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白井聡著『長期腐敗体制』より(14)


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白井聡著『長期腐敗体制』

 6月10日に角川新書から刊行された白井聡著『長期腐敗体制』から、十四回目。

 著者の白井聡は、1977年生まれの思想史家、政治学者で、『永続敗戦論ー戦後日本の核心』などの著作がある。

 目次を確認。
***********************************************
 □序章 すべての道は統治崩壊に通ず
       ー私たちはどこに立っているのか?ー
 □第一章 2012年体制とは何か?
       ー腐敗はかくして加速したー
 □第二章 2012年体制の経済対策
       ーアベノミクスからアベノリベラリズムへー
 □第三章 2012年体制の外交・安全保障Ⅰ
       ー戦後史から位置づけるー
 □弾四章 2012年体制の外交・安全保障Ⅱ
       ー「冷戦秩序」幻想は崩壊したー
 □第五章 2012年体制と市民社会
       ー命令拒絶は倫理的行為であるー
 □あとがき
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 巻末に説明があるが、第一章から第四章は、2021年3月から6月に朝日カルチャーセンター中之島教室で行われた連続講座「戦後史のなかの安倍・菅政権」の講義録を元にしている。
 その内容を全面的に改稿し、他の章を書き下ろしたとのこと。


 引き続き、第三章 2012年体制の外交・安全保障Ⅰー戦後史から位置づけるー、からご紹介。

 前回は、吉田茂=護憲派、岸信介=改憲派、という図式で捉えるのは間違い、という著者の指摘までご紹介した。

 なぜなのか、引用する。

 確かに吉田は国会答弁(1946年6月28日)の中で、九条原理主義を打ち出したことすらありました。それは、野党である共産党議員の野坂参三から憲法九条について次のような趣旨の質問をされた時です。
「侵略された国を守るための戦争は正しい戦争と言って差しつかえないと思う。戦争一般の放棄という形ではなく、侵略戦争の放棄とする方が的確ではないか」と。吉田茂は、要約すると、次のように答えました。「国家正当防衛権による戦争は正当と認めることは有害だと思う。近年の戦争の多くは国家防衛権の名において行なわれたのは顕著な事実だ。正当防衛権を認めるのが戦争を誘発する所以であると思う」。まるで「九条の会」の会員の言葉のような答弁です。

 この国会は、第90回帝国議会で、憲法改正が最大のテーマだった。

 ご存知のように、この年の11月3日に、日本国憲法が公布された。

 この吉田答弁については、兄弟ブログ「幸兵衛の小言」の2013年5月5日の記事で、戸川猪佐武の『政権争奪』から紹介したことがある。
「幸兵衛の小言」の該当記事

 『政権争奪』から、吉田茂の発言を引用する。

日本が戦争放棄を宣言して世界の信をえつつあるとき、自衛権を論ずることは有害無益である。これは直接には自衛権を否定していないが、一切の軍備と交戦権を認めないもので、自衛権の発動としての戦争、交戦権を放棄したものである。これまでの侵略戦争はすべて、自衛権発動の名においてなされてきた。

 たしかに、「九条の会」会員の発言のようではないか。

 共産党の野坂参三の発言は、敗戦の翌年という状況を踏まえても、共産党のリーダーの言葉とは、驚きだ。


 この答弁の背景などについて、引用。

 これだけ聞くと、吉田茂は原理的な護憲派だったという印象を抱くと思いますが、そのような単純な話ではありません。この時には昭和天皇の戦争責任からの免責と完全な非武装の受け容れとの取り引きという文脈が、答弁の背景にありました。
 時はめぐり、1950年6月、米国務長官のジョン・フォスター・ダレス(1888-1959)が来日します。ダレスは朝鮮戦争の勃発をうけて、日本にアメリカの軍事行動にお手伝いをさせようと望んでいた。そこでネックになったのが、憲法です。だからダレスは、憲法を変えさせ、本格的に日本に再武装をさせて下働きをさせようという考えがあって来日したわけです。
 吉田はこの時も再軍備に対してまったく乗り気ではありませんでした。まず、依然として焼け野原のような状況で、金がない。それから国民は「また戦争か」と思うだろう、厭戦気分が強いだろう、と見た。さらにもう一つの理由は、吉田の軍人嫌いです。当時の情勢からして、もし本格的に再軍備するならば、当然旧帝国陸海軍のメンバーを中心に組織していくしかありません。「あれだけ無茶苦茶なことをして国を破滅させた連中が、装いを変えて、また偉そうな顔をするのか。冗談じゃない」という思いがありました。そこで吉田は、ダレスに対してはのらりくらりとかわし、国会では独立後のアメリカへの基地提供も否定してみせます。
 しかし、この時の吉田の、ゴリゴリの護憲派のような姿勢もまた額面どおりに受け取るべきではありません。講和条約と日米安保条約の交渉を睨んでアメリカに対して高めのボールを投げておくというコンテクストがあったわけで、本音というわけではないのです。最終的には再軍備も必要だが、しかし今ではない、というのは吉田の本心です。この時には憲法を盾にして、アメリカの要求をできる限り押し返すというの構図になったのです。
 つまり、吉田も究極的には改憲派ですが、テンポやスピード、タイミングの問題だ、と考えていた。その意味では、吉田茂と岸信介にどれだけの違いがあるでしょうか。大した違いはありません。両者が何を共有していたかとうと、先に述べたように、対米従属を通じた対米自立という戦略です。それこそが、最初の対米従属レジームを形成した親米保守政治家たちの共通目標です。


