山崎雅弘著『歴史戦と思想戦』より(6)
2022年 03月 22日
アクセス数が、1000を超えていた。
それだけ、同じような疑問を抱く人が多いのかもしれない。
過去の歴史について史料が少ない部分は、ある程度の脚色は必然だが、どうしても合点がいかないこともある。
歴史小説やドラマの脚本は、作者が誰に焦点を当てるか、特定の組織や人物をどう評価しているか、ということなどによって内容は左右される。
読む者、観る者にどれほど受容されるかは、そういった作者の視点や考え方との共有部分の大きさで、変わってくるだろう。
見ていて、「そうそう、そうだよ」と同意できたり、気づかなかった視点を得ることができて、「なるほど!」と思わせてくれれば、嬉しくなる。
先日の放送、三谷脚本と私の共有部分が少なかったなぁ。
そういう時は、「えっ!? それはないだろ」とか「ありえない!」と思いながら見ることになる。
でも、まだ、見続けるつもり。
なお、「歴史戦」を展開する人たちと私は、ほとんど共有する部分がない。

山崎雅弘著『歴史戦と思想戦』(集英社新書)
山崎雅弘著『歴史戦と思想戦ー歴史問題の読み解き方』(集英社新書、2019年発行)から、六回目。
目次を確認。
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はじめに
第一章 「歴史戦」とは何か
第二章 「自虐史観」の「自」とは何か
第三章 太平洋戦争期に日本政府が内外で展開した「思想戦」
第四章 「思想戦」から「歴史戦」へとつながる一本の道
第五章 時代遅れの武器で戦う「歴史戦」の戦士たち
おわりに
参考文献
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今回は、第四章の、「思想戦」から「歴史戦」へとつながる一本の道、からご紹介。
「大日本帝国」の戦争行為を正当化する「歴史戦」の首謀者たちは、あの戦争は、時のルーズベルト政権などに巻き込まれたからだ、と言うことが多い。
コミンテルンにはめられた、とすることもある。
とにかく、大日本帝国は、犠牲者だった、という立場だ。
ケント・ギルバートが、この件について「詳しく書いた」と述べている『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』を読むと、以下のような説明があります。
日本を戦争に誘い込もうとするルーズベルトの謀略が、日本の真珠湾攻撃の
はるか以前から計画されていたことが、徐々に明らかになってきています。
評論家の加瀬英明さんとニューヨーク・タイムズ元東京支局長のヘンリー・
S・ストークスさんの対談をまとめた『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けた
のか』(祥伝社新書)には、昭和15年(1940)9月27日、日独伊三国同盟条約が
調印されたことを聞いたルーズベルト大統領が、側近に向かって「これで、日本
をわれわれとの戦争に誘い込める」と語った、とあります。(pp.153-154)
外交評論家として活動する加瀬英明は、第一章で触れた「日本会議」の代表委員を長く務める人物で、第一章で紹介した倉山満の『歴史戦は『戦時国際法』で闘え』の版元である自由社の社長や、『慰安婦問題で日本の名誉を守ろうとする立場の個人・諸団体の連絡組織』(公式ウェブサイトの説明)として2013年に結成された民間団体「『慰安婦の真実』国民運動
の代表、「南京において[日本軍が]虐殺を行ったという事実無根の誹謗」(公式ウェブサイトの説明)に対抗する目的で2007年に設立された民間団体「南京事件の真実を検証する会」の会長など、さまざまな肩書きを持つ人物でもあります。
その加瀬英明と、ケント・ギルバート、ヘンリー・ストークスのつながりについて、ルポライターの安田峰俊は、「ニューズウィーク日本版」2018年10月30日号に寄稿した「出版界を席巻するケント・ギルバート現象」という巻頭記事の中で、次のような加瀬英明自身の発言を紹介していました。
「長年、ケントに忍耐強く説いていった。彼は真面目なので、話を聞いてくれた。
われわれがケントを変えたんだ」(略)「バテレン(筆者注・戦国時代のキリシ
タン)を改宗させたようなものだ。最初はヘンリー・ストークスを10数年かけて
『調教』したのだが、ケントはその次だった。最初はいずれも、慰安婦や南京の
問題について、日本が(悪事を)やったと考えていたんだ」(p.20)
ケント・ギルバートが、その著作で主張する内容の背景が、これで判明。
彼は、戦後の日本人が共産党などから洗脳された、と言うが、実は、自分自身が洗脳されていた、と言うべきだろう。
なお、加瀬英明は、2012年9月の自由民主党総裁選挙の際、「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」発起人に名を連ねた人物。
安田峰俊は、早いペースで大量に刊行されるケント・ギルバートの著書の「制作体制」についても、次のように説明しています。
書籍の制作に当たり、ギルバートに渡す日本語資料の大部分は彼ら[ギルバート
をサポートする日本人スタッフ]が選定している。大部分の書籍は口述筆記だ。録音
データを出版社側のライターがまとめたものをギルバートと日本人スタッフがチェッ
クし、手を入れるという作業工程を踏む。
著者がアメリカ人であるにもかかわらず、書籍中で日本の新聞・雑誌記事やネット
スラング、保守系言論人の言説が極めて多く引用され、一方で英文の参考資料が少な
い理由も、こうした制作体制に起因するようだ。(p.21)
安田峰俊が指摘しているように、ケント・ギルバートはアメリカ人であるにもかかわらず、なぜか著書を読んでも英語の史資料を出典とする記述がほとんど見当たりません。
ケント・ギルバートが『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』の中で書いている以下の文章も、加瀬英明の発言を知った上で読むと、見え方が少し変わってきます。
私はこれまで、この日米和平交渉の詳細をほとんど知りませんでしたが、ルーズ
ベルトという人間を勉強し、日本が戦争に向かう過程を勉強してから、やはり、日本
はルーズベルトによって戦争に追い込まれたのだということを確信するようになり
ました。(p.169)
ケント・ギルバートのことを、彼の著書名をもじって形容するなら、こうなるのだろう。
『まだ加瀬英明の洗脳に縛られているケント・ギルバート』と。
ウクライナの惨状を見るのが、つらい。
停戦交渉が妥結しない限り、ロシアが攻撃を止めないというのは、ロシアの主張を受け入れないと妥結しないぞ、とう脅しでしかない。
今、ロシアでは、国営メディアなどにより、ロシア国民へのプロパガンダが続いている。
洗脳と言ってもよいのかもしれない。
戦争を仕掛けた側は、自分たちが侵略しているとは、言わない。
それは、大日本帝国でも、同じだった。
そして、その過ちを、いまだに認めようとしない人たちがいる。
プーチンと同様に、彼らの言動には注意が必要だ。
次回も、同じ章からご紹介する予定。
