「フクシマ忘却法案」が衆院で可決ー歴史に学べない国になろうとしている。
2023年 04月 28日
まったく、まやかしの「束ね法案」が、衆院で可決した。
東京新聞から、引用。
東京新聞の該当記事
原発政策の大転換なのに…拙速な審議、再生エネなど5本の「束ね法案」が衆院で可決
2023年4月28日 06時00分
原発の60年超運転を可能にする束ね法案「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が27日、衆院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決された。法案は原子力規制や再生可能エネルギーに関係する5本の法律をまとめて改正するもの。原子力政策の大転換となるのにもかかわらず、審議は不十分なまま1カ月足らずで衆院を通過した。参院で議論が深まるかも見通せない。(小野沢健太)
記事中の、同法案の概要を示す図をお借りする。

どこが「グリーントランスフォーメーション」なのか。
基本は、原子力依存回帰法案であり、まさに「フクシマ忘却法案」である。
東京新聞は、21日の社説でこの法案の問題点を指摘していた。
今朝の記事と重複する部分もあるので、社説を引用する。
東京新聞の該当社説
<社説>脱炭素電源法案 フクシマ忘却宣言だ
2023年4月21日 07時50分
「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が国会で審議されている。「脱炭素」を掲げてはいるものの、原発復権を国が後押しするために「原子力の憲法」といわれる原子力基本法の改正にまで踏み込んだ。
岸田文雄首相は昨年夏のGX実行会議で、脱炭素の要請とエネルギーの安定供給を名目に「原発依存度を可能な限り低減する」とした福島第一原発事故以来の大方針を「原発を最大限活用する」に百八十度改めた。再稼働の加速などに向けて「国が前面に立つ」との姿勢も打ち出した。
GX脱炭素電源法案は、首相の方針転換を具体化するために、五つのエネルギー関連法の一括改正を図る「束ね法案」だ。
このうち原子炉等規制法と電気事業法では「原則四十年、最長六十年」とする原発の運転期間を定めた規定を、原子力規制委員会管轄の炉規法から削除。経済産業省所管の電気事業法に移し、一定の条件下で六十年超の運転を経産相が認可できる仕組みに改める。
基本法の改正案には「国の責務」という項目が新たに加えられ、「国は、原子力発電を電源の選択肢の一つとして活用することによる電気の安定供給の確保に資することができるよう、必要な措置を講ずる責務を有する」などと明記。国が率先して原発復権に関与する姿勢を明確にした。
福島の事故のあと、原発規制の管轄は、推進側である経産省の原子力安全・保安院から、独立機関の原子力規制委に移された。
法案がこのまま通れば、3・11の重要な教訓である「規制と推進の分離」は崩れ、「国策」の旗のもと、経産省主導で老朽原発の延命が進んでいく恐れが強い。
3・11以前への回帰であり、「フクシマはもう忘れよう」と、政府として宣言するようなものではないか。
複数の法案をまとめて提出し、一度の採決で賛否を決する束ね法案には、審議の中で対立点が鮮明になりにくく、あいまいなままで国会を通しやすいとの批判も多い。しかし、五つの個別法案のひとつひとつが、国民全体の暮らし、そして命にかかわる重大な案件だ。「自主、民主、公開」という原子力基本法の三原則に見合う熟議が欠かせない。
「フクシマ忘却法案」を、このまま成立させるべきではない。
残念ながら、この無茶苦茶な法案が、衆議院を通った。
その無茶を通した、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の名を忘れないようにしよう。
それらの党の群れを「悪の軍団」と呼ぶことにする。
もはや、最大野党としての存在感を失った立憲が反対しても、悪の軍団に対抗できないのである。
東京新聞による「フクシマ忘却法案」というネーミング、悪くない。
まったくその通りだ。
老朽化を経年化などと言い換えるにとどまらず、「GX(グリーントランスフォーメーション)」なんて言葉で、老朽化原発の運用を認める法案を形容する誤魔化しは、ほとんど犯罪的だ。
60年稼働させられるという事例や科学的根拠は、一切存在しない。
最高齢原発は、フランスで53年。
高木仁三郎さんの遺志を継ぐ原子力資料情報室では、次のような声明を発表している。
原子力資料情報室サイトの該当ページ
GX原発法案衆院可決 欺瞞と偽りに満ちた国会審議
2023年4月27日
NPO法人原子力資料情報室
2023年4月27日、衆議院本会議で「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」の採決が行われ、自民・公明・維新・国民民主らの賛成多数により可決した。今後、参議院での議論に移る。
本法案は原子炉等規制法、原子力基本法、電気事業法など5つの法案を束ねた非常に複雑な構成となっている。ところが束ねられたため、審議時間は極めて限られることとなった。
残された多くの疑問
政府の「GX実現に向けた基本方針」(GX基本方針)では、脱炭素社会の実現のために、原発の再稼働、運転期間延長や建て替えが必要だとされている。必要だというからには、何らかの根拠が示されなければならない。ところが、きわめて定性的な議論にとどまり、政府は何らの数値目標も示していない。一方で、改正原子力基本法においては原子力の推進を国の責務として位置づけようとしている。GXと原子力基本法の改正には何らの因果関係も存在しない。そのうえ、原子力は多くのエネルギー源の一つにすぎない。そのような原子力の推進を国の責務として位置づけることは、原子力の固定化につながり、エネルギー供給の柔軟性を損なうことになる。