 ということで、たしかに、対米従属による対米自立という観点からは、吉田茂も岸信介も大きく変わりがない。

 その岸は、東条内閣で初入閣していたこともあり、戦犯として巣鴨プリズンに収監されていた。

 そして、逆コースのおかげで(?)政界に戻ることができたのである。

 反共という共通因子で日米関係が新たな時代を迎えたことが、岸信介の人生を変えた。
 岸が、統一教会と手を結び、国際勝共連合設立を、右翼と協調して進めたのは、そういった背景がある。

 しかし、岸は、あの戦争を反省することはなかった。

 アメリカは、彼にとって、憎き敵であり続けた。

 そんな岸が、どんな思いで、親米保守を進めていたのかについては、次回。


 本来、護憲派であるはずの宏池会のリーダー岸田が、改憲を口にするようになったのは、背後に最大派閥清和会(安倍派)がいるからでもあるが、本質的に、自民党の親米保守の派閥間には大きな違いがない、という証かもしれない。

 しかし、吉田茂が行った柔軟性のある外交戦略、施策を振り返ると、今の政治との違いを思わないではいられない。

 吉田茂には、いわゆる、ビジョンがあったと思う。

 だからこそ、アメリカによる日本の再軍備要請についても、のらりくらりでかわしていたのだ。

 あの「バカヤロー解散」が有名だが、本来は、喜怒哀楽を表に出さず、目指すゴールを描き、深く考えた末に、決断し行動していたのではあるまいか。

 それに比べて、その孫や、今の自民党のリーダーは、あまりにも違いすぎる。

 
 岸田内閣の支持率は、無残な状況になっている。
 当然だろう。
 いくつもの、疑問、不満が国民の心に渦巻いているのだから。

 なぜ、拙速に安倍晋三の国葬を決めたのか。
 なぜ、旧統一教会と自民党議員の関係について、後手後手、芋づる式の対応しかできないのか。
 なぜ、物価上昇対策について、何ら効果的な政策を打ち出せないのか。
 なぜ、コロナ対策をもっと迅速に進めなかったのか。
 
 などなど。

 そして今日の動きだ。

 日銀の黒田総裁が、金融緩和は続ける、円安について市場介入する予定はない、と言った途端に円安が進んだ。

 まず、国債を日銀が銀行から歯止めなく買い上げても、その金は、日銀の当座預金を増やすだけなのである。

 借り手がいないから銀行には貸し先がない、という実態が、なぜ分からないのだろうか。

 そして、黒田総裁発言で円は1ドル145円まで下がって、慌てて市場介入を決めた。

 物価は上がるが経済は停滞し給料は上がらないというスタグフレーションを、どう解決するかという戦略が、まったく見えない。

 政府の対策は、場当たりで、長期的な展望がない。

 
 国連でも「聞く」ことを強調した岸田。

 岸田文雄という人は、特定の相手の声だけは、聞くようだ。

 たとえば、経団連の言うことを聞いて、原発再稼働、増設まで言い出した。

 国葬については、麻生太郎の恫喝に屈した。

 ビジョンが、まったくない。

 しかし、世論調査を見ても、岸田政権の寿命は長くないだろう。


 安倍・菅・岸田と続く、不正・無能・腐敗の「2012年体制」は、今、終焉の時を迎えようとしているのか。

 それとも、総理が替わっても、相変わらずこの国民無視の体制は続くのだろうか。

 いずれにしても、安倍晋三による国民無視の政治が国民の政治不信を募らせた責任は、あまりにも大きい。
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by kogotokoubei | 2022-09-22 21:27 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Trackback | Comments(0)

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