビデオメッセージでリモート登壇。「家庭の価値を強調する点を高く評価」などと教団最高権力者である韓鶴子総裁を最大限に礼賛。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が安倍の国会事務所に公開抗議文が届くものの、受け取りを拒否。
10月24日 石神井公園駅前で衆院選自民党候補の応援演説(鈴木エイトが統一教会問題について問いかけを行ったが安倍の反応はなかった)。
9月12日のビデオメッセージは、ネットで拡散された。
さて、2022年。
●2022年の<山上徹也>
1月 職場でのトラブル多発、口論も。
3月 仕事を休みがちに(安部殺害計画の実行を決意?)。
4月 自作の銃が完成。職場を無断欠勤することが増え、4月末を最後に出勤しなくなる。体調不良を理由に退職を申し出る。
5月 派遣先を退職(京都工場)。その後、大阪府内の会社で夜間のフォークリフト作業に従事。三週間後(6月)に自己都合で退職。
6月29日 鈴木エイトにツイッターでダイレクトメッセージを送る。
7月7日 未明に奈良市三条大路の平城家庭教会に向けて銃を試射。その後、安倍が応援に来る自民党候補の集会が開かれる岡山市北区の市民会館を下見。午後、ルポライター米本和広宛てに犯行を示唆する手紙を投函。手紙には米本のブログにたびたびコメントを投稿していたことや
自身のツイッターアカウントを明記していた。夜、演説会場で持ち物検査があり銃撃を断念。翌日の安倍の応援演説が長野県から奈良県に変更になったことを知る。
米本和広は、幸福の科学、ヤマギシ会などについての著作のあるルポライター。
統一教会については、教団の問題のみならず、メディアのバッシングの異常さについても批判をしていた。
引用を続ける。
●2022年の<安倍晋三>
2月 韓国ソウルでUPFが開催した『ワールドサミット2022・韓半島平和サミット』へメッセージを送付。
7月 参院選比例区で井上義行候補(現参院議員)へ統一教会票を差配。7日17時に翌日の応援演説の予定が長野から奈良・京都・埼玉へ変更(長野選挙区の自民党公認新人候補者・松山三四六が女性問題を報じられたため)。
ちなみに、長野では松山三四六が落選した。
彼は、統一教会の支援を受けていた。Wikipedia「松山三四六」から引用する。
Wikipedia「松山三四六」
2022年5月15日、長野市大字中御所岡田町に選挙事務所を設置。同日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が指摘される「南信州ファミリー会」は参院選に向け、「佐々木祥二県議会議員と共に松山三四六を応援する会」を宮田村村民会館で開催した。佐々木は長野の地方議会議員の中でも、教団と特に関係が深い政治家として知られる。
あの事件には、長野で統一教会が支援する参院選候補者が、女性問題でメディアに叩かれていたため、7月8日の安倍の応援演説が奈良に変更になったという背景があったのである。
引用を続ける。
●2022年の<鈴木エイト>
6月29日 18時に参院選取材で下村博文・元文科大臣を直撃。21時11分に山上徹也のツイッターアカウントからダイレクトメッセージが届く。
7月6日 19時半に石神井公園駅前で安倍晋三の遠戚・斎木陽平の街宣現場に行き会う(斎木は参院選東京選挙区に立候補していた)。
山上徹也、安倍晋三、鈴木エイト、それぞれに、7月8日がやって来た。
安倍と山上は、同じ時間と空間を共有した。
鈴木エイトは、2021年9月12日の『神統一韓国のためのTHINK TABNK 2022 希望前進大会』への安倍晋三のビデオメッセージによるリモート登壇が「分水嶺」となったと形容する。
あのビデオメッセージに私は驚愕し、山上徹也は“絶望”した。その感覚は、数少ない報道やネット上でそのトピックに触れた世間の人々と、同じではないはずだ。加えて、おそらく私と山上徹也は、同じポイントに衝撃を受け、驚愕あるいは絶望したと思っている。
同じポイントとは、安倍晋三が、もはや統一教会との関係を隠すつもりがなくなったということだ。厳密に言うと、安倍は当該シーンを全面的に公開することに応じたわけではない。あのビデオメッセージ自体はネット配信中継時のみ公開を許可し、アーカイブは残さないという取り決めがあって世に出たものだ。安倍が教団サイドの広告塔になることを了承したわけではなかった。
だが、このネット社会において映像が全世界に中継される以上、韓鶴子を礼賛する自分の発言が拡散することは、安倍も想定していたはずだ。にもかかわらず、安倍は映像の公開を許可した。おそらく、「公開したところでその影響は大したことはない。第二次安倍政権後の各メディアの動きを見ても、きっと大手メディアは報じないだろう。自分の選挙、自民党の選挙、自身の政治生命には何の影響もないはずだ」と高を括ったのだろう。その点にこそ、私と山上は衝撃を受けたのだ。
鈴木エイトによると、ビデオメッセージを報じたのは『しんぶん赤旗』『週刊ポスト』『FRYDAY』『実話BUNKA超タブー』の4つの媒体のみで、新聞各紙やテレビは、まったく報じなかった。
そういう意味で、安倍の読みは正しかった。
しかし、安倍の「高の括り方」や、全国弁連の抗議文の受け取り拒否という「開き直り」が、山上徹也を“絶望”させ、トリガーを引かせた、と鈴木エイトは指摘する。
次回は、第二章 銃撃事件後、逮捕された山上が供述した「恨み」、に進む。
安倍晋三が、統一教会票を差配した井上義行は、今年5月、UPFや勝共連合など数多くの旧統一教会関係者が動員参加する新憲法制定議員同盟主催の改憲集会に出席していたと報道されている。
あの事件から一年過ぎても、統一教会と自民党議員との密接な関係は、変わっていない。