GX基本方針などでは、原発の建設は建て替えに限ることとされている。ところが、次世代革新炉の開発においては、原型炉の建設が計画の中に盛り込まれており、政府は研究開発費を支出する方針だ。原型炉は、研究段階の原子炉であり、当然、商用炉よりも事故リスクも投資リスクも高いものになる。建て替えなのか、新設なのか誰がどこに、どのようなものを建てるのか、何ら示されないまま、建設するという方針だけが先行している。また、政府は原発再稼働が、電力価格抑制につながるという。ところが、東京電力EPの値上げ申請によれば、原発再稼働による価格抑制効果はわずか0.4円/kWh程度に過ぎないことが明らかになっている。一方、原発の維持のために支払っているコストは2円/kWh程度である。大きなリスクに比してあまりに小さいメリットだといえよう。この現実を見てもなお、原発は安い電源だと言えるのか。
運転期間延長についても多くの問題点が解明されないままだ。原子力規制委員会の山中伸介委員長は60年超の原発について、「実際に60年以上運転しても、これくらいの健全性は評価できるという科学的な根拠がある」と説明しているが、現実には世界最高齢の原発は53年であり、60年でさえ未経験の世界である。原発大国フランスの原子力安全局は、50年以降の原発の運転の安全性すら「証明されていない」ので証明する方法を検討するとしている。原子力規制委員会は「科学的・技術的」という言葉のベールで現実をごまかそうとしている。しかし、原発の施設は経年とともに着実に劣化していく。
さらに問題なのは、原子力の利用は安全性が前提だとしているところだ。原子力利用は安全性が前提なのは当然である。ところが、運転期間延長の議論の中でこの安全性を担保しているはずの原子力規制委員会の独立性が疑わしいことが明らかになった。原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁が推進官庁である資源エネルギー庁と事前に相談しながら、運転期間延長を進めていたのだ。原子力規制庁は資源エネルギー庁との隠れて事前調整をしていたことについてごまかしを繰り返してきた。12月、当室の情報公開請求に対して、原子力規制委員会が規制庁に対して検討を指示した10月以前に運転期間延長について検討した事実は存在しないと電話で回答、12月末、当室が内部資料の存在を明らかにしてようやく、事前相談の事実を明らかにしてからも、内部検討資料の黒塗り開示、資源エネルギー庁との打ち合わせで先方から示された資料についても、関係のないメモ書きをしてしまったからとして、新しい資料を資源エネルギー庁担当者と霞ヶ関駅で手交してメモ書きのある資料を破棄。この駅での受け渡しの事実も、当初は否定していた。さらに、関係ないものだと説明していたメモ書きについても国会で資源エネルギー庁側は、面談時に書いたメモだと規制庁側から伝えられたと答弁している。このようなごまかしに満ちた原子力規制庁に大事な原子力規制をゆだねることができるのだろうか。
振り返れば、1979年のスリーマイル島原発事故の際には国会で当時の江崎真澄通産大臣が「わが国の場合はもう安全第一主義で、特に安全の規制については二つの法律を駆使して、十分の上にも十分を期しておる」と答弁、1986年のチェルノブイリ原発事故の際には当時の中曽根康弘総理大臣が「ソ連の黒鉛あるいは軽水等によるあの型と、我が国がやっておるボイリングウオーターとかプレッシャーライズドウオーターというこの二つの軽水炉型とはまるっきり構造が違っておりまして、心配はないのでございます」と答弁している。
日本は貴重な教訓を2度とも自分事としてとらえることなく、2011年福島第一原発事故に至った。今、私たちは自らが経験した3度目の教訓を投げ捨てようとしている。
なぜ、なぜ、なぜ、がいくつも付く、今回の法案可決だ。
ドイツやベルギー、スイス、韓国、台湾などが脱原発を決めている。
それなのに、なぜ、日本は、「フクシマ」の当事国でありながら、今になって原発稼働が「国の責務」になってしまうのか。
「GX(グリーントランスフォーメーション)」などと言うのなら、再生可能エネルギーについて語るべきである。
原発は、事故はもちろん、定期点検のために停止するため、その補助電源として火力発電が使われている。
構造的には、まったく脱炭素にはならないことは明白なのだ。
もちろん、ウラン採掘から輸送・加工などの全体の工程において、大量の二酸化炭素が発生する。
もちろん、放射性廃棄物は、何十億年に渡り、管理しなければならない。
その道筋も示せないまま、廃棄物をもっと大量に作り出そうとするのが、この法案だ。
ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰を利用する、経済界の「ショック・ドクトリン(災害便乗型政策)」に、惑わされてはいけない。
経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)が「既設の原発で安全性が担保され地元住民の理解が得られるものは速やかに稼働しないといけない」と言うが、安全性は、まったく担保されていない。
しかし、電力会社を重要メンバーとする経済界からの支援と引き換えに、原発稼働を約束するのが岸田自民党である。
そして、今回の法案に賛成する公明、維新、国民民主という自民党の金魚のフンたちの罪も重い。
先に原発稼働ありきなので、規制の枠組みは、まったくいい加減だ。
原子力規制庁という組織の不透明性も含め、こんな馬鹿げた「束ね法案」を、真っ当な議論のないまま衆院で可決するような、劣化極まれりと言える国になってしまった。
どれほど、この「フクシマ忘却法案」が問題なのか、メディアはもっと声を上げるべきだ。
安倍-菅から受け継いだ、不正・無能・腐敗の2012年体制の、ある意味、総仕上げをするための最悪の後継者が岸田だったのかもしれない。
参院でも、数の力で、この法案が可決されるのだろう。
しかし、「フクシマ」を忘れない国民は少なくない。
まだまだ、諦めることはない。
そう簡単に、悪の軍団の横暴を許してはいけない。
繰返すが、グリーントランスフォーメーションなどという言葉でこの法案を包むこと自体、とんでもない誤魔化しである。
今、真先にトランスフォーム(変換)すべきなのは、政治だ。
