「ペシャワール会報」153号より(1)
2022年 11月 21日

「ペシャワール会」の会報153号は10月5日付発行だったが、遅ればせながらご紹介。
表紙の下には、こう書かれている。
ペシャワール会は、1983年9月、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で結成され、現在は中村医師が設立したPMS(平和医療団・日本)のアフガニスタンでの医療活動や灌漑水利事業等の総合的農村復興事業を支援しています。
なお「ペシャワール会」のサイトでも、一部の記事はPDFで読むことができる。
「ペシャワール会」サイトの該当ページ
冒頭は、村上優会長の記事。
題は「アフガニスタンの苦難は続くー干ばつ、地震、大洪水、そして経済制裁」である。
ご覧のように、8月下旬の大洪水のことから始まっている。

アフガニスタンの実情やタリバン政権に関する報道について、村上会長は、こう書いている。
報道されない「不都合な真実」なぜ、メディアは、アフガニスタンの真実を伝えないのか。
タリバン政権が復活して一年、世界に、そして日本に流布した報道はどのようなものだったでしょうか。再びめぐってきた8月15日、報道各社は濃淡に違いはあるものの、一年前と変わらぬ画一的な「タリバン政権の悪」を強調する論調に終始していました。曰く「アフガンは再びテロの温床に」「女性への抑圧」などです。アフガニスタンの悲惨な現実ー多数の飢餓線上の人々、二人に一人の貧困、栄養失調の子ども、臓器売買などーは全てタリバン政権によってもたらされたと報じていると言っても過言ではないでしょう。報道の全てを検証することはできませんが、少なくともPMSが活動している地域の現状は報道とは異なっています。
この間の報道には重大な欠落があります。それは、20年以上アフガニスタンを襲っている未曾有の干ばつについてほとんど言及していないことです。
2000年、大干ばつの被害を目の当たりにした中村医師は、医療活動の延長としえ、命を支えるには「水しかない」と灌漑事業に舵を切りました。干ばつはその後も波状的に進行し、2021年春には、WFP(世界食糧計画)などが、アフガニスタン国民の半数二千万人が飢餓に襲われると警鐘を鳴らし、前政権も6月には危機感を表明していました。
2022年6月時点で、大河クナールの水位はこれまでの最低レベルで推移していました。干ばつと洪水が同時に起こる現象は今や世界各地で起きていますが、急峻な山々が連なるアフガニスタンでは、それが荒々しく激しく現れているのです。
『不都合な真実』(アル・ゴア)として知られていたはずの地球温暖化は、今でも「不都合な真実」として隠されたままなのです。アフガニスタンは二酸化炭素の排出量が一人当たり、米国の約70分の1、日本の40分の1の最貧国です。その国が地球温暖化の影響を最も強く受けて干ばつによる飢饉が起こり、飢餓に苦しんでいるという「真実」は不都合なこととして無視されています。
中村医師が医療・農業・灌漑用水路事業の邁進していた35年間にアフガニスタンでは6回の政権交代がありました。1979年の旧ソ連軍侵攻以降、アフガニスタンは戦火に包まれていました。中村医師の背後には常に戦乱があったのです。昨年8月、兵力7万のタリバンが米欧の支援を受ける30万の政府軍を無力化したということは、国民の90%を占める貧しい農民たちが、戦乱よりも治安を求めたということです。この事実を直視せずにアフガニスタンを語ることは出来ないと思います。
中村医師が支えていたのは困窮する農民・遊牧民たちでした。今、干ばつと経済制裁によって彼らの命がさらに脅かされています。彼らの命をつなぐ支援を続けていくことが私たちの役割だと改めて肝に銘じています。
なぜ、タリバンは、いまだに悪役としてしか報じられないのか。
日本の沖縄、鹿児島馬毛島への米軍再編交付金のことも、ほとんど報じないマスメディアにとって、アフガニスタンのことなどは関心の外、ということなのかもしれない。
エジプトで開催されていた「国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)」は、2日間の延長の末に閉幕。
温暖化による「損失と被害」を救済する基金設立では合意したが、温室効果ガス削減については前進がなかった。
その結果、温暖化はますます進み、アフガニスタンなど、自らは二酸化炭素排出量が少ない、貧しい国を直撃する。
アフガニスタンへの経済制裁は次第に緩和されつつあるが、円安の影響で、日本からの円建ての支援も当初より増やさなければならなくなっている。
しかし、ペシャワール会、PMSの人たちは、希望を捨てずに、アフガニスタンの人々の命を救う活動をしている。
アフガニスタンの人々に、いまだに慕われている中村哲医師や、その事業をつないでいるPMS、ペシャワール会の人々がいるということを、微力ながらも拙ブログで伝えていこうと思っている。
さて、カタールでサッカーW杯が始まった。
楽しみではあるが、忘れてはならないこともある。
まず、招致活動で不正があったのは間違いないだろう。オリンピックと同様、構造的な問題。
また、競技場建設過程において、劣悪な労働環境下で多くの出稼ぎ労働者が亡くなっている。
人権侵害への抗議は、海外では盛んにメディアを賑わわせている。
イギリスBBCは、抗議の姿勢を示し、開会式を放送しなかった。
日本では浮かれた記事が多い中、中日スポーツの記事は異色だったので紹介したい。
中日スポーツの該当記事
英BBCはW杯開会式を放送せず カタールの人権侵害を問題視…世界各国から大ブーイング「屈辱にまみれたモーガン・フリーマンがキックオフ」
11/21(月) 5:00配信
◇20日 サッカーW杯カタール大会 開会式
サッカーのW杯カタール大会は20日、アルホールのアルベイト競技場で開会式が行われた。俳優のモーガン・フリーマンが登場すると、カタール人のユーチューバーで、生まれつき下半身が欠損している尾退行症候群のガリム・アルムフターさんに「われわれは一つの大きな種族だ。地球はわれわれ全員が住むテントなのだ。そう、われわれは全世界に向け、ともに進むよう呼び掛けられる」と語り掛けた。
だが、豪州サイトのニュース・ドットコムauは「カタールは人権侵害と移民労働者からの搾取、LGBTや女性への差別で世界的な批判にさらされ続けている」と、皮肉って報じ、英国営放送局BBCはあえて開会式を放送せず、同時刻の番組でカタールW杯が環境に与える悪影響を紹介した。
英紙デイリーメールは「屈辱にまみれたモーガン・フリーマンが開会式をキックオフ」の見出しで報じた。フリーマンさんは2018年に8人の女性らから性的ハラスメント行為を告発され、謝罪しつつも「決して意図的だったわけではない。お世辞やジョークのつもりだった」とコメントし、さらに炎上した。
また、フリーマンさんは22年W杯開催国の誘致合戦で、カタールに敗れた米国の主役を担っていたため、米ネットラジオ局のメンインブレーザーズは「モーガン・フリーマンは2022年W杯の米国誘致で“顔”を務め、いまやカタール大会の開会式の“顔”。世界的で壮大な“釣り”だ」と評した。
モーガン・フリーマンは、好きな俳優さんだったので、実に残念。
日本チームの試合は楽しみにしている。
それはそれとして、こういった「不都合な真実」も、忘れてはならない。
貴重な情報ありがとうございます。
何が真実なのか、私もできるだけ情報を収集したいと思います。
